今回はEarl Zeroのアルバム

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「Only Jah Can Ease The Pressure」
です。

Earl Zero(本名:Earl Anthony Johnson、
1953年生まれ)は70年代のルーツ・
レゲエの時代から活躍するレゲエ・
シンガーです。
Johnny Clarkeの大ヒット曲の「None Shall
Escape The Judgment」は、このEarl Zero
が作った曲として知られています。

ネットのDiscogsによると、4枚ぐらいの
ソロ・アルバムと、42に枚ぐらいの
シングル盤を残しています。
またEarl Loveという名義で1枚の
シングル盤を残しています。

Earl Zero - Wikipedia

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Earl Zero With The Soul Syndicate ‎– Visions Of Love (1980)

バックを務めたSoul Syndicateについても
書いておきます。

Soul Syndicateはジャマイカの伝説的な
ギタリストEarl 'China' Smithをリーダー
とするグループです。
グループとしてはアルバム「Harvest
Uptown」など数枚のアルバムをリリース
している他、Niney The Observerや
Keith Hudson、Earl Zeroなど多くの
バックを務める活躍をしています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て13枚ぐらいのアルバムと、142枚
ぐらいのシングル盤をリリースしていま
す。

Soul Syndicate - Wikipedia

High Times (ハイ・タイムズ)

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Soul Syndicate ‎– Harvest Uptown / Famine Downtown (1977)

今回のアルバムは1979年にジャマイカ
のFreedom Soundsからリリースされた
Earl Zeroのファースト・アルバムです。

プロデュースはBertram Brownで、バック
はSoul Syndicateが担当したアルバムで、
表題曲ともいえる「Only Jah」や
「2000 Years」など、70年代後期の
ディープなルーツ・レゲエが堪能出来る
内容の濃いアルバムとなっています。

手に入れたのは2019年にフランスの
Iroko RecordsからリイシューされたLP
(新盤)でした。

なお今回のアルバムですが、同じ79年に
UKのStudentというレーベルから、別の
ジャケットで「In The Right Way」という
タイトルでリリースされているようです。
ジャケットがまったく違って、中腰で
ギターを持ってパイプでマリファナを吸っ
ているEarl Zeroの写真と、惑星などが
書かれたスペーシーなイラストの
ジャケットとなっています。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Produced by: Bertram Brown

Musicians: Earl China Smith, Fullwood and The Soul Syndicate

となっています。

プロデュースはBertram Brownで、
ミュージシャンはギターの
Earl 'China' SmithとFullwood and
The Soul Syndicateとなっています。
それ以外のメンバーなどの記述はありま
せん。

なおこのアルバムはネットのDiscogsに
よると、84年に日本のP-Vine Special
というレーベルから「オンリー・ジャー」
というタイトルでリリースされています
が、バンドのメンバーやミキサーについて
も書かれていました。
それによるとベースはGeorge Fullwood、
ドラムはCarlton 'Santa' Davis、
キーボードはJah McKaya、リード・ギター
はEarl 'Chinna' Smith、パーカッション
はSkully、リズム・ギターはTony Chin、
そしてミックスはScientistが担当して
いたようです。
後述しますが、この布陣は同じ79年
ぐらいにFreedom Soundsからリリースされ
たPhillip Frazerのアルバム「Come
Ethiopians」とほぼ同じ布陣です。

なおこちらもジャケット・デザインは
オリジナルとは違っていて、デザインは
Kameo Inoue、ライナー・ノーツは高地明
という方のようです。

残念ながらジャケット・デザインについて
の記載はありませんでした。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、70年代後半
のルーツ・レゲエの時代としても後半に
作られたアルバムですが、ルーツ・レゲエ
ならではの魅力的なグルーヴ感を持った
アルバムで、聴いて損のないアルバムだと
思います。

このEarl Zeroですがこれまでに4~5枚
ぐらいのアルバムしか残していない
シンガーで、しかもルーツ期に残した
アルバムはこのアルバムと80年の
「Visions Of Love」のたった2枚ぐらい
しかないアーティストなんですね。
(それ以降のアルバムだと2010年と
2011年に各1枚と、ずいぶん先になり
ます。)
その実績だけを見ると大した事のない
シンガーのように見えるEarl Zeroです
が、その曲を聴くとずいぶん印象が変わり
ます。

