今回はBlack Uhuruのアルバム
「Black Sounds Of Freedom (Deluxe
Edition)」です。
Black Uhuruは70年代中頃から80年代
にかけて世界的にも活躍したヴォーカル・
グループです。
1974年にGarth DennisとDucky
Simpson、Don Carlosで結成されました
が、Garth DennisとDon Carlosが抜け
代わりにMichael RoseとErrol Nelsonが
加入し、77年にファースト・アルバム
「Love Crisis」を発表。
その後Errol Nelsonが脱退し、代わりに
女性ヴォーカリストのPuma Jonesが加入。
Sly & Robbieのバック・アップを受けて、
80年に彼らのメジャー・デビュー・
アルバムとなる「Sinsemilla」(通算
3枚目)を発表し、世界的にも人気の
グループとなります。
Black Uhuru - Sinsemilla (1980)
その後Michael Roseが脱退しJunior Reid
が加入したり、Puma Jonesが亡くなったり
という事などがあり、90年のアルバム
「Now」を最後に活動を停止しています。
ネットのDiscogsによると、33枚ぐらい
のアルバムと、93枚ぐらいのシングル盤
を残しています。
アーティスト特集 Black Uhuru(ブラック・ユフル)
ブラック・ウフル - Wikipedia
今回のアルバムの元となったアルバムは
1977年にUKのThird Worldレーベル
からリリースされたBlack Uhuruの
ファースト・アルバム「Love Crisis」
です。
その後彼らはメンバー・チェンジを経て、
80年に「Sinsemilla」でSly & Robbie
のバックでメジャー・デビューしますが、
その人気を当て込んで「Love Crisis」を
再編集して作られたのが、81年にUKの
Greensleeves Recordsからリリースされた
のが今回の「Black Sounds Of Freedom」
というアルバムです。
プロデュースはPrince Jammyで、バックは
The Aggrovatorsが担当したアルバムで、
ファースト・アルバムのタイトル曲だった
「Love Crisis」や、ラスタ・アンセムと
して今でも非常に人気の高い「I Love
King Selassie」、Bob Marleyの名曲の
カヴァー「Natural Mystic」など、
ルーツ・レゲエの魅力がギッシリと
詰まった、彼らのアルバムの中でも特に
評価の高いアルバムです。
またこのアルバムのダブ・アルバムが、
82年に「Uhuru In Dub」というタイトル
で、UKのCSA Recordsというレーベル
からリリースされています。
Prince Jammy With Sly & Robbie / Black Uhuru – Uhuru In Dub (1982)
このダブ・アルバムは私が初めにレゲエを
集めていた20代の頃、おそらく80年代
に購入しています。
たしか御茶ノ水のディスクユニオンあたり
で購入したんじゃないかと思いますが、
Johnny Osbourneのアルバム「Water
Pumping」のダブ・アルバム「Osbourne
In Dub」と2枚がセットで、LP1枚分
(多分2千円ぐらい)の値段で売られて
いて、安かったので購入した記憶があり
ます。
Prince Jammy – Osbourne In Dub (1983)
手に入れたのは2009年にヨーロッパの
Greensleeves Recordsからリリースされた
CD(新盤)でした。
CD2枚組のデラックス・エディションの
アルバムで、Disc 1には81年のアルバム
「Black Sounds Of Freedom」の10曲の
ほか、82年のダブ・アルバム「Uhuru In
Dub」の10曲が収められており、さらに
Disc 2には元になったファースト・
アルバム「Love Crisis」の10曲と、
アルバムの曲と同じリディムを使用した
U-Blackの4曲が収められた、かなり凝った
仕様のアルバムとなっています。
ちなみにU. Blackの4曲は、77年にUK
のThird Worldというレーベルからリリース
した「Westbound Thing A Swing」という
アルバムに収められた曲です。
なおこのアルバムは人気のあったアルバム
だった為か、2016年にVP Recordsから
King Jammy(Prince Jammyから改名)に
よる、このアルバムの曲をAlborosieや
Chronixx、Kabaka Pyramidといった近年
活躍するアーティストが歌った
コンピュレーション・アルバムの
「New Sounds Of Freedom」がリリース
されています。
King Jammy – New Sounds Of Freedom (2016)
Disc 1は全20曲で収録時間は約71分。
1~10曲目までは81年のアルバム
「Black Sounds Of Freedom」の10曲、
11~20曲目までは82年のPrince
Jammy名義でリリースされたダブ・
アルバム「Uhuru In Dub」の10曲、
計20曲が収められています。
Disc 2は全14曲で収録時間は約分。
6曲目、8曲目、11曲目、14曲目の
4曲はU-Blackの曲で、残りの10曲は
Black Uhuruのファースト・アルバム
「Love Crisis」の曲が収められていま
す。
ミュージシャンについては以下の記述が
あります。
Produced & Arranged by: Prince Jammy
Rhythm laid at: Harry J's Recording Studio
Original Recordings: 1977
Engineer: Sylvan Morris
Voiced & Mixed at: King Tubby's Studios
Engineer: Prince Jammy
Musicians: Agrovators
Drums: Sly Dunbar & Santa Davis
Bass: Robbie Shakespeare & Mikey
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith & Bo Pee
Rhythm Guitar: Eric 'Bingy Bunny' Lamont
Piano: Keith Sterling & Gladstone Anderson
Organ, Clavinet & Harpsichord: Winston Wright
Percussion: Scully
Syndrums: Style Scott
Horns: Bobby, Headly & Cedric
Strings: Earl 'Wire' Lindo
Harmonica: Johnny Osbourne
Design: Tony McDermott
"Love Crisis" original cover design: Anthony Nero
となっています。
プロデュースとアレンジはPrince Jammy
で、オリジナルのレコーディングは
1977年にHarry J's Recording Studio
で行われ、レコーディング・エンジニアは
Sylvan Morrisが担当しています。
