今回はKing Kongのアルバム

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「Legal We Legal」です。

King Kong(本名:Dennis Anthony
Thomas)は80年代に活躍したダンス
ホール・シンガーのようです。

80年代前半のアーリー・ダンスホールの
時代から活躍を始めたシンガーで、80年
代半ばから盛んになったデジタルのダンス
ホール・レゲエの波に乗って活躍し、
King Tubbysの元ではAnthony Red Roseと
のコンビで「Two Big Bull In A One Pen」
や「Follow Me Now」などの楽曲を残し、
の元では「Trouble Again」などの楽曲を
残しています。

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Red Rose & King Kong ‎– King Tubbys Presents Two Big Bull In A One (1986)

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て12枚ぐらいのアルバムと、156枚
ぐらいのシングル盤を残しています。

King Kong (musician) - Wikipedia

今回のアルバムは1986年にUSの
Live And Loveというレーベルから
リリースされたKing Kongのソロ・
アルバムです。

実はこのアルバムは同じ86年に
Jammy's Recordsからリリースされた
アルバム「Trouble Again」と内容がほぼ
一緒のようなんですね。
この「Trouble Again」はUKの
Greensleeves Recordsからもリリースされ
ていて、そちらは曲名と曲順が何曲か
変わっているようですが、調べてみると
同じ曲が使われているようです。
ちなみにネットのDiscogsではJammy's
Recordsからのリリースが87年となって
います。
この「Legal We Legal」の方が先に
リースされたのでしょうか?

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King Kong ‎– Trouble Again (Greensleeves Records盤) (1986)

多少の曲の違いはあるかもしれませんが、
同じJammy'sで録音され、おそらく曲が
同じアルバムなんですね。
(「参考資料」として文の最後に
「Trouble Again」のJammy's Records盤と
Greensleeves Records盤の曲目を表示して
おきます。)

表題曲の「Legal We Legal」や「Follow
Me Now」、「Trouble Again」など、
アウト・オブ・キーとまでは言えないかも
しれませんが、高音を生かしたKing Kong
のヴォーカルが、デジタルのダンス
ホール・サウンドにすごくマッチした
好内容のアルバムとなっています。

手に入れたのはLive And Loveから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians: Steely and Clevie, The Super Power All-Star
Mixed, Voiced and Edited at: Jammy's Studio
All rhythm tracks arranged by: Jammy, Steely and Clevie
Produced and Arranged by: King Jammy
Engineers: King Jammy, Bobby Digital and Squeengine Francis

となっています。

ミュージシャンはSteely & Clevieと
The Super Power All-Starで、ミックス
と声入れ、編集はJammy's Studioで行わ
れ、アレンジはKing JammyとSteely &
Clevieが担当し、プロデュースはKing
Jammy、エンジニア(録音)はKing Jammy
とBobby Digital、Squeengine Francisが
担当しています。

ジャケット・デザインに関する記述はあり
ません。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、書いたように
「Trouble Again」とほぼ同じ内容の
アルバムなので、そのアルバムを持って
いれば買う必要はありませんが、初期の
デジタルのダンスホール・レゲエの魅力が
うまく収められたアルバムで、内容は悪く
ないと思います。

このKing Kongですが彼が今まで共演盤を
含めてリリースした12枚のアルバムの
うち、なんと半分の6枚がこの86年に
リリースしたアルバムなんですね。
もう1枚87年のアルバムもあり、彼が
人気を博したのがこの86年から87年の
間で、ジャマイカがデジタルのダンス
ホールの大ブームの時代に、もっとも人気
のあったシンガーだった事が解ります。

そのKing Kongという名前や風貌から
ちょっとゴツいイメージの彼ですが、逆に
その歌いぶりはアウト・オブ・キーのよう
な高音を生かした歌唱で、すごくスマート
な歌いぶりの人なんですね。
デジタルになったばかりのこの時代には、
彼やAnthony Red Rose、Tenor Saw、
Nitty Grittyといった、高音を生かした
アウト・オブ・キー系の歌手が人気を博し
たんですね。
誕生したばかりの無機質なデジタル・
サウンドには、こうしたハイトーン・
ヴォイスの歌唱が面白い、合うと思われた
のかもしれません。