あの「None Shall Escape The Judgment」
などもそうですが、やはりEarl Zeroの
楽曲ってルーツ・レゲエ特有なグルーヴ感
のようなものがあり、ちょっとハマるもの
があるんですね。

The Soul Syndicate with Earl Zero - None Shall Escape the Judgment


余談ですが、私は10年ぐらい前に再び
レゲエをよく聴くようになったのですが、
一時期Johnny Clarkeの歌うこの「None
Shall Escape The Judgment」に惹かれ
て、Johnny Clarkeのアルバムを買い
漁った事がありました。
いろんな音楽を聴いた後で再び戻って来た
のは、このルーツの時代のレゲエには他の
音楽に無い強烈で独特のグルーヴ感が
あったからなんですね。

ちなみにJohnny Clarkeの「None Shall
Escape The Judgment」は、「フライング・
シンバル(Carlton 'Santa' Davisが開発
したドラム奏法)」の名曲としてよく知ら
れています。

Johnny Clarke - None Shall Escape The Judgement


今回のアルバムはその「None Shall
Escape The Judgment」も収められた80年
のセカンド・アルバム「Visions Of Love」
よりは多少地味な印象もありますが、
ネットのレゲエレコード・コムで試聴して
みたところけっこう良い曲が揃っていて、
ぜひ手に入れたいと思い購入したアルバム
でした。

今回のアルバムはその「Visions Of Love」
とともに、レゲエ本「Roots Rock Reggae」
に紹介されているアルバムで、そこには
「智」さんという方の文章で次のように
書かれていました。

「70年代後期~ルーツ・レゲエの円熟
期、かたくなまでにハード・コアな表現に
こだわり異彩を放ったレーベル、フリー
ダム・サウンズ。中でも飛び切りハードな
作品がこれ。時に(恍惚のあまり?)キー
さえ外し、情念の赴くまま歌い上げ、
シャウトするヴォーカル、ソウル・
シンジケートによるソリッドな演奏、
キング・タビーによる骨太ミックス、三位
一体によるゲットー最深部からのハード
コア・ルーツ・レゲエ。コマーシャルな
要素、皆無。」

実はこの文章を読むまで、このアルバムが
「ハードコア」なアルバムだという認識が
ありませんでした。
普段私はこうしたレゲエばかり聴いている
ので、こうしたサウンドがレゲエ、特に
ルーツの本流だと思っており、ハードコア
というとナイヤビンギなどのディープな
サウンドのイメージだったんですね。
ただ普通に聴いていたこのサウンドこそが
ハードコアであり、私がこのレゲエという
音楽に戻って来たのは、まさにこのハード
でディープなサウンドが聴きたかったから
だと、あらためて思い当たりました。
このハードでコアなサウンドは、まさに
ルーツ・レゲエという音楽だから生み出せ
た、独特のグルーヴ感を持ったサウンド
なんですね。

私自身も今回のアルバムを聴いて、改めて
自分の「初心」を思い出した気がしまし
た。

まずはこのアルバムについて書く前に、
少しEarl Zeroという人のアルバム以前の
シングル盤の履歴を調べたので、その
あたりを書いてみたいと思います。
このEarl Zeroという人ですが、ネットの
Discogsのシングル曲の履歴を見る限り
では、その履歴は1975年ぐらいから
始まっているようです。
75年に「Righteous Works」と「Please
Officer」の2曲、76年に「City Of
The Weak Heart」と「Home Sweet Home」、
「Heart Desire」の3曲、77年に
「Shackles & Chains」(今回のアルバム
に収録)と「Vigion Of Love」の2曲、
78年に「Blackbird」(今回のアルバム
に収録)の1曲をリリースしています。

EARL ZERO - Righteous Works [1975]

↑この曲はPhillip Frazerのアルバム
「Come Ethiopians」にも収められて
いる曲のようです。

EARL ZERO - Please Officer [1975]


EARL ZERO - City Of The Weak Heart [1976]


Earl Zero - Home Sweet Home


Earl Zero - Heart Desire


EARL ZERO - Vision Of Love [1977]

↑80年のアルバムの表題曲「Vision Of
Love」の原曲のようです。ちなみに
タイトルは「Vigion Of Love」となって
います。
↓が80年のアルバムの曲です。

