今回はMichael Prophetのアルバム

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「In Disco Showcase」です。

Michael Prophet(本名:本名: Michael
George Haynes)はルーツ・レゲエの
時代から活躍するシンガーです。

初めはYabby You(Vivian Jackson)の
子飼いのアーティストとしてキャリアを
スタートさせた彼ですが、80年代の
ダンスホール・レゲエの時代になっても
その人気は衰えず、初期のダンスホール・
レゲエをけん引したVolcanoレーベルの
主催者Henry 'Junjo' Lawesからもその
才能を認められ、ダンスホール・レゲエ
でも活躍したシンガーなんですね。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て24枚ぐらいのアルバムと、207枚
ぐらいのシングル盤をリリースしているの
が、このMichael Prophetという人です。

アーティスト特集 Michael Prophet (マイケル・プロフェット)

今回のアルバムは1982年にジャマイカ
のVivian Jackson (Yabby You)レーベル
からリリースされたMichael Prophetの
ソロ・アルバムです。

プロデュースはYabby YouことVivian
Jacksonで、バックは彼のバンド
The Prophetsと思われ、ミックスは当時
人気のミキサーScientistが担当した
アルバムで、アルバムのタイトルのように
Michael Prophetの歌とそのダブが交互に
収められた、ショーケース・スタイルの
アルバムとなっています。

手に入れたのはVivian Jackson (Yabby
You)からリリースされたLPの中古盤
でした。

実は今回のアルバムはジャケットとラベル
にSide 1に4曲、Side 2に4曲の計8曲が
印字されているのですが、実際のLPには
片面に3曲ずつ計6曲しか収められていま
せん。
どうも曲の表示がおかしいんですね。

いろいろ調べてみると、制作年がUnknown
(不詳)になっているProphet Recordから
リリースされたアルバムが片面3曲ずつの
表記になっていました。
どうもそちらの方が表記が正しそうです。
最後に表記されている曲目と、実際の曲目
と思われるProphet Record盤の曲目を載せ
ておきましたが、今回はProphet Record盤
の曲目が正しいという事で話を進めます。

Side 1が3曲、Side 2が3曲の全6曲。
Michael Prophetの歌とそのダブが交互に
収められた、ショーケース・スタイルの
アルバムとなっています。
Side 1の1曲目が「Prayer Of The
Upright」という曲で2曲目がその
ヴァージョン(ダブ)、3曲目が
「Free Up Yar Heart」という曲で、
Side 2の1曲目はそのヴァージョン
(ダブ)、2曲目は「Ethiopia」という
曲で、3曲目はそのダブではなく、
まったく別の「Come Make We Rally
(Version)」というダブが収められてい
ます。

ショーケース・スタイルのアルバムでは
ありますが、ちょっと変則的な構成の
アルバムとなっています。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Bass: Clinton Forbes & Alrick Forbs
Horns: Tommy McCook
Sax & Flute: Tommy McCook
Trumpet: Bobby Ellis
Rhythm Guitar: Alrick Forbes
Piano: Agustus Pablo
Organ: Pablo Black

Recorded at: Channel One Recording Studio
Mixed at: King Tubby's
Engineer: 'Scientist'

Produced by: Vivian Jackson (Yabby You)

となっています。

バックのミュージシャンはYabby Youの
ハウス・バンドThe Prophetsと思われ、
ベースにClinton ForbesとAlrick Forbs、
ホーンにTommy McCook、サックスと
フルートにTommy McCook、トランペット
にBobby Ellis、リズム・ギターにAlrick
Forbes、ピアノにAgustus Pablo、
オルガンにPablo Blackという布陣です。
なぜかドラマーの記述がありません。

プロデュースはVivian Jackson(Yabby
Youの本名)で、レコーディングは
Channel One Recording Studioで行わ
れ、ミックスはKing Tubby'sで行われ、
ミックス・エンジニアは'Scientist'が
担当しています。

残念ながらジャケット・デザインに関する
記述はありません。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、多少アルバム
の構成に雑な部分があるものの、この
80年代前半のアーリー・ダンスホールの
時代の空気感を持った内容のアルバムで、
内容は悪くないと思います。

Yabby Youに育てられたMichael Prophet
ですが、やはりこの人の場合はこの80年
代前半のアーリー・ダンスホール期の活躍
が、強く印象に残るシンガーではないかと
思います。
Yabby Youがプロデュースしたアルバムに
収められたアルバム「Serious Reasoning」
に収められた「Fight To The Top」や、
彼の曲が元でリディムとしても人気の
「Gunman」などのヒット曲は、彼がこの
時代にいかに輝いていたかの証しでもあり
ます。

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Michael Prophet ‎– Serious Reasoning (1980)

MICHAEL PROPHET - Fight It To The Top [1978]


彼の師匠であるYabby Youはルーツ・
レゲエの時代に活躍した人ですが、この
Michael Prophetはダンスホール・レゲエ
特にアーリー・ダンスホール・レゲエの人
だったと言えると思います。
その若々しく伸びやかな歌唱は、やはり
とても魅力的です。