声入れとミックスはKing Tubby's Studios
で行われ、ミックス・エンジニアは
Prince Jammyが担当しています。
バック・バンドはThe Agrovatorsで、
ドラムにSly DunbarとCarlton 'Santa'
Davis、ベースにRobbie Shakespeareと
Mikey、リード・ギターにEarl 'Chinna'
SmithとWinston 'Bo Pee' Bowen、
リズム・ギターにEric 'Bingy Bunny'
Lamont、ピアノにKeith Sterlingと
Gladstone Anderson、オルガンと
クラヴィネット、ハープシコードに
Winston Wright、パーカッションに
Noel 'Scully' Simms、シン・ドラムに
Style Scott、ホーンにBobby Ellisと
'Deadly' Headley Bennett、Cedric 'Im'
Brooks、ストリングスにEarl 'Wire'
Lindo、ハーモニカにJohnny Osbourneと
いう布陣です。
これは「Black Sounds Of Freedom」と
「Uhuru In Dub」の時の布陣で、77年の
ファーストの「Love Crisis」の時の布陣
はもう少しシンプルだったようです。
表ジャケが小冊子になっていますが、
「Love Crisis」の時のメンバーも書かれ
ているので、そちらも載せます。
Backing Band: Aggrovators
Bass: Robert Shakespear
Drums: Sly Dunbar and Santa
Piano: Keith Sterling
Organ: Winston Wright
Guitar: Earl Smith alias Chinna
Clavinet: Winston Wright
Harpsichord: Winston Wright
音を聴くとScullyのパーカッションなどは
このアルバムの時点から入っていたよう
ですが、Style Scottのシン・ドラムや
BobbyとHeadly、Cedricのホーン隊、
Earl 'Wire' Lindoのストリングス、
Johnny Osbourneのハーモニカなどは、
81年の「Black Sounds Of Freedom」
から付け足されたサウンドのようです。
ファーストの「Love Crisis」のサウンド
の魅力を壊さずに、さらにサウンドを
ボリューム・アップさせたのが、この
81年の「Black Sounds Of Freedom」と
いうアルバムだったんですね。
ジャケット・デザインはTony McDermott
が担当しています。
ファースト「Love Crisis」のオリジナル
のジャケット・デザインはAnthony Nero
が担当しています。
表ジャケになっている小冊子の裏面に、
ほぼその「Love Crisis」のジャケットと
思われる写真が載っています。
Love Crisis(表ジャケ裏面)
塀に座る3人の写真の下に「Love Crisis」
の文字、さらにその下には「Black Sounds
Ufro-Tony-Duckey-Errol」というグループ
名と思われるBlack Sounds Ufroという
名前とTony-Duckey-Errolという3人の
名前があります。
「Tony」はMichael Roseの愛称で、他に
Ducky SimpsonとErrol Nelsonの3人
だった時代のBlack Uhuruが、ファースト
の「Love Crisis」を録音しているんです
ね。
この後にErrol Nelsonが脱退し、女性
ヴォーカリストのPuma Jonesが加入するの
ですが、まだこの時点ではPuma Jonesは
加入していません。
実はPuma Jonesはメジャー・デビューの
「Sinsemilla」にもジャケットには載って
いるもののサウンド面では参加しておら
ず、メジャー・リリース2枚目の81年の
アルバム「Red」ぐらいから参加している
んですね。
Black Uhuru – Red (1981)
このデビュー・アルバムの3人の写真を元
に、Tony McDermottがデザインしたのが、
「Black Sounds Of Freedom」のジャケット
なんですね。
オリジナルの写真では両脇の2人は背中
合わせの形になっていますが、左右を入れ
替えて向き合うような形にし、「Black
Sounds Of Freedom」という文字に腰掛け
る形にしたのか今回のジャケットです。
ちなみにTony McDermottは上に紹介した
「Uhuru In Dub」や「Osbourne In Dub」
のジャケットなども制作しています。
Tony McDermottはこの時代のGreensleeves
Recordsの多くのジャケットを手掛けて
いるんですね。
さて今回のアルバムですが、おそらく
ルーツ・レゲエの好きな人なら
Black Uhuruのアルバムの中でこのアルバム
を真っ先に挙げるのではないかと思われる
ほど評価の高いアルバムで、内容はとても
良いと思います。
メジャー・デビュー盤のSly & Robbieが
プロデュースした「Sinsemilla」が世界的
に大ヒットして、一躍「ポスト・ボブ・
マーリー」のトップに躍り出たBlack Uhuru
ですが、その人気を当て込んで77年の
デビュー・アルバム「Love Crisis」を
再編集し直して作られたのが、今回の
「Black Sounds Of Freedom」なんです
ね。
ただそれはある意味混乱を招いた部分が
あると思うのですが、77年当時の
メンバーと4年後の81年のメンバー
とは若干違っていたんですね。
ただ今の時代に聴くとこのルーツ・
サウンドを踏襲したBlack Uhuruの音楽
は、もっとも彼らBlack Uhuruらしく、
とても魅力的です。
むしろメンバー・チェンジなどを繰り
返し、徐々に特色を失って失速して行った
後のBlack Uhuruよりはやはり高く評価
したいところがあります。
ただそれは先駆者の苦悩と呼べるものなの
かもしれません。
あのBob MarleyがIsland Recordsの主催者
Chris Blackwellから「白人にも解る
サウンドを」と言われたというのは有名な
話ですが、当時は白人が主導していた
ポピュラー・ミュージックやロックと、
黒人音楽のレゲエやソウルでは明らかに
サウンドのグルーヴ感などに差があったん
ですね。
メジャーな音楽になる為には「白人に解る
音楽」であるというのは、当時の常識で
あり、至上命題であったと言えるかもしれ
ません。
当時の多くのレゲエ・ミュージシャンが、
その壁に跳ね返されて来たんですね。
その壁に跳ね返されずに唯一活躍出来たの
がBob Marleyで、その事実から見ても
いかに彼が優れたミュージシャンであった
かが解ります。
意外と当時メジャーで活躍したレゲエ・
ミュージシャンの音楽は、今聴くと良く
聴こえないんですね。
むしろジャマイカのローカルで活躍した
黒人らしい音楽の方が良く聴こえるのは、
時代の皮肉とも言うべきものです。
今回のアルバムも元はジャマイカ向けに
作られたデビューの「Love Crisis」を
元に作られたせいか、ヘタな配慮が無く
彼らの個性がよく出ていて、とても聴き
易いアルバムとなっています。
今回ボーナス・トラックとして収められた
