今回はRas Michael & The Sons Of Negus
とJazzboe Abubakaのアルバム

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「Tribute To The Emperor」です。

Ras Michael & The Sons Of Negusは
レゲエの中でも特にディープな、ラスタ
ファリアンの集会音楽「ナイヤビンギ」の
グループとして知られています。
リーダーのRas Michael(本名:Michael
George Henry)は、レゲエという音楽が
誕生する以前の60年代からすでにこの
The Sons Of Negusを率いて活動し、
Bob MarleyやBurning Spearなどの
ルーツ・レゲエのアーティストにも多大
な影響を与えたのが、このRas Michael
なんですね。
1974年にDadawah名義のアルバム
「Peace And Love」でアルバム・デビュー
して以来、Lee Perryのプロデュースした
「Love Thy Neighbour」など、数々の
印象的なアルバムを残して来たのがこの
Ras Michael & The Sons Of Negusです。

ネットのDiscogsによると、Ras Michael
& The Sons Of Negus名義で、共演盤を
含めて18枚ぐらいのアルバムと、21枚
ぐらいのシングル盤、Ras Michael名義で
4枚ぐらいのアルバムと、7枚ぐらいの
シングル盤、またThe Sons Of Negus名義
で2枚ぐらいのアルバムと、13枚ぐらい
のシングル盤、さらにDadawah名義で1枚
ぐらいのアルバムと、2枚ぐらいの
シングル盤を残しています。

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Dadawah ‎– Peace And Love: Wadadasow (1974)

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Ras Michael & The Sons Of Negus ‎– Love Thy Neighbour (1979)

Ras Michael - Wikipedia

Jazzboe Abubakaに関しては今回の
アルバムに関して以外、ネットのDiscogs
には記録がありません。
今回のアルバムのプロデュースをと、
このアルバムの全ての曲がTesfa Zion
(Ras Michaelの別名)との共作になって
いる事しか解りませんでした。

今回のアルバムは1976年にUKの
Trojan Recordsからリリースされた
Ras Michael & The Sons Of Negus名義と
しては3枚目ぐらいにあたるアルバム
です。
(The Sons Of Negus名義とDadawah名義
のアルバムを含めると、通算5枚目ぐらい
のアルバムです。)

プロデュースはJazzboe Abubakaで、
女性とのデュエット曲から本格的な
ナイヤビンギのインスト曲まで、かなり
ヴァラエティに富んだ内容で、うまく彼ら
の音楽ナイヤビンギの面白さを伝える内容
のアルバムとなっています。

手に入れたのは日本のP-Vine Records
からリリースされたCD(新盤)でした。
付いていた帯には次のような文章が書かれ
ていました。

「ジャー、ラスタファーライ!伝統的な
ラスタ・ミュージックと先鋭的レゲエ・
サウンドが融合し、壮大なスケールの
ラスタ・レゲエが現われ出た。エンペラー
=ジャーの神に捧げた記念碑的アルバム
だ。」

ちなみにこのアルバムは以前に中古の
レコードを販売するレゲエコレクター・
コムで、LPでも購入していました。

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Ras Michael & The Sons Of Negus With Jazzboe Abubaka - Tribute To The Emperor (LP)

全10曲で収録時間は32分38秒。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

A Black Production - Produced by Jazzboe Abubaka
Recorded at Lloyd Coxsone's Studios, Kingston, Jamaica

という記述があります。

プロデュースはA Black Productionの
Jazzboe Abubakaとなっています。
レコーディングはジャマイカのキングス
トンにあるLloyd Coxsone's Studiosで
行われています。

またすべての曲の作曲がJazzboe Abubaka
とTesfa Zion(Ras Michaelの別名)との
共作になっています。

このJazzboe Abubakaという人物に対して
は不明な事が多いです。
おそらくA Black Productionという
レーベルのプロデューサーであるらしい
事、曲がすべてTesfa Zionとの共作に
なっている事以外は、記載からは解らない
んですね。
はじめは1曲目「Gabrail-A-Alma」を一緒
に歌っている女性シンガーかと思ったの
ですが、どうも違うようです。

