今回はDevon Russellのアルバム

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「Roots Music」です。

Devon Russell(本名:Devon Barrant
Russell)はロックステディの時代の
1968年にLloyd Robinsonとのデュオ・
グループLloyd And Devonとして「Red Bum
Ball」のヒット曲を持つ名シンガーです。

Lloyd and Devon - Red Bum Ball


さらに2002年刊行の本「Roots Rock
Reggae」の記述によると、The Congosで
活躍したCedric Mytonと、The Royal
Rassesなどの活躍で知られるPrince
Lincoln Thompson、The Congosにも参加
したLindberg Lewisの4人でThe Tartans
というグループを66~70年頃に組んで
いた事もあるそうです。
(シングルの発売のみで、アルバムの
リリースはなし。)

80年代にはソロ・シンガーとして、数枚の
アルバムをリリースしています。
さらに1990年には80年代に活躍した
ルーツ・グループCultural Rootsに参加し、
「Money, Sex & Violence」というアルバム
を残しています。

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Devon Russell & Cultural Roots ‎– Money, Sex & Violence (1990)

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て10枚ぐらいのアルバムと、68枚
ぐらいのシングル盤を残しています。

Devon Russell - Wikipedia

今回のアルバムは1982年にUSの
Studio OneからリリースされたDevon
Russellのファースト・アルバムと思わ
れるアルバムです。
(82年に「Jah Homebound Train」と
いうアルバムもリリースしていますが、
こちらのアルバムはレゲエ本「Roots
Rock Reggae」に紹介されていて、「2枚
目のアルバム」と書かれているので、
おそらく今回のアルバムがファーストと
思われます。)

プロデュースはStudio OneのC.S. Dodd
で、詳しいバック・ミュージシャンの記述
はありませんが、The Melodiansの
「Swing And Dine」や、Alton Ellisの
「Cry Tough」、自身のロックステディの
ヒット曲「Bum Ball」など、Studio Oneの
豊富な音源を使用したバックに、Devon
Russellの素晴らしい歌声が冴える
アルバムとなっています。

手に入れたのはStudio Oneからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Recorded at: Jamaica Recording & Publishing Studios Ltd.
Manufactured at: Jamaica Records Manufacturers Ltd.
Produced by: C.S. Dodd
Cover Design: O'Neil Harris-Nanco

という記述があります。

レコーディングはJamaica Recording &
Publishing Studiosで、プロデュースは
Studio Oneの主催者C.S. Doddとなって
います。

ジャケット・デザインはO'Neil Harris-
Nancoが担当しています。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、Studio One
のロックステディからルーツ・レゲエの
時代の音源をバックに、名シンガー
Devon Russellのヴォーカルが冴える
アルバムで内容はとても良いと思います。

スカの時代からロックステディ→ルーツ・
レゲエと、Treasure Isleレーベルと共に
ジャマイカの音楽界をリードして来た
Studio Oneレーベルですが、70年代
後半になるとその勢いに陰りが見え始め
ます。
その理由はレゲエという音楽が人気が出て
来た事でChannel Oneなどの振興レーベル
が力を付けて来た事と、Studio Oneの
C.S. Doddの金払いの悪さにあったと言わ
れています。

それまでのジャマイカの音楽界は、この
Studio OneとDuke Reidの主催する
Treasure Isleの2大レーベルが支配して
いて、歌手としてやっていくにはこの2つ
のレーベルから曲を出すしかなかったん
ですね。
ところがレゲエに人気が出て来ると、他に
録音できる振興レーベルが出て来ました。
そうなると金払いの悪いStudio Oneは、
ミュージシャンから徐々に敬遠されるよう
になって来るんですね。
そうした現状にC.S. Doddも徐々にやる気
を失って、Studio Oneの運営はエンジニア
のSylvan Morrisにほぼ任せていたと言わ
れています。

