今回はI Royのアルバム

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「Many Moods Of I Roy」です。

I Roy(本名:Roy Samuel Reid)は70年
代のルーツ・レゲエの時代から活躍した
ディージェイです。

その鋭いトースティングで、デビューから
10年間常にトップ・ディージェイの地位
を維持し続けたという人気ディージェイと
して知られています。
75年にI RoyとPrince Jazzboの間で
起きた「伝説の舌戦」はとても有名で、多く
の人を巻き込んでジャマイカの音楽界を盛り
上げた事で知られています。

1999年に心臓疾患のため他界して
います。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て27枚ぐらいのアルバムと、265枚
ぐらいのシングル盤を残しています。

アーティスト特集 I Roy (アイ・ロイ)

今回のアルバムは1974年にUKの
Trojan RecordsからリリースされたI Roy
の3枚目ぐらいにあたるアルバムです。

「You Are My Angel」リディムの表題曲
の「Many Moods Of I Roy」をはじめと
して、「Queen Of The Minstrel」
リディムの「Free Style」や、「Stars」
リディムの「Deck Of Love」など、この
時代に流行した楽曲のリディムを巧みに
使い、ラヴ・ソングなども交えたI Roy
のウィキッドなトースティングが光る、
味わいのあるアルバムとなっています。

手に入れたのはTrojan Recordsから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が6曲、Side 2が6曲の全12曲。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

Sleeve Design Formal Arts Limited

という記述があります。

プロデューサーやバックのミュージシャン
の記述はありませんが、ネットのDiscogs
にはプロデューサーはRoy Reid(I Royの
本名)と書かれていました。

また使われている楽曲はHorace Andyの
「You Are My Angel」や、Cornell
Campbell & The Eternalsの「Stars」
などで、それらの楽曲はBunny Leeが
プロデュースの楽曲なので、もしかしたら
Bunny Leeが楽曲の提供やプロデュースに
関わっているのかもしれません。

ジャケット・デザインはFormat Arts
Limitedというデザイン事務所が行って
いるようです。
ネットのDiscogsで「Format Arts
Limited」で調べてみたところ、おもに
Trojan Recordsのジャケット・デザインを
行っているところのようで、他にGregory
Isaacsのファースト・アルバム
「In Person」や、Johnny Clarkeの
モノクロのイラスト・ジャケット「Enter
Into His Gates With Praise」などを制作
している事務所のようです。

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Gregory Isaacs ‎– In Person (1975)

表ジャケットはジャマイカの沢(滝?)の
ような所でくつろぐ、白人の女性を交えた
6人の人物が写った写真が使われています。
6人のうち後ろに2人写った人物の、左側の
肩に手を置かれ木に足を引っ掛けたアフロ・
ヘアーの男性が、どうもI Royのようです。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、ロック
ステディからルーツ・レゲエの時代の
ヒット曲の音源をバックに、I Royの
ウィキッドなトースティングがとても魅力
的なアルバムで、内容は悪くないと思い
ます。

この74年頃はBob Marley & The Wailers
などの活躍もあり、小さな島国ジャマイカ
の音楽レゲエがようやく世界に認められる
ようになって来た時代だったんですね。
そうしたレゲエという音楽に世界的に火が
付き始めた時代の、人気ディージェイの
ひとりがこのI Royなんですね。
デビューから10年間常にトップ・ディー
ジェイの地位を維持し続けたという人気の
ディージェイだったI Royですが、今回の
アルバムにもその片鱗がうかがえます。

この70年代はBob Marleyなどのラスタ
ファリズムに基づくプロテスト・ソングを
中心としたルーツ・レゲエが流行した時代
でしたが、今回のアルバムはそうした楽曲
もあるものの、表題曲の「Many Moods Of
I Roy」などラヴ・ソングめいた楽曲も
あったり、あまりルーツルーツと尖って
いる感じではなく、ヴァラエティに富んだ
楽曲が揃っている印象です。

当時はプロテストなルーツ・レゲエが流行
した時代ではありましたが、意外と当時の
ジャマイカの庶民はラヴ・ソングや
スラックネス(下ネタ)なども好きで、
そうした庶民の心を捉えるの長けた
ディージェイがこのI Royだったのでは
ないか?そんな気がします。
このアルバムはそうしたI Royの、政治的
な歌からラヴ・ソング、スラックネスまで
包括する柔軟な個性がよく出たアルバム
ではないかと思います。

実際にI Royの他のアルバムと較べて
ジャケットや曲の感じが微妙に違って何と
なく等身大の彼が感じられる、その感覚が
ちょっと面白いアルバムなんですね。

74年のアルバムなのでロックステディの
時代のCornell Campbell & The Eternals
のヒット曲「Queen Of The Minstrel」や
「Stars」、初期レゲエの頃のHorace Andy
の「You Are My Angel」などが元の音源
として使われていますが、中にはI Royが
トースティングではなくほぼ歌っている
「There Must Be A Way」という曲なども
あり、そのリラックスしたノリがなんとも
心地良いアルバムに仕上がっています。