Earl Zero - Visions Of Love + Dub

↑の曲と較べると、ホーンなども入って、
メロディも微妙に違うようです。

実際にシングル盤の曲もいろいろと聴いて
みましたがどの曲もとても内容が良く、
彼がルーツのソング・ライターとして優れ
た才能を持っていた事が解ります。

こうして彼のシングル盤の履歴を見て行く
と、年に2,3曲ずつですがシングル盤を
出して、ようやくリリースされたのが今回
のアルバムなんですね。
先のレゲエ本の文章には「時に(恍惚の
あまり?)キーさえ外し、情念の赴くまま
歌い上げ、シャウトするヴォーカル」と
書かれていますが、彼Earl Zeroにとって
は、とても思い入れのあるレコーディング
であったのではないかと推測されます。
全編ひたすら当時のラスタファリズム
らしい「Jah(神)への愛」に貫かれた
アルバムですが、ルーツ・レゲエの
グルーヴ感が良い形で発揮された、とても
好内容のアルバムに仕上がっています。

なおこのアルバムのSide 1の5曲目
「2000 Years」はこのアルバムの中でも特
に印象的な曲のひとつですが、この曲は
おそらく同79年に同じFreedom Sounds
からリリースされたPhillip Frazerの
アルバム「Come Ethiopians」で、
Phillip Frazerによってカヴァーされて
いる曲なんですね。

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Phillip Frazer ‎– Come Ethiopians (1979?)
Phillip Frazer「Come Ethiopians」 : つれづれげえ日記

PHILLIP FRASER - 2000 Years [1977]


実は私はこのPhillip Frazerの曲の方を先
に聴いていて、アルバムを聞いた時に
「あの曲だ!」と思って今回のアルバムを
購入しました。
ちなみにPhillip Frazerは、↑にあるEarl
Zeroのシングル曲「Righteous Works」
も、この「Come Ethiopians」という
アルバムでカヴァーしているようです。

さらにもう一つミニ情報を書いておくと、
1996年にレゲエ・リイシュー・
レーベルBlood & Fireからリリースされ
た、Freedom Soundsのダブを集めた
コンピュレーション・アルバム「Freedom
Sounds In Dub」には、このアルバムに
収められた曲のダブが収められています。

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King Tubby & Soul Syndicate ‎– Freedom Sounds In Dub (1996)

11曲目「Tinson Pen Dub」はこの
アルバムの2曲目「Black Bird」、
12曲目「King Tubby's Key」はこの
アルバムの3曲目「Coming Of Jah」の
ダブです。
このあたりも聴き較べてみると面白いかも
しれません。

この70年代後半はギターのEarl 'China'
SmithやベースのGeorge Fullwoodと中心と
したThe Soul Syndicateが活躍した時代
で、Freedom Soundsなどのジャマイカの
コアなレーベルに貴重な音源を多く残して
います。
The RevolutionariesやThe Aggrovatorsと
いったバック・バンドと較べると、いく分
地味な印象のThe Soul Syndicateですが、
ある意味地道に70年代のルーツ・レゲエ
を支えたバック・バンドだと言えると思い
ます。

Side 1の1曲目は「Only Jah」です。
ミリタントなドラミングに、ギターの刻む
ようなメロディとパーカッション、心の奥
から絞り出すようなEarl Zeroのちょっと
ハズし気味にも聴こえるヴォーカル…。
この曲の歌詞がそのままアルバムの
タイトルになっているようです。
Scientistと思われる

Earl Zero - Only Jah


2曲目は「Black Bird」です。
ミリタントなドラミングから、表情豊かな
ギターとピアノを中心としたメロディ、
心地の良いパーカッション、感情の乗った
Earl Zeroの味わいのあるヴォーカルが
イイ感じ。
書いたように78年のシングル曲です。

Earl zero-Black bird


3曲目は「Coming Of Jah」です。
ギターとピアノを中心としたメロディに、
心地良いパーカッション、伸びやかな
Earl Zeroの節回しの効いたヴォーカルが
イイ感じ。

