今回はThe Mighty Diamondsのアルバム

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「....Tell Me What's Wrong」です。

The Mighty Diamondsは70年代の
ルーツ・レゲエの時代から活躍を続ける
コーラス・グループです。
リード・ヴォーカルのDonald 'Tabby'
Shawを中心に、コーラスのLloyd 'Judge'
Fergusonと Fitzroy 'Bunny' Simpson
からなる3人組のコーラス・グループで、
1976年にアルバム「When The Right
Time Come (I Need A Roof)」でChannel
Oneのバック・バンドThe Revolutionaries
の攻撃的なミリタント・ビートをバックに
した、美しいコーラス・ワークを武器に
鮮烈なデビューし、その後も活躍を続けた
コーラス・トリオとして知られています。

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The Mighty Diamonds ‎– When The Right Time Come (I Need A Roof) (1976)

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て38枚ぐらいのアルバムと、234枚
ぐらいのシングル盤を残しています。

アーティスト特集 Mighty Diamonds (マイティ・ダイアモンズ)

マイティ・ダイアモンズ - Wikipedia

今回のアルバムは1978年にジャマイカ
のChannel One系列のレーベルHit Bound
からリリースされた彼らのソロ・アルバム
です。

バックはChannel Oneのバック・バンド
The Revolutionariesで、「Drifter」
リディムの「Brothers And Sisters」
や、「I'm Still In Love」リディムの
「Still In Love」など、60年代後半の
ロックステディのリディムの曲などが収め
られたアルバムで、表題曲の「Tell Me
What's Wrong」なども含めてコーラス・
グループMighty Diamondsらしい心地良い
爽やかな歌声が楽しめるアルバムとなって
います。

手に入れたのはChannel Oneからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

The Mighty Diamonds:
Lead Vocal: Donald Shaw: 'Tabby'
Harmony Voices: Fitzroy Simpson: 'Bunny', Lloyd Ferguson: 'Judge'

Special thanks to the following musicians:
Drums: Sly Dunbar
Bass: Ranchie and Robbie
Lead Guitar: Duggie
Percussion: Sticky
Alto Sax: Marquis
Tenor Sax: Tommy McCook
Trombone: Don D Junior

Recorded & Mixed at: Channel One Recording Studio, Kingston, Jamaica

Cover Concept Design and Graphics: Leslie A. Moore for LAM Graphics Int.

となっています。

The Mighty Diamondsのメンバーは、
リード・ヴォーカルのDonald Shaw
(通称:Tabby)、ハーモニー担当の
Fitzroy Simpson(通称:Bunny)と
Lloyd Ferguson(通称:Judge)の3人
です。

バックはChannel Oneのバック・バンド
The Revolutionariesで、ドラムに
Lowell 'Sly' Dunbar、ベースにBertram
'Ranchie' McLeanとRobbie Shakespeare、
リード・ギターにRadcliffe 'Dougie'
Bryan、パーカッションにUziah
'Sticky' Thompson、アルト・サックス
にHerman Marquis、テナー・サックス
にTommy McCook、トロンボーンに
Don D JuniorことVincent Gordon と
いう布陣です。

レコーディングとミックスはジャマイカの
キングストンにあるChannel One
Recording Studioで行われています。
残念ながらプロデュースとアレンジの記載
はありません。
ただプロデュースはChannel Oneの主催者
Joseph Hookim、ミックスはErnest Hookim
なのではないかと推測されます。

ジャケット・デザインはLAM Graphicsの
Leslie A. Mooreという人が行っている
ようです。

さて今回のアルバムですが、70年代の
ルーツ・レゲエの頃のThe Mighty Diamonds
を代表作のひとつといえるアルバムで、
とても内容の良いアルバムだと思います。

もうレゲエが誕生して50年近くの歴史が
ありますが、そのレゲエの歴史の中には
数多くのコーラス・グループが登場して
来ましたが、このThe Mighty Diamonds
は、BobとPeter、Bunnyの3人が揃って
いたオリジナルのThe Wailersと並んで、
レゲエの歴史で欠かす事の出来ない
コーラス・グループのひとつなんですね。
特にのルーツ・レゲエの時代の76年の
デビュー・アルバム「When The Right
Time Come (I Need A Roof)」の、
The Revolutionariesの攻撃的な
ミリタント・ビートに乗せた、彼ら
ならではの洗練されたメローなコーラス・
ワークは、コーラス・グループの概念を
変えた画期的なサウンドだったんですね。
(ちなみにUKのVirgin盤のタイトルは
「Right Time」で、そちらの方がよく
知られています。)