「Love Crisis」もそうですが、当時の
ルーツ・サウンドに乗せたTony(Michael
Rose)の感情を乗せた粘っこいヴォーカル
はとても味わいがあります。
80年当時はシン・ドラムを使用した
ピュンピュンしたトビ音が印象的だった
「Sinsemilla」が衝撃的でしたが、今の
時代に聴くとおそらくこのアルバムか
「Love Crisis」を彼らの代表作と支持
するルーツ好きは多いと思います。
元のアルバムの「Love Crisis」は77年
のアルバムですが、この時代のルーツ・
サウンドが今も愛されているもっともコア
なレゲエのサウンドなんですね。
「Love Crisis」をリリースした77年
当時のBlack UhuruがBob Marleyの後継者
と呼ばれるほどのアーティストだったかは
解りませんが、少なくともルーツ・レゲエ
の中の注目すべきグループのひとつで
あったことは間違いがありません。
今回のアルバムで一番の注目曲は、
やはり1曲目に入っている「I Love King
Selassie」でしょう。
この曲はJah ShakaがGreensleevesから
リリースされたルーツの名曲をセレクト
したアルバム「The Positive Message」の
1曲に選ぶほど、ラスタのアンセムとして
人気の高い曲なんですね。
Jah Shaka – The Positive Message (2009)
おそらく彼のすべての曲の中でももっとも
人気の高い曲のひとつが、この「I Love
King Selassie」ではないかと思います。
ただこの曲はファースト・アルバムの
「Love Crisis」の時には1曲目では
無かったんですね。
今回のアルバムにはDisc 2に「Love
Crisis」も収められていますが、途中に
同リディムのU-Blackの曲が挿入されて
いますが、それを除くとほぼ順番通りに
曲が収められていて、「I Love King
Selassie」は6曲目(実際には7曲目)
のSide 2の1曲目に来る位置に入っていた
曲なんですね。
そのあたりはプロデューサーのPrince
Jammyのセンスが光ります。
77年の「Love Crisis」の時には
ルーツ全盛の時代だったので、あえて他と
の差別化を図るために「Love Crisis」の
ようなラヴ・ソングを中心に据え、81年
の「Black Sounds Of Freedom」の時には
彼らがルーツ・レゲエのグループとして
世界的に認知されている事を意識して、
頭にガツンとこの「I Love King
Selassie」を持って来ているんですね。
この81年当時はジャマイカではラヴ・
ソングを中心としたアーリー・ダンス
ホールが流行していたにもかかわらず、
あえて世界的なマーケットを意識してこの
ルーツ色の強い曲を持って来ているところ
にPrince Jammyという人のセンスの良さを
感じます。
ただルーツ色の強い楽曲を続けた事で、
Black Uhuruというグループはレゲエの
流れから浮いた存在のグループとなって
しまうんですね。
そこにこのグループの不幸があったような
気がします。
ただ77年当時のBlack Uhuruには
ルーツ・レゲエに対する迷いが一切なく、
素直にラスタの神エチオピア皇帝ハイレ・
セラシエの愛を歌っており、その素直に
歌われたラスタ賛歌が多くのリスナーに
支持を受けた事は間違いがありません。
今回のアルバムではこのラスタ賛歌の
「I Love King Selassie」のほか、あの
Bob Marleyの名曲であり自然に対する敬虔
な気持ちを歌った「Natural Mystic」や、
元のアルバムのタイトルともなった
「Love Crisis」、「African Love」など、
まさにこのBlack Uhuruの原点ともいえる
評価の高い楽曲が多く揃ったアルバムと
なっています。
Disc 1の1~10曲目までは81年の
アルバム「Black Sounds Of Freedom」の
10曲が収められています。
Disc 1の1曲目は「I Love King Selassie」
です。
メロディアスなフルートと漂うような
キーボードにホーン・セクションの
メロディ、歯切れの良いパーカッションの
ドラミングに乗せた、Michael Roseの粘り
のあるヴォーカルにコーラス・ワーク。
アルバム・タイトルの「Black Sounds Of
Freedom」は、この曲の歌詞からとられた
もののようです。
Black Uhuru - I love King Selassie
2曲目は「Satan Army Band」です。
ホーンとギターのメロディに乗せた、
Michael Roseのソフトなヴォーカルと
コーラス・ワークがイイ感じの曲です。
Black Uhuru - Satan Army Band - Black Sounds Of Freedom & Love Crisis (1981)
3曲目は「Time To Unite」です。
ホーンとキーボードを中心としたメロディ
に、感情を乗せたMichael Roseの
ヴォーカルとコーラス・ワーク。
Time To Unite
4曲目は「Natural Mystic」です。
言わずと知れたBob Marleyの名曲の
カヴァーです。
ムーディーなキーボードとサックスの
メロディにコーラス・ワーク、ジワっと
入り込んで来るMichael Roseのヴォーカル
にコーラス・ワーク。
Black Uhuru - Natural Mystic
5曲目は「Eden Out Deh」です。
ギターとキーボード、ハーモニカ
(Johnny Osbourne)の印象的なメロディ
に、感情を乗せたMichael Roseの
ヴォーカルが魅力的。
6曲目は「Love Crisis」です。
心地良いハーモニカとベースを中心とした
メロディに、静かに語るようなMichael
Roseのヴォーカルがイイ感じな曲です。
Disc 2のアルバム「Love Crisis」の
タイトルを見ると解りますが、原題は
「Crisis For Love」なんですね。
Love Crisis
7曲目は「African Love」です。
男性コーラスに漂うようなキーボードの
メロディ、感情を乗せたMichael Roseの
粘っこいヴォーカルが魅力的。
African Love
8曲目は「Hard Ground」です。
漂うようなキーボードとギターを中心と
したメロディに、感情を乗せたMichael
Roseのヴォーカルがイイ感じの曲です。
9曲目は「Willow Tree」です。
キーボードとギターのメロディに乗せた
Michael Roseの表情豊かなヴォーカルに
コーラス・ワーク。
10曲目は「Sorry For The Man」
です。
キーボードとギターのちょっと悲し気な
メロディにトビ音、コーラスに乗せた
Michael Roseの情感たっぷりな
ヴォーカル。
Sorry For The Man
11~20曲目までは82年のPrince
Jammy名義でリリースされたダブ・
アルバム「Uhuru In Dub」の10曲が
収められています。
5曲目「Eden Out Deh」のダブです。
11曲目は「Eden Dub」です。
キーボードと重いベースにダブワイズの
効いたダブです。
12曲目は「Mystic Mix」です。
4曲目「Natural Mystic」のダブです。
漂うようなキーボードとドスの効いた
ベース、Jazzyな空気感のダブワイズです。