ちなみにデジタルのダンスホール・レゲエ
の大ブームとは、80年代半ばに初の
デジタル・レゲエのヒット曲Wayne Smith
の「Under Mi Sleng Teng」が大ヒットした
事がきっかけで起きた大ブームで、これを
きっかけにジャマイカではそれまでの人に
よる生演奏から、一気にデジタル機材に
よるDTM(ディスク・トップ・
ミュージック)へと音楽制作が様変わり
して行くんですね。
そのデジタルのダンスホールの大ブーム
は、「コンピューター・ライズド」などと
呼ばれる事があります。
そのブームの中心にいたのが「Under Mi
Sleng Teng」を大ヒットさせた、
プロデューサーのKing Jammy(ヒットを
きっかけにPrince Jammy→King Jammyに
改名)であり、それを助けたのがデジタル
機材に強かったミュージシャンのSteely
& Clevie(Wycliffe 'Steely' Johnson
とClevie Browne)だったんですね。

そのKing Jammyのこのコンピューター・
ライズドの時代の残した代表作のひとつ
が、今回のアルバムとほぼ同内容の
King Kongの「Trouble Again」という
アルバムなんですね。

まだ生まれたてのデジタル・サウンドは
無機質で音が軽く、その分シンガーに生の
演奏以上の工夫が求められたんだと思い
ます。
そこから生まれたのがアウト・オブ・キー
やハイトーン・ヴォイスによる、より人間
味のある歌唱だったのではないかと推測
されます。
今の時代に聴いてもこの80年代後半の
サウンドはちょっと独特の工夫が特徴的
で、無機質でありながらとても人間臭い、
すごく面白いサウンドなんですね。

またレゲエというと同じリズムを繰り返し
使う「リディム」の文化があり、今回の
アルバムでも「Heavenless」や「Arena」、
「Cuss Cuss」など、様々なリディムが
使われていますが、その中にちょっと
面白いリディムが使われているので紹介
したいと思います。

それがSide 1の1曲目「Follow Me Now」
で、この曲に使われているリディムは
Mungo Jerryというグループのポップス
の1970年のヒット曲「In The
Summertime」です。
このMungo Jerryというグループはいわ
ゆる「一発屋」といったグループで、この
「In The Summertime」という曲だけが
知られているグループなんですね(笑)。

Mungo Jerry - In The Summertime ORIGINAL 1970


YouTubeの映像などを観ると歌っているの
はすごい個性的なモミアゲの白人の人で、
ちょっとコミカルな曲調なんですね。
70年のヒット曲なので、おそらくこの
グループを知っているのは、私のように
60歳を過ぎた年齢の、当時「洋楽」を
聴いていた人ではないかと思います。
この曲は当時日本でもけっこうヒットした
曲だったんですね。
おそらくKing Jammyあたりの選曲だと思い
ますが、ジャマイカでもこの曲がヒット
したんでしょうね(笑)。

曲調がちょっと変わっていて、意外とこの
曲が良いアクセントになっている気がしま
す。

他に「Heavenless」リディムのSide 1の
2曲目「No Problem」や、「Bangarang」
リディムの3曲目「No Mix Up」、
「Talk About Love」リディムの5曲目
「It Just Can't Work」、「Arena」
リディムのSide 2の1曲目「Trouble
Again」、「Cuss Cuss」リディムの3曲目
表題曲の「Legal We Legal」、
「No Warrior」リディムの4曲目「Jungle
Man」、「Things A Come Up To Bump」
リディムの5曲目「Brock Rock Stone」
など、様々なリディムを巧みに使い、
デジタル・サウンドに巧みに乗せた
King Kongのアウト・オブ・キーに近い
ハイトーン・ヴォイスのスマートな歌唱が
楽しめる、内容のアルバムとなっていま
す。

Side 1の1曲目は「Follow Me Now」
です。
書いたようにリディムはMungo Jerryの
「In The Summertime」です。
リズミカルなデジタルのドラミングに、
ピアノのメロディ、流れるように滑らかな
King Kongのヴォーカルがイイ感じ。

king kong follow me


2曲目は「No Problem」です。
リディムはDon Drummond & Skatalites
の「Heavenless」。
デジタルなドラミングに、ピアノとキー
ボードのメロディ、高音を生かした
King Kongのソフトで滑らかなヴォーカル
がイイ感じの曲です。

リズム特集 Heavenless (ヘブンレス)

3曲目は「No Mix Up」です。
リディムはStranger Cole & Lester
Sterling の「Bangarang」。
デジタルなドラミングに、印象的なキー
ボードのメロディ、King Kongのソフトで
流れ出るようなヴォーカルが魅力的。