その後彼らは77年にVerginからリリース
したセカンド・アルバム「Ice On Fire」
で、ニューオリンズのミュージシャンを
バックに録音した意欲的なアルバムを制作
し世界的な成功を目指しますが、こちらは
セールス的にはあまり芳しくなかったよう
です。

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Mighty Diamonds ‎– Ice On Fire (1977)

ただそれでも彼らの快進撃は続いていて、
この78年には今回のアルバムのほか、
「Planet Earth」とThe Icebreakers With
The Diamonds名義のそのダブ・アルバム
「Planet Mars Dub」、Channel Oneからの
「Stand Up To Your Judgement」と、4枚
のアルバムを量産しているんですね。

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The Diamonds ‎– Planet Earth (1978)

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The Icebreakers With The Diamonds ‎– Planet Mars Dub (1978)

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The Mighty Diamonds ‎– Stand Up To Your Judgement (1978)

こうした彼らの快進撃は80年いっぱい
まで続き、80年を除いてほぼ毎年1枚
以上のアルバムをリリースし続けているん
ですね。
その出発点となったのがこの78年で、
セカンド・アルバムの失敗を逆に糧に
して、原点に戻りミリタント・ビートに
乗せたソフトなコーラスという彼ららしい
メロー&ハードな楽曲でアルバムを量産
し始めるんですね。

今回のアルバムの特徴としては、ロック
ステディ・フォームの楽曲が多い事が挙げ
られます。
あのレゲエ本「Roots Rock Reggae」にも
このアルバムが紹介されていますが、そこ
には「彼らの初期作品に張りを落とすたび
に感たのは、レヴォリューショナリーズ
なのに、なぜロック・ステディ・フォーム
の演奏が多いのかという事。今も疑問だ
が、もう不満はない。」というような事が
書かれています。
確かにこのアルバムを見ると、「Drifter」
リディムの「Brothers And Sisters」や、
「General」リディムの「Love Me Girl」、
「I'm Still In Love」リディムの「Still
In Love」など、オリジナルの曲は60年
代後半に流行したレゲエの前身の音楽
ロックステディの楽曲が多く収められて
いるんですね。

ちなみにロックステディは1966年から
68年までのわずか3年間だけジャマイカ
で流行したポピュラー音楽です。
ジャマイカではスカが流行した後に、
スローな甘いメロディを特徴とするロック
ステディが流行したんですね。
その後60年代後半にようやくレゲエが
誕生しています。

ロックステディ - Wikipedia

話を戻しますが、このThe Mighty Diamonds
の初期のアルバムには、彼らがアルバムを
作った時より10年ぐらい前のロック
ステディ・フォームの楽曲が確かに多いん
ですね。

その理由を私なりに考えてみると、ひとつ
はジャマイカには「リディム」という文化
があるということ。
ジャマイカでは人気のあるリズムを繰り
返し使い、新しいリリック(詞)を乗せて
楽曲を作って行くという「リディム」と
いう文化があるんですね。
そのリディムという文化は80年代になる
とより花開き、人気のある楽曲は現代に
至るまで繰り返し繰り返し、しつこい
くらいに使い回されているんですね。

また彼らがコーラス・グループである事も
古い楽曲が使われている要因のひとつかも
しれません。
メンバーが多くなるとコーラスを合わせる
時に皆がその歌を知っている事が重要で、
知らないとコーラスのパートを合わせられ
ないんですね。
コーラス・グループの場合は、そうした
コーラスを磨きに磨く時間が必要なのかも
しれません。
彼らの「ビロードの剃刀」と異名を持つ
コーラス・ワークは、そうした永い努力
から生まれたものなのかもしれません。

今回のアルバムではロックステディ・
フォームの楽曲が多いといこともあって、
The Revolutionariesの切れ味鋭い
ミリタント・ビートはいく分控えめな印象
ですが、その分The Mighty Diamondsの
磨き抜かれたコーラス・ワークがより
際立っていて、とても素晴らしいです。
76年のファーストの「When The Right
Time Come (I Need A Roof)」と並ぶ、
彼らのベスト・ワークのひとつといえる
アルバムだと思います。