Mystic Mix - Original
13曲目は「His Imperial Majesty」
です。
1曲目「I Love King Selassie」のダブ
です。
フルートと漂うようなキーボードに
ホーン・セクション、歯切れの良い
パーカッションなどが一体となったダブ
です。
His Imperial Majesty - Original
14曲目は「Weeping Willow」です。
9曲目「Willow Tree」のダブ。
カラカラとしたエフェクトに人の声、ドス
の効いたベースとキーボードを中心とした
渋いダブです。
15曲目は「Bad Girls Dub」です。
10曲目「Sorry For The Man」のダブ
です。
漂うようなキーボードに、ド渋のベースの
メロディを軸としたダブ。
Bad Girls Dub - Original
16曲目は「Tonight Is The Night」
です。
3曲目「Time To Unite」のダブ。
ギターとベースを中心とした重量感のある
演奏のダブ。
17曲目は「Firehouse Special」です。
2曲目「Satan Army Band」のダブです。
ホーンとギター、重いベースのメロディを
中心としたダブです。
18曲目は「African Culture」です。
7曲目「African Love」のダブです。
漂うようなキーボードに歯切れの良い
パーカッション、コーラス、ドスの効いた
ベースなどが盛り込まれたダブ。
19曲目は「Crisis Dub」です。
6曲目「Love Crisis」のダブ。
心地良いハーモニカのメロディとドスの
効いたベースのダブ。
20曲目は「Sound Man Style」です。
8曲目「Hard Ground」のダブ。
漂うようなキーボードとドスの効いた
ベースを中心としたダブ。
Disc 2は77年のアルバム「Love Crisis」
の曲が収められています。
ただし6曲目、8曲目、11曲目、14曲
目の4曲は、同じ77年にリリースされた
U-Blackの「Westbound Thing A Swing」と
いうアルバムの曲です。
その前のBlack Uhuruの曲と同じリディム
を使用した曲を、間に挿入しているんです
ね。
Disc 2の1曲目は「Crisis For Love」
です。
ギターとキーボード、ベースのメロディ
に、Michael Roseのヴォーカルがイイ
感じ。
「Love Crisis」の原題は、このタイトル
なんですね。
他の曲もそうですが、演奏もよりシンプル
です。
Black Sounds Uhro - Love Crisis
2曲目は「Satan Army Band」です。
ユッタリとしたギターとベース、
キーボードのメロディに、Michael
Roseのナイスなヴォーカルがイイ感じ。
3曲目は「Tonight Is The Night To
Unite」です。
ギターとクラヴィネットを中心とした
メロディに、Michael Roseの粘り気の
あるヴォーカルがイイ感じ。
4曲目は「Eden Out Deh」です。
キーボードとギター、ベースを中心とした
メロディに、ノビのあるMichael Roseの
ヴォーカルがイイ感じ。
5曲目は「Sorry For The Man」です。
浮遊感のあるキーボードに乗せた、
Michael Roseのナイスなヴォーカルと
コーラス・ワークが魅力的。
6曲目はU-Blackの「Love You Girl」
です。
5曲目「Sorry For The Man」のリディム
です。
浮遊感のあるキーボードにichael Roseの
ナイスなヴォーカル、それを追いかける
ように入って来るU-Blackのラフなトース
ティングが素晴らしい曲です。
U-Black - Love You Girl
7曲目は「I Love King Selassie」です。
パーカッションの心地良いリズムと浮遊感
のあるキーボードにギターとベースの
メロディ、コーラスに乗せた感情を込めた
Michael Roseのヴォーカルがイイ感じ。
81年のアルバムと較べるとフルートが
入っていませんが、そのシンプルさが
かえって魅力的です。
8曲目はU-Blackの「King Of All Time」
です。
7曲目「I Love King Selassie」の
リディムの曲です。
キーボードとギターベースのメロディに、
ダブワイズしたパーカッション、立て板に
水のU-Blackのトースティングがカッコ
イイです。
U-Black - King Of All Time
9曲目は「Natural Mystic」です。
浮遊感のあるキーボードとギターの
メロディに、コーラスに乗せたMichael
Roseのヴォーカルがイイ感じ。
BLACK UHURU - Natural Mystic [1977]
10曲目は「Hard Ground」です。
浮遊感のあるキーボードとベース、
ギター、ピアノのメロディに、Michael
Roseの泣きのヴォーカルが魅力的。
11曲目はU-Blackの「Crocodile Style」
です。
10曲目「Hard Ground」のリディムを
使った曲です。
浮遊感のあるキーボードのメロディに、
Michael Roseのヴォーカルに続き入って
来るU-Blackのイカしたトースティング。
12曲目は「African Love」です。
コーラス・ワークから浮遊感のある
キーボードのメロディ、歯切れの良い
パーカッション、感情を乗せたMichael
Roseのナイスなヴォーカル。
13曲目はU-Blackの「Ride Into Zion」
です。
12曲目「African Love」のリディムの
曲です。
ダブワイズした浮遊感のあるキーボードと
コーラスに、U-Blackのナイスなトース
ティング。
U Black Ride into Zion YouTube
14曲目は「Willow Tree」です。
キーボードとギターを中心としたメロディ
に、感情を乗せたMichael Roseの
ヴォーカルがとても魅力的な曲です。
ざっと追いかけてきましたが、元の音源は
77年のアルバムですが、この頃の彼ら
Black Uhuruには心の陰りや迷いがなく、
素直に自分たちの愛するルーツ・
ミュージックを歌っています。
その後81年に音を足して作られたのが
今回の「Black Sounds Of Freedom」です
が、上モノが付いてより豪華にはなった
ものの、元の音源が良い為か内容は悪く
なっていないんですね。
そのあたりは稀代のプロデューサー
Prince Jammy(のちのKing Jammy)の
手腕が光ります。
その後の度重なるメンバー・チェンジや
Puma Jonesの病死などで、とかくマイナス・
イメージが付きまとい「不遇なグループ」
などと呼ばれてしまうBlack Uhuruですが、
その原点ではこうした魅力的なアルバムを
作っていたんですね。
その事は忘れずに覚えておきたいもの
です。
機会があればぜひ聴いてみてください。
Black Uhuru - I Love King Selassie (Live in London)
○アーティスト: Black Uhuru
○アルバム: Black Sounds Of Freedom (Deluxe Edition)
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CDX2
