今回は15-16-17のアルバム

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「Magic Touch」です。

15-16-17は70年代後半にUKで活躍した
10代の女性3人からなるラヴァーズ
ロック・レゲエのヴォーカル・グループ
です。
ネットのDiscogsには彼女らについて次の
ように書かれています。

Teenage vocal trio from London, named after the age of the participants:
Sonia Williams (15), Christine McNabb (16), and Wraydene McNabb (17).
The trio was put together by Dennis Brown and Castro Brown to record
one of the first Lovers Rock albums, "Magic Touch", in 1978.

《参加者の年齢にちなんで名付けられた
ロンドンの10代のボーカルトリオ:
ソニア・ウィリアムズ(15歳)、
クリスティン・マクナブ(16歳)、
およびレイデン・マクナブ(17歳)。
この3人組はデニス・ブラウンと
カストロ・ブラウンによって結成され、
1978年に初のラヴァーズ・ロックの
アルバム「マジック・タッチ」の1つを
録音しました。》

書かれているように彼女達が15歳、
16歳、17歳の時に結成したグループ
で、ソウルのThe Temptationsの名曲
「Just My Imagination」を改題した
「Girls Imagination」や、The Bee Gees
のヒット曲として知られる「Emotion」、
The Supremesのヒット曲「Baby Love」
など、多くのカヴァー曲のヒットがある
グループようです。

ネットのDiscogsによると、1枚ぐらいの
アルバムと、20枚ぐらいのシングル盤を
残しているのが、この15-16-17という
グループです。

アーティスト特集 15,16,17 (フィフティーン・シックスティーン・セヴンティーン)

今回のアルバムは2005年にUKの
D.E.B. Musicからリリースされた彼女達の
唯一のアルバムです。
彼女達のシングル盤の履歴を見ると、活躍
したのは76~80年と、おもに70年代
後半に活躍していた事が解ります。
ただアルバムがリリースされたのは
2005年と、25年以上のタイム・ラグ
があるんですね。
初めは後から編集されたコンピュレー
ション・アルバムかと思ったのですが、
アルバムに付いていた解説文などを読むと
プロデューサーのCastro Brownによって
アルバムが準備されていたものの、肝心の
D.E.B. Musicが活動停止になってしまった
為にリリースされなかった「幻の
アルバム」なんだそうです。

プロデュースはCastro Brownで、
エンジニアはDennis Bovellが担当し、
バックはSly & RobbieやChinna Smith、
Cedric 'Im' Brooksなどが参加した
DEB Playersが務めたアルバムで、
表題曲の「Magic Touch」をはじめと
して、「Girls Imagination」や
「Emotion」、「Baby Love」、「I've
Been Watching You」など、彼女達の
若々しい感性が光るラヴァーズロックの
アルバムとなっています。

手に入れたのは2018年に日本の
Octave LabからリイシューされたCD
(新盤)でした。
「名盤千円」シリーズとしてリリースされ
たアルバムで、付いていた帯には次のよう
に書かれていました。

「DEBレーベルのラバーズ・ロックを
代表する永遠の定番アイテム!15歳、
16歳、17歳の3人の女の子による
ヴォーカル・グループでデスチャもカバー
したビージーズの「EMOTION」等
キャッチーなカヴァー曲を満載したUK
ラヴァーズの名盤。」

ちなみにD.E.B. Musicというレーベルは、
Castro Brownとシンガーとして知られる
Dennis BrownがUKで設立したレーベル
です。
レーベルの名前になっている「D.E.B.」
とは、Dennis Brownの本名のDennis
Emmanuel Brownの頭文字をとったレーベル
名なんですね。

全13曲で収録時間は約54分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

15-16-17 Are: Sonia Williams (15), Christine McNabb (16), Wraydene McNabb (17)

Musicians: DEB Players
Drums: Sly Dunbar, N. Grant
Bass: Lloyd Parks, Robby Shakespeare, Dennis Bovell
Lead Guitar: Bo-Pe, Bingy Bunny, Dennis Brown, Dennis Bovell
Rhythm Guitar: Earl 'Chinna' Smith, Dennis Bovell
Percussion: Sticky, Flick Wilson
Piano: Tarzan, Ernest Wilson, Winston Wright, Dennis Bovell
Organ: Ansel Collins
Horns: Cedric Brooks, Lennon Brown, N. Hines
Produced by: Castro Brown
Engineered by: Dennis Bovell

