今回はJohn Wayneのアルバム

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「Boogie Down」です。

John Wayne(本名:Norval Headley)は、
80年代前半のアーリー・ダンスホールの
時代に活躍した、ダンスホール・ディー
ジェイです。

ネットのDiscogsには彼について次のよう
な記述があります。

Jamaican reggae musician, born in Saint Elizabeth, Jamaica,
died 30 January 2014 in Kingston, Jamaica, aged 51.

《ジャマイカのセントエリザベス生まれの
ジャマイカのレゲエミュージシャンで、
2014年1月30日にジャマイカの
キングストンで51歳で亡くなっていま
す。》

おもにジャマイカ国内で活躍したマイナー
なディージェイで、エンジニアとして活躍
した実績もあるようです。

ネットのDiscogsによると、今回の
アルバムである「Boogie Down」の1枚の
アルバムと、47枚ぐらいのシングル盤を
残しています。

John Wayne(2) | John Peel Wiki | Fandom

ちなみにJohn Wayneという名前は、当時
大人気だったアメリカの西部劇の白人の
スター俳優の名前から取ったいわゆる
「パクリ名前」です。
ジャマイカのレゲエ・ミュージシャンには
こうした俳優などから取った「パクリ
名前」が多く、Clint Eastwoodや
Charlie Chaplinといった名前のアーティ
ストがけっこう居るんですね。
おそらく名前が覚えてもらい易い為なの
ではないかと思われます。
ただそうした名前で世界で活躍し始める
と、訴訟を起こされる場合もあるよう
です。

今回のアルバムは1983年にUKの
Vista Soundsからリリースされた
John Wayneの唯一のソロ・アルバムです。

プロデュースはBunny Leeで、バックは
彼のハウス・バンドThe Aggrovatorsと
思われ、表題曲の「Boogie Down」を
はじめとして、80年代前半から流行し
だした重いベースを軸としたワン・
ドロップの演奏に乗せた、John Wayneの
ナイスなトースティングが冴えるアルバム
となっています。

手に入れたのは2020年にイタリアの
Radiation Rootsというレーベルから
リイシューされたCD(新盤)でした。

なおこのレーベルのCDは音質があまり
良くない事がありますが、多少音質が
こもっている感じはありますが、パリパリ
音などは無く、問題なく聴けました。

全10曲で収録時間は34分42秒。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

Sleeve Designed by J. Rathbone Jones & P. Santiago Quemades

A Bunny Lee Production for Vista Sounds

という記述があります。

プロデュースはBunny Leeで、レーベルは
Vista Soundsからリリースしたアルバム
です。
そのBunny Leeが関わったアルバムなので
バックは、彼のハウス・バンド
The Aggrovatorsが担当していると思われ
ます。

この80年代前半のアーリー・ダンス
ホールの時代のBunny Leeの音源を集めた
コンピュレーション・アルバムが、
2019年にレゲエ・リイシュー・
レーベルPressure Soundsから「Rubadub
Revolution」というタイトルで2枚組の
CDとしてリリースされています。

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Various - Rubadub Revolution: Early Dancehall Productions From Bunny Lee (2019)

その中の1曲がNeville Brown & John
Wayneの「The Right Time (Boogie Down)
(12-inch mix)」という曲なんですね。
これは前半がNeville Brownの歌の
「The Right Time」という曲で、後半が
その「The Right Time」のディージェイ・
ヴァージョンJohn Wayneの今回の表題曲
「Boogie Down」を組み合わせた、
12インチ・ディスコ・ミックス・
ヴァージョンの曲なんですね。

NEVILLE BROWN & JOHN WAYNE ~ The Right Time (Boogie Down, 12'' Mix)


このコンピュレーション・アルバムには、
楽曲に参加したメンバーも書かれていま
した。
それを写すと、

Musicians include:
Drums: Carlton 'Santa' Davis, Lowell 'Sly' Dunbar, Anthony 'Benbow' Creary
Bass: Robbie Shakespeare, George 'Fully' Fullwood, Chris Maredith
Guitar: Earl 'Chinna' Smith, Tony Chin, Willie Lindo
Keyboards: Winston Wright, Keith Sterling, Robbie Lyn, Errol 'Tarzan' Nelson, Tony Asher
Percussion: Noel 'Scully' Simms, Uzaiah 'Sticky' Thompson
Horns: Tommy McCook, Bobby Ellis, Dean Fraser

となっています。
この中の何人かが、今回のアルバムに参加
しているものと思われます。
今回のアルバムではドスの効いた重低音の
ベースが特に印象的ですが、Robbie
ShakespeareかGeorge 'Fully' Fullwood、
Chris Maredithの誰かが、このアルバムの
ベースを弾いているものと思われます。