○オリジナル・アルバム制作年: 1977 (1981, 1982)
○Black Uhuru「Black Sounds Of Freedom (Deluxe Edition)」曲目
Disc 1
(Black Sounds Of Freedom - 1981)
1. I Love King Selassie
2. Satan Army Band
3. Time To Unite
4. Natural Mystic
5. Eden Out Deh
6. Love Crisis
7. African Love
8. Hard Ground
9. Willow Tree
10. Sorry For The Man
(Prince Jammy: Uhuru In Dub - 1982)
11. Eden Dub
12. Mystic Mix
13. His Imperial Majesty
14. Weeping Willow
15. Bad Girls Dub
16. Tonight Is The Night
17. Firehouse Special
18. African Culture
19. Crisis Dub
20. Sound Man Style
Disc 2
(Love Crisis - 1977)
1. Crisis For Love
2. Satan Army Band
3. Tonight Is The Night To Unite
4. Eden Out Deh
5. Sorry For The Man
6. Love You Girl - U-Black
7. I Love King Selassie
8. King Of All Time - U-Black
9. Natural Mystic
10. Hard Ground
11. Crocodile Style - U-Black
12. African Love
13. Ride Into Zion - U-Black
14. Willow Tree
●今までアップしたBlack Uhuru関連の記事
〇Black Uhuru「Chill Out」
〇Black Uhuru「Red」
〇Black Uhuru「Sinsemilla」
〇Black Uhuru「Tear It Up - Live」
〇Black Uhuru「The Dub Factor」
〇Ranking Joe With Black Uhuru, Dennis Brown「Zion High」
〇Various「King Jammy Presents New Sounds Of Freedom」
「Black Sounds Of Freedom (Deluxe
Edition)」です。
Black Uhuruは70年代中頃から80年代
にかけて世界的にも活躍したヴォーカル・
グループです。
1974年にGarth DennisとDucky
Simpson、Don Carlosで結成されました
が、Garth DennisとDon Carlosが抜け
代わりにMichael RoseとErrol Nelsonが
加入し、77年にファースト・アルバム
「Love Crisis」を発表。
その後Errol Nelsonが脱退し、代わりに
女性ヴォーカリストのPuma Jonesが加入。
Sly & Robbieのバック・アップを受けて、
80年に彼らのメジャー・デビュー・
アルバムとなる「Sinsemilla」(通算
3枚目)を発表し、世界的にも人気の
グループとなります。
Black Uhuru - Sinsemilla (1980)
その後Michael Roseが脱退しJunior Reid
が加入したり、Puma Jonesが亡くなったり
という事などがあり、90年のアルバム
「Now」を最後に活動を停止しています。
ネットのDiscogsによると、33枚ぐらい
のアルバムと、93枚ぐらいのシングル盤
を残しています。
アーティスト特集 Black Uhuru(ブラック・ユフル)
ブラック・ウフル - Wikipedia
今回のアルバムの元となったアルバムは
1977年にUKのThird Worldレーベル
からリリースされたBlack Uhuruの
ファースト・アルバム「Love Crisis」
です。
その後彼らはメンバー・チェンジを経て、
80年に「Sinsemilla」でSly & Robbie
のバックでメジャー・デビューしますが、
その人気を当て込んで「Love Crisis」を
再編集して作られたのが、81年にUKの
Greensleeves Recordsからリリースされた
のが今回の「Black Sounds Of Freedom」
というアルバムです。
プロデュースはPrince Jammyで、バックは
The Aggrovatorsが担当したアルバムで、
ファースト・アルバムのタイトル曲だった
「Love Crisis」や、ラスタ・アンセムと
して今でも非常に人気の高い「I Love
King Selassie」、Bob Marleyの名曲の
カヴァー「Natural Mystic」など、
ルーツ・レゲエの魅力がギッシリと
詰まった、彼らのアルバムの中でも特に
評価の高いアルバムです。
またこのアルバムのダブ・アルバムが、
82年に「Uhuru In Dub」というタイトル
で、UKのCSA Recordsというレーベル
からリリースされています。
Prince Jammy With Sly & Robbie / Black Uhuru – Uhuru In Dub (1982)
このダブ・アルバムは私が初めにレゲエを
集めていた20代の頃、おそらく80年代
に購入しています。
たしか御茶ノ水のディスクユニオンあたり
で購入したんじゃないかと思いますが、
Johnny Osbourneのアルバム「Water
Pumping」のダブ・アルバム「Osbourne
In Dub」と2枚がセットで、LP1枚分
(多分2千円ぐらい)の値段で売られて
いて、安かったので購入した記憶があり
ます。
Prince Jammy – Osbourne In Dub (1983)
手に入れたのは2009年にヨーロッパの
Greensleeves Recordsからリリースされた
CD(新盤)でした。
CD2枚組のデラックス・エディションの
アルバムで、Disc 1には81年のアルバム
「Black Sounds Of Freedom」の10曲の
ほか、82年のダブ・アルバム「Uhuru In
Dub」の10曲が収められており、さらに
Disc 2には元になったファースト・
アルバム「Love Crisis」の10曲と、
アルバムの曲と同じリディムを使用した
U-Blackの4曲が収められた、かなり凝った
仕様のアルバムとなっています。
ちなみにU. Blackの4曲は、77年にUK
のThird Worldというレーベルからリリース
した「Westbound Thing A Swing」という
アルバムに収められた曲です。
なおこのアルバムは人気のあったアルバム
だった為か、2016年にVP Recordsから
King Jammy(Prince Jammyから改名)に
よる、このアルバムの曲をAlborosieや
Chronixx、Kabaka Pyramidといった近年
活躍するアーティストが歌った
コンピュレーション・アルバムの
「New Sounds Of Freedom」がリリース
されています。