All tracks were recorded in London
between 1977-1978

Artwork: Rie Kategawa (Roullete)
Director: Kenichi Kuramoto (Ultra-Vybe)
Promotion: Naoya Ikeda (Ultra-Vybe)

となっています。

15-16-17のメンバーはSonia Williams
(15歳)と、Christine McNabb(16
歳)、 Wraydene McNabb(17歳)の
3人からなるグループです。
アルバムには6つ折りの解説文と歌詞の
和訳が書かれたライナー・ノーツが付いて
いて、2ページの解説文には彼女たちが
Castro Brownのオーディションに来た際に
年齢を聞かれ、「15歳」、「16歳」、
「17歳」と順番に答えてグループ名が
決まった事や、リード・ヴォーカルは主に
16歳だったChristine McNabbがとって
いた事、例外は「Baby Love」で、ここ
では17歳のWraydene McNabbがリード・
ヴォーカルをとった事などが書かれていま
す。

バックのミュージシャンはDEB Players
で、ドラムにSly DunbarとN. Grant、
ベースにLloyd ParksとRobby Shakespeare、
Dennis Bovell、リード・ギターにBo-Peと
Bingy Bunny、Dennis Brown、Dennis Bovell、
リズム・ギターにEarl 'Chinna' Smithと
Dennis Bovell、パーカッションにSticky
とFlick Wilson、ピアノにTarzanとErnest
Wilson、Winston Wright、Dennis Bovell、
オルガンにAnsel Collins、ホーンに
Cedric 'Im' BrooksとLennon Brown、
N. Hinesという布陣です。

プロデュースはCastro Brownで、エンジ
ニアはDennis Bovellが担当しています。
Dennis Bovellはバルバドス出身の
ギタリストであり、エンジニアである人
で、UKのルーツ・レゲエ・グループ
Matumbiの中心人物として活躍し、のちに
ソロとして数々のアルバムをリリースした
事で知られています。

すべてのトラックは1977~78年の間
に、ロンドンで録音されています。

アート・ワークはRie Kategawa (Roullete)
で、アート・ディレクターはKenichi
Kuramoto (Ultra-Vybe)となっています。

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裏ジャケ

ちなみに2005年にリリースされた
オリジナルのジャケットは、15-16-17の
3人のメンバーのモノクロ写真が使われた
ジャケットのようです。

さて今回のアルバムですが、当時
ティーン・エイジャーだった15-16-17の
若々しい魅力がよく出たアルバムで、内容
は悪くないと思います。

70年代中頃からUKで流行したのが、
ラヴァーズロック・レゲエというレゲエの
サブ・ジャンルの音楽でした。
その中心人物は今回のアルバムにも
エンジニアやミュージシャンとして参加
しているDennis Bovellや、John Kpiaye、
Dennis Harrisといった人達だったんです
ね。

ラヴァーズ・ロック - Wikipedia

UKラヴァーズ・ロックの誕生とその歴史を振り返る

ネットのWikipediaによると、ラヴァーズ
ロックは「歌詞の主題は主に恋愛や
ロマンスであり、甘い質感のあるサウンド
を特色と」し、70年代中期のロンドンで
誕生したと書かれています。
70年代のジャマイカではラスタファリ
ズムという思想を中心とした、思想的な
プロテスト・ソングであるルーツ・レゲエ
が流行していましたが、UKではこうした
ラヴ・ソングを中心としたラヴァーズが
流行していたんですね。

今回のCastro BrownやDennis Brownの
レーベルD.E.B. Musicもラヴァーズの楽曲
を多く残しているレーベルで、この
15-16-17のヒットなどで、UKラヴァーズ
の人気レーベルのひとつだったんですね。
バック・バンドのDEB PlayersにはSly &
RobbieやChinna Smith、Cedric Brooks
など、ジャマイカのトップ・ミュージ
シャンが多く参加していますが、Dennis
BrownのツアーなどでUKに呼んだ彼ら
に、ツアーの合間にレコーディングをして
もらっていたようです。

このラヴァーズロック・レゲエは80年代
以降も、Mad ProfessorのAriwaレーベル
など、多くのレーベルにUK特有のレゲエ
として引き継がれて行くんですね。

