今回はThird Worldのアルバム

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「More Work To Be Done」です。

Third Worldはルーツ・レゲエの時代から
国際的に活躍したレゲエ・バンドとして
知られています。
ネットの記述などを見ると、中心メンバー
のMichael 'Ibo' CooperやStephen 'Cat'
Coore、Richard Daleyなどは、このバンド
の結成以前はInner Circleで演奏していた
経歴があり、そのメンバーを中心に、
1973年に結成されたバンドとの事
です。

76年にファースト・アルバム「Third
World」をリリースして以降、そのソウル
やファンクなどを取り入れた洗練された
サウンドで世界的に活躍し、現在に至る
までにおよそ22作ぐらいのスタジオ録音
盤をリリースしているグループです。

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Third World ‎– Third World (1976)

ネットのDiscogsによると、ライヴ盤や
共演盤を含めて30枚ぐらいのアルバム
と、79枚ぐらいのシングル盤をリリース
しているのが、このThird Worldという
グループです。

Third World/Bunny Rugs (サード・ワールド/バニー・ラグス)

今回のアルバムは2019年にUSの
Ghetto Youths Internationalから
リリースされたThird Worldのアルバム
です。

プロデュースはDamian 'Jr Gong' Marley
が担当したアルバムで、彼らのファースト
に収められた「Sette Messgana」を彷彿と
させる「YimMasGan」や、Pressure
Busspipeとの共演曲「People Of A
Different Color」、Chronixxとの共演曲
「Na Na Na」、Tessanne Chin & と
Tarrus Rileyとの共演曲「Island Dreams」、
Damian 'Jr Gong' Marleyとの共演曲
「You're Not The Only One」などの
新しいアーティストの共演曲や、表題曲の
「Work To Be Done」など、今もけっして
衰える事の無い彼らのバンドとしての魅力
が際立つアルバムとなっています。

手に入れたのはGhetto Youths
InternationalからリリースされたCD
(新盤)でした。

全11曲で収録時間は46分52秒。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Executive Producers: Damian 'Jr Gong' Marley, Stephen 'Ragga' Marley, Stephen 'Cat' Coore
Songs Produced by: Damian 'Jr Gong' Marley
Recorded & Mixed by: Marc Lee at Jamazon Jungle Studios in Miami, FL
Mastered by: Chris Athens

Art Direction: Charles 'Tingz' Ward
Cover Illustration: Lizzy Lane
CD Layout & Design: Noteworthy Digital Media

A&R: Jason Chantrelle, Amee Jana
Management: Heather Cameron

Third World is...
Guitar, Cello, Vocals: Stephen 'Cat' Coore
Bass: Richie 'Bassie' Daley
Drums, Percussion: Tony 'Ruption' Williams
Lead Vocals: AJ Brown
Keyboards, Vocals: Maurice 'MG' Gregory, Norris 'Noriega' Webb

となっています。

エグゼクティブ・プロデューサーとして
Damian 'Jr Gong' MarleyとStephen
'Ragga' MarleyのMarley一家、メンバーの
Stephen 'Cat' Cooreの名前があります。
曲のプロデュースはDamian 'Jr Gong'
Marleyが担当しています。
これを見る限りではMarley一家が全面的
に協力して、作成されたアルバムのよう
です。
レコーディングとミックスはフロリダの
マイアミにあるJamazon Jungle Studios
で行われ、エンジニアはMarc Leeが担当
しています。

アート・ディレクションはCharles
'Tingz' Wardで、アルバムのイラスト
レーションはLizzy Laneとなっています。
このイラストはアルバム・デビュー以来
しばらく続いていていたジャケットの
イラストと似ていますが、このLizzy Lane
という人がその作者なのでしょうか?
残念ながら以前のアルバムには、イラスト
の作者の記録がありません。

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裏ジャケ

CDのレイアウトとデザインはNoteworthy
Digital Mediaとなっています。

CDは3つ折りジャケットで、CDの他に
両面印刷された6つ折りの英語の歌詞の紙
が入っていました。

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英語歌詞(表面)

さて今回のアルバムですが、とても
デビューから40年以上経つグループとは
思えないほど音楽に力のある内容で、
あらためてこのグループの魅力を再認識
させられた、素晴らしいアルバムです。

特に1曲目「YimMasGan」には、初めて
このグループの楽曲を聴いたファースト・
アルバムの「Sette Messgana」を初めて
聴いた時のような、強い衝撃を受けまし
た。
レゲエの中でも古典的な楽曲である
The Abissiniansの「Satta Massagana」
を、私が初めて聴いたのは、このThird
Worldの「Sette Messgana」だったんです
ね。
その土着的な楽曲でありながらどこか洗練
されたサウンドが、当時の私にとっては
それまで聴いた事の無いレゲエのサウンド
だったので、強く印象に残っています。
その「Sette Messgana」を聴いた時の驚き
が、この「YimMasGan」を聴いた時に再び
蘇るような思いがしました。