King Jammy – New Sounds Of Freedom (2016)
Disc 1は全20曲で収録時間は約71分。
1~10曲目までは81年のアルバム
「Black Sounds Of Freedom」の10曲、
11~20曲目までは82年のPrince
Jammy名義でリリースされたダブ・
アルバム「Uhuru In Dub」の10曲、
計20曲が収められています。
Disc 2は全14曲で収録時間は約分。
6曲目、8曲目、11曲目、14曲目の
4曲はU-Blackの曲で、残りの10曲は
Black Uhuruのファースト・アルバム
「Love Crisis」の曲が収められていま
す。
ミュージシャンについては以下の記述が
あります。
Produced & Arranged by: Prince Jammy
Rhythm laid at: Harry J's Recording Studio
Original Recordings: 1977
Engineer: Sylvan Morris
Voiced & Mixed at: King Tubby's Studios
Engineer: Prince Jammy
Musicians: Agrovators
Drums: Sly Dunbar & Santa Davis
Bass: Robbie Shakespeare & Mikey
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith & Bo Pee
Rhythm Guitar: Eric 'Bingy Bunny' Lamont
Piano: Keith Sterling & Gladstone Anderson
Organ, Clavinet & Harpsichord: Winston Wright
Percussion: Scully
Syndrums: Style Scott
Horns: Bobby, Headly & Cedric
Strings: Earl 'Wire' Lindo
Harmonica: Johnny Osbourne
Design: Tony McDermott
"Love Crisis" original cover design: Anthony Nero
となっています。
プロデュースとアレンジはPrince Jammy
で、オリジナルのレコーディングは
1977年にHarry J's Recording Studio
で行われ、レコーディング・エンジニアは
Sylvan Morrisが担当しています。
声入れとミックスはKing Tubby's Studios
で行われ、ミックス・エンジニアは
Prince Jammyが担当しています。
バック・バンドはThe Agrovatorsで、
ドラムにSly DunbarとCarlton 'Santa'
Davis、ベースにRobbie Shakespeareと
Mikey、リード・ギターにEarl 'Chinna'
SmithとWinston 'Bo Pee' Bowen、
リズム・ギターにEric 'Bingy Bunny'
Lamont、ピアノにKeith Sterlingと
Gladstone Anderson、オルガンと
クラヴィネット、ハープシコードに
Winston Wright、パーカッションに
Noel 'Scully' Simms、シン・ドラムに
Style Scott、ホーンにBobby Ellisと
'Deadly' Headley Bennett、Cedric 'Im'
Brooks、ストリングスにEarl 'Wire'
Lindo、ハーモニカにJohnny Osbourneと
いう布陣です。
これは「Black Sounds Of Freedom」と
「Uhuru In Dub」の時の布陣で、77年の
ファーストの「Love Crisis」の時の布陣
はもう少しシンプルだったようです。
表ジャケが小冊子になっていますが、
「Love Crisis」の時のメンバーも書かれ
ているので、そちらも載せます。
Backing Band: Aggrovators
Bass: Robert Shakespear
Drums: Sly Dunbar and Santa
Piano: Keith Sterling
Organ: Winston Wright
Guitar: Earl Smith alias Chinna
Clavinet: Winston Wright
Harpsichord: Winston Wright
音を聴くとScullyのパーカッションなどは
このアルバムの時点から入っていたよう
ですが、Style Scottのシン・ドラムや
BobbyとHeadly、Cedricのホーン隊、
Earl 'Wire' Lindoのストリングス、
Johnny Osbourneのハーモニカなどは、
81年の「Black Sounds Of Freedom」
から付け足されたサウンドのようです。
ファーストの「Love Crisis」のサウンド
の魅力を壊さずに、さらにサウンドを
ボリューム・アップさせたのが、この
81年の「Black Sounds Of Freedom」と
いうアルバムだったんですね。
ジャケット・デザインはTony McDermott
が担当しています。
ファースト「Love Crisis」のオリジナル
のジャケット・デザインはAnthony Nero
が担当しています。
表ジャケになっている小冊子の裏面に、
ほぼその「Love Crisis」のジャケットと
思われる写真が載っています。
Love Crisis(表ジャケ裏面)
塀に座る3人の写真の下に「Love Crisis」
の文字、さらにその下には「Black Sounds
Ufro-Tony-Duckey-Errol」というグループ
名と思われるBlack Sounds Ufroという
名前とTony-Duckey-Errolという3人の
名前があります。
「Tony」はMichael Roseの愛称で、他に
Ducky SimpsonとErrol Nelsonの3人
だった時代のBlack Uhuruが、ファースト
の「Love Crisis」を録音しているんです
ね。
この後にErrol Nelsonが脱退し、女性
ヴォーカリストのPuma Jonesが加入するの
ですが、まだこの時点ではPuma Jonesは
加入していません。
実はPuma Jonesはメジャー・デビューの
「Sinsemilla」にもジャケットには載って
いるもののサウンド面では参加しておら
ず、メジャー・リリース2枚目の81年の
アルバム「Red」ぐらいから参加している
んですね。
Black Uhuru – Red (1981)
このデビュー・アルバムの3人の写真を元
に、Tony McDermottがデザインしたのが、
「Black Sounds Of Freedom」のジャケット
なんですね。
オリジナルの写真では両脇の2人は背中
合わせの形になっていますが、左右を入れ
替えて向き合うような形にし、「Black
Sounds Of Freedom」という文字に腰掛け
る形にしたのか今回のジャケットです。
ちなみにTony McDermottは上に紹介した
「Uhuru In Dub」や「Osbourne In Dub」
のジャケットなども制作しています。
Tony McDermottはこの時代のGreensleeves
Recordsの多くのジャケットを手掛けて
