今回はDetermineのアルバム

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「Rock The World」です。

Determine(本名:Rohan Alexander
Bennett)は90年代からジャマイカで
活躍するレゲエ・ディージェイです。
今回のアルバムに入っているBeenie Man
との共演曲「Kette Drum」などで知られ
る、コンシャスなリリックのラスタ系の
ディージェイです。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て6枚ぐらいのアルバムと、345枚
ぐらいのシングル盤を残しています。

今回のアルバムは19996年にUSの
VP RecordsからリリースされたDetermine
のファースト・アルバムです。

プロデュースはBobby 'Digital' Dixon
で、レコーディングはDigital B Studio
で行われたアルバムで、ヒットした
Beenie Manとの共演曲「Kette Drum」など
を中心に、Determineの独特のトース
ティングが楽しめるアルバムとなっていま
す。

手に入れたのはVP Recordsからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が6曲、Side 2が6曲の全12曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Produced by Bobby 'Digital' Dixon for Brickwall Music

Musicians: Computer Paul, Sly Dunbar, Danny Browne, Dean Fraser,
Danny 'Bassie' Dennis, Paul 'Wrong Move' Crosdale
Mixed by: Bobby Digital & Howie Walker
Recorded and Mixed at: Digital B Studio, Kingston, Jamaica

Mastered by: Paul Shields and Chris Scott
at VP Records Mastering Studio
Project Coordination: Errol Foo
Art Direction: Callaway
Photography: Hoeseman

となっています。

プロデュースはBobby 'Digital' Dixon
(Brickwall Music)で、ミュージシャン
はComputer PaulやSly Dunbar、Danny
Browne、Dean Fraser、Danny 'Bassie'
Dennis、Paul 'Wrong Move' Crosdale
などが参加しています。
またゲスト・ミュージシャンとして
Side 1の3曲目「Kette Drum」にダンス
ホールの人気シンガーBeenie Man、
Side 1の5曲目「Beat The Kette Drum」
にベテランのFrankie Paulが参加してい
ます。

ジャケット・デザインはCallaway、写真
はHoesemanとなっています。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、Determineと
いうディージェイの独特で個性的なトース
ティングが際立つアルバムで、なかなか
興味深い内容のアルバムだと思います。

このDetermineですが今回のアルバムに
収められているBeenie Manとの共演曲
「Kette Drum」や、Sizzlaのアルバム
「Black Woman And Child」に収められた
「Mi Lord」という曲の共演などが有名な
ラスタ・ディージェイのようです。

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Sizzla ‎– Black Woman And Child (1997)

Mi Lord


このアルバムは2006年にTOKYO FM出版
刊行の本「Dancehall Reggae Standards」
に紹介されていますが、それによると、

「ビーニ・マンとの"Kette Drum"で
〈ケテジャン、ケテジャン〉と歌っただけ
で、レゲエ人物名鑑に載ってしまうであろ
うDJ。この曲が、90年代のラスタ・
ブームを作ったと言っても過言では
ない。」

と書かれています。
それほどこの「Kette Drum」という曲は、
この時代に影響を与えた曲らしいです。
実際にこの「Kette Drum」という曲を聴い
た印象としても、「ケテジャン、
ケテジャン」のフレーズの繰り返しはこの
レゲエという音楽でしか生まれえない独自
性があり、その黒人特有の土着性を持った
サウンドはとても魅力的です。
70年代のルーツ・レゲエから引き継が
れたこの独自性が、彼らのルーツ・
ミュージックの肝である事は間違いありま
せん。
80年代以降はジャマイカのレゲエの主流
は、それまで流行していたルーツ・レゲエ
からもっと快楽的なダンスホール・レゲエ
へと移行しますが、それでも「ルーツ・
レゲエの血」は裏で脈々と生き続けている
んですね。

この「90年代のラスタ・ブーム」に
よって登場して来たアーティストかは解り
ませんが、このDetermineの登場の後にも
BushmanやWarrior Kingなど、おそらく
レゲエという音楽でなければ登場し得ない
個性的なアーティストが、この90年代
以降に登場して来ているんですね。

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Bushman ‎– Nyah Man Chant (1997)

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Warrior King ‎– Virtuous Woman (2002)

そうしたラスタ・ブームを作ったのがこの
「Kette Drum」であるとすれば、この
あたりはぜひとも聴いておきたいところだ
と思います。

実際に聴いてみた印象としてはこの
「Kette Drum」やその続編と思われる
Frankie Paulとの共演曲「Beat The
Kette Drum」、「Ho La La」など、
レゲエらしい土着性を持ったDetermine
の独特のトースティングは、やはり聴く
べきものがあります。
ただ正直なところこのアルバムが
ファースト・アルバムという事もあるの
か、Determineのちょっと一本調子の間の
無いトースティングは、アルバムを1枚
通して聴くとちょっと疲れるところがあり
ます。

