今回はMad Professorのアルバム

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「Dub Me Crazy Part 7:
The Adventures Of A Dub Sampler」
です。

Mad Professor(本名:Neil Joseph
Stephen Fraser)は80年代からイギリス
の自分のスタジオAriwaを拠点に活動を
続けるプロデューサーであり、ダブの
クリエイターである人です。

プロデューサーとしてはSandra Cross
など多くのラヴァーズロック・レゲエの
アーティストのプロデュースや、Massive
AttackやJamiroquaiなど他ジャンルの
アーティストのプロデュースまで幅広い
ジャンルのアーティストをプロデュース
しています。
また「Dub Me Crazy」シリーズや
「Black Liberation Dub」シリーズなど
の数多くのダブを作った事でもよく知られ
ています。

ネットのDiscogsによると、95枚ぐらい
のアルバムと、74枚ぐらいのシングル盤
をリリースし、数多くのアーティストの
プロデュースをしているのがこの
Mad Professorという人です。

レーベル特集 Ariwa (アリワ)

マッド・プロフェッサー - Wikipedia

今回のアルバムは1987年にUKの
Ariwaレーベルからリリースされた
Mad Professorのダブ・アルバムです。

タイトルからも解るように、彼の代表作で
ある「Dub Me Crazy」シリーズの7枚目の
アルバムで、プロデュースとミックスは
Mad Professor本人で、Victor Crossや
Robotiks、Black SteelといったAriwaの
スタジオ・ミュージシャンや、トロン
ボーンにVin Gordonなどが参加した
アルバムで、彼らしいダブ・サウンドが
楽しめるアルバムとなっています。

手に入れたのはAriwaからリリースされた
CDの中古盤でした。

なお「Dub Me Crazy」シリーズは全12作
あり、1作目は82年の「Dub Me Crazy」
で、2作目は同じ82年にリリースの
「Beyond The Realms Of Dub」、3作目は
83年の「The African Connection」、
4作目は同じ83年の「Escape To The
Asylum Of Dub」、5作目は85年の
「Who Knows The Secret Of The Master
Tape?」、6作目は86年の
「Schizophrenic Dub」、7作目は今回の
アルバムで、8作目は88年の
「Experiments Of The Aural Kind」、
9作目が89年の「Science And The
Witch Doctor」、90年が10作目
「Psychedelic Dub」、11作目が91年
の「Hi-Jacked To Xaymaca(Jamaica)」、
12作目が92年の「Dub Maniacs On
The Rampage」と、82年から92年の
ほぼ11年間に12作が作られている
シリーズです。

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Mad Professor - Dub Me Crazy (1982)

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Mad Professor ‎– Beyond The Realms Of Dub (Dub Me Crazy! The Second Chapter) (1982)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy 3: The African Connection (1983)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy Part 4 (Escape To The Asylum Of Dub) (1983)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy Part Five: Who Knows The Secret Of The Master Tape? (1985)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy Vol. 6: Schizophrenic Dub (1986)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy Volume 8: Experiments Of The Aural Kind (1988)

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Mad Professor ‎– Science And The Witch Doctor (Dub Me Crazy Part 9) (1989)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy Pt. 10: Psychedelic Dub (1990)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy Part 11: Hi-Jacked To Xaymaca (Jamaica) (1991)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy 12: Dub Maniacs On The Rampage (1992)

私事ですが今回この7作目を手に入れた事
で、12作全てをCDで集める事が出来ま
した。
正直ちょっと嬉しいです。

全10曲で収録時間は約39分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Produced & Mixed by Mad Professor
Recorded & Mixed at Ariwa Studios
Drums: Robotiks
Bass: Preacher, Black Steel, Macka Dub, Kirk
Keyboards: Victor Cross, Preacher, Cleveland Neunie, Popeye
Guitars: Black Steel, Jeffrey, Macka Dub
Horns:
Saxes: Michael Rose, Lloyd Clarke
Trombone: Vin Gordon, Trevor Jones
Flute: Lloyd Clarke
Voices: Mad Professor, Sandra Cross, Macka B & Many Who Cannot Be Named

となっています。

プロデュースとミックスはMad Professor
で、レコーディングとミックスはAriwa
Studiosで行われています。
参加したミュージシャンは、ドラムに
Robotiks、ベースにPreacherとBlack
Steel、Macka Dub、Kirk、キーボード
にVictor CrossとPreacher、Cleveland
Neunie、Popeye、ギターにBlack Steelと
Jeffrey、Macka Dub、ホーン陣はサックス
にMichael RoseとLloyd Clarke、トロン
ボーンにVin GordonとTrevor Jones、
フルートにLloyd Clarke、声入れに
Mad ProfessorとSandra Cross、Macka B
と、「たくさんの名前の解らない人の声」
となっています。

ジャケット・デザインに関する記述はあり
ませんが、この「Dub Me Crazy」シリーズ
のデザインをずっと担当しているTony
McDermottの作品である事はほぼ間違い
ありません。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、Mad Professor
の代表作である「Dub Me Crazy」シリーズ
の1枚で、彼らしいダブが楽しめる好内容
のアルバムとなっています。