今回のアルバムはこの時代によく作られ
た、歌とダブが交互に収められたショー
ケース・スタイルで構成されているのも
大きな魅力です。

また今回のアルバムでは曲は収められて
いないようですが、Side 2の1曲目に印字
されているタイトルには「Falkland
Crisis Dub」という名前の曲があります。
これはイギリスとアルゼンチンの間で
起こった「フォークランド紛争」を題材と
した曲のようです。
1982年にフォークランド諸島の領有権
をめぐって、イギリスとアルゼンチンの間
で局地的な戦闘が起きたんですね。
それがフォークランド紛争と呼ばれるもの
です。

フォークランド紛争 - Wikipedia

この時代のイギリスはまだ自由主義圏の
アメリカに次ぐ大国で、世界の各地に領土
を多く持っていたんですね。
また音楽の世界でもアメリカに次ぐ大きな
音楽市場だったんですね。
ちなみにレゲエが生まれたジャマイカも、
昔はイギリス領だったんですね。

話を戻しますが、バックのThe Prophetsの
演奏はミディアム・テンポの演奏で、この
あたりはこの時代に人気だったバンド
Roots Radicsの極端なスローなワン・
ドロップの演奏とは多少異なります。
そのあたりはルーツ期に活躍した
プロデューサーのYabby Youの色彩が出て
いるのかもしれません。
おそらくThe Prophetsの歌が録音されたの
がまだ70年代の後期ぐらいだったのか、
ルーツ・レゲエとダンスホール・レゲエの
中間ぐらいのサウンドなんですね。
その「時代のはざま」を感じるところも、
このアルバムの面白さなのかもしれませ
ん。

Side 1の1曲目は「Prayer Of The
Upright」です。
リズミカルなどラニングにキーボードの
メロディ、心地良いコーラス・ワークに
乗せたMichael Prophetのよく通る
ヴォーカルがイイ感じ。

Michael Prophet 1982 In Disco Showcase 01 prayer of the upright


2曲目は「Prayer Of The Upright
(Version)」です。
1曲目「Prayer Of The Upright」の
ダブ・ヴァージョンです。
歯切れの良いドラミングに、キーボードの
流れるようなメロディ、Scientistらしい
エフェクトの効いたディレイが深めな
ミックスが魅力的。

3曲目は「Free Up Yar Heart」です。
歯切れの良いミディアム・テンポの
ドラミングにパーカッション、ホーンと
キーボードを中心としたちょっと陰のある
メロディ、情感たっぷりに歌うMichael
Prophetのヴォーカルがとても魅力的。

Michael Prophet 1982 In Disco Showcase 03 free up yar heart


Side 2の1曲目は「Free Up Yar Heart
(Version)」です。
Side 1の3曲目「Free Up Yar Heart」
のダブ・ヴァージョンです。
歯切れの良いドラミングと、ホーンと
キーボードのメロディがイイ感じのダブと
なっています。

Michael Prophet 1982 In Disco Showcase 04 free up yar heart version


2曲目は「Ethiopia」です。
歯切れの良いドラミングに、ホーンと
キーボードを中心とした哀愁のある
メロディに、高音を生かしたMichael
Prophetの伸びやかなヴォーカルがとても
魅力的。

Michael Prophet 1982 In Disco Showcase 05 ethiopia


3曲目は「Come Make We Rally
(Version)」です。
どうも2曲目「Ethiopia」のダブではない
ようです。
クラヴィネットのような低音のキーボード
と、引っ掛かりを感じるギターとキー
ボードのメロディ…。
いかにもScientistらしいドープ感のある
ダブ。

Michael Prophet - Come Mek We Rally Dub


ざっと追いかけて来ましたが、内容的には
いかにもこのアーリー・ダンスホールの
時代らしいアルバムで、そこがとても魅力
的ですが、曲数が6曲と少なく淡白な印象
なのがちょっと惜しまれます。
ただ書いたように、時代のはざまを感じる
ところがとても面白いアルバムです。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Michael Prophet "Fight It To The Top" Live - GAM (La Grange à Musique) - Creil - 08/03/14



○アーティスト: Michael Prophet
○アルバム: In Disco Showcase
○レーベル: Vivian Jackson (Yabby You)
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

●(ラベルやジャケットに表示されている曲目)
○Michael Prophet「In Disco Showcase」曲目
Side 1
1. Prayer Of The Upright
2. Prayer Of The Upright (Version)
3. Free Up Yar Heart
4. Free Up Yar Heart (Version)
Side 2
1. Falkland Crisis Dub
2. Agression Dub
3. Ethiopia
4. Ethiopia (Version)

●(実際に収められている曲目)
○Michael Prophet「In Disco Showcase」曲目
Side 1
1. Prayer Of The Upright
2. Prayer Of The Upright (Version)
3. Free Up Yar Heart
Side 2
1. Free Up Yar Heart (Version)
2. Ethiopia
3. Come Make We Rally (Version)

●今までアップしたMichael Prophet関連の記事
〇Michael Prophet_ Various「Michael Propheit & Friends」
〇Michael Prophet「Certify」
〇Michael Prophet「Gunman / Righteous Are The Conqueror」
〇Michael Prophet「Reggae Music All Right」
〇Michael Prophet「Serious Reasoning」