今回はJohnny Osbourneのアルバム

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「Nightfall」です。

Johnny Osbourne(本名:Errol Osbourne)
は60年代のロックステディの時代から
80年代のデジタルのダンスホール・
レゲエの時代まで長く活躍したシンガー
です。
ロックステディの時代にはThe Sensations
のメンバーとして「Come Back Darling」
などのヒット曲を残して活躍するのです
が、70年にデビュー・アルバム
「Come Back Darling」をリリースした
その日にカナダに移住してしまい、カナダ
で音楽活動をした後に、70年代の後半に
再びジャマイカに戻って来て音楽活動を
再開したという人です。

その後は79年にStudio Oneからアルバム
「Truths And Rights」を出して復活。
ベテランながらダンスホール・レゲエから
デジタルのダンスホール・レゲエの時代
にも対応し、長く活躍を続けたのがこの
Johnny Osbourneという人なんですね。

ネットのDiscogsによると、共演盤を
含めて25枚ぐらいのアルバムと、
488枚ぐらいのシングル盤を残して
います。

アーティスト特集 Johnny Osbourne (ジョニー・オズボーン)

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Johnny Osbourne ‎– Truths And Rights (1979)

今回のアルバムは1981年にUSの
Jah Guidanceというレーベルからリリース
されたJohnny Osbourneのソロ・アルバム
です。

プロデュースはLinval Thompsonで、
バックはRoots Radics、ミックスは
Scientistが担当したアルバムで、表題曲
の「Nightfall」をはじめとしてこの時代
らしいRoots Radicsのスローなワン・
ドロップのリズムに、Scientistのハード
なミックスに乗せた、Johnny Osbourneの
魅力的なヴォーカルが堪能出来るアルバム
となっています。
なお何曲かは前半はJohnny Osbourneの
歌、後半はそのダブのエクステンデッド・
ヴァージョン(別名:ショーケース・
スタイル)の楽曲となっています。

手に入れたのは2019年にEUの
Thompson SoundからリイシューされたLP
(新盤)でした。

なおこの81年にはこのアルバムに収め
られた「Nightfall」や「Love Comes &
Goes」、「Girl Of My Complexion」、
「Kiss Somebody」、「Rude Boy」などの
曲と、(おそらく)別の曲が収められた
「In Nah Disco Style」という、非常に
似たアルバムがUKのCha Chaという
レーベルからリリースされています。

Side 1が5曲、Side 2が4曲の全9曲。
書いたように何曲かは前半は歌、後半は
ダブのエクステンデッド・ヴァージョン
(別名:ショーケース・スタイル)の楽曲
になっています。
Side 1の5曲目「Kiss Somebody」と
Side 2の2曲目「Nightfall」、4曲目の
「Little Lover」がそのエクステン
デッド・ヴァージョンの曲のようです。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Drums: Style Scott, Santa
Bass: Errol 'Flabba' Holt
Organ: Winston Wright
Piano: Gladstone Anderson
Lead Guitar: Bo Pee
Rhythm Guitar: Sorel
Percussion: Sky Juice

Recorded at: Channel One
Mixed at: King Tubby's
Mixed by: Scientist
Edited by: Bill Garnett
Mastered by: Paul Khouri

Producer: Linval Thompson

Cover Illustration & Graphics: T. Smith

となっています。

バック・バンドはこの80年代の
アーリー・ダンスホールの時代に活躍した
Roots Radicsと思われます。
メンバーはドラムにStyle ScottとCarlton
'Santa' Davis、ベースにErrol 'Flabba'
Holt、オルガンにWinston Wright、ピアノ
にGladstone Anderson、リード・ギターに
Winston 'Bo Pee' Bowen、リズム・ギター
にSorel (Noel 'Sowell' Bailey)、
パーカッションにSky Juice (Christopher
Blake )という布陣です。

レコーディングはChannel Oneで行われ、
ミックスはKing Tubby'sで行われ、
ミックス・エンジニアはScientistが担当
しています。

プロデューサーはLinval Thompson。

ジャケット・デザインとイラストは
Tennison Smithとなっています。
むら雲に隠れる月の出た夜中に、男が
シャベルを地面に突き刺しているような
印象的なジャケットです。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、この時代に
流行したRoots Radicsのスローなワン・
ドロップのリズムに乗せた、ベテラン
らしいJohnny Osbourneの味わいのある
ヴォーカルが魅力的なアルバムで、内容は
とても良いと思います。

このJohnny Osbourneですが、ロック
ステディの時代にThe Sensationsの
リード・ヴォーカルとして人気を博した
ものの、70年にデビュー・アルバム
「Come Back Darling」をリリースした
その日にカナダに移住してしまい、その後
の70年代のルーツ・レゲエの時代は
カナダで音楽活動をしていたという、
変わった経歴の持ち主なんですね。

