今回はTenor Sawのアルバム

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「Wake The Town: Tribute To Tenor Saw」です。

Tenor Saw(本名:Clive Bright)は
80年代後半のダンスホ-ル・レゲエ・
シーンで活躍したシンガーです。

「Stalag」リディムを使った「Ring The
Alarm」や、「Sleng Teng」リディムを
使った「Pumpkin Belly」、「Roll Call」
などのヒット曲を持ち、ルート音より5度
上の高音のキーで歌い切る「アウト・
オブ・キー」という唱法の使い手として
人気を博したシンガーです。

そうした活躍をした彼でしたが、88年に
アメリカのテキサスで腐乱死体で発見され
るというちょっと不幸な亡くなり方をして
います。
1984年から88年というわずか4年、
まだ22歳という活動歴だったそうです。

アーティスト特集 Tenor Saw (テナー・ソウ)

今回のアルバムは1989年にUSの
VP RecordsからリリースされたTenor Saw
の追悼盤です。

バックはRoots Radicsで、演奏はフロリダ
のマイアミにあるDiamond Studio Center
で行われたアルバムで、表題曲の「Wake
The Town」をはじめとして、Tenor Sawの
浮遊感のあるアウト・オブ・キーの
ヴォーカルが楽しめる、好内容のアルバム
となっています。

手に入れたのは、VP Recordsからリリース
されたCDの中古盤でした。

全10曲で収録時間は38分47秒。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

All Songs Written by Tenor Saw (Clive Bright) Except "Kiss An Angel" (Adapted)
All Songs Published by Ultora Sound/Diamond Music Miami, Florida 1989

Executive Producer: Diamond Music
Recorded and Mixed: Diamond Studio Center, Miami, Florida
Engineer: Crucial Bunny 'Tom Tom'

Musicians: Roots Radic
Lead Vocals: Tenor Saw
Harmony: Sugar Minott
Bass: Errol 'Flabba' Holt
Rhythm Guitar: Eric 'Bingy Bunny' Lamont
Lead Guitar: Dwight Pickney
Drums: 'Style' Scott
Keyboards: 'Steelie' Johnson

となっています。

3曲目「Kiss An Angel」を除くすべての
作曲はTenor Saw(本名:Clive Bright)
が担当しています。

エグゼクティブ・プロデューサーは
Diamond Musicとなっており、
レコーディングとミックスはフロリダの
マイアミにあるDiamond Studio Centerで
行われ、エンジニアはCrucial Bunny
'Tom Tom'が担当しています。
レゲエコレクター・コムの表記によると
このアルバムはライヴ・アルバムとなって
いたのですが、もしかしたらDiamond
Studio Centerで行われたライヴなのか?
1曲目の「Dance Hall Feeling」などは、
何となくライヴ感があります。
ただし声援などは入っておりません。

バックは80年代前半に大活躍した
バック・バンドRoots Radicsで、リード・
ヴォーカルにTenor Saw、ハーモニーは
Sugar Minott、ベースはErrol 'Flabba'
Holt、リズム・ギターにEric 'Bingy
Bunny' Lamont、リード・ギターに
Dwight Pickney、ドラムにLincoln
'Style' Scott、キーボードにWycliffe
'Steelie' Johnsonという布陣です。

アルバム・ジャケットに関する記述はあり
ません。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、Roots Radics
の演奏をバックに、Tenor Sawの浮遊感の
あるアウト・オブ・キーのヴォーカルが
冴えるアルバムで、内容は悪くないと思い
ます。

このTenor Sawですが、80年代半ば頃
からジャマイカで流行し始めた、デジタル
のダンスホール・レゲエで注目された
アーティストのひとりで、その独特な
アウト・オブ・キー唱法で人気を博した
シンガーです。
アウト・オブ・キーという歌唱法は、通常
のルート音より5度上の高音のキーで歌い
切るという独特な歌唱法で、それにより
一見調子っぱずれな危ない歌い方をして
いるように感じさせる、ジャマイカで誕生
した歌唱法なんですね。
その元祖ともいえるシンガーが、この
Tenor Sawという人なんですね。

上に書いたように残念な亡くなり方をした
彼でしたが、1984年から88年という
わずか4年でまだ22歳という活動歴
ながら、「Stalag」リディムを使った
「Ring The Alarm」や、「Sleng Teng」
リディムを使った「Pumpkin Belly」、
「Queen Majesty」リディムの「Roll
Call」、「Tempo」リディムの「Fever」、
「Tonight」リディムの「Lots Of Sign」
などの、多くの素晴らしいヒット曲を
放っています。

Tenor Saw - Ring the Alarm


Tenor Saw - pumpkin belly


Tenor Saw - Roll Call


Tenor Saw - Fever


Tenor Saw - Lots Of Sign


短い履歴ながら多くの人たちの心に残る
活躍をしたのが、このTenor Sawという人
なんですね。
この時代にはNitty GrittyやKing Kong
など他にもアウト・オブ・キーの使い手の
シンガーは居ましたが、ちょっと浮遊感の
ある独特の危険な香りのするヴォーカル
が、このTenor Sawの魅力です。
その後も数多く出現したアウト・オブ・
キーのヴォーカリストの中でも、傑出した
魅力を持っていたのが、このTenor Sawと
いう人だったんですね。

今回のアルバムはその副題に「Tribute
To Tenor Saw」と題されているように、
Tenor Sawが亡くなった翌年にリリース
された彼の追悼盤です。
ただこのアルバム、追悼盤というには彼の
代表曲も収められていないし、聴いた印象
としてもちょっと淡白な印象なんですね。
それが何故なのか?ちょっと引っかかって
いました。