いるんですね。
さて今回のアルバムですが、おそらく
ルーツ・レゲエの好きな人なら
Black Uhuruのアルバムの中でこのアルバム
を真っ先に挙げるのではないかと思われる
ほど評価の高いアルバムで、内容はとても
良いと思います。
メジャー・デビュー盤のSly & Robbieが
プロデュースした「Sinsemilla」が世界的
に大ヒットして、一躍「ポスト・ボブ・
マーリー」のトップに躍り出たBlack Uhuru
ですが、その人気を当て込んで77年の
デビュー・アルバム「Love Crisis」を
再編集し直して作られたのが、今回の
「Black Sounds Of Freedom」なんです
ね。
ただそれはある意味混乱を招いた部分が
あると思うのですが、77年当時の
メンバーと4年後の81年のメンバー
とは若干違っていたんですね。
ただ今の時代に聴くとこのルーツ・
サウンドを踏襲したBlack Uhuruの音楽
は、もっとも彼らBlack Uhuruらしく、
とても魅力的です。
むしろメンバー・チェンジなどを繰り
返し、徐々に特色を失って失速して行った
後のBlack Uhuruよりはやはり高く評価
したいところがあります。
ただそれは先駆者の苦悩と呼べるものなの
かもしれません。
あのBob MarleyがIsland Recordsの主催者
Chris Blackwellから「白人にも解る
サウンドを」と言われたというのは有名な
話ですが、当時は白人が主導していた
ポピュラー・ミュージックやロックと、
黒人音楽のレゲエやソウルでは明らかに
サウンドのグルーヴ感などに差があったん
ですね。
メジャーな音楽になる為には「白人に解る
音楽」であるというのは、当時の常識で
あり、至上命題であったと言えるかもしれ
ません。
当時の多くのレゲエ・ミュージシャンが、
その壁に跳ね返されて来たんですね。
その壁に跳ね返されずに唯一活躍出来たの
がBob Marleyで、その事実から見ても
いかに彼が優れたミュージシャンであった
かが解ります。
意外と当時メジャーで活躍したレゲエ・
ミュージシャンの音楽は、今聴くと良く
聴こえないんですね。
むしろジャマイカのローカルで活躍した
黒人らしい音楽の方が良く聴こえるのは、
時代の皮肉とも言うべきものです。
今回のアルバムも元はジャマイカ向けに
作られたデビューの「Love Crisis」を
元に作られたせいか、ヘタな配慮が無く
彼らの個性がよく出ていて、とても聴き
易いアルバムとなっています。
今回ボーナス・トラックとして収められた
「Love Crisis」もそうですが、当時の
ルーツ・サウンドに乗せたTony(Michael
Rose)の感情を乗せた粘っこいヴォーカル
はとても味わいがあります。
80年当時はシン・ドラムを使用した
ピュンピュンしたトビ音が印象的だった
「Sinsemilla」が衝撃的でしたが、今の
時代に聴くとおそらくこのアルバムか
「Love Crisis」を彼らの代表作と支持
するルーツ好きは多いと思います。
元のアルバムの「Love Crisis」は77年
のアルバムですが、この時代のルーツ・
サウンドが今も愛されているもっともコア
なレゲエのサウンドなんですね。
「Love Crisis」をリリースした77年
当時のBlack UhuruがBob Marleyの後継者
と呼ばれるほどのアーティストだったかは
解りませんが、少なくともルーツ・レゲエ
の中の注目すべきグループのひとつで
あったことは間違いがありません。
今回のアルバムで一番の注目曲は、
やはり1曲目に入っている「I Love King
Selassie」でしょう。
この曲はJah ShakaがGreensleevesから
リリースされたルーツの名曲をセレクト
したアルバム「The Positive Message」の
1曲に選ぶほど、ラスタのアンセムとして
人気の高い曲なんですね。
Jah Shaka – The Positive Message (2009)
おそらく彼のすべての曲の中でももっとも
人気の高い曲のひとつが、この「I Love
King Selassie」ではないかと思います。
ただこの曲はファースト・アルバムの
「Love Crisis」の時には1曲目では
無かったんですね。
今回のアルバムにはDisc 2に「Love
Crisis」も収められていますが、途中に
同リディムのU-Blackの曲が挿入されて
いますが、それを除くとほぼ順番通りに
曲が収められていて、「I Love King
Selassie」は6曲目(実際には7曲目)
のSide 2の1曲目に来る位置に入っていた
曲なんですね。
そのあたりはプロデューサーのPrince
Jammyのセンスが光ります。
77年の「Love Crisis」の時には
ルーツ全盛の時代だったので、あえて他と
の差別化を図るために「Love Crisis」の
ようなラヴ・ソングを中心に据え、81年
の「Black Sounds Of Freedom」の時には
彼らがルーツ・レゲエのグループとして
世界的に認知されている事を意識して、
頭にガツンとこの「I Love King
Selassie」を持って来ているんですね。
この81年当時はジャマイカではラヴ・
ソングを中心としたアーリー・ダンス
ホールが流行していたにもかかわらず、
あえて世界的なマーケットを意識してこの
ルーツ色の強い曲を持って来ているところ
にPrince Jammyという人のセンスの良さを
感じます。
ただルーツ色の強い楽曲を続けた事で、
Black Uhuruというグループはレゲエの
流れから浮いた存在のグループとなって
しまうんですね。
そこにこのグループの不幸があったような
気がします。
ただ77年当時のBlack Uhuruには
ルーツ・レゲエに対する迷いが一切なく、
素直にラスタの神エチオピア皇帝ハイレ・
セラシエの愛を歌っており、その素直に
歌われたラスタ賛歌が多くのリスナーに
支持を受けた事は間違いがありません。
今回のアルバムではこのラスタ賛歌の
「I Love King Selassie」のほか、あの
Bob Marleyの名曲であり自然に対する敬虔
な気持ちを歌った「Natural Mystic」や、
元のアルバムのタイトルともなった
「Love Crisis」、「African Love」など、
まさにこのBlack Uhuruの原点ともいえる
評価の高い楽曲が多く揃ったアルバムと
なっています。
Disc 1の1~10曲目までは81年の
アルバム「Black Sounds Of Freedom」の
10曲が収められています。
Disc 1の1曲目は「I Love King Selassie」
です。
メロディアスなフルートと漂うような
キーボードにホーン・セクションの
メロディ、歯切れの良いパーカッションの
ドラミングに乗せた、Michael Roseの粘り
のあるヴォーカルにコーラス・ワーク。
アルバム・タイトルの「Black Sounds Of
Freedom」は、この曲の歌詞からとられた
もののようです。
Black Uhuru - I love King Selassie
2曲目は「Satan Army Band」です。
ホーンとギターのメロディに乗せた、
Michael Roseのソフトなヴォーカルと
コーラス・ワークがイイ感じの曲です。
Black Uhuru - Satan Army Band - Black Sounds Of Freedom & Love Crisis (1981)