今回のアルバムにはこうした、当時を彷彿
とさせるような「Third Worldサウンド」
が満ち溢れています。
そのあたりはプロデュースを担当している
Damian 'Jr Gong' Marleyの力も、かなり
大きかったのではないかと推測されます。

実は今回のアルバムの内容がとても
良かったので、前のアルバムはどうなの
か?ネット上にある試聴出来る音源を聴い
てみたのですが、彼らの実力は感じるもの
の、イマイチピンと来るアルバムは見つ
かりませんでした。
例えばこの前のアルバム、2015年の
「Under The Magic Sun」というアルバム
をネットのレゲエレコード・コムで
イントロだけ試聴してみたのですが、
このアルバムはリード・ヴォーカルだった
Bunny Rugsが参加した最期のアルバムなの
ですが、Paul McCartneyの「My Love」や
Creedence Clearwater Revivalの
「Have You Ever Seen The Rain」などの
ポップのカヴァー曲が多く、その素晴らし
いヴォーカル力は光るものの、レゲエと
いう視点から見た場合にはイマイチ不満が
残る部分があるアルバムなんですね。
(ちなみにBunny Rugsはこのアルバムの
録音中に亡くなっているようです。)

このThird Worldですがその初めの頃は、
The Abissiniansの「Satta Massagana」や
Burning Spearの「Slavery Days」など、
レゲエの楽曲のカヴァーもよくしていて
いて、そうしたレゲエならではの楽曲を
海外に紹介する役割も果たしていた
グループなんですが、そうしたインター
ナショナルな活躍をするうちにソウルの
Stevie Wonderなどとも交流を持ち、徐々
にソウル色の強いグループへとチェンジ
して行ったんですね。
そのあたりは個々のサウンドの好みの問題
もありますが、そうしたソウルやポップを
取り入れたサウンドよりも、レゲエを彼等
流に変換した初期の彼らのサウンドの方が
個性があって、個人的には好きでした。

今回のDamian 'Jr Gong' Marleyの
プロデュースでは、そうした彼らの初期の
サウンドが戻って来ているような気がしま
す。
レゲエ色が戻って来た事で、彼らの演奏力
や洗練されたコーラス・ワークの魅力が
より強く感じられるような気がしました。
加えてPressure BusspipeやChronixx、
Tessanne ChinとTarrus Riley、Damian
'Jr Gong' Marley本人との共演で、今の
レゲエのテイストも盛り込んで、さらに
魅力をアップしているように思います。
特に5曲目「Na Na Na」は、Chronixxの
個性と、AJ Brownのヴォーカルを中心と
したThird Worldの個性がぶつかり
合って秀逸の出来です。
こうした新しい魅力も生み出しているの
が、このアルバムの素晴らしさです。

今回のアルバムはネットの販売サイトの
アルバム評に「結成45周年になる大
ベテラン・グループThird Worldの通算
22作目スタジオ・アルバム!」などと書か
れていましたが、結成が73年とすると
このアルバムがリリースされた2019年
で46年ぐらいの月日になります。
それだけ長い年月が過ぎたのにも関わらず
これだけの素晴らしい内容のアルバムが
作れるとは!
正直なところ私は彼らの4枚目以降の
アルバムをあまり追いかけていなくて、
自分の見識の甘さを反省しました。

今回のアルバムは彼らThird Worldが、
40年以上の年月をかけて積み上げて
来た、彼らの集大成ともいえる素晴らしい
内容のアルバムだと思いました。

このThird Worldはレゲエの音楽界の中
で、過小評価されているバンドだと言われ
ています。
その原因のひとつがメンバーのStephen
'Cat' Cooreが元副総理大臣のDavid Coore
の息子だった為と言われています。
当時のレゲエの世界は、不良少年の更生
施設アルファ・ボーイズ・スクールで音楽
を学んだミュージシャンなどから始まって
いて、貧しい生まれのミュージシャンが
多かったんですね。
そんな中で裕福な家庭で産まれた彼が、
疎まれてしまった部分があったのかもしれ
ません。

ただ彼らは長い年月をかけて音楽を続け、
その実力を間違いなく証明したんですね。
その飽くなき探求心と努力には、惜しみ
なく拍手を送りたいと思います。

1曲目は「YimMasGan」です。
フルートと生ギターにキーボード、ピアノ
を中心としたメロディに、美しい
コーラス・ワーク…。
'Cat' Cooreのエレクトリック・ギター・
ソロやホーンなどで徐々に盛り上がって
行く展開も、とても素晴らしい1曲です。

Third World - YimMasGan (Let Him Be Praised) (Official Video)


