今回はLarry Marshallのアルバム

larry_marshall_01a

「Presenting Larry Marshall」です。

Larry Marshall(本名:Fitzroy Marshall)
はスカの時代だった60年代から活躍する
シンガーです。

おもに60年代から70年代のスカ→
ロックステディ→ルーツ・レゲエの時代に
活躍したシンガーで、「Mean Girl」や
「Throw Me Corn」、「Nanny Goat」など
のヒット曲があります。

Larry Marshall - Throw Mi Corn


リズム特集 Throw Me Corn (スロウ・ミー・コーン)

これらの曲は現在でもリディムが使われ
る、ファウンデーション・チューンとして
今に至るまで愛されています。
またエンジニアの才能もあり、Studio One
レーベルで活躍したエンジニアのSylvan
Morrisの「右腕」として、多くのミックス
を手掛けた事でも知られています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て6枚ぐらいのアルバムと、127枚
ぐらいのシングル盤を残しているのが、
このLarry Marshallという人です。

アーティスト特集 Larry Marshall (ラリー・マーシャル)

今回のアルバムは1973年にジャマイカ
のStudio Oneレーベルからリリースされた
Larry Marshallのファースト・アルバム
です。

プロデュースはStudio Oneレーベルの
C.S. Doddで、「Mean Girl」や、
「Nanny Goat」などの彼の代表曲が収め
られたアルバムで、彼のソウルフルな
歌声の魅力と、全盛期のStudio Oneの
サウンドが充分に楽しめるアルバムと
なっています。

手に入れたのはStudio Oneからリリース
されたLPの中古盤でした。

なお今回のアルバムですが、Side 1が
7曲、Side 2が7曲の全14曲と
ジャケットやレコードの盤面には書かれて
いますが、実際にはSide 1が6曲、Side 2
が6曲の全12曲のアルバムです。
代表曲のひとつである「Throw Me Corn」
が収められていないのはちょっと残念な
ところです。
(文章の最後にジャケットと盤面に書かれ
た曲目と、実際に収められている曲目を
表記しました。)

Side 1が6曲、Side 2が6曲の全12曲。
ジャケットと盤面に書かれた曲目のうち、
「Throw Me Corn」と「A Wonderful
Version」は収められていません。
またSide 1の最後の2曲の曲順も変わって
います。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

Produced by C.S. Dodd
Recorded at Studio One, Kingston, Jamaica
Backing Vocals: Alvin Leslie
Series design by Nanny Given
Re-issue supervised by Chris Wilson
Original cover design by O'neil Nanco

という記述があります。

プロデュースはStudio Oneレーベルの主催
者C.S. Doddで、レコーディングは
ジャマイカのキングストンにあるStudio
Oneのスタジオで行われ、バック・
ヴォーカルはAlvin Leslieが参加していま
す。

バックのミュージシャンの記録が抜けて
いるのが、ちょっと残念なところです。

シリーズのデザインはNanny Givenで、
リイシューのサポートはChris Wilson、
オリジナルのジャケット・デザインは
O'neil Nancoが担当しています。
この記述から見ると、今回のアルバムは
当時リリースされたLPをシリーズ化して
リイシューしたもののようです。

larry_marshall_02a
裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、70年代初め
の初期レゲエの時代のStudio Oneで録音
されたLarry Marshallのヒット曲をまとめ
たアルバムで、彼のソウルフルな歌声が
とても魅力的なアルバムに仕上がっていま
す。

やはりLarry Marshallというとこの
Studio One時代のヒット曲がとても有名な
シンガーなんですね。
彼のStudio Oneのヒット曲「Mean Girl」
や「Throw Me Corn」、「Nanny Goat」
などはその後も長くファウンデーション・
チューンとしてジャマイカの人々に愛され
続けています。
今回のアルバムはそうした彼のヒット曲が
まとめて聴ける、ほぼベスト・アルバムと
言える仕様のアルバムなんですね。
(残念ながら書いたように「Throw Me
Corn」は入っていませんが…。)

またこのアルバムは2002年シンコー・
ミュージック刊行のレゲエ本「Roots Rock
Reggae」にも紹介されたアルバムで、そこ
には「長井」さんという方の文章で次の
ように書かれています。

「1960年代からスカ、ロック・
ステディ、リズム&ブルースなどを歌って
きたラリー・マーシャルのデビュー・
アルバム。このアルバムがリリースされた
のは彼のデビューから約10年の事で、
70年代のいわゆる初期レゲエ期に
スタジオ・ワンで録られたもの。ロック・
ステディの時代を思わせるソウルフルな
ヴォイスは当時のままで、この後、
ルーツ・レゲエが出現する予感をムンムン
と漂わせた、ジャマイカ音楽にとって微妙
な時期の作品である。」

書かれているようにスローなリズムだった
ロックステディから変わったばかりの、
スキンヘッド・レゲエなどにもみられる
ような性急なリズムは、この初期レゲエの
時代の大きな特徴です。
そうしたStudio Oneの生み出す初期レゲエ
特有の性急なリズムに、Larry Marshallの
ソウルフルな歌声が、今回のアルバムの
大きな魅力です。

