今回はTommy McCook & The Supersonics
のアルバム

tommy_mccook_08a

「Down On Bond Street」です。

Tommy McCook(本名:Thomas Matthew
McCook)はスカ→ロックステディ→
ルーツ・レゲエと、レゲエの歴史に偉大な
足跡を残したサックス・プレイヤーです。

ジャズのサックス・プレイヤーの
John Coltraneに憧れて音楽を始めた彼は、
60年代のスカの時代に伝説のバンド
The Skatalitesでテナー・サックス奏者と
して活躍します。
その後もロックステディの時代には
Duke ReidのTreasure Isleレーベルで専属
バンドTommy McCook & The Supersonicsと
してロックステディの時代に活躍し、多く
の名曲を残しています。
さらに70年代のルーツ・レゲエの時代に
なっても、自身のソロ・アルバムや
Bunny LeeのバンドThe Aggrovatorsなどの
の数多くのセッション・バンドに参加して
レゲエという音楽を支え、けん引する役割
を果たすんですね。

そうした彼ですが1998年に亡くなって
います。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て21枚ぐらいのアルバムと、287枚
ぐらいのシングル盤を残しているほか、
数多くのセッションに参加して、アルバム
に名前を残しています。

アーティスト特集 Tommy McCook (トミー・マクック)

今回のアルバムは1993年にUKの
Trojan Recordsからリリースされた
ロックステディの時代だった1966年
から68年にかけての、Duke Reidの
Treasure Isleレーベルに残したTommy
McCook & The Supersonicsの音源を集めた
コンピュレーション・アルバムです。

表題曲の「Down On Bond Street」を
はじめとして、Jackie Mittooが所属した
Studio Oneレーベルと共に、ロック
ステディの時代をけん引したDuke Reid
のTreasure Isleレーベルの、Tommy
McCook & The Supersonicsの音作りがよく
解るあるばむとなっています。

手に入れたのはTrojan Recordsから
リリースされたCDの中古盤でした。

全20曲で収録時間は約62分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

All tracks recorded in Kingston, Jamaica, 1966 to 1968.
Produced by Duke Reid

Tenor Saxophone: Tommy McCook
Alto Saxophone: Lester Sterling
Trumpet: Johnny Moore, Mark West
Trombone: Danny Simpson, Vincent 'Don Drummond Junior' Gordon
Guitar: Ranny 'Bop' Williams, George Tucker, Lyn Taitt
Organ: Winston Wright, Del Pratt
Bass: Clifton 'Jackie' Jackson
Drums: Hugh Malcolm

となっています。

すべての曲のレコーディングはジャマイカ
のキングストンで、1966~68年の間
で行われています。
プロデュースはTreasure Isleレーベルの
主催者Duke Reid。

The Supersonicsのメンバーはリーダーで
テナー・サックスのTommy McCook、
アルト・サックスにLester Sterling、
トランペットにJohnny MooreとMark West、
トロンボーンにDanny SimpsonとVincent
'Don Drummond Junior' Gordon、ギターに
Ranny 'Bop' WilliamsとGeorge Tucker、
Lyn Taitt、オルガンにWinston Wrightと
Del Pratt、ベースにClifton 'Jackie'
Jackson、ドラムにHugh Malcolmという
布陣です。
Tommy McCookはテナー・サックスの他に
フルートを演奏しているようです。
トランペットのJohnny Mooreは、
スカの時代にThe Skatalitesに在籍して
いた事でも知られています。
(アルト・サックスのLester Sterling
も、後に再結成されたThe Skatalitesに
参加していますが、それはだいぶ後の事
です。)

表ジャケがS2つ折りの小冊子になって
いて、そこには Laurence Cane-Honeysett
という人が1993年に書いたライナー・
ノーツと、The Supersonicsのメンバー
などが書かれています。

ジャケット・デザインなどの記述はありま
せん。

tommy_mccook_09a
裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、このロック
ステディの時代のTommy McCook &
The SupersonicsのTreasure Isleレーベル
での活躍ぶりがよく解るアルバムで、内容
はなかなか良いと思います。

ジャマイカ音楽の歴史は50年代に誕生
した労働歌のメントから始まり、50年代
の後半に誕生したアメリカのリズム&
ブルースやジャズなどの影響を受けたスカ
が誕生し、66~68年のわずか3年間
だけ流行したロックステディ、そして初期
のレゲエへと移行して行きます。
初めに世界的に注目された音楽はスカで、
その音楽はUKに輸出され輸入元の
レーベルBlue Beatの名前から「ブルー・
ビート」などと呼ばれ、UKの不良少年
などの間で人気の音楽となって行くんです
ね。

スカ - Wikipedia

そのスカの時代の人気バンドが
The Skatalitesで、テナー・サックスの
Tommy McCookやトロンボーンの
Don Drummond、サックスのRoland
Alphonso、トランペットのJohnny Moore、
キーボードのJackie Mittooなどが参加
した事で知られています。

