今回はGappy Ranksのアルバム

gappy_ranks_02a

「Put The Stereo On」です。

Gappy Ranks(本名:Jacob Lee
Williams)は、UKのシング・ジェイを
得意とするダンスホール・ディージェイ
です。

200年代からUKでダンスホール・
ディージェイとして活動を始めた彼は、
2006年に「English Weather」で
アルバム・デビューし、その後も
「Tomorrow Loves You」などのヒット曲
を飛ばすなど、順調に活動を続けていま
す。
また日本に来日した時に東日本大震災を
経験し、チャリティ・ソング「I Was
There」をリリースして支援した事でも
知られています。

' I Was There " By Gappy Ranks (The Official Video)


ネットのDiscogsによると、9枚ぐらいの
アルバム(うち3枚はデータ配信)と、
51枚ぐらいのシングル盤を残していま
す。

Gappy Ranks - Wikipedia

今回のアルバムは2010年にUKの
Greensleeves Recordsからリリースされ
たGappy Ranksのセカンド・アルバム
です。

実質的な彼のデビュー・アルバムで、
往年の名リズムを多く使用した内容で、
Bob Marleyの「Soul Rebel」を使用して
ヒットした「Heaven In Your Eyes」や、
Jackie Mittooの「Hot Milk」リディムを
使用した表題曲の「Put The Stereo On」
など、Gappy Ranksのシング・ジェイが冴え
る好内容のアルバムとなっています。

手に入れたのはGreensleeves Recordsから
リリースされたCDの中古盤でした。

全12曲で収録時間は約41分。

ミュージシャンについては以下の記述があります。
詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

All tracks produced by Chris Orice & Duke Price for Pecking Records
*except track 7, C&R McLeod for Stingray Records;
track 10, Frenchie for Maximum Sound Productions.
Musicians: Mafia & Fluxy, Sound Dimension, Tommy McCook and Supersonics,
The Aggrovators, Dean Fraser, Backing vocals by Mama V.
Engineers: Monnei Lemar at Megabite Studio, Carl 'Dillie' McCleod at Stingray Studio,
Lynford 'Fatta' Marshall & Frenchie at Big Yard.
Executive Producer: Olivier Chstan
A&R / Project Co-ordination: Pierre Bost / Chris O'Brien.
Mastered by Kevin Metcalfe at The Soundmasters.
Photography by Al Fingers
Design / Graphics by Tony McDermott

となっています。

7曲目「A Little Understanding」の
プロデュースはStingray RecordsのMcLeo、
10曲目「Heavy Load」のプロデュースは
Maximum Sound ProductionsのFrenchie、
残りの曲全てのプロデュースはPecking
RecordsのChris OriceとDuke Priceと
なっています。

ミュージシャンはMafia & FluxyとSound
Dimension、Tommy McCook & Supersonics、
The Aggrovators、Dean Fraserとなって
います。
これらのミュージシャンは60年代後半の
ロックステディ期(Sound Dimensionや
Tommy McCook & Supersonicなど)や、
70年代のルーツ期(The Aggrovators)、
80年代後半のデジタルのダンス
ホール・レゲエ期(Mafia & FluxyやDean
Fraser)などに活躍したミュージシャン
で、その当時の彼らの音源を再編集して
使用しているものと思われます。
ちなみにこのアルバムを作ったPecking
Recordsというレーベルは、こうした昔の
音源を再編集して使う事に長けたレーベル
らしいです。

バッキング・ヴォーカルはMama Vとなって
います。

エンジニアはMegabite StudioのMonnei
Lemar、Stingray StudioのCarl 'Dillie'
McCleod、Big YardのLynford 'Fatta'
MarshallとFrenchieが担当しています。

エグゼクティブ・プロデューサーは
Olivier Chstanとなっています。

写真はAl Fingersで、ジャケット・
デザインはGreensleeves Recordsの
ジャケットを多く手掛けている
Tony McDermottが担当しています。
Tony McDermottはScientistの「漫画
ジャケ」シリーズや、Mad Professorの
「Dub Me Crazy」シリーズなどでよく知ら
れるデザイナーです。
表ジャケは3つ折りになっていて、そこ
には楽曲や参加したアーティストなどが
書かれています。

gappy_ranks_03a
裏ジャケ

gappy_ranks_04a
表ジャケ3つ折り内面3ページ目

さて今回のアルバムですが、Gappy Ranks
の実質的なファースト・アルバムで、昔の
楽曲が多く使われていますがその楽曲を
うまく再編集したアルバムで、内容は
なかなか良いと思います。

このGappy RanksはUKで活躍するダンス
ホール・アーティストで、彼のストレート
な心情を歌った、ほぼ歌っている感じの
シング・ジェイがとても気持ちの良い
アーティストです。