ちなみに彼が何故カナダに移住してしまっ
たかというと、ロックステディという音楽
を作った主要アーティストのJackie Mittoo
やLyn Taitなどがカナダに住した為だと
思われます。
彼等はさらなる成功を求めて拠点をカナダ
に移してしまったんですね。
その為スカの後に誕生したジャマイカの
音楽ロックステディは、66年から68年
のわずか3年間という短期間で終わって
しまったんですね。

ロックステディ - Wikipedia

そのロックステディの後に誕生したのが、
レゲエだったんですね。

そのレゲエの初めの頃にはJohnny Osbourne
はジャマイカにおらず、カナダで音楽活動
をしていたんですね。
The Ishan Peopleなどのグルーで活動し、
そのグループで2枚のアルバムをリリース
した後79年にグループが解散し、
Prince Jammyの誘いでジャマイカに帰国
したんだそうです。

ネットのYouTubeを「The Ishan People」
で検索すると、何曲かがアップされていま
した。

Ishan People - Rainbow


Ishan People - Trenchtown


聴いてみるといく分レゲエ色を持った
サウンドのグループのように感じました。

ようやく彼がジャマイカに戻って来たの
は、ルーツ・レゲエの時代も終わりに近づ
いた70年代の後半の事でしたが、ここ
から彼の快進撃が始まります。
79年に当時落ち目だったStudio Oneから
アルバム「Truths And Rights」を出して
復活した事をきっかけに、当時ルーツ・
レゲエに代わって流行り始めた、ダンス
ホール・レゲエで人気のシンガーへと
なって行くんですね。
その快進撃はアーリー・ダンスホールから
さらにデジタルのダンスホール・レゲエに
なってからも続き、Johnny Osbourneは
レゲエの歴史に名を遺す大シンガーの
ひとりへとなって行くんですね。

今回のアルバムはそうしたJohnny Osbourne
のもっとも勢いのあった時代の1枚で、
彼の代表作のひとつともいえるアルバム
です。
このアルバムはあのレゲエ本「Roots Rock
Reggae」にも紹介されているアルバムで、
そこには大場さんという人の文章で次の
ように書かれていました。

「90年前後にジャミーズ・レーベルで
ヒットを量産したためダンスホール・
シンガーという印象も強いが、本作は多く
のルーツ・レゲエの作品を手掛けている
リンヴァル・トンプソンがプロデュース
したルーツ・レゲエ色の濃いトラックが
満載の作品。バックの演奏やサイエン
ティストのミックスも申し分ないが、
やはり彼の歌の上手さが光る。アルバム・
タイトル曲はロッカーズ・ハイファイも
サンプリングしていた。」

個人的にはLinval Thompsonというと
Henry 'Junjo' Lawisと共にアーリー・
ダンスホール・レゲエを作り上げた人と
いう印象が強いですが、ルーツ・レゲエの
時代から活躍する人なので、このアルバム
の曲が「ルーツ・レゲエ色の濃い
トラック」が多いというのは解るところが
あります。
バックはRoots Radicsで、彼らというと
スローなワン・ドロップのリズムがウリの
バンドですが、今回のアルバムではスロー
ではあるけれどいく分ミディアム寄りの
スローな曲が多い印象です。
曲調も哀愁を帯びたルーツ・レゲエを感じ
させるような曲が多いんですね。
リリース年が81年という事から見ても、
ルーツ・レゲエとアーリー・ダンス
ホール・レゲエの時代の、境目ぐらいの
アルバムだと思います。
(歌詞的にはタイトルで見る限りラヴ・
ソング系の歌詞が多そうで、そうした視点
で見るとダンスホールのアルバムという事
になりそうです。)

その哀愁を帯びたメロディに、Johnny
Osbourneらしい感情をうまく乗せた大人の
ヴォーカルが光るアルバムに仕上がって
います。

またScientistのエフェクトが派手目の
ミックスも、このアルバムをグッと魅力的
なものにしています。
特に表題曲の「Nightfall」や「Kiss
Somebody」、「Little Lover」の前半が歌
で後半がダブのエクステンデッド・
ヴァージョンの3曲は、この時代にノリ
ノリで活躍していたScientistの本領を
発揮した曲で、このアルバムの聴きどころ
となっています。

Side 1の1曲目は「Reach The Top」です。
ギターと重いベース、キーボードを中心と
したミディアム・テンポのワン・ドロップ
に、Johnny Osbourneの感情を乗せた
ヴォーカルがイイ感じ。

Johnny Osbourne - Reach The Top


2曲目は「Rude Boy」です。
歯切れの良いドラミングに、キーボードと
ギターを中心としたメロディ、表情豊かな
Johnny Osbourneのヴォーカルが魅力的。

