今回はDelroy Wilsonのアルバム

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「Better Must Come」です。

Delroy Wilson(本名:Delroy George
Wilson)はスカの時代からロックステディ
→レゲエと活躍し続けた名シンガーです。

13歳という若さでデビューした彼は、
スカ→ロックステディ→レゲエの時代と
活躍を続け、「Riding For A Fall」や
「Rain From The Sky」、「Dancing Mood」
など、素晴らしい楽曲を残し続けて来た
偉大なシンガーとしてよく知られていま
す。

Delroy Wilson - Rain From The Skies - (Good All Over)


1995年に肝硬変からの合併症で亡く
なっています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て40枚ぐらいのアルバムと、548枚
ぐらいのシングル盤をリリースしていま
す。

アーティスト特集 Delroy Wilson

今回のアルバムは1971年にジャマイカ
のDynamic Soundsからリリースされた
Delroy Wilsonのサード・アルバムです。
(彼はリリースしているアルバムが多く、
「Unknown(制作年不詳)」となっている
アルバムもあるので、もしかしたらそれ
以前にリリースしたアルバムがあるかも
しれません。)

プロデュースはBunny Leeで、71年の
ジャマイカの総選挙でマイケル・マンリー
が率いる人民国家党のキャンペーン・
ソングに起用された表題曲の「Better
Must Come」や、アイズレー・ブラザーズ
(The Isley Brothers) のカヴァー・
ソング「It's Your Thing」、「Stick By
Me」、「Try Again」など、この時代の
彼の代表曲が収められたアルバムです。

手に入れたのは2020年にイタリアの
Radiation Rootsというレーベルから
リイシューされたCD(新盤)でした。
このレーベルはあまり音質は良くありま
せんが、特に気になるパリパリ音などは
確認出来ませんでした。

全10曲で収録時間は28分32秒。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

表ジャケが2つ折りになっていて、内側
にはDavid Katz氏の英文の解説文が書かれ
ていました。

ネットのDiscogsには、レコーディングは
Dynamic Sounds Studiosで、アレンジと
プロデュースはBunny Lee、エンジニアは
Carlton LeeとSyd Bucknor、ジャケット・
デザインはThe Roberts Design Groupと
書かれていました。

さて今回のアルバムですが、初期レゲエの
頃のアルバムですが、Delroy Wilsonの
パンチの効いた歌声がとても魅力的な
アルバムで、内容はとても良いと思い
ます。

このDelroy Wilsonですが60年代のスカ
の時代から活躍した大シンガーで、あの
Dennis Brownの師匠としても知られる人
なんですね。
その歌声はとても力強く、人を強く惹き
付けるものがあります。
今回のアルバムも初期の頃のレゲエの
アルバムとしてはとても出来が良く、それ
はこのDelroy Wilsonの歌声の魅力が大き
く影響していると思われます。
彼の歌声はアメリカのソウルやファンクの
影響を感じさせるパンチの効いた歌い方
で、それが墓の歌手とは一線を画した大き
な魅力となっています。

表題曲の「Better Must Come」は、上に
挙げたレゲエレコード・コムの彼の紹介文
には「1971年の総選挙でマイケル・
マンリーが力を手にしようとする際、人民
国家党のキャンペーン・ソングに起用され
た」と書かれています。
この当時のジャマイカは左派のマンリーの
率いる人民国家党(PNP)とエドワード・
シアガの率いるジャマイカ労働党(JLP)
の2大政党があり、時にはその政党の
支持者の間で銃撃戦の起きるほど荒れた国
だったんですね。
あのBob Marleyがそうした政争から自宅を
襲撃され、銃撃されたのはとても有名な話
です。

マイケル・マンリー - Wikipedia

デルロイ・ウィルソン(Delroy Wilson) - Better Must Come - 1971 - リリック

↑のこの曲の歌詞を見ると、「Better
Must Come(良くならないといけない)」
と訴える歌詞はとても説得力があり、それ
がこの71年の選挙ではマンリーの率いる
人民国家党(PNP)の勝利に大きく貢献
したようです。
上に挙げたレゲエレコード・コムの
「アーティスト特集 Delroy Wilson」の
文章では、プロデュースしたBunny Lee
が「...この音楽が人々に届き選挙に
勝ったんだ」と語っています。
この後マンリーの率いる人民国家党
(PNP)は、80年まで政権を執っていた
んですね。

ちなみに牧野直也さんという方の書いた
レゲエ本「レゲエ入門」(アルテスパブ
リッシング刊行)には、レゲエの音楽の
流行には政権を執った党が関係していると
いう事が書かれています。

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牧野直也著 - レゲエ入門

左派のマンリーの人民国家党(PNP)が
政権を執ったこの71~80年は
プロテスト・ソング色の強いルーツ・
レゲエが流行し、エドワード・シアガの
ジャマイカ労働党(JLP)が政権を執った
80年以降はスラックネス(下ネタ)や
ラヴ・ソングを中心とした快楽的なダンス
ホール・レゲエが流行しているんだとか。
左派か右派かという政権の色合いで、流行
する音楽が変わるという事らしいです。

実際に日本でも学生運動などが盛んな昔は
政治を批判したプロテスト・ソングの
色合いの強いフォーク・ソングが流行った
ものですが、高度成長期に入り自民党が
永く政権を執るようになるとそうした音楽
は一掃され、ラヴ・ソングばかりが作られ
るようになって行ったんですね。
なのでその指摘は当たってるのかもしれま
せんが、ハッキリとした事は解りません。
少なくともそうした傾向はあるようです。

