今回はI Kongのアルバム

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「The Way It Is」です。

I Kong(本名:Errol Kong)については
ネットのDiscogsに次のように書かれて
います。

Jamaican reggae singer, born on April 18, 1947 and grown up in downtown Kingston.
In the early 60s, he was founding member of the rocksteady group The Jamaicans.
After working as a bartender and singer on a cruise ship for 2 years in the late 60s,
he returned to music business.
In the early 70s, he recorded his first solo single for Tommy Cowan 's Top Cat (2) label,
under the name of Ricky Storm.
After the hit single "Ghetto Cry", I-Kong released his first and only album The Way It Is
in 1978.
After that, being disillusioned about music business, he moved to the hills of St. Elizabeth and lived there in relative obscurity.
He is a nephew of the legendary producer Leslie Kong.

《1947年4月18日に生まれで、
キングストンのダウンタウンで育った
ジャマイカのレゲエ・シンガー。
60年代前半、彼はロックステディの
グループThe Jamaicansの創設メンバー
でした。
60年代後半に2年間クルーズ船でバー
テンダーと歌手として働いた後、彼は音楽
ビジネスに戻りました。
70年代前半、彼はトミー・コーワンの
レーベル、トップキャットの最初のソロ・
シングルをリッキー・ストームの名前で
録音しました。
ヒット・シングル「ゲットークライ」の
リリース後、I-Kongは1978年に彼の
最初で唯一のアルバム「The Way It Is」
をリリースしました。
彼は伝説のプロデューサー、レスリー・
コングの甥です。》

60年代の後半にロックステディの
グループThe Jamaicansの創設メンバーと
して活躍し、70年代にRicky Stormの
名前でソロ・デビューし、ファースト・
アルバムの「The Way It Is」をリリース
したというのが彼の主な経歴です。

ネットのDiscogsによると、I Kong名で
共演盤を含めて6枚ぐらいのアルバムと、
12枚ぐらいのシングル盤を残している
ほか、Ricky Storm名で4枚ぐらいの
シングル盤を残しています。

今回のアルバムは1978年にジャマイカ
のTop Rankingというレーベルから
リリースされたI Kongのファースト・
アルバムです。
(アルバムの履歴では79年のアルバムが
一番初めでしたが、上の英文では78年の
リリースとなっており、表ジャケも78年
となっていたので、ここでは78年としま
した。)

I Kongのヒット曲「Ghetto Cry」が収め
られた彼の代表作ともいえるアルバムで、
Jazzyなサックスが魅力の表題曲「The Way
It Is」や「Life's Road」、「Babylon
Walls」、ソウルフルな「Set Black
People Free」など、この時代らしい
ルーツ・レゲエの面白さが目一杯に詰め
込まれたアルバムとなっています。

手に入れたのはVP Recordsからリリース
されたCD(新盤)でした。

なおこのアルバムは1992年にフランス
のLagoonというレーベルから、曲目は同じ
で曲順違いの「Ghetto Cry」という
タイトルのアルバムもリイシューされて
います。

ルーツ・シンガー、Iコング(I Kong)の復活

全15曲で収録時間は68分28秒。
8曲目までがオリジナルで、残りの6曲が
そのダブ、最後の1曲がこのアルバム以外
のダブという構成です。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

All Tracks Written by: E. Kong
All Tracks Published by: Glory Music
Recorded at: Harry J Studios & Lee Perry's Black Ark Studio
Overdubbing: Dynamic Sounds Recording Studio
Engineers: Sylvan Morris, Jerome Francisque, Lee Perry, Geoffrey Chung, P. Zadie
Mixing Engineer: Geoffrey Chung

Cover Art & Design: Frank Jones
Additional Layouts by: Louis Keen 'Hype' Raffington

Bass: Aston 'Familyman' Barrett, Val Douglas, Geoffrey Chung
Drums: Mikey 'Boo' Richards, Phil Callendar
Lead Guitar: Mikey Chung, Stephen 'Cat' Coore, Geoffrey Chung
Rhythm Guitar: Bunny 'Rugs' Clarke, Phil Callendar, Geoffrey Chung
Organ: Earl 'Wia' Lindo, Robert Lyn, Geoffrey Chung
Piano: Earl 'Wia' Lindo, Robert Lyn, Winston Wright, Pablove Black, Mikey 'Ibo' Cooper
Clarinet: Mikey 'Ibo' Cooper, Robert Lyn, Winston Wright
Pick Guitar: Geoffrey Chung
Percussion: Noel 'Scully' Simms, Isiah 'Sticky' Thompson, Orville Wood
Congas: Irvin 'Carrot' Jarrett
Funde Drums: Leroy Mattis, Cedric 'Im' Brooks, Orville Wood, Bros. Charley, Golding
Horns: McCook, Herman Marquis, Richard 'Dirty Harry' Hall, Headley 'Deadly' Bennett,
Dean 'Youth Sax' Frazer, Vin 'Trommie' Gordon, Thomas Fulchner, Arnold Breckenridge,
Jerome Francisque, Egbert Evans
Backing Vocals: Judy Mowatt, Anicia Banks, Candy McKenzie, Orville Wood, Beres Hammond,
Prilly Hamilton, Winston Wright
Bio by: Randy Fagan