2曲目は「Third World Keeps Turning」
です。
ホーンやキーボード、ギターのファンキー
なリズムに、Third Worldらしいコーラス・
ワークに乗せたノリの良いヴォーカルが
イイ感じの曲です。

3曲目は「Loving You Is Easy」です。
ギターのメロディに乗せたコーラス・
ワーク、ノビノビと歌う歌声が爽やかな曲
です。

Third World - Loving You Is Easy (Official Video)


4曲目はPressure Busspipeとの共演曲
「People Of A Different Color」です。
ホーンとギターを中心とした力強い
メロディに、Pressure Busspipeの感情
豊かなヴォーカル、それを支える
Third Worldの素晴らしいコーラス・
ワーク。

People of a Different Color


5曲目はChronixxとの共演曲「Na Na Na」
です。
ピアノとヴァイオリンの哀愁のある
リリカルなイントロから、'Cat' Coore
らしいエレクトリック・ギター、ちょっと
癖のあるChronixxのヴォーカル、被さる
ように入って来るAJ Brownのヴォーカル
とのコンビネーション…。

Third World - Na Na Na (ft. Chronixx) (Lyric Video)


6曲目はとのBusy Signal共演曲「Feel
Good」です。
クールなキーボードのイントロから
コーラス・ワーク、ダンサブルなリズムに
よく通るヴォーカル、コーラス・ワーク、
だいぶ遅れて入って来るBusy Signalの
シング・ジェイ…。

7曲目はTessanne ChinとTarrus Riley
との共演曲「Island Dreams」です。
華やかなトランペットのメロディから、
ギターとキーボードのメロディ、ソフトな
男性ヴォーカル、優しい女性ヴォーカル、
さらに入って来る男性ヴォーカル…。
AJ BrownとTessanne Chin、Tarrus Riley
の3つのヴォーカルがうまく曲を紡いで
行く1曲です。

Island Dreams


8曲目は「Sheep In Meadows」です。
ギターとホーン・セクションが作り出す
メロディに、コーラス・ワークに乗せた
表情豊かなヴォーカル。

9曲目はDamian 'Jr Gong' Marleyとの
共演曲「You're Not The Only One」
です。
ピアノに乗せた伸びやかなヴォーカル
から、キーボードのメロディに乗せた
Damian Marleyらしい朗々としたトース
ティング…。
Damian Marleyのトースティングと、
Third Worldのコーラスに乗せた
ヴォーカルとで、ガラッと色合いが変わる
のが面白いところ。
↓このヴィデオなどを観ると、「君は
けっして一人じゃないよ」という、なか
なか素敵な応援歌です。

Third World - You're Not the Only One (ft. Damian "Jr. Gong" Marley) (Official Video)


10曲目は表題曲の「Work To Be Done」
です。
ギターとキーボードを中心としたメロディ
に、語るように歌うソフトなヴォーカル、
追いかけるように入って来るコーラス・
ワーク…。
ちなみに「Work To Be Done」は自動翻訳
で訳すと「やるべき仕事」という意味で、
それがアルバム・タイトルの「More Work
To Be Done」だと「さらにやるべきこと」
というのが出て来ました。

More Work to Be Done


11曲目は「Hear Us Out」です。
ギターとフルートのリリカルなメロディ
に、Third Worldらしい力強い
コーラス・ワークに、表情豊かなよく通る
ヴォーカル。

ざっと追いかけて来ましたが、この
アルバムにはThird Worldというグループ
の「彼等らしさ」が溢れている気がしま
した。
その肩の張らない「彼等らしさ」には、
けっして老いを感じない素晴らしい魅力が
あります。

また彼らの魅力を復活させた、Damian
'Jr Gong' Marleyの、プロデュース力も、
高く評価したいと思います。

このThird Worldにはまだ「さらにやる
べきこと」があるようです。
多分それは多くの人々にポジティヴな
ヴァイブスを届ける事ではないでしょう
か。

機会があればぜひ聴いてみてください。

THIRD WORLD - "Na Na Na" (Live at Reggae on the Mountain 2019)


THIRD WORLD - "96 Degrees in the Shade (Live at Reggae on the Mountain 2019)



○アーティスト: Third World
○アルバム: More Work To Be Done
○レーベル: Ghetto Youths International
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2019

○Third World「More Work To Be Done」曲目
1. YimMasGan
2. Third World Keeps Turning
3. Loving You Is Easy
4. People Of A Different Color - feat. Pressure Busspipe
5. Na Na Na - feat. Chronixx
6. Feel Good - feat. Busy Signal
7. Island Dreams - feat. Tessanne Chin & Tarrus Riley
8. Sheep In Meadows
9. You're Not The Only One - feat. Damian 'Jr Gong' Marley
10. Work To Be Done
11. Hear Us Out

●今までアップしたThird World関連の記事
〇Third World「Journey To Addis」
〇Third World「Third World」