またこの80年代以降のデジタルのダンス
ホール・レゲエの時代になって以降曲作り
が「起・承・転・結」と変化するのでは
なく、「起・承・転」ぐらいで終わって
しまう淡白な曲作りになっているんです
ね。
ある程度スピード感を重視しての事なの
かもしれませんが、そうした曲作りは変化
が乏しく、やはり単調に聴こえてしまう
部分があります。
その単調な部分を歌手の歌い方や複数の
シンガーのコンビネーションでカヴァー
している部分が、この90年代の音楽には
見られます。
このアルバムも例外ではなく、多少曲調が
平板なのが気になるところです。
そのあたりをDetermineが独特の歌い方で
カヴァーしているのですが、その歌い方
が続き過ぎると…、といった感じがあり
ます。

この時代らしいデジタルな陽気なノリは
評価出来るものの、アルバムとしては
イマイチと言わざるを得ません。
ヒット曲の「Kette Drum」などはコンビ
ネーション曲なので粗が目立たないのです
が、全体を通すと粗を感じてしまうところ
があり、ちょっともったいないアルバムと
いう気がします。

Side 1の1曲目は「Ho La La」です。
パーカッションなどを駆使したデジタルな
リズムに、Determineのちょっとユーモア
のある個性的なトースティングがイイ感じ
な曲です。

Ho La La


2曲目は「Shall Not Reframe」です。
デジタルなキーボードの明るいメロディと
パーカッション、声を張り上げるような
Determineの独特なシング・ジェイ。

3曲目はBeenie Manとの共演曲「Kette
Drum」です。
心地良いギターのメロディにパーカッ
ション、「ケテジャン、ケテジャン」と
語るDetermineのトースティングと、
Beenie Manとの掛け合いがイイ感じ。

Beenie Man & Determine - Kette Drum *OFFICIAL VIDEO*


4曲目は「Washing Mashine」です。
語るDetermineのトースティングから、
縦笛?のメロディにデジタルな
ドラミング、流れるようなトース
ティング。

Determine - Washing machine


5曲目はFrankie Paulとの共演曲「Beat
The Kette Drum」です。
Determineの口上から、心地良いビンギ・
ドラムとデジタルなキーボードの
メロディ、Frankie Paulの歌とDetermine
のトースティングの掛け合いがイイ感じの
曲です。

Beat The Kette Drum


6曲目は「Shaka Zulu」です。
Determineの早口な口上、ちょっと
ユーモラスなキーボードのメロディに、
デジタルなドラミング。

Side 2の1曲目は表題曲の「Rock The
World」です。
キーボードとデジタルなドラミングに
ギター、性急に語るようなDetermineの
トースティング。

Rock The World


2曲目は「Baby Killer」です。
キーボードのメロディに鳴りもの、
デジタルなドラミングに、流れるように
滑らかなDetermineのトースティング。

3曲目は「Don't Remember Love」
です。
耳馴染みのあるホーンとキーボードの
メロディに、心地良いドラミング、
ハリのあるDetermineのトースティング。

Don't Remember Love


4曲目は「Broom Broom」です。
ギターとキーボードのメロディに、性急な
Determineのトースティング。

5曲目は「Forgive Them Lord」です。
デジタルなキーボードのメロディに、流れ
るように軽快なDetermineのトース
ティングがイイ感じ。

6曲目は「Birds And The Bees」です。
ベース音のキーボードのメロディに、
デジタルらしいドラミング、Determineの
性急なトースティング。

ざっと追いかけて来ましたが、やはり
Beenie Manとの共演曲「Kette Drum」は
傑出した内容で、この曲によってラスタ・
ブームが起きたというのは納得出来る
ところがあります。

90年代に個性的なトースティングで活躍
したDetermineですが、その後際立った
活躍が無いのがちょっと残念なところ
です。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Determine
○アルバム: Rock The World
○レーベル: VP Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1996

○Determine「Rock The World」曲目
Side 1
1. Ho La La
2. Shall Not Reframe
3. Kette Drum - Feat. Beenie Man
4. Washing Mashine
5. Beat The Kette Drum - Feat. Frankie Paul
6. Shaka Zulu
Side 2
1. Rock The World
2. Baby Killer
3. Don't Remember Love
4. Broom Broom
5. Forgive Them Lord
6. Birds And The Bees