となっています。

全ての作曲はErrol Kong(I Kongの本名)
が行っています。

レコーディングはHarry J Studiosと
Lee PerryのBlack Ark Studioで行われ、
オーヴァー・ダビングはDynamic Sounds
Recording Studioで行われています。
レコーディング・エンジニアはSylvan
MorrisとJerome Francisque、Lee Perry、
Geoffrey Chung、P. Zadieが行っていま
す。
ミキシング・エンジニアはGeoffrey Chung
が担当しています。

ミュージシャンはベースにAston
'Familyman' BarrettとVal Douglas、
Geoffrey Chung、ドラムにMikey 'Boo'
RichardsとPhil Callendar、リード・
ギターにMikey ChungとStephen 'Cat'
Coore、Geoffrey Chung、リズム・ギター
にBunny 'Rugs' ClarkeとPhil Callendar、
Geoffrey Chung、オルガンにEarl 'Wia'
LindoとRobert Lyn、Geoffrey Chung、
ピアノにEarl 'Wia' LindoとRobert Lyn、
Winston Wright、Pablove Black、Mikey
'Ibo' Cooper、クラリネットにMikey
'Ibo' CooperとRobert Lyn、Winston
Wright、ピック・ギターにGeoffrey
Chung、パーカッションにNoel 'Scully'
SimmsとIsiah 'Sticky' Thompson、
Orville Wood、コンゴにIrvin 'Carrot'
Jarrett、フンデ・ドラムにLeroy Mattis
とCedric 'Im' Brooks、Orville Wood、
Bros. Charley、Golding、ホーンにTommy
McCookとHerman Marquis、Richard 'Dirty
Harry' Hall、Headley 'Deadly' Bennett、
Dean 'Youth Sax' Frazer、Vin 'Trommie'
Gordon、Thomas Fulchner、Arnold
Breckenridge、Jerome Francisque、
Egbert Evans、バッキング・ヴォーカルに
Judy MowattとAnicia Banks、Candy
McKenzie、Orville Wood、Beres Hammond、
Prilly Hamilton、Winston Wright、あと
楽器かはよく解りませんが「Bio」が
Randy Faganとなっています。

メンバーがかなり多いですが、一度の録音
ではなく、録り貯めた録音をまとめた
アルバムという事のようです。
ちなみにクラリネットとなっているのは、
そこに挙がっている名前がキーボード奏者
が多いので、クラヴィネットの間違いでは
ないかと思われます。

Bunny 'Rugs' ClarkeやStephen 'Cat'
Coore、Mikey 'Ibo' Cooperなど、
Third WorldやInner Circleなどで活躍した
アーティストの名前が見られます。

ホーン陣で注目なのがアルト・サックス
奏者として知られるHeadley 'Deadly'
Bennett(Ferix 'Deadly Headley'
Bennett)で、特に表題曲の「The Way It
Is」などでいかにも彼らしい魅力的な
サックス・プレイを聴かせています。

カヴァー・アートとデザインはFrank
Jones、追加のレイアウトはLouis Keen
'Hype' Raffingtonとなっています。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、I Kongの
ヒット曲「Ghetto Cry」が収められた彼の
代表作ともいえるアルバムで、バックの
演奏からはルーツ・レゲエの円熟期だった
78年当時のサウンドの充実ぶりがうかが
えるとても素晴らしい内容のアルバムと
なっています。

やはり特筆すべきはこのルーツ・レゲエ
後期の、バック陣の演奏と言えるかもしれ
ません。
このアルバムは78年のアルバムですが、
この頃になるとある程度レゲエ(ルーツ・
レゲエ)という音楽のスタイルも確立して
いて、そのジャマイカの生み出した独特の
スタイルを、このアルバムに参加した
スタジオ・ミュージシャンの彼らはとても
自信を持って充実した演奏をしているん
ですね。
刻むようなギター・ワークやパーカッ
ション、ホーン・セクションの演奏は、
レゲエ独特の世界を作り上げています。
いまだに多くの人がこの70年代後期の
アルバムに惹かれるのは、そうしたレゲエ
独特のサウンドの魅力があるからなんです
ね。