録音に参加したメンバーやジャケットの
グラフィックに関する記述が無いのは、
ちょっと残念なところです。

ちなみにこのアルバムの翌年にリリース
された「Kibir Am Lak」には、参加
メンバーについて次のような記述があり
ます。

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Ras Michael & The Sons Of Negus - Kibir Am Lak (1977)

Musicians:
Trap Drums: Mickey Richards
Guitars: Earl 'Chinna' Smith, Sweeney ' The Man' Williams, Clarence Weirs
Keyboards: Bernard 'Touter' Harvey, Neville Hinds
Bass: Robbie Shakespeare
Trumpet: David Madden
Saxophone: Glen Da Costa
Ikety Funde: Bro. 'I' Jack, Bro. 'I' Marts
Bass Funde: Bro. Sydney 'Rasta' Wolfe
Repeter & Lead Vocal: Ras Michael

この時代の録音は参加メンバーが流動的
なので、参考程度に見ておいてください。

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裏ジャケ(LP)

さて今回のアルバムですが、Ras Michael
関連のナイヤビンギのアルバムの中でも
聴き易い充実した内容で、なかなか良い
アルバムだと思います。

このレゲエの中でも特殊なナイヤビンギと
いうジャンルですが、有名なグループと
個人はほぼ3つぐらいしかないんですね。
ひとつはこのRas Michael & The Sons Of
Negus(あるいはRas Michael個人)、
もうひとつはパーカッショニストの
Count Ossieが率いるCount Ossie & The
Mystic Revelation Of Rastafari(彼が
亡くなって以降はMystic Revelation Of
Rastafari)、そしてサックス奏者の
Cedric 'Im' Brooksが率いるThe Light
Of Sabaの3つです。
この3つのグループはリーダーによって
多少色合いは違いますが、リピーターなど
の多くの打楽器を使って聞き手を瞑想空間
に引き込むような演奏をしているところに
特徴があります。
演奏はどちらかというと長く、アフリカ色
の強いディープなサウンドなんですね。

その中でももっともポピュラリティの強い
演奏をしたのがこのRas Michael & The
Sons Of Negusなんですね。
彼の音楽はあのBob MarleyやBurning Spear
などにも影響を与えたと言われています。

一説にはナイヤビンギという言葉は「白人
に死を」という意味だとも言われています
が、こうしたアフリカ色の強いサウンドが
レゲエという音楽の根底にあった事で、
他の音楽に無い独自性がレゲエにはあり、
それが世界中のリスナーを惹きつける原動
力となったんですね。

Ras Michaelと女性ヴォーカルの絡みが
印象的な1曲目「Gabrail-A-Alma」から、
インスト・ナンバーを挟んで、いかにも
ナイヤビンギ調の3曲目「Tennaeslyn
(Americ)」、一転してソウルフルな
4曲目「Fa-fa-fa, I Want You」、心地
良いドラミングに茫洋としたトロンボーン
が印象的な5曲目「Tribute To
Rastafori」、エモーショナルなトロン
ボーンが印象的な6曲目「Tena In
Love」、ナイヤビンギらしい演奏の
7曲目「Keep Cool Babylon」、Chinnaと
思われるギターを中心としたインスト曲
8曲目「Needs Understanding」、
ギターと漂うようなトロンボーンのコラボ
が素晴らしいインスト曲10曲目「Rasta
Liveth」などかなり充実した、捨て曲無し
の素晴らしいアルバムに仕上がって
います。

Ras Michael & The Sons Of Negusの他の
アルバムと比較すると、インスト曲が5曲
とけっこう多い印象ですが、そのインスト
の出来がすごくイイんですね。
このナイヤビンギではリピーターなど多く
のドラムが使われていて、その重厚で心地
良いドラミングが魅力です。
さらにVin Gordonと思われるトロンボーン
と、Earl 'Chinna' Smithと思われるギター
が、このアルバムのより豊かにする熱演を
見せています。
女性ヴォーカルとのデュエット曲やソウル
色の強い曲などもあり、すごくヴァラエ
ティに富んだアルバムに仕上がっています
が、こうしたバック陣の濃厚な演奏がこの
アルバムをより魅力的なものにしていま
す。