よくラヴァーズというと単にラヴ・ソング
系のレゲエと思われていますが、実はUK
発祥のレゲエのサブ・ジャンルであり、
女性が歌えばラヴァーズとか、愛の歌なら
ラヴァーズとかいうものでは無いんです
ね。

話を戻しますが、当時10代の少女達
だった15-16-17のアルバムですが、その
歌いぶりは若いエネルギーに溢れており、
なかなか見事です。
このアルバムが録音されていたにも関わ
らず78年当時にリリースされなかった
というのは、ちょっと残念な気がします。
書いたようにThe Temptationsや
The Bee Gees、The Supremesなど、ヒット
した曲のカヴァー曲が多いですが、当時の
ジャマイカの優秀なバック陣に支えられた
彼女達の歌声は、とても10代の少女達
とは思えないほどの力があります。

1曲目は「Girls Imagination」です。
ソウルのThe Temptationsの名曲
「Just My Imagination」を改題した
カヴァー曲です。
ギターと浮遊感のあるキーボードの
メロディに、感情を乗せた印象的な
ヴォーカルに、ソフトなコーラス・ワーク
がイイ感じ。

15 16 17 - Girls Imagination


2曲目は「Funny Feeling」です。
華やかなホーン・セクションに、刻むよう
なギターのメロディ、ちょっと引きずる
ような感情を乗せたヴォーカルに、
イイ感じのコーラス・ワーク。

funny feeling - 15-16-17 ( reggae girls )


3曲目は「I'm Hurt」です。
ギターとクラヴィネットの演奏に、
トビ音、スウィートなコーラス・ワークに
乗せたソウルフルなヴォーカルが魅力的。

4曲目は「The Weather」です。
いかにもラヴァーズといった高音の
ヴォーカルに、刻むようなギターの演奏
と、透き通ったコーラス・ワーク…。

15,16,17 - The Weather


5曲目は「Emotion」です。
The Bee Geesのカヴァー曲です。
ホーンにキーボード、ギターのメロディ
に、情感を乗せたヴォーカルに、合間良く
入って来るスウィートなコーラスがとても
魅力的。

15 16 17 - Emotion.wmv


6曲目は表題曲の「Magic Touch」です。
刻むようなギターのメロディにストリン
グス、透き通ったリード・ヴォーカルに、
息の合ったコーラス・ワーク。

15,16,17 - Magic Touch


7曲目は「Someone Special」です。
華やかなコーラス・ワークが光る
オープニングから、リリカルなピアノの
メロディに乗せたソフトなヴォーカルが
イイ感じ。

15 16 17 SOMEONE SPECIAL


8曲目は「Baby Love」です。
The Supremesのヒット曲のカヴァー曲
です。
Wraydene McNabbがリード・ヴォーカルを
とった曲のようです。
キーボードとホーン・セクション、ギター
のメロディに、甘くスウィートな
ヴォーカルに、イイ感じのコーラス・
ワーク。

15 16 17 Magic Touch 1977 78 08 Baby love


9曲目は「I've Been Watching You」
です。
ギターとホーン、キーボードのメロディ
に、透き通ったヴォーカルに、複雑な
コーラス・ワーク。

10曲目は「Black Skin Boys」です。
いかにもレゲエらしい切れ味のあるギター
のメロディに、ソフトなヴォーカルに、
心地良いコーラス・ワーク。

15, 16 & 17 - Black Skin Boy


ここまでがオリジナルで、残りの11~
13曲目までの3曲は、CDボーナス・
トラックです。
ここ3曲もなかなか魅力的ですが、ここ
では省略します。

ざっと追いかけて来ましたが、その名前
からも解るようにある程度期間限定の
ユニットだったのかもしれませんが、その
若い歌唱はなかなか魅力的で、今の時代に
聴いても遜色があまりない、実力のある
ユニットだった事が解ります。
UKで産まれたラヴァーズロック・レゲエ
という音楽に貢献した、良いユニット
だったのではないでしょうか。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: 15-16-17
○アルバム: Magic Touch
○レーベル: Octave Lab
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2005

○15-16-17「Magic Touch」曲目
1. Girls Imagination
2. Funny Feeling
3. I'm Hurt
4. The Weather
5. Emotion
6. Magic Touch
7. Someone Special
8. Baby Love
9. I've Been Watching You
10. Black Skin Boys
(CD Bonus Tracks)
11. Suddenly Happiness
12. Only Sixteen
13. If You Love Me Smile