彼の初期作の中では前年の73年の
Augustus 'Gussie' Clarkeがプロデュース
したアルバム「Presenting I. Roy」と
並んで、とても出来の良いアルバムだと
思います。

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I. Roy - Presenting I. Roy (1973)

Side 1の1曲目は表題曲の「Many Moods
Of I Roy」です。
リディムはHorace Andyの「You Are My
Angel」です。
ユッタリとしたドラミングに、刻むような
ギターとベース、キーボードのメロディ、
訥々と語るようなI Royのトースティング
がイイ感じ。

2曲目は「Pitty Jah Children」です。
刻むようなギターとベースを中心とした
メロディに、立て板に水のようなI Royの
溢れ出るようなトースティング。

I-Roy - Pity The Children


3曲目は「Peter Pan」です。
ピアノと浮遊感のあるキーボード、刻む
ようなギターのメロディに、表情豊かに
畳み掛けるI Royのトースティングが
楽しい曲です。

4曲目は「Free Style」です。
リディムはロックステディの時代の
Cornell Campbell & The Eternalsの
ヒット曲「Queen Of The Minstrel」
です。
華やかなホーンのオープニングから、
ピアノとキーボード、刻むようなギターを
中心とした甘いメロディ、I Royの滑らか
な流れるようなトースティング。

I Roy - Queen Of The Minstrels Version


5曲目は「Pop Out」です。
刻むようなギターと浮遊感のあるキー
ボードを中心としたメロディに、語るよう
なI Royの流ちょうなトースティング。

6曲目は「Thinking Cap」です。
リディムはAlton Ellisのロックステディ
の時代のヒット曲「Can I Change My
Mind」です。
刻むようなギターとキーボードを中心と
したメロディに、表情豊かなI Royの
トースティング。

I-Roy - Thinking Cap


Side 2の1曲目は「Deck Of Love」です。
リディムはロックステディの時代の
Cornell Campbell & The Eternalsの
ヒット曲「Stars」です。
印象的なサックスのオープニングから、
刻むようなギターとベース、ピアノの
メロディ、流れ出すようなI Royのトース
ティング。

Deck of Love - I Roy


リズム特集 Stars (スターズ)

2曲目は「Guns At Large」です。
機関銃のエフェクトから、華やかなホーン
とピアノ、ギターのメロディ、表情豊かな
I Royのトースティングが楽しい曲です。

I Roy - Guns At Large


3曲目は「There Must Be A Way」です。
書いたようにこの曲ではI Royはほぼ
歌っています。
華やかなホーンにI Royの主キャットから、
伸びやかなI Royのヴォーカルがとても
魅力的。

I-Roy (Roy Samuel Reid) - There Must Be A Way ‎– We Chat You Rock (Two DJ Clash) - Trojan Records


4曲目は「Hot Chocolate」です。
スローな刻むようなギターとキーボードの
メロディに、流ちょうなI Royの味わいの
あるトースティング。

5曲目は「Red Nuts & Gin」です。
ピアノとギターを中心としたメローな
メロディに、表情豊かなちょっとシング・
ジェイの入ったI Royのトースティングが
イイ感じ。

RED NUTS AND GIN ⬥I-Roy⬥


6曲目は「Endless Days」です。
不風乾のあるキーボードと刻むような
ギター、ピアノを中心とした明るい
メロディに、I Royのシング・ジェイの
入ったトースティングがイイ感じ。

I ROY ( ENDLESS DAYS )


ざっと追いかけて来ましたが、なかなか
ヴァラエティに富んだ聴き易い内容で、
I Royというディージェイの個性がよく
出た好内容のアルバムだと思います。

ジャマイカで10年間に亘ってトップ・
ディージェイとして君臨したI Royですが、
初期のディージェイ界を盛り上げた功績は
やはり高く評価すべきものがあります。

機会があればぜひ聴いてみてください。


I ROY - BLACKMAN TIME ' 95


I-Roy interview [RuffCut]


○アーティスト: I Roy
○アルバム: Many Moods Of I Roy
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1974

○I Roy「Many Moods Of I Roy」曲目
Side 1
1. Many Moods Of I Roy
2. Pitty Jah Children
3. Peter Pan
4. Free Style
5. Pop Out
6. Thinking Cap
Side 2
1. Deck Of Love
2. Guns At Large
3. There Must Be A Way
4. Hot Chocolate
5. Red Nuts & Gin
6. Endless Days

●今までアップしたI Roy関連の記事
〇I Roy, Clint Eastwood, Jah Stitch「DJ Trilogy」
〇I Roy「Black Man Time」
〇I Roy「Don't Wake Up The Lion: 14 Toasting Classics From The Dancehall Master」
〇I Roy「Gussie Presenting I Roy」
〇I Roy「Heart Of A Lion」
〇I Roy「Musical Shark Attack」
〇I Roy「Sattamassagana」
〇Various「Once Upon A Time At King Tubbys」
〇Various「Can't Stop The Dread」
〇I-Roy「Don't Check Me With No Lightweight Stuff [1972-75]」
〇Niney The Observer「Deep Roots Observer Style」
〇Niney The Observer「Microphone Attack 1974-78」