ジャケのデザインはJ. Rathbone Jonesと
P. Santiago Quemadesが担当しています。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、この80年代
前半のアーリー・ダンスホールの時代の
空気感が感じられるアルバムで、内容は
悪くないと思います。

このJohn Wayneというディージェイです
が、西部劇の大スターの名前を取った
ディージェイのわりには、あまり大きく
成功した人では無く、その人気は
ジャマイカ国内に止まった人だったんです
ね。

「Rubadub Revolution」といコンピュ
レーション・アルバム(国内流通仕様盤)
にはDiggory Kenrickという人の解説文の
日本語訳が付いていますが、その中に
Bunny Leeが回顧したJohn Wayneについて
の文章がありました。

「John Wayneは、これまた感じの悪い
Penny IrieっていうDJの兄弟だった―
―母親が同じで、父親が別だ。Shorty
The Presidentが俺のところへJohn Wayne
を連れて来たんだが、俺はあいつの父親を
知っていた――Tuco Keithっていう名の
ひどい男だ。John Wayneはいい奴だったん
だが、自由にやらせたら、自分の父親と
同じような人間と付き合うようになって、
ろくでもない状態に陥ってしまった。」

このBunny Leeの話からも、John Wayneと
いう人は80年代前半はそこそこの活躍は
したものの、イマイチ活躍し切れなかった
ディージェイのようです。
また興味深いのはBunny Leeの人の選び方
で、彼はアーティストを人間性で選んで
いるんですね。
他にもNeville Brownはいい奴だったけれ
ど、Negus Rootsというレーベルの人間と
付き合い出してからうぬぼれ出したので、
付き合いを止めたという事を語っていま
す。
そのあたりもこのJohn Wayneが活躍し
切れなかった理由でしょうか。

彼の兄弟だというPenny Irieについても
調べてみましたが、Clement Irieと
Derrick Irieとの共演盤「Clash Of The
Iries」と「Hotness」という2枚の
アルバムを92年にリリースしている
ほか、76枚ぐらいのシングル盤を
リリースしている、80年代後半から
90年代にかけて活躍しているディー
ジェイのようです。

Penny Irie - Run Come Touch


Pennie Irie - Gun Hawk - LP Vp Records 1990 - SPANGLERS MAN 90'S DANCEHALL


ちなみにPressure Soundsのコンピ
「Rubadub Revolution」は3つ折りの紙
ジャケットで、その内側の左ページには
赤いベレー帽に黄色い短パン、下が赤で上
が赤と白の縦縞のボーダーのランニング姿
の、かなり派手な服装で自転車に跨った
John Wayneの写真が載っていました。

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John Wayne(写真)

またネット上の販売サイトにあるこの
アルバムの説明文には、販売元から
リリースされたと思われるほぼ同じ説明文
が掲載されていました。

「80年代に入りダンスホールが訪れ一躍
ヒーローとなったJOHN WAYNEが唯一残した
アルバム。83年NYを訪れWackie'sにて
Sugar Minottと録音を残し、同年に
イギリスのVistaからリリースされたのが
今作。ダンスホール・サウンドをいち早く
取り入れたBunny Leeプロデュースの下、
キラーなリディムにのせて軽快に歌い上げ
ています。「Go John Wayne Go」はUKの
ニューウェイブ・シーンに多大な影響を
与えたラジオDJ、ジョン・ピールの
お気に入りチューンで、ラジオでヘビー
ローテーションでプレイされた。」

John Wayne自身はおそらくジャマイカを
中心に活動していたと思われますが、UK
でもリリースされたこのアルバムはこの
ジョン・ピールというUKのDJに気に
入られて、よくかけられた曲だったよう
です。

おそらくNeville Brownとのディスコ・
ミックス・ヴァージョンもある
「Boogie Down」と、「Go John Wayne
Go」などが彼のヒット曲だったようです。
上に挙げた2曲の他、Welton Irieの
「Army Life」と同リディムの1曲目
Jailhouse」や、「Boops」リディムの
2曲目「Heavy Rhythm」、「Real Rock」
リディムの7曲目「You Too Greedy」
など、当時のアーリー・ダンスホールの
空気感が目一杯に詰め込まれたアルバム
で、なかなか面白いアルバムなんですね。
この時代のアルバムとしては、平均点以上
の内容のアルバムだと思います。
あまり大きくは成功出来なかった人のよう
ですが、上に書かれたBunny Leeの話など
から見ても、素行の問題などが彼の成功を
妨げたのかもしれません。

