今回はPrince Mohamed (Prince
Mohammed)のアルバム

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「African Roots」です。

Prince Mohamed (Prince Mohammed)
(本名:George Nooks)は70年代から
80年代にかけて活躍したディージェイ
です。
ちょっとトボけたディージェイ・スタイル
で、June Lodgeとのデュエット曲
「Someone Loves You Honey」などで人気
を博したほか、同時に本名のGeorge Nooks
でもシンガーとして活躍した人です。

ディージェイのPrince Mohammedとして
活躍したのはこの70年代後半から
80年代前半にかけての一時期ですが、
シンガーのGeorge Nooksとしては現代に
至るまで活躍を続けています。

ネットのDiscogsによると、Prince
Mohammedとして共演盤を含めて7枚ぐらい
のアルバムと、36枚ぐらいのシングル盤
を残しているほか、George Nooksとして
共演盤を含めて19枚ぐらいのアルバム
と、399枚ぐらいのシングル盤を残して
います。

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Prince Mohammed ‎– Inna Him Head (1980)

George Nooks - Wikipedia

アーティスト特集 George Nooks (ジョージ・ヌークス)

今回のアルバムは1979年にUKの
Burning Sounds参加のレーベル
Burning Rockersからリリースされた
Prince Mohammedのソロ・アルバムです。

プロデュースはLinval Thompsonで、それ
以外の記載はありませんが、表題曲の
「African Roots」をはじめとして、まだ
ルーツ・レゲエの匂いの残るロッカーズ・
ビートのバックに、Prince Mohammedの
イケイケのトースティングが冴える
アルバムとなっています。

手に入れたのは2019年にUKの
Burning Soundsからリイシューされた
CD(新盤)でした。

全10曲で収録時間は約分。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

Producer – Linval Thompson

という記述があるのみです。

また元のアルバムの裏ジャケと思われる
絵柄が表ジャケになっている小冊子の裏面
に印刷されていますが、そこに

Sleeve Design: Art In Heaven

という記述があります。

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表ジャケ小冊子裏面

なのでジャケット・デザインはArt In
Heavenというところで行っているよう
です。

また表ジャケになっている小冊子には、
元になったLPのビニール盤に貼られた
Burning Rockersのロゴや曲目のシールが
載っていました。

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小冊子(写真)

また原曲はネットのRiddimguideで調べて
も解りませんでしたが、曲を聴くと歌って
いるのはLinval Thompsonで、その歌って
いる言葉などからある程度曲目を特定する
事が出来ました。
例えば1曲目「My Little Baby」は
Linval Thompsonの「My Baby~♪」という
言葉があったので、ネットのYouTubeで
「My Baby Linval Thompson」で調べて
みると「My Baby」という曲が出て来て
メロディが一致しました。
そういう風に調べて行って、10曲中
4曲がLinval Thompsonのアルバム
「Follow My Heart」の曲で、1曲が
「I Love Marijuana」の曲、1曲が
「Love Is The Question」の曲、1曲が
「Six Babylon」の曲という事が解り
ました。
(残りの3曲は特定出来ませんでした。)

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Linval Thompson ‎– Follow My Heart (1980)

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Linval Thompson ‎– I Love Marijuana (1978)

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Linval Thompson ‎– Love Is The Question (1978)

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Linval Thompson – Six Babylon (1979)

ちなみに持っているアルバムを調べた
ところ、「Follow My Heart」と「Love Is
The Question」にはミュージシャンの記載
がありませんでしたが、
「I Love Marijuana」と「Six Babylon」
には以下の記載がありました。

(Linval Thompson ‎– I Love Marijuana 1978)
Bass: Aston 'Family Man' Barrett, Robert Shakespeare
Drums: Hoss Mouth, Sly Dunbar
Guitar: Errol 'Chinna' Smith
Organ: Ossie
Piano: Ansel Collins

(Linval Thompson – Six Babylon 1979)
Bass: Robbie Shakespeare, Lloyd Parks
Drums: Sly Dunbar, Carlton 'Santa' Davis
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Rhythm Guitar: Tony Chin
Percussion: Scully, Brad Osborne
Piano: Ansel Collins
Organ: Winston Wright
Back Ground Vocals: Towerchanters

