今回はEek-A-Mouseのアルバム

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「The Mouse And The Man」です。

Eek-A-Mouse(本名:Ripton Joseph
Hylton)は0年代のダンスホール・
レゲエで活躍したディージェイです。

ネットのDiscogsには、彼について次の
ような記述があります。

(born 19 November 1957)
Prolific Jamaican reggae star with his unique "sing-jay" style.
Has collaborated with artists as diverse as P.O.D. and Genaside II.
The name is taken from the race horse he frequently bet (and lost money) on.

《(1957年11月19日生まれ)
シングジェイと呼ばれる独特のスタイル
で、ジャマイカのレゲエ界を代表する
大スター。P.O.D.やGenaside IIなど
様々なアーティストとコラボレートして
いる。芸名は彼がよく賭けた(そして損を
した)競走馬から取ったものである。》

「ビリビリバンバン~♪」などといった
独特の意味不明なオノマトペな言葉の羅列
で人気を博したディージェイで、ネットの
情報などによると歌とトースティングの
混ざった「シングジェイ(Singjay)」の
スタイルを確立したのも、この人の功績の
ようです。

アーティスト特集 Eek A Mouse (イーク・ア・マウス)

今回のアルバムは1983年にUKの
Greensleeves Recordsからリリースされた
Eek-A-Mouseの3枚目か4枚目ぐらいに
あたるソロ・アルバムです。

プロデュースはLinval Thompsonで、
バックはRoots Radicsが担当したアルバム
で、この時代らしいスローなワン・
ドロップのリズムに乗せたEek-A-Mouseの
オノマトペを駆使した独特のトース
ティングが光るアルバムとなっています。

手に入れたのはUSのShanachieから
リリースされたCD(新盤)でした。

全10曲で収録時間は34分42秒。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Produced by Linval Thompson
Backed by Roots Radics
Recorded & Mixed at Channel One
Engineered by Solgie

となっています。

プロデュースはLinval Thompsonで、
バックはこの時代にスローなワン・
ドロップのリズムで人気を博したRoots
Radicsが担当し、レコーディングと
ミックスはジャマイカのキングストンに
あるChannel One Recording Studioで
行われ、ミックス・エンジニアはSoldgie
(本名:Cedrica Anthony Hamilton)が
担当しています。

アルバム・ジャケットに関する記述はあり
ませんが、Greensleeves Recordsの
アルバムなので、この時代にGreensleeves
のジャケットを多く担当したTony McDermott
あたりではないかと思います。
(このアルバムのカセット盤にTony
McDermottと書かれていますが、肝心の写真
が貼られていないので、ハッキリと確認が
出来ません。)

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、このアーリー・
ダンスホールの時代らしいRoots Radicsの
スローなワン・ドロップのリズムのマイナー
調の楽曲に、Eek-A-Mouseらしいクセの強い
オノマトペを駆使した独特のトースティング
が面白いアルバムで、内容はなかなか悪く
ありません。

このEek-A-Mouseですが、ネットのレゲエ
レコード・コムの彼に関する記述による
と、その出発点は本名のRipton Hylton名で
自身のレーベルEek-A-Mouse Recordsから
75年にリリースした「My Father's Land」
と「Creation」の2枚のシングル盤と、
78年にQualityというレーベルから
やはりRipton Hylton名でリリースした
「No Wicked Can't Reign」というシングル
盤なんだそうです。

Ripton Hylton - My Fathers Land


Ripton Hilton - Creation


Ripton Hilton (Eek A Mouse) - No Wicked Can't Reign 1978


彼は1957年11月19日生まれなので
この頃は17~19歳ぐらいの時期で、
78年当時でもまだ在学中であったらしい
です。
この時点では曲もヒットせず注目も集め
られなかったようですが、80年代に入り
アーリー・ダンスホールの時代になると
その独特の個性的なトースティングが多く
のプロデューサーの目に留まるように
なったようです。

その彼にいち早く目を付けたのがVolcano
レーベルのHenry 'Junjo' Lawesで、彼の
元で録音した81年のアルバム
「Wa-Do-Dem」でEek-A-Mouseはスター・
ディージェイへとのし上がって行くんです
ね。