ダブは60年代後半ぐらいにジャマイカで
誕生した音楽で、ネットのWikipediaなど
によると「楽曲のリズムを強調して
ミキシングし、エコーやリバーブなどの
エフェクトを過剰に施すことで、原曲とは
全く別の作品に作り変えてしまうことで
ある。リミックスの元祖とも言われる。」
と書かれています。
プロデュサーのBunny Leeによると、
「ミキサーのKing Tubbyが偶然の失敗から
発明した」と言っていますが、諸説あり誰
が発明したかはよく解っていません。

ダブ - Wikipedia

ジャマイカではシングル盤のB面に、歌手
のヴォーカルやホーンなどの音源を抜いた
Version(ヴァージョン)と呼ばれる
カラオケ音源をよく収録していたんです
ね。
弱小のプロデューサーが多かった
ジャマイカでは、別の曲を入れるよりは
演奏者や歌手にお金を払わずに済むので、
こうしたVersion(カラオケ)をB面に
入れる事が多かったんですね。
そのカラオケがさらに発展して、エコーや
リバーブなどのエフェクトを多用した実験
的な音楽がダブだったんですね。

このダブという音楽はさらに発展し、
73年頃にはLee Perryの「Blackboard
Jungle Dub」や、Errol Thomsonが
ミキシングを担当したImpact Allstarsの
「Java Java Java Java」などのダブ・
アルバムが一斉に発売され、レゲエの
サブ・ジャンルとして認められるように
なるんですね。

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Impact All Stars - Java Java Java Java (1973)

Impact All Stars「Java Java Java Java」 - つれづれげえ日記

特に70年代はたくさんのダブ・アルバム
が作られており、アーティストの
オリジナル・アルバムとそのダブ・
アルバムが一対のセットのように作られて
いるんですね。

そのダブという音楽の魅力に取りつかれた
のが、今回紹介するMad Professorなん
ですね。
ガイアナ共和国出身の彼はもともとは
レコード・コレクターで、その中でも特に
興味を持った音楽がダブであったらしい
です。
彼は1979年にUKに自身のダブが作れ
るスタジオAriwaを設立し、Sandra Cross
など多くのラヴァーズロック・レゲエの
アーティストのプロデュースや、自身の
ダブを制作し始めるんですね。

彼は82年にそれまでのダブとはひと味
違った、デジタル感のあるダブ・アルバム
「Dub Me Crazy」をリリースし、多くの
人々に衝撃を与えます。
そして多くのアーティストのプロデュース
と自身のダブのリリースで、自身の
レーベルAriwaを軌道に乗せ、今日に至る
までUKで活躍し続けているんですね。

本場ジャマイカのダブは89年にKing
Tubbyが亡くなった事で衰退しほとんど
作られなくなりますが、UKではこの
Mad ProfessorやJah Shakaなどが今もダブ
を作り続けて、この音楽を守り続けている
んですね。
ある意味King Tubbyのダブをもっともよく
継いでいるのが、このMad Professorで
あるとも言えます。

ちなみにMad Professorのダブはよく
「デジタル・ダブ」などと言われますが、
ネット上にある本人のインタビュー記事
などを読むと、実はけっこうアナログ機材
を使っているんだそうです。
Mad Professor自身は完全にデジタルな
サウンドはあまり好きではないらしく、
アナログな暖かみのあるサウンドが好きと
語っていた記事を読んだ記憶があります。
おそらく70年から80年ぐらいのシンセ
などの、徐々にデジタル化が始まった頃の
サウンドが好きなのではないかと思われ
ます。
そうした微妙な音の違いが、彼のこだわり
なのでしょう。
そう言われるとデジタル感がありながら
も、微妙に温もりの感じるサウンドのよう
な気もします。

そうしたMad Professorの代表的なダブが
この「Dub Me Crazy」シリーズで、この
アルバムはその7作目のアルバムなんです
ね。
自身のアルバムだけでも95枚ぐらいの
アルバムをリリースしている彼ですが、
この「Dub Me Crazy」シリーズはやはり
聴いておきたいアルバムだと思います。

今回のアルバムでもいつものAriwaの
メンバーの他にゲストにトロンボーン奏者
のVin Gordonなどが参加していて、
そうしたトロンボーンやフルートなどの人
が演奏するヒューマンなサウンドと、
デジタル感のあるエフェクトなどを駆使
したミックスが一体となった、スペーシー
な独特のダブ・サウンドを展開していま
す。

1曲目は「Jolly Roger」です。
暖かみのあるホーンとクールなフルートの
ヒューマンなメロディに、エフェクトの
入ったヴォイスなどが絡み合う曲です。

Mad Professor - Jolly Roger


2曲目は「Ariwa The Dub Sampler」
です。
リズミカルなメロディに「Ariwa」の
連呼が面白い、Mad Professorらしい
トボけた不思議感のある曲です。