一応参考程度に見ておいてください。

さて今回のアルバムですが、ルーツ・
レゲエの時代後期の70年代後半に
もっとも尖がったロック色の強いサウンド
で人気を博していたLinval Thompsonの
原曲をバックに、イケイケのトース
ティングを聴かせるPrince Mohammedが
とても魅力的なアルバムで、内容は悪く
ないと思います。

プロデューサーのLinval Thompsonです
が、Henry 'Junjo' Lawesとともに
その後の80年前半のアーリー・ダンス
ホールの流れを作ったプロデューサーと
してよく知られています。
それまでの思想的なプロテスト・ソングを
中心としたルーツ・レゲエから快楽的な
スラックネス(下ネタ)やガン・トーク
(暴力ネタ)、ラヴ・ソングなどのダンス
ホール・レゲエを一番初めに手掛けたの
が、このLinval ThompsonやHenry 'Junjo'
Lawesなどのプロデューサーだったんです
ね。
歌手としても活躍したLinval Thompsonの
70年代後半の楽曲にはすでにその兆候が
表れていています。
例えばLinval Thompsonの代表曲のひとつ
「I Love Marijuana」では、吸いたくて
吸いたくてたまらないという、かなり直情
的な歌詞なんですね。
そこには70年代のルーツ・シンガーが
唱えたような、「マリファナは神の草」と
いったような思想的な理屈付けはありま
せん。
70年代の後半ぐらいから活躍している
Linval Thompsonですが、リズムはルーツ
の時代のものですが、彼の歌詞にはすでに
次のダンスホールの時代を予見させる直情
的なものが多いんですね。

そのLinval Thompsonの曲をトースティング
しているのが、同じく70年代後半から
登場して来たPrince Mohammedです。
彼はかなり早い時期からディージェイの
Prince MohammedとシンガーのGeorge Nooks
という2つの顔を使い分けていたようで
す。
80年代の半ば以降はディージェイの
Prince Mohammedとしての活動はほとんど
していないようなので、今ではシンガーの
George Nooksですが、初めの頃はこの
ディージェイのPrince Mohammedとしての
活動の方が際立っていたようです。
実際にJune Lodgeとのデュエット曲
「Someone Loves You Honey」が大ヒット
するなど、ちょっと図抜けた異常に陽気な
キャラクターの個性は際立っていたんです
ね。

June Lodge & Prince Mohammed - Someone loves you honey 1982


私自身も初めに彼に注目したのはディー
ジェイのPrince Mohammedとしての彼でし
た。
Dennis Brownの「Money In My Pocket」の
ディスコ・ミックス・ヴァージョンで、
後半にPrince Mohammedの「Cool Runnings」
が入っていたんですね。

Dennis Brown- Money In My Pocket v Prince Mohammid - Cool Runnings


これが実にカッコ良かったんですね!
Dennis Brownの「Money In My Pocket」
だけでもかなりの名曲ですが、この
Prince Mohammedの「Cool Runnings」が
入ったディスク・ミックス・ヴァージョン
は、その魅力がさらにヴァ―ジョン・
アップしたErrol Thompsonの名ミックスと
もいえる1曲でした。
それ以来このPrince Mohammedという
ディージェイが気になって、ネットを探し
回って、ようやくレゲエレコード・コムで
「Bubbling」というアルバムを見つけ、
手に入れました。

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Prince Mohammed ‎– Bubbling (1982?)

このアルバム「Bubbling」はPrince
Mohammedのちょっとノー天気でイカレた
ヘラヘラとしたトースティングが実に
カッコ良く、今でもお気に入りのアルバム
です。
June Lodgeとのデュエット曲の「Someone
Loves You Honey」などを聴いても解り
ますが、この人は80年代に入ると独自の
ちょっとヘラヘラとした軽めのトース
ティング・スタイルを確立したようで、
その個性はとても際立っています。

今回のアルバムでは彼の軽めの個性はそこ
まで顕著ではありませんが、すでにライト
な個性が感じられ、硬派な中にも何となく
親しみを感じるトースティングが魅力
です。
その進んだ方向性などからもあのClint
Eastwoodの2番手という感じもちょっと
ありますが、ライトなディージェイという
個性は貴重で、出来ればシンガーとし
てよりもこちらで行って欲しかったような
気もします。
個人的にはシンガーとしてのGeorge Nooks
には、ディージェイとしてのPrince
Mohammedほどの興味がどうしても持てない
んですね(苦笑)。
まあ「イロ物ディージェイ」より、「正統
派バラード・シンガー」を選ぶのは、
しょうがない部分があるのかもしれません
が…。