私はもともと70年代のルーツ・レゲエが
全盛の時代に、Bob Marleyのアルバムを
聴いた事がきっかけでレゲエを聴くように
なった人間でした。
ところがその後彼の死をきっかけにレゲエ
という音楽から遠ざかり、再びレゲエ
を聴くようになったのは、2000年代の
終わり頃だったんですね。
再び聴きだしたレゲエという音楽はとても
面白く、好きだった70年代のルーツ・
レゲエやそれ以前のスカやロックステディ
などを聴き漁り、そこから80年代の
アーリー・ダンスホール→80年代の
デジタルのダンスホール・レゲエと聴き
進めて行きました。
ところがどうも90年代のレゲエあたりで
どうも引っ掛かりが出来てしまって、そこ
から先の現代のレゲエまでなかなか辿り
着けなかったんですね。

その引っ掛かりは実は今でもありますが、
この時代はレゲエという音楽がもっとも
売れた時代だったらしいのですが、レゲエ
という音楽自体が洗練されポップ・
ミュージックに近付いた事で、レゲエ特有
の面白さをあまり感じなくなってしまった
ところがありました。

そうしてなかなか先の現代まで進めずに
いたのですが、「じゃあ、その90年代
ぐらいを飛び越えて、今のレゲエを先に
聴いてみたらどうだろう?」とある時思い
立ち、聴いてみたらけっこう今レゲエは
面白かったんですね(笑)。
このあたりは私の感性の問題もあるので
何とも言えませんが、今のレゲエは
ラスタ・リヴァイヴァル・ムーヴメント
などが起こった事などからも解るように、
過去の失敗を反省して再びパワーを取り
戻しつつあるように感じます。

そんな今のレゲエの面白さに気付き始めた
頃に聴いたアーティストのひとりが、この
Gappy Ranksでした。
今のアーティストを探すのにネットの
YouTubeをよく利用するのですが、彼の
楽曲「Tomorrow Loves You」を見つけて
聴いた時に、かなりの衝撃を受けました。

Gappy Ranks - Tomorrow Loves You [Official Video]


「明日という日は君を愛している」その
ポジティヴなメッセージは、私が若い頃に
あのBob Marleyから受け取ったメッセージ
に近いものを感じました。
それ以来彼Gappy Ranksには注目していま
す。
上にも書いたように10年前に日本に来日
した際に東日本大震災を経験し、その日本
の人々を支援するためにチャリティ・
ソングを作るなど、コワモテの彼ですが
実はとてもハートの熱い人なんですね。

その彼の実質的なデビュー・アルバムが、
今回のアルバムです。
過去の楽曲に彼の歌声を乗せるという手法
を取っていますが、その乗せ方が非常に
うまく、過去の楽曲と意識させないほどに
巧みに乗せているんですね。
その典型がヒットした2曲目の「Heaven
In Her Eyes」で、Bob Marleyの楽曲
「Soul Rebel」のリディムを使用している
のですが、上書きしたGappy Ranksの
シング・ジェイが素晴らしく、ちょっと
聴いた感じでは元の楽曲をあまり感じさせ
ない出来なんですね。
逆に12曲目のNereus Josephとの共演曲
「Soul Rebel」では元の曲を忠実に再現
していますが、この2曲が同じリディム
とは思えないほどです。
それほど楽曲ひとつひとつの作りが巧み
なんですね。

逆にここまでうまく使われると元の曲が
解りづらく、多くの曲が原曲を特定出来な
かったくらいです。
いろいろなサイトに書かれている記事など
を参考にしてなんとかリディムを特定出来
たのは、「Hot Milk」や「54-46 Was My
Number」など、12曲中6曲ぐらいでした。
バックの演奏が過去のグループのものなの
で、昔のリディムを使用している事は
間違いないのですが、それだけリディムの
使い方が巧みで、あまり昔の音楽という
感じが無く、現代でも通用するサウンドに
仕上げているんですね。
多くのサイトでアルバム評が書かれていま
すが、このリディム使いの巧みさが多くの
人の心を捉えたのでしょう。

現在と過去を巧みに繋ぐ、レゲエ特有の
「リディム」という手法が、良い形で使わ
れたアルバムだと思います。

Gappy Ranks: Put The Stereo On

↑Gappy Ranksのこのアルバムの
インタビューのようです。

1曲目は「Mountain Top」です。
ピアノとギターを中心としたユッタリと
したメロディに、コーラス・ワーク、
Gappy Ranksの表情豊かなシング・ジェイ
がイイ感じの曲です。

Gappy Ranks-mountain top


2曲目は「Heaven In Her Eyes」です。
リディムはBob Marleyの楽曲として知られ
る「Soul Rebel」です。
書いたように12曲目でほぼ原曲に近い
使われ方をしています。
キーボードとズシっとしたベース、ギター
を中心としたメロディに、女性コーラス、
伸びやかなGappy Ranksのヴォーカルが
イイ感じの曲です。

Heaven In Her Eyes. Lyrics GAPPY RANKS


3曲目は「Put The Stereo On」です。
リディムはJackie Mittooの「Hot Milk」
です。
ギターとハモンド・オルガン、ホーンを
中心とした賑やかなメロディに、ハリの
あるGappy Ranksのシング・ジェイが
イイ感じ。