Sly & Robieなども参加したと思われる
The Aggrovatorsの演奏は、ズシっと腹に
響くようなベースを軸とした演奏で、一見
ちょっと地味な印象も受けますが、この
アーリー・ダンスホールの時代に大流行
したRoots Radicsの独特なスローなワン・
ドロップのリズムと較べると、同じワン・
ドロップの演奏でもミディアム・テンポに
近いワン・ドロップで、聴けば聴くほど
ハマる魅力があります。
なるべく重低音の再現性の良いプレイヤー
で聴いた方が、このズシっと重量感のある
演奏の魅力が感じられると思います。

1曲目は「Jailhouse」です。
書いたようにWelton Irieの「Army Life」
と同リディムの曲です。
ベース音を中心とした渋い演奏に、ワザと
外したルーディーなトースティングがイイ
感じ。

John Wayne: Jailhouse


2曲目は「Heavy Rhythm」です。
リディムはSuper Catの「Boops」として
知られるリディムで、オリジナルは
Marcia Griffithsの「Feel Like Jumping」
です。
華やかなトビ音のエフェクトに、ズシっと
したベースとギターのワン・ドロップの
メロディ、ちょっとエコーの効いたJohn
Wayneの陽気なトースティングがイイ感じ
の曲です。

John Wayne // Heavy Rhythm


リズム特集 Feel Like Jumping/Boops (フィール・ライク・ジャンピング/ブープス)

3曲目は「African Princess」です。
印象的なギターのイントロから、ドスの
効いたベースとギターのメロディ、流れる
ように紡ぎ出すJohn Wayneのナイスな
トースティング。

John Wayne - African Princess - LP Vista Sounds 1983 - No More Will I Roam Riddim - RUB-A-DUB 80'S


4曲目は「Bend Your Back」です。
ギターとキーボード、ピアノ、ドスの効い
たベースのワン・ドロップの演奏に、
John Wayneのトースティングがイイ感じ。

john wayne - bend your back


5曲目は表題曲の「Boogie Down」です。
書いたようにNeville Brownの
「The Right Time」という曲のディー
ジェイ・ヴァージョンです。
なおネットのRiddimguideでは、
Don Carlosの「Late Night Blues」の
リディムとなっていたので、そちらが
オリジナルかもしれません。
ズシっとしたベース、ギターを中心とした
シリアスなメロディに、John Wayneの流れ
るような無表情なトースティングがイイ
感じ。

John Wayne - Boogie Down


6曲目は「Bubble With Me」です。
ベースとギターを中心とした演奏に、
エコーの効いたドープなドラミング、
John Wayneのナイスなトースティング。

John Wayne - Bubble With Me


7曲目は「You Too Greedy」です。
リディムはSoul Vendorsのロックステディ
の時代のヒット曲「Real Rock」。
ズシっとしたベースとギターの演奏に
エコーの効いたダブ―なドラミング、
John Wayneのオノマトペも使ったナイスな
トースティング。

John Wayne - You Too Greedy


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

8曲目は「Go John Wayne Go」です。
書いたように「DJ、ジョン・ピールの
お気に入りチューン」です。
リリカルなピアノとギター、ベースの
メロディに、John Wayneのナイスなトース
ティングがイイ感じ。

John Wayne - Go John Wayne Go


9曲目は「Murder Style」です。
ズシっと腹に響くベースとギターを中心と
したメロディに、トビ音、滑らかに語る
John Wayneのトースティング。

10曲目は「I Me Deep」です。
ズシっとしたベースとギターを塾とした
演奏に、John Wayneの滑らかなトース
ティングが魅力的。

John Wayne - I Me Deep


ざっと追いかけてきましたが、いかにも
このアーリー・ダンスホールの時代らしい
重低音のベースを軸とした演奏は、とても
魅力的です。
その渋いバックの演奏に乗せたJohn Wayne
のトースティングも魅力的です。
それほど飛び抜けた個性の持ち主という訳
では無いですが、このアーリー・ダンス
ホールの時代に例え一瞬だとしても輝いた
ディージェイであった事は、間違いがない
ところだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

ECHO MINOTT & JOHN WAYNE - Freestyle at Party Time Radio Show - 2007



○アーティスト: John Wayne
○アルバム: Boogie Down
○レーベル: Radiation Roots
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1983

○John Wayne「Boogie Down」曲目
1. Jailhouse
2. Heavy Rhythm
3. African Princess
4. Bend Your Back
5. Boogie Down
6. Bubble With Me
7. You Too Greedy
8. Go John Wayne Go
9. Murder Style
10. I Me Deep

●今までアップしたJohn Wayne関連の記事
〇Various「Rubadub Revolution: Early Dancehall Productions From Bunny Lee」