ただStudio Oneにはスカの時代から録り
貯めた、Studio Oneのバック・
ミュージシャンのバンドSoul Vendorsや
Sound Dimensionがバックを務めた、豊富
な音源があったんですね。
Sylvan Morrisはその豊富なバックの音源
を利用して、Dub Specialist名で自身の
編集したダブを作ったり、バックの音を
リメイクしてSugar MinottやFredie
McGregorなどの新しい歌手に歌わせたり
と、Studio One独特の古くて新しい
ちょっと面白い音楽を作成して行くんです
ね。

今回のアルバムもそうしたアルバムの
ひとつで、バックの音源はStudio Oneの
バック・ミュージシャンのSoul Vendors
やSound Dimensionのロックステディや
70年代初めの頃の音源が使われていま
す。
そのバックの音源に後からDevon Russell
のヴォーカルを載せたものなんですね。
(Side 2の2曲目「Bum Ball」は、自身
が参加したデュオ・グループLloyd And
Devonの68年のStudio Oneからリリース
したヒット曲「Red Bum Ball」なので、
再録ではなくそのまま使っている可能性も
あります。)

タイトルは「Roots Music」ですが、今回
のアルバムには60年代後半のロック
ステディの時代の曲が多く使われていて、
そのちょっと古くて懐かしいStudio Oneの
サウンドをバックに、60年代から活躍
するベテランDevon Russellのヴォーカル
が冴える仕上がりとなっています。

当時のStudio Oneレーベルはとても苦しい
状況だったのかもしれませんが、この
Sylvan Morrisの「職人仕事」はとても
魅力的で、Dub Specialist名のダブなど
も含めて、面白いアルバムをたくさん残し
ているんですね。
元々Studio Oneは「ジャマイカの
モータウン」と言われたほどの素晴らしい
音源を残してきたレーベルで、その音源を
使って作成された楽曲は出来が悪いはずは
無いんですね。
今回のアルバムに収められた曲で、原曲が
解ったものをネットのYouTubeで調べて
みたのですが、どれもとても素晴らしい
楽曲でした。

The Melodians | Swing And Dine


ALTON ELLIS AND THE FLAMES - Cry Tough [1967]


The Beltones - Not For A Moment ++


THE FREEDOM SINGERS THERE S A FIRE LP STUDIO ONE


The Wailing Wailers - It Hurts To Be Alone


The Techniques - You Don't Care


そうした素晴らしい楽曲とDevon Russell
のベテランらしい魅力的な歌唱が合わ
さって、かなり濃度の濃いアルバムに
仕上がっています。

また彼のオリジナル曲と思われるSide 1の
3曲目「You Found Heaven」や、Side 2の
3曲目「Roots Music」は、ソウル・
ミュージックかと思われるほどに彼の
ソウルフルなヴォーカルが際立っており、
このアルバムの魅力をよりアップしてい
ます。

あえて欠点を挙げれば、当時は音楽技術が
急激に発展した時代だったせいか、多少
音がこもった音質という点です。
おそらく60年代後半の録音時より後の
時代の方がトラック数が増えてより音が
クリアに再現出来るようになったんです
ね。
昔の音楽などを聴くと、音がこもって聴こ
えるのはその為のようです。
アルバムの出来自体はとても良いのです
が、その点だけが唯一惜しまれる点かも
しれません。

Side 1の1曲目は「Swing And Dine」
です。
リディムはロックステディの時代の
The Melodiansのヒット曲「Swing And
Dine」です。
ギターとリリカルなピアノのメロディに、
スウィートなコーラス・ワーク、感情を
乗せたDevon Russellの優しいヴォーカル
がとても魅力的。

2曲目は「Cry Tough」です。
リディムはAlton Ellisのロックステディ
の時代のヒット曲「Cry Tough」です。
刻むようなギターとピアノのメロディに、
合間良く入って来るコーラス・ワーク、
ソフトに語るようなDevon Russellの
ヴォーカルがとても魅力的。

Devon russell " Cry tough " Riddim


3曲目は「You Found Heaven」です。
Devon Russell自身の75年のヒット曲の
ようです。
浮遊感のあるキーボードのメロディに、
高音も効かせたDevon Russellのソウル
フルなヴォーカルがグッと来る曲です。