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Eek-A-Mouse ‎– Wa-Do-Dem (1981)

そうして絶好調のアーリー・ダンスホール
の時代の83年に彼がリリースしたのが、
今回のアルバムなんですね。
この時代にバック・バンドとしてスローな
ワン・ドロップのリズムを武器に大人気
だったRoots Radicsの演奏に乗せた
Eek-A-Mouseのマイナー調の楽曲は独特の
個性があり、なかなか面白いです。

実は前はこの人あまり好きではありません
でした。
前にVolcanoレーベルのHenry 'Junjo' Lawes
の楽曲を集めたコンピュレーション・
アルバムにオマケのDVDが付いていたの
ですが、Eek-A-Mouseが「ヴァ~ジン・
ガ~ル♪」などと歌っている横で少女が
踊っている映像を観て、「なんか、気持ち
の悪い人だなぁ」と思った事や、ネットの
レゲエレコード・コムの記事でレイプ事件
などを起こしているなどと書かれていたの
を見て、何かヤバいトラブル・メーカーの
人というイメージを持っていました。

イーク・ア・マウス(Eek A Mouse)、レイプなどの重罪で逮捕 ...

イーク・ア・マウス(Eek A Mouse)、人種差別発言でコンサートから外される…

イーク・ア・マウス(Eek A Mouse)がアメリカへ送還…

ただ近年シンガーのSamory Iが「ビリビリ
バンバン~♪」などと、Eek-A-Mouseの
オノマトペの歌い方を真似ているのを聴い
たり、今もYouTube上に「Still Smuggling」
やAllyawanとの共演曲「Smugglaren」、
「Negro With The Whip」などをアップして
いるのを見て、やっぱりレゲエという音楽
を考えた時に評価すべき人なのかなと思う
気持ちが芽生えました。

Eek-A-Mouse - Still Smuggling [Official Video 2021]


Allyawan & Eek-A-Mouse - Smugglaren [Official Video 2020]


Eek-A-Mouse - Negro With The Whip [Official Video 2021]


ちょっとヤバ目の人である事は否定出来ま
せんが(笑)、音楽的にはちょっと面白い
人なんですね。

そこで手に入れたのが今回のアルバムで、
やはりアーリー・ダンスホールのスローな
ワン・ドロップのリズムに乗せた
Eek-A-Mouseのオノマトペを織り込んだ
トースティングはすごく個性的で面白い
ものがあります。
またマイナー調の曲ともすごく合うんです
ね。

ただあえて欠点を言えば、あまりにもこの
人の個性が強いので、どの曲も皆同じ曲に
聴こえてしまうようなところがあります。
そうした事も影響しているのか、この人の
歌詞は時に放送禁止になるような、
けっこう問題になる歌詞が多いようです。
またその飽きられやすい個性のせいか、
アーリー・ダンスホール以降人気も一時
下火になり、2000年代にもう一度人気
が出て、アルバムを盛んにリリースして
いたりします。
強すぎる個性ゆえに人気の変動も激しい人
のようです。

ただそうしたプラスの面もマイナスの面も
含めて他に無い個性を持っているのがこの
Eek-A-Mouseという人で、そのあたりは
やはり高く評価すべきところなのだと思い
ます。
ポッと彼の曲がかかったりとすると、すぐ
に彼の曲だと解るし、ついつい聴き入って
しまうようなところがあるんですね。

1曲目は「Hitler」です。
タイトル通りドイツの独裁者のヒットラー
を歌った曲のようです。
マイナー調のギターとベースを中心とした
スローなワン・ドロップのメロディに、
Eek-A-Mouseらしいオノマトペを駆使した
独特のトースティングが味わい深い曲
です。

Eek a Mouse - Hitler - with Lyrics


2曲目は「Stadium Hot」です。
スローなワン・ドロップのドラミングに、
リリカルなピアノ、刻むようなギター、
鼻にかかった癖の強いEek-A-Mouseの
マイナー調のトースティングが印象的な曲
です。