このアルバムでは心地良いパーカッション
と、ギュンギュンと鳴くギター、ホーン・
セクションなどが良い味を出しています。
特に2曲目「Life's Road」や4曲目
「Babylon Walls」、8曲目表題曲
「The Way It Is」などで聴かれる
ホーン・セクションの演奏は、この時代
らしい厚みのある演奏で、このアルバムを
より魅力的なものにしています。

特に表題曲の「The Way It Is」は、
おそらくDeadly Headleyと思われるJazzy
なサックスと、ぎゅん牛と鳴くギターなど
が素晴らしく、このアルバムの中でも白眉
の出来です。
この曲や4曲目「Babylon Walls」などは
演奏の内容が特に充実しており、この時代
のバック陣のレベルの高さをよく示して
います。

他にもヒット曲の「Ghetto Cry」や、
かなりソウル寄りのアプローチが面白い
5曲目「Set Black People Free」など、
面白い曲が多く収められたアルバムと
なっています。

またこのアルバムのダブが6曲収められた
ボーナス・トラックも、とても良い選曲だ
と思います。

1曲目は「Ghetto Cry」です。
彼の唯一のヒット曲のようです。
ギターとキーボードのメロディに、歯切れ
の良いI Kongのヴォーカルと女性コーラス
がイイ感じ。

I Kong - Ghetto Cry


2曲目は「Life's Road」です。
心地良いパーカッションの音色に、味わい
のあるホーン、感情を乗せたI Kongの伸び
やかなヴォーカルが魅力的。

I Kong - Life's Road + Dub


3曲目は「Wolves In Sheep's Clothing」
です。
ギターのにストリングスのメロディ、
ソフトなI Kongのヴォーカルがイイ感じ。

Wolves In Sheep's Clothing


4曲目は「Babylon Walls」です。
心地良いパーカッションの音色から、
ギターとホーンセクションのメロディに
乗せた、I Kongの語るようなヴォーカルが
魅力的。
間奏部分に入るおそらくDeadly Headleyと
思われる泣きのアルト・サックスがグッと
来ます。

Babylon Walls


5曲目は「Set Black People Free」
です。
ミリタントなドラミングからギターと
パーカッションのソウルフルな演奏に、
I Kongのこれまたソウルフルなヴォーカル
に女性コーラスがイイ感じ。

Set Black People Free


6曲目は「Sinner Man」です。
独特のサックスのイントロから、重い
ベースとギターのメロディに
パーカッション、女性コーラスに乗せた
I Kongのイイ感じのヴォーカル。

I Kong The Way It Is B 02 Sinner Man


7曲目は「I Wish (We'll All Be Ready)」
です。
明るいホーン・セクションのメロディに、
ソフトなI Kongのヴォーカルがイイ感じ。

I Kong ♬ I Wish (We'll All Be Ready) (1979)


8曲目は「The Way It Is」です。
おそらくDeadly Headleyと思われるJazzy
なサックスと鳴くギターの演奏に、
I Kongの感情を乗せた表情豊かな
ヴォーカルと「語り」がとても魅力的。

The Way It Is


9~14曲目まではこのアルバムのダブ
6曲が収められています。
最後の1曲「Love Was (Dub)」は、この
アルバム以外のダブのようです。
ここでは説明は割愛します。

ざっと追いかけて来ましたが、この70年
代のルーツ・レゲエという音楽の魅力が
うまく収められたアルバムで、内容は
とても良いと思います。

このI Kongですがその後の活躍がイマイチ
なのはちょっと残念なところです。
それでもこれだけのアルバムを残したと
いう実績は、けっして色褪せる事はありま
せん。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: I Kong
○アルバム: The Way It Is
○レーベル: VP Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○I Kong「The Way It Is」曲目
1. Ghetto Cry
2. Life's Road
3. Wolves In Sheep's Clothing
4. Babylon Walls
5. Set Black People Free
6. Sinner Man
7. I Wish (We'll All Be Ready)
8. The Way It Is
(CD Bonus Tracks)
9. Life's Road (Dub)
10. Babylon Walls (Dub)
11. Set Black People Free (Dub)
12. Sinner Man (Dub)
13. I Wish (We'll All Be Ready) (Dub)
14. The Way It Is (Dub)
15. Love Was (Dub)

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〇18th Parallel「Downtown Sessions」