Mix Up


4曲目は「Moving Insane」です。
リズミカルなキーボードとピアノの
メロディ、情感タップリなKing Kongの
ソフトなヴォーカルが魅力的。

King Kong - Moving Insane


5曲目は「It Just Can't Work」です。
リディムはPat Kellyの「Talk About
Love」。
デジタルなドラミングに、ピアノとキー
ボードの刻むようなメロディ、流れ出る
ようなKing Kongのソフトなヴォーカル
が魅力的。

Side 2の1曲目は「Trouble Again」
です。
リディムはRoland Alphonso & The Soul
Vendorsの「Death In The Arena」、
通称「Arena」リディムです。
リズミカルなキーボードのメロディに、
節回しのあるKing Kongの柔らかい
ヴォーカルがとても魅力的。

King Kong - Trouble Again


リズム特集 Arena (アリーナ)

2曲目は「Sweet And Tender Love」
です。
リズミカルなキーボードとピアノの
メロディに、心地良さそうなKing Kongの
節回しのあるヴォーカル。

3曲目は表題曲の「Legal We Legal」
です。
リディムはLloyd Robinsonの「Cuss
Cuss」。
デジタルなドラミングに乗せた、キー
ボードとピアノのメロディ、ノリの良い
King Kongのヴォーカルがイイ感じ。

King Kong - Legal


リズム特集 Cuss Cuss (カス・カス)

4曲目は「Jungle Man」です。
リディムはJunior Delgadoの
「No Warrior」。
リズミカルなデジタルなドラミングに、
リリカルなピアノと流れるようなキー
ボードのメロディ、King Kongの気持ち
良さそうなヴォーカルがイイ感じ。

King Kong - Jungle Man (No Warrior Riddim)


5曲目は「Brock Rock Stone」です。
リディムはBassiesの「Things A Come Up
To Bump」。
初期レゲエの頃のStudio Oneのリディムの
ようです。
デジタルなドラムとキーボードの
メロディ、感情をうまく乗せたKing Kong
の節回しのあるヴォーカルが魅力的。

Emmanuel Road


ざっと追いかけて来ましたが、見かけの
ゴツいイメージと裏腹な、King Kongの
高音を生かしたスマートな節回しのある
ヴォーカルがとても魅力的で、内容は悪く
ないと思います。
書いたように「Trouble Again」とほぼ
同じ内容のアルバムなので、そのアルバム
を持っていれば買う必要はありませんが、
この80年半ばからのデジタルのダンス
ホール・レゲエの面白さを知るのには、
なかなか良いアルバムではないかと思い
ます。

このKing Kongは80年代後半にすごく
人気のあった人のようですが、その後も
活躍を続けていて、最近までYouTubeに
動画をアップしています。
その飽くなき音楽への情熱には、敬意を
払いたいと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

KING KONG - PREE THE MONEY - IRIE ITES RECORDS


King Kong - Sweet Rub A Dub (Official Video)


KING KONG - Dubplate - LITTLE LION SOUND 2015



○アーティスト: King Kong
○アルバム: Legal We Legal
○レーベル: Live And Love
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1986

○King Kong「Legal We Legal」曲目
Side 1
1. Follow Me Now
2. No Problem
3. No Mix Up
4. Moving Insane
5. It Just Can't Work
Side 2
1. Trouble Again
2. Sweet And Tender Love
3. Legal We Legal
4. Jungle Man
5. Brock Rock Stone

●(参考資料)
○King Kong「Legal We Legal」(Jammy's Records盤、1987)曲目
Side 1
1. Follow Me Now
2. No Problem
3. Mix Up (= No Mix Up)
4. Move Insane (= Moving Insane)
5. Just Can't Work (= It Just Can't Work)
Side 2
1. Trouble Again
2. Sweet And Tender Love
3. Legal Wi Legal (= Legal We Legal)
4. Jungle Man
5. Bruck Rock Stone

○King Kong「Trouble Again」(Greensleeves Records盤、1986)曲目
Side 1
1. Mash Up Already (= No Problem)
2. Move Insane (= Moving Insane)
3. Follow Me (= Follow Me Now)
4. Mix Up (= No Mix Up)
5. Sweet & Tender Love
Side 2
1. Trouble Again
2. Jungle Man
3. I Don't Know (= It Just Can't Work)
4. Legal (= Legal We Legal)
5. Emmanuel Road (= Brock Rock Stone)

●今までアップしたKing Kong関連の記事
〇King Kong「Trouble Again」