Johnny Osbourne - Rude Boy


3曲目は「Love Comes & Goes」です。
心地良いドラミングに、ピアノとギター、
キーボードを中心としたユッタリとした
メロディ、伸びやかなJohnny Osbourneの
歌声がイイ感じ。

Love Comes and Goes


4曲目は「Girl Of My Complexion」
です。
華やかなホーンとギター、キーボードの
メロディに、心地良いドラミング、
Johnny Osbourneの伸びやかで感情を
うまく乗せたヴォーカルがとても魅力的。

Johnny Osbourne - girl of my complexion


5曲目は「Kiss Somebody」です。
この曲は前半がJohnny Osbourneの歌、
後半がScientistのダブというエクステン
デッド・ミックスの曲です。
エコーの効いたワン・ドロップの
ドラミングに、ギターとキーボードを中心
とした陰影のあるメロディ、Johnny
Osbourneの表情豊かなヴォーカルがダンス
ホールの湿った空気感を感じさせる曲
です。
エコーなどを効かせた後半のScientistの
ハード目のミックスも、この時代の彼の
勢いを感じさせてとても魅力的です。

Kiss Somebody (Extended)


ちなみにこの曲はScientistの有名な
「漫画ジャケ」シリーズの3作目のダブ・
アルバム「Scientist Meets The Space
Invaders」のラストの曲「Quasar」の
原曲のようです。

Scientist -Quasar 1981


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Scientist ‎– Scientist Meets The Space Invaders (1981)

Side 2の1曲目は「Trying To Turn Me
On」です。
漂うようなキーボードと刻むような
ギター、ピアノのメロディ、歯切れの良い
ドラミング、Johnny Osbourneの感情を
乗せた表情豊かなヴォーカル。

Johnny Osbourne - Trying To Turn Me ON


2曲目は表題曲の「Nightfall」です。
この曲もエクステンデッド・ヴァージョン
の曲です。
エコーの効いたスローなワン・ドロップの
ドラミングに、キーボードとギターを中心
としたメロディ、節回しの効いたJohnny
Osbourneのナイスなヴォーカルがグッと
来る曲です。
後半はベースを軸とした渋めのダブと
なっています。

Johnny Osbourne - Nightfall (Cha Cha 12")


3曲目は「Back Off (Ringcraft)」です。
不穏な空気感のキーボードとギターの
メロディ、叩きつけるようなワン・
ドロップのドラミングにパーカッション、
伸びやかなJohnny Osbourneのドラミング
が魅力的。

Johnny Osbourne - Back Off (Ringcraft)


4曲目は「Little Lover」です。
こちらもエクステンデッド・ミックスの曲
です。
漂うようなキーボードのメロディと、
歯切れの良いドラミング、よく通るJohnny
Osbourneのナイスなヴォーカル。

Johnny Osbourne - Little Lover (Discomix) 1981


ざっと追いかけて来ましたが、まだどこか
ルーツの香りを残しているものの、
ちょっと湿ったアーリー・ダンスホールの
匂いも感じさせるサウンドで、そうした
演奏をバックにJohnny Osbourneの聴か
せるヴォーカルが冴え渡る、とても魅力的
なアルバムです。
Johnny Osbourneのヴォーカルには、常に
曲に一味を足してくれるような、ベテラン
らしい味わいがあります。
特に表題曲の「Nightfall」のヴォーカル
は白眉の出来で、このヴォーカリストの
実力を証明しています。
彼がこの後もシンガーとして大活躍したの
は、むしろ当然の事だったのかもしれま
せん。

またプロデュースにLinval Thompson、
バックにRoots Radics、ミックスに
Scientistと揃ったバック陣は、いかにも
このアーリー・ダンスホールの時代なら
ではのサウンドを作り上げており、その
あたりもこのアルバムの大きな魅力と
なっています。

おそらくJohnny Osbourneのアルバムの中
でも、特に聴いておくべきアルバムの
ひとつではないかと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Johnny Osbourne - Truth & Rights @ Summerjam 2014



○アーティスト: Johnny Osbourne
○アルバム: Nightfall
○レーベル: Thompson Sound
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Johnny Osbourne「Nightfall」曲目
Side 1
1. Reach The Top
2. Rude Boy
3. Love Comes & Goes
4. Girl Of My Complexion
5. Kiss Somebody
Side 2
1. Trying To Turn Me On
2. Nightfall
3. Back Off (Ringcraft)
4. Little Lover

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〇Johnny Osbourne「Come Back Darling Meet Warrior」
〇Johnny Osbourne「Dancing Time」
〇Johnny Osbourne「Smiling Faces」
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