スカタライツ - Wikipedia

Studio Oneの専属バンドとしてJackie Opel
やThe Wailersなど多くの歌手のバックを
務め活躍したThe Skatalitesでしたが、
バンドのスターだったDon Drummondが殺人
事件を起こし投獄され、グループは解散
状態となってしまうんですね。
そのグループの解散と共にスカの時代は
終わり、66~68年の3年間はスローな
甘いメロディを特徴とするロックステディ
がジャマイカで流行するんですね。

ロックステディ - Wikipedia

そのロックステディの時代をけん引したの
がStudio OneでSoul VendorsやSound
Dimensionなどのバック・バンドを率いた
キーボード奏者のJackie Mittooと、
Treasure IsleでThe Supersonicsを率いて
活躍したTommy McCook、そしてトリニ
ダード・トバゴ出身のギタリストのLynn
Taittだったと言われています。

アーティスト特集:Jackie Mittoo (ジャッキー・ミットゥ)

アーティスト特集:Lynn Taitt(リン・テイト)

今回はそのTreasure Isleレーベルで多く
のロックステディの楽曲に関わった、
Tommy McCook & The Supersonicsの
アルバムなんですね。
ロックステディの時代というとStudio One
で活躍したJackie Mittooや、The Jetsを
率いたギタリストのLynn Taittがよく取り
上げられますが、当時のTreasure Isleは
Studio Oneと並ぶジャマイカの2大
レーベルであり、The Paragonsの
「The Tide Is High」やPhillis Dillonの
「Get On The Right Track」など、多くの
ヒット曲を量産してロックステディの時代
を盛り上げていたレーベルだったんです
ね。

1st RECORDING OF: The Tide Is High - Paragons (1966)


Phillis Dillon Hopeton Lewis Get On The Right Track


それらの曲でバックを務めていたのが今回
のTommy McCook & The Supersonicsで、
Tommy McCookがロックステディの時代を
盛り上げた、重要人物のひとりだった事は
間違いがありません。

このロックステディからルーツ・レゲエに
かけてのジャマイカ音楽の特徴ですが、
メロディを弾くというよりは、リズムを
刻むようなギターのフレーズが印象的
です。
このロックステディの時代にすでにレゲエ
の原型が完成したと言われますが、この
刻むようなリード・ギターが曲全体の
バランスをうまく取っていて、それに
華やかなホーンが乗った演奏はとても魅力
的です。
イイ感じに出と入りを心得た演奏で、歌が
無くてもサックス・ソロなどでうまく
メリハリを付けた演奏は、充分な聴き応え
があります。

The SupersonicsのリーダーのTommy McCook
はアルファ・ボーイズ・スクール出身者と
して知られていますが、ジャズのJohn
Coltraneのサックスに憧れて音楽を志した
事で知られています。
そうしたジャズの素養のある彼はスカの
時代のThe Skatalites→ロックステディの
時代のThe Supersonics→ルーツ・レゲエ
の時代のセッション・ミュージシャンと、
常にジャズの要素を盛り込んだプレイで
ジャマイカの音楽をより奥行きのあるもの
に変えて行ったんですね。
今回のアルバムでもそうした彼のプレイの
魅力が垣間見えます。

1曲目は「Inez」です。
刻むようなギターとメロディアスなホーン
の奏でるメロディ、Tommy McCookの
サックス・ソロに、おそらくオーヴァー・
ダビングしたこちらもTommy McCookと思わ
れるフルートの組み合わせが絶妙な曲
です。

Lester Sterling & Tommy McCook - Inez


2曲目は「The Yellow Basket (A Tisket
A Tasket)」です。
こちらはThe Skatalites時代の楽曲の再演
のようです。
ちょっとスカの香りがする、ホーンを中心
とした明るメロディがイイ感じ。

LYN TAITT with TOMMY McCOOK & THE SUPERSONICS - Yellow Basket [1967]


3曲目は表題曲の「Down On Bond Street」
です。
ロックステディらしい刻むようなギター
に、哀愁のあるトロンボーンとサックスの
メロディがイイ感じ。

Tommy McCook & The Supersonics Down on Bond Street


4曲目は「Wall Street Shuffle」です。
リズミカルなギターとサックスの情感の
あるメロディがイイ感じの曲です。

Tommy McCook and The Supersonics - Wall Street Shuffle


5曲目は「Moody Ska」です。
刻むようなギターに、ムーディーな
ホーン・セクションの息の合った演奏が
イイ感じ。
中盤よりTommy McCookと思われるサックス
のソロが入ります。

Tommy McCook and The Supersonics - Moody Ska


6曲目は「Real Cool」です。
刻むようなギターとサックスの表情豊かな
コンビネーションがイイ感じ。
満を持して中盤から入って来る、上書き
して行くようなサックス・ソロがグッと
来ます。