1曲目は「Gabrail-A-Alma」です。
オルガンのメロディに乗せた男女の語り
から、ユッタリとした打楽器とギターの
メロディに乗せた、Ras Michaelと女性
ヴォーカルの絡みがイイ感じ。

Ras Michael & The Sons of Negus - Gabrail A Alma


2曲目は「Jazzboe Abubaka At Large」
です。
ユッタリとしたドラミングのリズムに、
ギターとキーボードのメロディを中心と
したインスト曲です。

Ras Michael & The Sons of Negus - Jazzboe Abubaka At Large


3曲目は「Tennaeslyn (Americ)」です。
キーボードtギターのユッタリとした
メロディに、ゆっくりと語るように歌う
Ras Michaelのヴォーカルとコーラス・
ワークがイイ感じ。

Ras Michael & The Sons of Negus - Tennaislyn


4曲目は「Fa-fa-fa, I Want You」です。
キーボードとギターのメロディに心地良い
ドラミング、Ras Michaelとは別のソウル
フルなハリのある男性ヴォーカルに、男女
混成のコーラス。

Ras Michael & The Sons of Negus - Fa-Fa-Fa, I Want You


5曲目は「Tribute To Rastafori」です。
心地良いドラミングに、茫洋とした
トロンボーンが印象的なインスト・
ナンバーです。
トロンボーンはVin Gordonあたりか?

Ras Michael & The Sons of Negus - Tribute to Rastafori


6曲目は「Tena In Love」です。
いかにもナイヤビンギらしい重厚な
ドラミングに、ギターと情感たっぷりの
トロンボーンのメロディがすごく味わい
深い曲です。

Ras Michael & The Sons of Negus - Tena in Love


7曲目は「Keep Cool Babylon」です。
ギターとキーボードを中心とした
ナイヤビンギらしい演奏に、語るような
Ras Michaelのヴォーカルとコーラス・
ワークが魅力的。

Ras Michael & The Sons of Negus - Keep Cool Babylon


8曲目は「Needs Understanding」です。
ほぼChinna Smithと思われるギターを中心
とした演奏のインスト曲です。

Ras Michael & the Sons of Negus with Jazzboe Abubaka - Need Understanding


9曲目は「Peace And Love」です。
ギターとキーボードを中心とした演奏に、
心地良いドラミング、ソフトな
Ras Michaelのヴォーカルがイイ感じ。

10曲目は「Rasta Liveth」です。
刻むようなギターと心地良いドラミング、
その上を漂うようなトロンボーンの音色が
とても魅力的なインスト曲です。

Ras Michael & The Sons of Negus - Rasta Liveth


ざっと追いかけて来ましたがRas Michael
& The Sons Of Negusの数あるアルバムの
中でも、特に聴いておくべきアルバムの
ひとつではないかと思います。
ナイヤビンギはルーツ・レゲエの中でも特
にディープな音楽ですが、こうした音楽が
あったからこそ、レゲエという音楽自体が
揺るぎのない音楽であったという側面が
あります。
ルーツの中のルーツ、それがナイヤビンギ
という音楽なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Ras Michael & The Sons Of Negus - Run Aggressor Run - Live Jamaica 1979



○アーティスト: Ras Michael & The Sons Of Negus With Jazzboe Abubaka
○アルバム: Tribute To The Emperor
○レーベル: P-Vine
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1976

○Ras Michael & The Sons Of Negus With Jazzboe Abubaka
「Tribute To The Emperor」曲目
1. Gabrail-A-Alma
2. Jazzboe Abubaka At Large
3. Tennaeslyn (Americ)
4. Fa-fa-fa, I Want You
5. Tribute To Rastafori
6. Tena In Love
7. Keep Cool Babylon
8. Needs Understanding
9. Peace And Love
10. Rasta Liveth

●今までアップしたRas Michael & The Sons Of Negus関連の記事
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Kibir Am Lak」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Live Ina Babylon」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Love Thy Neighbour」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Movements」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Rastafari Dub」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Rastafari」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Revelation」
〇Ras Michael & The Sons Of Negus「Disarmament」
〇Ras Michael And The Sons Of Negus「Nyahbinghi」