1曲目は「My Little Baby」です。
原曲はLinval Thompsonの「My Baby」で、
彼のアルバム「Follow My Heart」に収め
られた曲です。
心地良いギターとドスの効いたベース、
Linval Thompsonの明る歌声から、Prince
Mohammedのイカしたダブワイズしたトース
ティングがグッド。

My Little Baby


2曲目は「Survival」です。
原曲はLinval Thompsonの「Give Me A
Chance」で、彼のアルバム「Follow My
Heart」に収められた曲です。
ドス効いたベースに浮遊感のあるキー
ボードとギターのダブワイズした演奏に、
滑らかなPrince Mohammedのトース
ティングがイイ感じ。

3曲目は「Skillfull Natty Dread」
です。
原曲はLinval Thompsonの「Give Me a
Chance」で、彼のアルバム「Follow My
Heart」に収められた曲です。
ホーン・セクションの明るいメロディ
から、ギターとドスの効いたベースの演奏
に、Prince Mohammedらしい立て板に水の
明るいトースティング。

Skillful Natty Dread


4曲目は「Dry Up Your Tears」です。
こちらは残念ながら原曲が特定出来ません
でした。
漂うようなキーボードとドス効いた
ベース、ギターのスローでリリカルな
メロディに、心地良いパーカッション、
Prince Mohammedのイカしたトース
ティング。

Dry up Your Tears


5曲目は「Don't Come Running Back」
です。
こちらは残念ながら原曲が特定出来ません
でした。
どうもヴォーカルはAl Campbellっぽいの
ですが…。
ギターとドスの効いたベースのメロディ
に、リズミカルなドラミング、ノリの良い
Prince Mohammedのイイ感じのトース
ティング。

Don't Come Running Back


6曲目は表題曲の「African Roots」です。
原曲はLinval Thompsonの「Roots Lady」で、
彼のアルバム「I Love Marijuana」に収め
られた曲です。
漂うようなキーボードにギター、ドスの
効いたベースという組み合わせに、
Prince Mohammedのソフトでナイスなトース
ティングがすごく魅力的。

African Roots


7曲目は「Love Is The Answer」です。
原曲はLinval Thompsonの「Love Is The
Question」で、彼のアルバム「Love Is The
Question」の表題曲です。
ドスのベースを中心とした演奏に、Linval
Thompsonの黒いヴォーカルにダブワイズ、
陰影のあるPrince Mohammedの味わい深い
トースティング。

Love Is the Answer


8曲目は「Clean Hands」です。
原曲はLinval Thompsonの「Big Oppressor」
で、彼のアルバム「Follow My Heart」に
収められた曲です。
心地良いドラミングに、どすの効いた
ベースとキーボードを中心とした
メロディ、ダブワイズ、Prince Mohammed
の魅力的なトースティング。

9曲目は「Shoutin' Temple」です。
こちらは残念ながら原曲が特定出来ません
でした。
どすの効いたベースに漂うような
キーボード、ダブワイズ、イイ感じの
Prince Mohammedのトースティング。

10曲目は「Every Mouth Must Be Fed」
です。
原曲はLinval Thompsonの「Children Must
Be Fed」で、彼のアルバム「Six Babylon」
に収められた曲です。
ギターとドスの効いたベースを中心とした
メロディに、歯切れの良いドラミング、
流れるように滑らかなPrince Mohammedの
心地良いトースティング。

Every Mouth Must Be Fed


ざっと追いかけてきましたが、まだPrince
Mohammedのトースティングには青い硬さが
あるものの、彼のライトな個性が現れ始め
ていて、そのあたりがとても魅力的です。

80年代になると彼のトースティングは
さらなる輝きを増し、June Lodgeとの
デュエット曲「Someone Loves You Honey」
をはじめとして、そのライトな個性で弾け
まくるんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Prince Mohamed (Prince Mohammed)
○アルバム: African Roots
○レーベル: Burning Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年:

○Prince Mohamed (Prince Mohammed)「African Roots」曲目
1. My Little Baby
2. Survival
3. Skillfull Natty Dread
4. Dry Up Your Tears
5. Don't Come Running Back
6. African Roots
7. Love Is The Answer
8. Clean Hands
9. Shoutin' Temple
10. Every Mouth Must Be Fed