Gappy Ranks - Put The Stereo On


リズム特集 Hot Milk/Murderer (ホット・ミルク/マーダラー)

4曲目は「Pumpkin Belly」です。
リディムはToots & The Maytalsの
「54-46 Was My Number」です。
ギターとベースを中心とした刻むような
メロディに、重厚なコーラス・ワーク、
語るようなGappy Ranksのシング・ジェイ
が印象的な曲です。

Pumpkin Belly - Gappy Ranks - Put The Stereo On - 2010


リズム特集 54 46 Was My Number (54 46 ワズ・マイ・ナンバー)

5曲目は「Happiest Day Of My Life」
です。
リディムはKen Parkerの「I Can't Hide」
です。
明るいホーンとギター、ベースの勢いの
あるメロディに、伸びやかなGappy Ranks
のヴォーカルがイイ感じの曲です。

Happiest Day Of My Life - Gappy Ranks - Put The Stereo On - 2010


6曲目は「Musical Girl」です。
リディムはThe Techniquesのロック
ステディのヒット曲「It's You I Love」
です。
U-royらしきトースティングから、Dean
Fraserらしきサックスの心地良い
イントロ、ギターとサックスキーボードの
メロディ、感情を乗せたGappy Ranksの
表情豊かなヴォーカルが素晴らしい曲
です。

Musical Girl - Gappy Ranks - Put The Stereo On - 2010


7曲目は「A Little Understanding」
です。
打ち込みのドラミングに、リズミカルな
キーボードを中心としたメロディ、伸び
やかなGappy Ranksのヴォーカルが
イイ感じ。

Gappy Ranks - A little understanding


8曲目は「Thy Shall Love」です。
キーボードを中心としたメロディに、
優しい女性コーラス、ちょっとシング・
ジェイの入ったGappy Ranksの男臭い
ヴォーカルがイイ感じ。

Gappy Ranks - Thy shy love


9曲目は「So Lost」です。
カラっとしたデジタルらしいドラミング
に、ズシっとしたベースとギター、華やか
なホーンのメロディに、Gappy Ranksの
感情を乗せたエモーショナルなヴォーカル
が魅力的。
ちなみにこの曲はパソコンのiTunesで
再生すると、曲目が「Rude Boy」となって
います。

gappy ranks so lost


10曲目は「Heavy Load」です。
リディムはBurning Spearの「Creation
Rebel」です。
明るいホーン・セクションとギター、重い
ベースのメロディに、明るく語りかける
Gappy Ranksのシング・ジェイがイイ感じ
の曲です。
バックはルーツ期のThe Aggrovatorsか?
このルーツ期特有のフライング・シンバル
のビートがイイ感じ。

Gappy ranks - Heavy Load


11曲目は「Rude Boy」です。
ユラユラとしたキーボードのメロディに、
Gappy Ranksの語るようなシング・ジェイ
がイイ感じ。
パソコンのiTunesでは、この曲が
「So Lost」となっています。

Gappy Ranks - Rude Boy


12曲目はNereus Josephとの共演曲
「Soul Rebel」です。
ご存知Bob Marleyの名曲で、2曲目の
「Heaven In Her Eyes」でもこのリディム
が使われています。
こちらはほぼそのままなので、原曲の良さ
がストレートに解る感じがします。
ギターとベース、キーボードのメロディ
に、Nereus Josephの後を引くような
ヴォーカルと、Gappy Ranksの歯切れの
良いトースティング。

soul rebel - gappy ranks


ざっと追いかけてきましたが、時に歌い、
時に語るようなGappy Ranksのシング・
ジェイ・スタイルは、シンガーと呼ぶべき
かディージェイと呼ぶべきか、ちょっと
迷うようなところがあります。
12曲目のNereus Josephとの共演曲
「Soul Rebel」ではディージェイにてして
トースティングをしていますが、歌も
かなりうまく歌えてしまう人なんですね。
そうした硬軟が使い分けられるところも、
このGappy Ranksの魅力なんですね。

2017年のCD「Pure Badness」以降は
データ配信に切り替えてしまったようです
が、今もコンスタントに活躍し続ける彼
Gappy Ranksには今後も注目です。
(出来ればCDでもアルバム出して!)

機会があればぜひ聴いてみてください。

GAPPY RANKS LIVE AT GLASTONBURY 2010



○アーティスト: Gappy Ranks
○アルバム: Put The Stereo On
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2010

○Gappy Ranks「Put The Stereo On」曲目
1. Mountain Top
2. Heaven In Her Eyes
3. Put The Stereo On
4. Pumpkin Belly
5. Happiest Day Of My Life
6. Musical Girl
7. A Little Understanding
8. Thy Shall Love
9. So Lost
10. Heavy Load
11. Rude Boy
12. Soul Rebel - feat. Nereus Joseph