Tommy McCook and The Supersonics-Real Cool


7曲目は「Tommy's Rocksteady」です。
哀愁のあるサックスのメロディがとても
魅力的な曲です。

Tommy McCook - Tommy's Rocksteady


8曲目は「Soul Serenade」です。
高音のハモンド・オルガンのオープニング
から、刻むようなギターと味わいのある
サックスのメロディがとても魅力的。

Tommy McCook & The Supersonics - Soul Serenade - Treasure Isle records 1968


9曲目は「Persian Cat (In A Persian
Market)」です。
メロディアスなギターのオープニング
から、刻むようなギターと表情豊かな
サックスの哀愁のあるメロディがとても
魅力的。

Tommy McCook - Persian Cat (1967)Treasure Isle 7017 B


10曲目は「Saboo」です。
刻むようなギターにリリカルなピアノ、
ホーンの表情豊かなスローなメロディが
イイ感じ。

Saboo by Tommy McCook


11曲目は「The Shadow Of Your Smile」
です。
原曲はポピュラーのAndy Williamsの同名
ヒット曲です。
味わいのあるサックスと刻むような
ギター、キーボードの組み合わせで、
Jazzyな演奏がイイ感じ。

Tommy McCook - The Shadow Of Your Smile


12曲目は「Music Is My Occupation」
です。
こちらはスカの時代のThe Skatalitesの
ヒット曲のようです。
ブギウギ調のホーンを中心とした
メロディ。
多少スローでムーディーにアレンジされて
いるようです。

Tommy McCook and The Supersonics - (Music Is My) Occupation


13曲目は「Our Man Flint」です。
ピアノと刻むようなギター、ホーンの表情
豊かな演奏…。

TOMMY McCOOK & THE SUPERSONICS - Our Man Flint [1968]


14曲目は「Mad Mad Mad」です。
華やかなホーン・セクションとギターを
中心としたメロディの曲です。

Tommy McCook & Supersonics - Mad, Mad, Mad


15曲目は「Ode To Billie Joe」です。
刻むようなギターとキーボード、表情豊か
なエモーショナルなサックス・プレイ…。

Billy Joe Tommy McCook & The Supersonics


16曲目は「Heatwave (Moving)」です。
ハモンド・オルガンと刻むようなギター、
ホーンの組み合わせ。

Tommy McCook and The Supersonics - Heatwave (Moving)


17曲目は「The World Needs Love」
です。
リディムはThe Heptonesの「Prity Looks
Is't All」か?
刻むようなギターと明るいホーン、キー
ボードのメロディがイイ感じの曲です。

TOMMY McCOOK THE WORLD NEEDS LOVE


18曲目は「Flying Home」です。
歯切れの良いドラミングに、刻むような
ギター、ホーンの柔らかいメロディが
イイ感じ。
いいタイミングでサックス・ソロが入って
来ます。

Tommy McCook and The Supersonics - Flying Home


19曲目は「Mary Poppins」です。
勢いのあるドラミングから、キーボードと
刻むようなギター、フルートとサックスの
メロディ…。
かなり初期のレゲエの匂いを感じさせる曲
です。

Mary Poppins - Tommy McCook


20曲目は「Second Fiddle」です。
アニメの「ポパイ」の主題歌のようです。
明るいキーボードとサックスのとぼけた
メロディが面白い曲です。

Tommy McCook & The Supersonics - Second Fiddle


ざっと追いかけてきましたが、このTommy
McCookによる生演奏のエモーショナルで
Jazzyなサックス・プレイは、今のレゲエ
ではほぼ無くなってしまった要素なんです
ね。
それ故にか今の時代に聴くととても懐か
しく、とても魅力的に思えます。

この時代のサウンドには生演奏による人の
温もりのようなものがあって、それが何故
かまた聴きたい思いにさせてくれるような
ところがあります。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Dynamite- Tommy McCook & his band (live footage)



○アーティスト: Tommy McCook & The Supersonics
○アルバム: Down On Bond Street
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1993

○Tommy McCook & The Supersonics「Down On Bond Street」曲目
1. Inez
2. The Yellow Basket (A Tisket A Tasket)
3. Down On Bond Street
4. Wall Street Shuffle
5. Moody Ska
6. Real Cool
7. Tommy's Rocksteady
8. Soul Serenade
9. Persian Cat (In A Persian Market)
10. Saboo
11. The Shadow Of Your Smile
12. Music Is My Occupation
13. Our Man Flint
14. Mad Mad Mad
15. Ode To Billie Joe
16. Heatwave (Moving)
17. The World Needs Love
18. Flying Home
19. Mary Poppins
20. Second Fiddle

●今までアップしたTommy McCook関連の記事
〇Tommy McCook & The Agrovators「King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station」
〇Tommy McCook & The Super Sonic「Top Secret」
〇Tommy McCook and The Agrovators「Cookin'」
〇Tommy McCook「Greatest Hits Of The Skatalites Featuring Tommy McCook」
〇Tommy McCook「Real Cool: The Jamaican King Of The Saxophone '66-'77」
〇Tommy McCook「Reggae In Jazz」
〇Tommy McCook「The Sannic Sounds Of Tommy McCook」