Earl Zero - 1979 - In The Right Way - A3 - Coming Of Jah


4曲目は「In The Right Way」です。
UKのレーベルStudentからのリリース
では、表題曲となっている曲です。
心地良いドラミングにリリカルなピアノと
ギターを中心としたメロディにリズミカル
なパーカッション、伸びやかなEarl Zero
のノリの良いヴォーカルが魅力的。

Earl Zero - 1979 - In The Right Way - A4 - In The Right Way


5曲目は「2000 Years」です。
心地良いギターとピアノを中心にした
メロディに、フライング・シンバルな
ドラミング、Jahへの想いを歌うEarl
Zeroのちょっと切ないヴォーカルが胸を
打つ曲です。

Earl Zero 2000 Years


書いたようにPhillip Frazerも歌って
いる魅力的な曲です。

Side 2の1曲目は「Come Away」です。
心地良いミリタントなドラミングに、心地
良いパーカッション、ギターとピアノの
奏でるメロディに、伸びやかで心地良さ
そうに歌うZeroのヴォーカルがイイ感じ。
途中にギター・ソロなどが入る、ちょっと
ロック色のある曲です。

Earl Zero - Come Away - 1979


2曲目は「Black Rose」です。
ミリタントなドラミングに、浮遊感のある
キーボードと刻むようなギターのメロディ
に、ちょっと上ずり気味にも感じる
Earl Zeroのヴォーカル。

Earl Zero - 1979 - In The Right Way - B2 - Black Rose


3曲目は「Son Be Careful」です。
ミリタントなドラムに、ホーンとギター、
ピアノのミディアム・テンポのメロディ、
伸びやかで心地良さそうなEarl Zeroの
ヴォーカルがイイ感じ。

Earl Zero - Son be careful


ちなみにYouTubeを検索していてSylvan
Whiteのこの曲のカヴァーを見つけまし
た。
このSylvan Whiteも「Africans Unite」
などの名曲を残している、ルーツ・レゲエ
の時代に活躍した「最深部系」の
アーティストです。

Son Be Careful / Version - Sylvan White


4曲目は「Shackles And Chains」です。
この曲も77年のシングル曲です。
心地良いミリタント・ビートのドラミング
に、チャラチャラとした金属音の
エフェクト、浮遊感のあるキーボードと
ピアノ、ギターのメロディ、Earl Zeroの
伸びやかなヴォーカルがグッド。

Earl Zero ‎- Shackles & Chains


5曲目は「Get Happy」です。
心地良いドラミングに、刻むようなギター
とキーボードのメロディ、伸びやかに声を
張ったEarl Zeroののヴォーカルがイイ
感じ。

Earl Zero - 1979 - In The Right Way - B5 - Get Happy


ざっと追いかけて来ましたが、ある意味
気恥ずかしくなるくらい「Jah賛歌」が
並ぶアルバムですが、そのあまりにも
ピュアな心情が歌われているところが、
このアルバムの魅力かもしれません。
「ゲットー最深部」の癒しの言葉が、この
アルバムにはあります。
それが今の時代に聴いても人を惹きつける
魅力なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Earl Zero - Visions of Love



○アーティスト: Earl Zero
○アルバム: Only Jah Can Ease The Pressure
○レーベル: Iroko Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1979

○Earl Zero「Only Jah Can Ease The Pressure」曲目
Side 1 (Time: 18:14)
1. Only Jah
2. Black Bird
3. Coming Of Jah
4. In The Right Way
5. 2000 Years
Side 2 (Time: 16:00)
1. Come Away
2. Black Rose
3. Son Be Careful
4. Shackles And Chains
5. Get Happy

●今までアップしたEarl Zero関連の記事
〇Earl Zero With The Soul Syndicate「Visions Of Love」
●今までアップしたThe Soul Syndicate関連の記事
〇Earl Zero With The Soul Syndicate「Visions Of Love」
〇Soul Syndicate (Black Roots Players)「Ghetto-Ology Dubwise」
〇Soul Syndicate「Friends & Family」
〇Soul Syndicate「Harvest Uptown / Famine Downtown」
〇Soul Syndicate「Was, Is & Always」
〇King Tubby & Soul Syndicate「Freedom Sounds In Dub」
〇Keith Hudson & The Soul Syndicate「Nuh Skin Up」
〇Black Slate Meets Soul Syndicate「Moodie In Dub Vol.1」