ちなみに私のこのサイトでは、初期レゲエ
は「ルーツ・レゲエ期」の中に含めて文章
を書いています。
おそらくロックステディの時代(66~
68年頃)が終わった69年から72~
3年頃までが初期レゲエの時代に該当する
のではないかと思いますが、この時代は
ダブやディージェイ、スキンヘッド・
レゲエなどいろいろなレゲエが生まれた
模索の時代で、ちょっと混沌としているん
ですね。
なので仕分ける上ではこの69~79年頃
を、「ルーツ・レゲエ期」とこのサイト
ではしています。

話を戻しますが、今回のアルバムでは
そうした新しい音楽レゲエを生み出そうと
いう、初期レゲエの頃らしいエネルギーが
感じられるのが面白いところかもしれま
せん。

Side 1の1曲目は「Thelma」です。
この曲も彼のヒット曲のようです。
オルガンと刻むようなギターのメロディ
に、ソフトで伸びのあるLarry Marshallの
ヴォーカルがとても魅力的な曲です。

LARRY MARSHALL - Thelma [1972]


2曲目は「Set Me Free」です。
ホーンとギターを中心とした勢いのある
メロディに、伸びやかなLarry Marshallの
ヴォーカルがイイ感じ。

Larry Marshall - Set Me Free


3曲目は「Mean Girl」です。
彼の代表曲のひとつです。
華やかなホーンとギター、オルガンの
メロディに、ファルセット気味のLarry
Marshallの伸びやかなヴォーカルに
コーラス・ワークがイイ感じ。

Larry Marshall Mean Girl


4曲目は「Where Has Your Love Gone」
です。
刻むようなギターを中心としたメロディ
に、伸びやかに歌うLarry Marshallの
ヴォーカルがイイ感じ。
途中に語りが入ります。

LARRY MARSHALL WHERE HAS YOUR SWEET LOVE GONE STUDIO ONE LP RARE


5曲目は「Keep On Pushing」です。
ユッタリとした陰影のあるギターの
メロディにコーラス・ワーク、落ち着いた
Larry Marshallの語るようなヴォーカルが
イイ感じ。

Larry Marshall - Keep On Pushing


6曲目は「Throw Me Corn」です。
勢いのあるホーンとギターのメロディに、
高音を活かしたLarry Marshallの伸びやか
なヴォーカルが魅力的な曲です。

Larry Marshall - A6. Be My Guest


Side 2の1曲目は「Together Now」です。
漂うようなキーボードと刻むようなギター
のメロディに、ソフトに歌うLarry
Marshallのヴォーカルが魅力的。

Larry Marshall - B1. Together Now
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2曲目は「Get You Off My Mind」です。
刻むようなギターを中心としたメロディ
に、Larry Marshallの伸びやかな
ヴォーカルがイイ感じ。

Larry Marshall - Get You Off My Mind


3曲目は「You Don't Care」です。
歯切れの良いドラミングに、キーボードと
ギター、リリカルなピアノのメロディ、
ちょっと哀愁のあるLarry Marshallの
ヴォーカルがイイ感じ。

Larry Marshall - You Don't Care


4曲目はAlton Ellisとの共演曲
「Wonderful World」です。
漂うようなキーボードとギターのメロディ
に、伸びやかなLarry Marshallの
ヴォーカルと、高音を活かしたAlton
Ellisのヴォーカルの組み合わせがグッド
な曲です。

Larry Marshall - Wonderful World


5曲目は「Nanny Goat」です。
特徴的なキーボードのオープニングから、
刻むようなギターを中心としたメロディ、
高音を活かしたLarry Marshallの
ヴォーカルが魅力的。

Larry Marshall - Nanny Goat


リズム特集 Nanny Goat (ナニー・ゴート)

6曲目は「How Can I Go On」です。
歯切れの良いドラミングに、キーボードと
ギター、ピアノを中心としたメロディ、
ソフトなLarry Marshallのヴォーカルが
イイ感じ。

Larry Marshall - How Can I Go On


ざっと追いかけてきましたが、この初期
レゲエの時代の何か新しい音楽を生み出そ
うという空気が感じられるアルバムで、
内容は悪くないと思います。
ひとつだけ残念なのは、やはり代表曲の
「Throw Me Corn」が表示があるのに抜け
ている事でしょうか。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Larry Marshall First Reggae Singer Interview 2-3. How did he do it Reggae. Recorded 1989.



○アーティスト: Larry Marshall
○アルバム: Presenting Larry Marshall
○レーベル: Studio One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1973

(ジャケットと盤面に書かれている曲目)
○Larry Marshall「Presenting Larry Marshall」曲目
Side 1
1. Thelma
2. Set Me Free
3. Mean Girl
4. Where Has Your Love Gone
5. Be My Guest
6. Throw Me Corn
7. Keep On Pushing
Side 2
1. Together Now
2. Get You Off My Mind
3. You Don't Care
4. Wonderful World - Featuring Alton Ellis
5. Nanny Goat
6. How Can I Go On
7. A Wonderful Version

(実際にLPに収められている曲目)
○Larry Marshall「Presenting Larry Marshall」曲目
Side 1
1. Thelma
2. Set Me Free
3. Mean Girl
4. Where Has Your Love Gone
5. Keep On Pushing
6. Be My Guest
Side 2
1. Together Now
2. Get You Off My Mind
3. You Don't Care
4. Wonderful World - Featuring Alton Ellis
5. Nanny Goat
6. How Can I Go On