Mad Professor - Airwa The Dub Sampler


3曲目は「Cleopatra's Needle」です。
浮遊感のあるキーボードのメロディと、
ドスのきーたベース、デジタル感のある
パーカッションに、時折挿入される
エフェクトの書かかった女性ヴォーカルが
面白い曲です。

Mad professor - Cleopatra's Needle


4曲目は「Aztec Warrior」です。
一瞬だけ入る男性の声、ドスの効いた
ベース、透明感のあるフルート、イイ感じ
のホーン・セクション…。
このアルバムの中で最長の5分58秒の曲
です。

Mad Professor - Aztec Warrior.wmv


5曲目は「Burning Rome」です。
ズシっとしたベースとギター、キーボード
を中心としたメロディに、ストリングスを
うまく合わせた曲です。

Mad Professor - Burning Rome


6曲目は「Checkpoint Charlie」です。
どすの効いたベースとギター、浮遊感の
あるキーボードのメロディに、心地良い
パーカッションのダブです。

Mad Professor - Checkpoint Charlie


7曲目は「Gibraltar Rock」です。
キーボードと重いベースを中心とした
メロディに、パーカッションや時折入る
ホーンがイイ感じの曲です。

Mad Professor - Gibraltar Rock


8曲目は「Ska Land」です。
エフェクトの入った笑い声から、ホーンと
ベース、ギターを中心としたメロディの
ダブ。

Mad Professor - Ska Land


9曲目は「Dub Of Postdam」です。
透明感のあるストリングス、ホーン、
ドスの効いたベースと歯切れの良い
ドラミング…。

10曲目は「London Plantation」です。
どすの効いたベース音に、軽やかな
ストリングス…。

Mad Professor - London Plantation


ざっと追いかけてきましたが、当時として
は目新しいデジタル感があるダブで、
ジャマイカのダブとはひと味違った、
ガイアナ人のMad Professorの感性が煌め
くダブ・アルバムに仕上がっています。
それでもこの音楽は間違いなくレゲエで
あり、ダブなんですね。
レゲエという音楽をUKの地から押し広げ
た、Mad Professorの感性はやはり高く
評価すべきものがあります。

そしてこのMad Professorは今の時代に
なっても好奇心を持ち続けて、ダブという
音楽を作り続けているんですね。
その飽くなき探求心にはやはり脱帽です。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Making Dub with Mad Professor


jah protect i - mad professor and aisha



○アーティスト: Mad Professor
○アルバム: Dub Me Crazy Part 7: The Adventures Of A Dub Sampler
○レーベル: Ariwa
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1987

○Mad Professor「Dub Me Crazy Part 7:
The Adventures Of A Dub Sampler」曲目
1. Jolly Roger
2. Ariwa The Dub Sampler
3. Cleopatra's Needle
4. Aztec Warrior
5. Burning Rome
6. Checkpoint Charlie
7. Gibraltar Rock
8. Ska Land
9. Dub Of Postdam
10. London Plantation

●今までアップしたMad Professor関連の記事
〇Mad Professor & Jah Shaka「New Decade Of Dub +5」
〇Mad Professor / Ariwa Artists「Dub You Crazy With Love」
〇Mad Professor, Jah9「Mad Professor Meets Jah9: In The Midst Of The Storm」
〇Mad Professor「A Caribbean Taste Of Technology」
〇Mad Professor「Afrocentric Dub: Black Liberation Dub Chapter 5」
〇Mad Professor「Anti-Racist Dub Broadcast: Black Liberation Dub Chapter Two」
〇Mad Professor「Beyond The Realms Of Dub: Dub Me Crazy! The Second Chapter」
〇Mad Professor「Black Liberation Dub Chapter One」
〇Mad Professor「Dub Maniacs On The Rampage: Dub Me Crazy 12」
〇Mad Professor「Dub Me Crazy」
〇Mad Professor「Escape To The Asylum Of Dub: Dub Me Crazy 4」
〇Mad Professor「Evolution Of Dub: Black Liberation Dub, Chapter 3」
〇Mad Professor「Experiments Of The Aural Kind: Dub Me Crazy Volume 8」
〇Mad Professor「Hijacked To Jamaica: Dub Me Crazy Part 11」
〇Mad Professor「Psychedelic Dub: Dub Me Crazy 10」
〇Mad Professor「Schizophrenic Dub: Dub Me Crazy Vol.6」
〇Mad Professor「Science And The Witch Doctor: Dub Me Crazy Part 9」
〇Mad Professor「The African Connection: Dub Me Crazy Pt.3」
〇Mad Professor「The Lost Scrolls Of Moses」
〇Mad Professor「True Born African Dub」
〇Mad Professor「Who Knows The Secret Of The Master Tape: Dub Me Crazy Part Five」
〇Jah Shaka, Mad Professor「Jah Shaka Meets Mad Professor At Ariwa Sounds」
〇Sandra Cross「Country Life + Dub」
〇Robotiks「My Computer's Acting Strange」
〇Tony Benjamin & The Sane Inmates「African Rebel」