この表題曲の「Better Must Come」を
はじめとして、アイズレー・ブラザーズ
(The Isley Brothers) のカヴァー曲の
「It's Your Thing」や、「Stick By
Me」、「Try Again」など、この初期
レゲエの時代のDelroy Wilsonの代表曲が
収められたのが今回のアルバムで、なか
なか好内容のアルバムに仕上がっていま
す。

The Isley Brothers - It's Your Thing (Audio)


1曲目は表題曲の「Better Must Come」
です。
書いたように71年のジャマイカの総選挙
でマイケル・マンリーが率いる人民国家党
のキャンペーン・ソングに起用された曲
です。
心地良いドラミングのオープニングから、
この時代らしいギターとキーボード、
ピアノのメロディ、Delroy Wilsonの
ちょっとソウルフルなヴォーカルがイイ
感じ。

Delroy Wilson - Better Must Come


2曲目は「Better To Be Loved」です。
ギターとホーンを中心としたメロディに、
Delroy Wilsonのソフトで力強いヴォーカル
が魅力的。

Delroy Wilson - Better to be loved


3曲目は「Can't Explain」です。
ギターとベース、キーボードのメロディ
に、ジックリと歌い込むようなDelroy
Wilsonのソウルフルなヴォーカルがイイ
感じ。

Delroy Wilson - Can't Explain


4曲目は「It's You I Love」です。
刻むようなギターとキーボード、ドスの
効いたベースを軸とした演奏に、Delroy
Wilsonの伸びやかでしなやかなヴォーカル
がイイ感じ。

Delroy Wilson - 4. It's You I Love


5曲目は「Dance With You」です。
キーボードと刻むようなギターを中心と
したメロディに、伸びやかに歌う
Delroy Wilsonのナイスなヴォーカルが
魅力的。

Delroy Wilson - Dance With You


6曲目は「Try Again」です。
いわゆる「ウンチャカ・リズム」のギター
の刻むようなフレーズに、重いベースと
キーボードのメロディ、滑らかに語るよう
なDelroy Wilsonのヴォーカルがとても
魅力的。

DELROY WILSON - TRY AGAIN


7曲目は「It's Your Thing」です。
書いたようにソウル・グループの
アイズレー・ブラザーズ (The Isley
Brothers) の同名曲のカヴァーのよう
です。
刻むようなレゲエ特有のギターと重い
ベース、キーボードのメロディに、
ソウルフルなDelroy Wilsonのヴォーカル
が冴える曲です。
リズムはレゲエですが、歌唱はソウルと
言っても遜色のないような出来です。

Delroy Wilson-Its Your Thing (Coxsone)


8曲目は「Keep An Eye」です。
刻むようなギターと、浮遊感のあるキー
ボードのメロディ、感情を乗せたDelroy
Wilsonのナイスなヴォーカルがイイ感じ。

Delroy Wilson Better Must Come 08 Keep An Eye


9曲目は「Drink Wine」です。
漂うようなハモンド・オルガンと刻むよう
なギターのメロディ、伸びやかなDelroy
Wilsonのヴォーカルがイイ感じ。

Delroy Wilson ‎– Drink Wine Everybody


10曲目は「Stick By Me」です。
この曲も彼の代表曲のひとつと言える曲
です。
心地良いドラミングから、キーボードと
刻むようなギターのメロディ、感情を
うまく乗せたDelroy Wilsonのヴォーカル
がとても魅力的な曲です。

Stick by Me - Delroy Wilson


ざっと追いかけてきましたが、やはり
Delroy Wilsonのジックリと歌い込むよう
なソウルフルなヴォーカルはとても素晴ら
しく、このアルバムの大きな魅力となって
います。
ウマいヴォーカリストの多いジャマイカの
音楽界の中でも、Delroy Wilsonの
ヴォーカルは卓越した存在感を放っていま
す。

このDelroy Wilsonはそれぞれの時代ごと
に素晴らしいアルバムを残していますが、
今回のアルバムは初期レゲエからルーツ・
レゲエにかけてのの時代の彼の代表作と
言えるでしょう。

機会があればぜひ聴いてみてください。

DELROY WILSON live @ ROCK STEADY REUNION INNA 1992


Delroy Wilson - Dancing Mood


Delroy Wilson Rain From The Sky Live 1985 Inner City Dancehall Reggae



○アーティスト: Delroy Wilson
○アルバム: Better Must Come
○レーベル: Radiation Roots
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1971

○Delroy Wilson「Better Must Come」曲目
1. Better Must Come
2. Better To Be Loved
3. Can't Explain
4. It's You I Love
5. Dance With You
6. Try Again
7. It's Your Thing
8. Keep An Eye
9. Drink Wine
10. Stick By Me

●今までアップしたDelroy Wilson関連の記事
〇Delroy Wilson「Dancing Mood」
〇Delroy Wilson「Dub Plate Style: Remixed Prince Jammy 1978」
〇Delroy Wilson「Sarge」
〇Delroy Wilson「The Best Of Delroy Wilson: Original Twelve」
〇King Tubby's (Prince Jammy) And The Agrovators, (Delroy Wilson)「Dubbing In The Back Yard / (Go Away Dream)」
〇Various「Can't Stop The Dread」