Eek A Mouse - Stadium Hot


3曲目は「Struggle」です。
ワン・ドロップのドラミングに、リリカル
なピアノ、重いベースを中心とした陰影の
濃いメロディに、語り呟くように歌う
Eek-A-Mouseのトースティング。

Eek-A-Mouse - Struggle (Remastered)


4曲目は表題曲の「The Mouse & The Man」
です。
ピアノとギターを中心としたスローな
ワン・ドロップんメロディに、語り聞かす
ようなEek-A-Mouseのトースティング。

Eek A Mouse-the man and the mouse


5曲目は「Modelling King」です。
リリカルなピアノとズシっとしたベース、
ギターのメロディに、いかにもRoots
Radicsらしいドスンドスンと落ちるワン・
ドロップのドラミング、癖の強い
Eek-A-Mouseのトースティングがイイ感じ
の曲です。

Eek A Mouse - Modeling King


6曲目は「Terrorists In The City」
です。
ギターと重いベース、リリカルなピアノの
ワン・ドロップに、ちょっと鼻にかかった
Eek-A-Mouseのトースティングがイイ感じ
の曲です。

Eek-a-Mouse - Terrorists in the City


7曲目は「Schoolboy」です。
哀愁のあるギターと重いベース、ピアノの
メロディに、Roots Radicsのドスンと落ち
るワン・ドロップのドラミング、鼻に
かかった高音も使い分けたEek-A-Mouseの
トースティング。

Eek A Mouse - Schoolboy 1983


8曲目は「Sexy Girl」です。
ピアノとギターのリリカルなメロディに、
訥々としたスローなワン・ドロップの
ドラミング、ちょっと明るいEek-A-Mouse
のオノマトペの入ったトースティング。

Eek-A-Mouse - Sexy Girl


9曲目は「Pretty City」です。
淡々としたワン・ドロップのドラミング
に、リリカルなピアノを中心とした
メロディ、少し歌っているEek-A-Mouse
のシング・ジェイが味わい深い曲です。

Eek-A-Mouse - Pretty City


10曲目は「Maybe Lady」です。
リリカルなピアノとギターを中心とした
メロディ、ドスンと落ちるワン・ドロップ
のドラミング、訥々と歌うEek-A-Mouseの
シング・ジェイがイイ感じ。

Eek-A-Mouse - Maybe Lady


ざっと追いかけて来ましたが、1曲目から
いきなりヒットラーが登場するなど、
かなりマイナーで暗い世界観の楽曲が続く
アルバムです。
ただこのアーリー・ダンスホール・レゲエ
の時代にその独特の個性が華開いた、
Eek-A-Mouseらしい世界観のトース
ティングが堪能出来るアルバムで、内容は
悪くないと思います。

こうした個性派のシンガーが登場して来る
のも歌のウマいシンガーが多いジャマイカ
の音楽界の特徴で、彼らは少しでも他の
シンガーを追い抜く為に、様々な歌い方で
新しい世界を作り上げようとするんです
ね。
そうした努力がディージェイのトース
ティングや、アウト・オブ・キー唱法など
を生み出しています。
なので単に「変な歌い方」と侮れないの
が、このジャマイカの音楽界なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


Eek A Mouse - Modern Day Terrorist [Official Video 2018]


Eek a Mouse - Hitler


Eek a Mouse Ghetto Living Sunsplash 1982


EEK A MOUSE - Live at Uprising Festival 2019


○アーティスト: Eek-A-Mouse
○アルバム: The Mouse And The Man
○レーベル: Shanachie
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1983

○Eek-A-Mouse「The Mouse And The Man」曲目
1. Hitler
2. Stadium Hot
3. Struggle
4. The Mouse & The Man
5. Modelling King
6. Terrorists In The City
7. Schoolboy
8. Sexy Girl
9. Pretty City
10. Maybe Lady

●今までアップしたEek-A-Mouse関連の記事
〇Eek-A-Mouse「Wa-Do-Dem」
〇Various「Junjo Presents A Live Session With Aces International」