DEVON RUSSELL - You Found Heaven


4曲目は「Not For A Moment」です。
リディムはBop & Beltonesの67年の
ヒット曲「Not For A Moment」。
ユッタリとしたホーンとギターのメロディ
に、高音のコーラス・ワーク、語るように
歌うDevon Russellの大人なヴォーカルが
とても魅力的。

5曲目は「Jah Jah Fire」です。
リディムはFreedom Singersのヒット曲
「There's A Fire」です。
この曲はSoul Syndicateなども演奏して
います。
突っ走るようなハモンド・オルガンと思わ
れるキーボードと、刻むようなギターの
メロディ、ファルセットのコーラス・
ワークに乗せた、情感タップリなDevon
Russellのヴォーカルがとてもそそられる
曲です。

Devon Russell - Jah Jah Fire


Side 2の1曲目は「Hurts To Be Alone」
です。
リディムはThe Wailersのスカの時代の
66年のヒット曲「Hurts To Be Alone」
です。
ジャマイカでコーラス・グループとして
活動していたThe Wailersの初期の楽曲
で、ヴォーカルを女性(Rita Marley?)
がとっているようです。
キーボードとギターのスローなメロディ
に、コーラス・ワークに乗せたDevon
Russellのファルセットなヴォーカルが
イイ感じ。

2曲目は「Bum Ball」です。
リディムは68年のLloyd And Devonの
ヒット曲「Red Bum Ball」です。
自身の参加したデュオのセルフ・カヴァー
か?
ギターとキーボードのユッタリとした
メロディに、心地良いパーカッション、
丁寧に歌うDevon Russellのヴォーカルが
魅力的。

Devon Russell - Bom Ball / Album - Roots Music : 1982 / Dubwise Selecta


3曲目は「Roots Music」です。
剃るる色の強い漂うようなキーボードの
イントロから、ギターの刻むような
メロディに乗せた、ハイ・トーンな
コーラス・ワーク、語りかけるような
Devon Russellのヴォーカルが素晴らしい
ソウルフルな曲です。

Devon Russell - Roots Music ++


4曲目は「Make Me Believe In You」です。
リディムはThe Techniquesのロック
ステディの時代のヒット曲「You Don't
Care」です。
ギターとピアノを中心としたメロディに、
ちょっとエコーの効いたDevon Russellの
ファルセットなヴォーカルがイイ感じ。

Devon Russell - Make Me Believe In You


リズム特集 You Don't Care (ユー・ドント・ケア)

5曲目は「Ganja Brothers」です。
ギターとピアノを中心としたメロディに、
ファルセットなコーラス・ワーク、こちら
もファルセットなDevon Russellの
ヴォーカルがグッとくる曲です。
なおこの曲は「People Get Ready」と改題
されているアルバムもあるようです。

People Get Ready(Devon Russell)


ざっと追いかけてきましたが、サウンド的
には10年以上前の楽曲の再利用なのに、
Devon Russellという素晴らしいシンガー
と、Dub SpecialistことSylvan Morrisと
いう素晴らしいエンジニアの出会いが生み
出した味わい深いアルバムで、内容は文句
の付けようがありません。

たとえ古い音源であったとしても素晴らし
い音楽は作れる、ジャマイカの「リディム
文化」のスゴさをあらためて感じさせて
くれるアルバムです。

機会があればぜひ聴いてみてください。

devon russell 86 you found heaven live


Devon Russell and Iauwata Amha-Selassie live 94



○アーティスト: Devon Russell
○アルバム: Roots Music
○レーベル: Studio One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Devon Russell「Roots Music」曲目
Side 1
1. Swing And Dine
2. Cry Tough
3. You Found Heaven
4. Not For A Moment
5. Jah Jah Fire
Side 2
1. Hurts To Be Alone
2. Bum Ball
3. Roots Music
4. Make Me Believe In You
5. Ganja Brothers

●今までアップしたDevon Russell関連の記事
〇Devon Russell & The Cultural Roots「Money, Sex & Violence」
〇Devon Russell「Prison Life」