Side 1の1曲目は「Brothers And
Sisters」です。
リディムはDennis Walksの「Drifter」。
華やかなホーン・セクションとギターの
メロディから、よく通るDonald 'Tabby'
Shawのヴォーカルと心地良いコーラス・
ワーク。
ロックステディのリズムを乗りこなす、
The Mighty Diamondsの真骨頂ともいえる
曲です。

The Mighty Diamonds - Brothers And Sisters


リズム特集 Drifter (ドリフター)

2曲目は「Party」です。
ギターとキーボード、ピアノを中心とした
メロディに、ファルセットなTabbyの
ヴォーカルに合わせるようにファルセット
なコーラス・ワーク。

3曲目は「Have A Little Mercy」です。
心地良いドラミングに、ホーン・セクション
とギター、ベースを中心としたメロディ、
表情豊かなTabbyの透き通ったヴォーカルに
美しいコーラス・ワーク。

Mighty diamonds - Have a little mercy


4曲目は表題曲の「Tell Me What's Wrong」
です。
ギターとベース、ピアノを中心とした
リズミカルなメロディに、語るように
穏やかなTabbyのヴォーカルに、絶妙に
入って来るコーラス・ワークがとても
魅力的。

Diamonds - Tell Me What Is Wrong


5曲目は「Know Your Culture」です。
華やかなホーン・セクションとピアノ、
キーボード、ギターのメロディに、
伸びやかなTabbyのヴォーカルに
コーラス・ワーク。

Side 2の1曲目は「You Better Beware」
です。
華やかなホーン・セクションとギターの
メロディに優しいコーラス・ワーク、語る
ようにソフトなTabbyのヴォーカルが
とても魅力的な曲です。

2曲目は「No Opportunity For The
Youth」です。
歯切れの良いギターを中心としたメロディ
に、ファルセットなコーラス・ワークに
乗せたTabbyのヴォーカルがイイ感じの曲
です。

Mighty Diamonds- No opportunity for the youth (Channel One) 1978


3曲目は「I Don't Mind What You Are
Saying」です。
キーボードとホーン、ギター、ピアノの
歯切れの良い演奏に、Tabbyのヴォーカル
のコーラス・ワークがイイ感じの曲です。

4曲目は「Love Me Girl」です。
リディムは「General」として知られる
リディムで、オリジナルはThe Heptones
のロックステディのヒット曲「Love Me
Girl」です。
ギターとピアノ、キーボードを中心とした
明るいメロディに、ソフトで表情のある
Tabbyのヴォーカルがとても魅力的。

The Mighty Diamonds - Love Me Girl - Reggae


リズム特集 General (ジェネラル)

5曲目は「Still In Love」です。
リディムはAlton Ellisのロックステディのヒット曲「I'm Still In Love With You」。
ギターとリリカルなピアノのメロディに、
心地良いパーカッション、スウィートな
Tabbyのヴォーカルにコーラス・ワーク。

The Mighty Diamonds - Still In Love


リズム特集 I'm Still In Love (アイム・スティル・イン・ラブ)

ざっと追いかけてきましたが、この
グループの軸となるDonald 'Tabby'
Shawのヴォーカルは透明感がありとても
素晴らしく、ソロとしても活躍出来そうな
実力を備えているんですね。
それでもこのグループが長く同じメンバー
で活躍を続けたのは、彼ら自身が自分達の
コーラス・ワークに魅せられていたから
かもしれません。

「ビロードの剃刀」と呼ばれた彼らの
コーラス・ワークは、間違いなくレゲエの
宝物です。

機会があればぜひ聴いてみてください。

The Mighty Diamonds - live



○アーティスト: The Mighty Diamonds
○アルバム: ....Tell Me What's Wrong
○レーベル: Channel One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○The Mighty Diamonds「....Tell Me What's Wrong」曲目
Side 1
1. Brothers And Sisters
2. Party
3. Have A Little Mercy
4. Tell Me What's Wrong
5. Know Your Culture
Side 2
1. You Better Beware
2. No Opportunity For The Youth
3. I Don't Mind What You Are Saying
4. Love Me Girl
5. Still In Love