その事と関連するかもしれませんが、この
アルバムは上に書いたようにレゲエ
コレクター・コムの表記によるとライヴ・
アルバムとなっていて、フロリダの
マイアミにあるDiamond Studio Centerと
いう所で録音された音源らしいのです。
このあたりはちょっと推測も入りますが、
ライヴというには声援が入っていないの
ですが、そのDiamond Studio Centerと
いう所で行われたライヴのリハーサルの
音源ではないか?そんな気がします。
Roots Radicsのメンバーの数も少なく、
そのあたりも「一発録り」という感じが
するんですね。
ハーモニーにSugar Minottも参加して
いますが、彼もメイン・アクトのひとり
だったのかもしれません。
もしもライヴだとしたら、彼がバック・
ヴォーカルのみで参加するという事は、
ちょっと考えづらいんですね。
1曲目「Dance Hall Feeling」を聴いた
時の音質や、有名な曲の無い淡白さから、
ちょっとそういう推測をしました。

正直なところ追悼盤という事でいえば、
代表曲の「Ring The Alarm」や「Pumpkin
Belly」などが無い事に、ちょっと物足り
無さを感じる内容なんですね。
ただそうした追悼盤という意味の薄れた
今の時代にこのアルバムを聴けば、この
アルバムはまた別の意味を持ってきます。
まあファースト・チョイスは「Ring The
Alarm」や「Pumpkin Belly」などが収め
られたアルバムという事になるでしょう
が、Tenor Sawというヴォーカリストが
気に入って彼の事がもっと知りたいという
人にはこのアルバムの内容は、彼の
パフォーマンスがよく解り、知らない曲も
収められた、好内容のアルバムという事に
なります。
つまりセカンド・チョイスとしては、充分
に有りのアルバムなんですね。

1曲目は「Dance Hall Feeling」です。
バック・バンドRoots Radicsの歯切れの
良いスローなドラミングに、ギターと
キーボードのメロディ、高音を活かした
Tenor Sawの浮遊感のあるヴォーカルが
イイ感じ。
特にこの曲の演奏に何かこもった反響音の
ようなものを感じます。
やはりライヴ(リハーサル?)なのか?

tenor saw dancehall feeling


2曲目は「High Power Sound」です。
リズミカルなドラミングにキーボードと
ギターのメロディ、流れるようにスムーズ
なTenor Sawのヴォーカルがイイ感じ。

HIGH POWER SOUND - TENOR SAW


3曲目は「Kiss An Angel」です。
表情豊かなキーボードとギターの演奏に、
心地の良いワン・ドロップのドラミング、
よく通るTenor Sawのヴォーカルが爽やか
な曲です。

Tenor Saw - Kiss an Angel


4曲目は「Peace And Love」です。
デジタルらしいドラミングに、キーボード
を中心としたメロディ、語りかけるような
Tenor Sawの柔らかいヴォーカルがイイ
感じの曲です。

Tenor Saw - Peace and Love - Diamond LP - 1990


5曲目は「Bad Bwoy」です。
キーボードとギター、時折入るトロン
ボーンのメロディ、流れるようにスムーズ
なTenor Sawの浮遊感のあるヴォーカルが
独特の世界観を作り出している曲です。

tenor saw bad boy


6曲目は表題曲の「Wake The Town」です。
キーボードギターの明るいリズミカルな
メロディに、ノリの良いTenor Sawの
ヴォーカルがイイ感じ。

tenor saw wake the town


7曲目は「Message To All Beginners」
です。
デジタルなドラミングに、ギターと
ベース、キーボードのメロディ、滑らかな
Tenor Sawのヴォーカルがイイ感じ。

Tenor Saw - Message To All Beginners


8曲目は「Wrongs Going On」です。
リリカルなギターのメロディに、スローな
ワン・ドロップのドラミング、表情豊かに
歌うTenor Sawのヴォーカルが魅力的。

Tenor Saw - Wrongs going on


9曲目は「Cool And Loving」です。
キーボードとと思いベース、ギターの
クールなメロディに、伸びやかに歌う
Tenor Sawのナイスなヴォーカルが心地
良い曲です。

TENOR SAW "COOL AND LOVING"


10曲目は「Cool Dub」です。
9曲目「Cool And Loving」のダブです。
おそらくですが、曲数が少なかったので、
9曲目を再編集してダブにミックスし直し
たものと思われます。
ベースを軸としたダブで、頭のダブワイズ
したTenor Sawのヴォーカルがイイ感じ。

tenor saw cool dub


ざっと追いかけてきましたが、やはりTenor
Sawの浮遊感のあるヴォーカルはとても
魅力的で、華があります。
やはりリハーサルか何かの音源なのか、
Tenor Sawのヴォーカルからは緊張感より
もリラックスした感じがうかがえます。

書いたように追悼盤としては代表曲が無く
て、締まりがないのがちょっと残念では
ありますが、それでも短い活動歴だった
Tenor Sawの貴重な音源である事は間違い
ありません。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Tenor Saw live J-Splash 1986


The Tenor Saw Story


Tenor Saw - Ring The Alarm / Fever - Live 1985



○アーティスト: Tenor Saw
○アルバム: Wake The Town: Tribute To Tenor Saw
○レーベル: VP Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1989

○Tenor Saw「Wake The Town: Tribute To Tenor Saw」曲目
1. Dance Hall Feeling
2. High Power Sound
3. Kiss An Angel
4. Peace And Love
5. Bad Bwoy
6. Wake The Town
7. Message To All Beginners
8. Wrongs Going On
9. Cool And Loving
10. Cool Dub

●今までアップしたTenor Saw関連の記事
〇Tenor Saw, Nitty Gritty「Tenor Saw Meets Nitty Gritty」
〇Tenor Saw「Fever」
〇Tenor Saw「Lives On: A Tribute To Tenor Saw」