3曲目は「Time To Unite」です。
ホーンとキーボードを中心としたメロディ
に、感情を乗せたMichael Roseの
ヴォーカルとコーラス・ワーク。
Time To Unite
4曲目は「Natural Mystic」です。
言わずと知れたBob Marleyの名曲の
カヴァーです。
ムーディーなキーボードとサックスの
メロディにコーラス・ワーク、ジワっと
入り込んで来るMichael Roseのヴォーカル
にコーラス・ワーク。
Black Uhuru - Natural Mystic
5曲目は「Eden Out Deh」です。
ギターとキーボード、ハーモニカ
(Johnny Osbourne)の印象的なメロディ
に、感情を乗せたMichael Roseの
ヴォーカルが魅力的。
6曲目は「Love Crisis」です。
心地良いハーモニカとベースを中心とした
メロディに、静かに語るようなMichael
Roseのヴォーカルがイイ感じな曲です。
Disc 2のアルバム「Love Crisis」の
タイトルを見ると解りますが、原題は
「Crisis For Love」なんですね。
Love Crisis
7曲目は「African Love」です。
男性コーラスに漂うようなキーボードの
メロディ、感情を乗せたMichael Roseの
粘っこいヴォーカルが魅力的。
African Love
8曲目は「Hard Ground」です。
漂うようなキーボードとギターを中心と
したメロディに、感情を乗せたMichael
Roseのヴォーカルがイイ感じの曲です。
9曲目は「Willow Tree」です。
キーボードとギターのメロディに乗せた
Michael Roseの表情豊かなヴォーカルに
コーラス・ワーク。
10曲目は「Sorry For The Man」
です。
キーボードとギターのちょっと悲し気な
メロディにトビ音、コーラスに乗せた
Michael Roseの情感たっぷりな
ヴォーカル。
Sorry For The Man
11~20曲目までは82年のPrince
Jammy名義でリリースされたダブ・
アルバム「Uhuru In Dub」の10曲が
収められています。
5曲目「Eden Out Deh」のダブです。
11曲目は「Eden Dub」です。
キーボードと重いベースにダブワイズの
効いたダブです。
12曲目は「Mystic Mix」です。
4曲目「Natural Mystic」のダブです。
漂うようなキーボードとドスの効いた
ベース、Jazzyな空気感のダブワイズです。
Mystic Mix - Original
13曲目は「His Imperial Majesty」
です。
1曲目「I Love King Selassie」のダブ
です。
フルートと漂うようなキーボードに
ホーン・セクション、歯切れの良い
パーカッションなどが一体となったダブ
です。
His Imperial Majesty - Original
14曲目は「Weeping Willow」です。
9曲目「Willow Tree」のダブ。
カラカラとしたエフェクトに人の声、ドス
の効いたベースとキーボードを中心とした
渋いダブです。
15曲目は「Bad Girls Dub」です。
10曲目「Sorry For The Man」のダブ
です。
漂うようなキーボードに、ド渋のベースの
メロディを軸としたダブ。
Bad Girls Dub - Original
16曲目は「Tonight Is The Night」
です。
3曲目「Time To Unite」のダブ。
ギターとベースを中心とした重量感のある
演奏のダブ。
17曲目は「Firehouse Special」です。
2曲目「Satan Army Band」のダブです。
ホーンとギター、重いベースのメロディを
中心としたダブです。
18曲目は「African Culture」です。
7曲目「African Love」のダブです。
漂うようなキーボードに歯切れの良い
パーカッション、コーラス、ドスの効いた
ベースなどが盛り込まれたダブ。
19曲目は「Crisis Dub」です。
6曲目「Love Crisis」のダブ。
心地良いハーモニカのメロディとドスの
効いたベースのダブ。
20曲目は「Sound Man Style」です。
8曲目「Hard Ground」のダブ。
漂うようなキーボードとドスの効いた
ベースを中心としたダブ。
Disc 2は77年のアルバム「Love Crisis」
の曲が収められています。
ただし6曲目、8曲目、11曲目、14曲
目の4曲は、同じ77年にリリースされた
U-Blackの「Westbound Thing A Swing」と
いうアルバムの曲です。
その前のBlack Uhuruの曲と同じリディム
を使用した曲を、間に挿入しているんです
ね。
Disc 2の1曲目は「Crisis For Love」
です。
ギターとキーボード、ベースのメロディ
に、Michael Roseのヴォーカルがイイ
感じ。
「Love Crisis」の原題は、このタイトル
なんですね。
他の曲もそうですが、演奏もよりシンプル
です。
Black Sounds Uhro - Love Crisis
2曲目は「Satan Army Band」です。
ユッタリとしたギターとベース、
キーボードのメロディに、Michael
Roseのナイスなヴォーカルがイイ感じ。
3曲目は「Tonight Is The Night To
Unite」です。
ギターとクラヴィネットを中心とした
メロディに、Michael Roseの粘り気の
あるヴォーカルがイイ感じ。
4曲目は「Eden Out Deh」です。
キーボードとギター、ベースを中心とした
メロディに、ノビのあるMichael Roseの
ヴォーカルがイイ感じ。
5曲目は「Sorry For The Man」です。
浮遊感のあるキーボードに乗せた、
Michael Roseのナイスなヴォーカルと
コーラス・ワークが魅力的。
6曲目はU-Blackの「Love You Girl」
です。
5曲目「Sorry For The Man」のリディム
です。
浮遊感のあるキーボードにichael Roseの
ナイスなヴォーカル、それを追いかける
ように入って来るU-Blackのラフなトース
ティングが素晴らしい曲です。
U-Black - Love You Girl
7曲目は「I Love King Selassie」です。
パーカッションの心地良いリズムと浮遊感
のあるキーボードにギターとベースの
メロディ、コーラスに乗せた感情を込めた
Michael Roseのヴォーカルがイイ感じ。
81年のアルバムと較べるとフルートが
入っていませんが、そのシンプルさが
かえって魅力的です。
8曲目はU-Blackの「King Of All Time」
です。
7曲目「I Love King Selassie」の
リディムの曲です。
キーボードとギターベースのメロディに、
ダブワイズしたパーカッション、立て板に
水のU-Blackのトースティングがカッコ
イイです。
U-Black - King Of All Time
9曲目は「Natural Mystic」です。
浮遊感のあるキーボードとギターの
メロディに、コーラスに乗せたMichael
Roseのヴォーカルがイイ感じ。
BLACK UHURU - Natural Mystic [1977]
10曲目は「Hard Ground」です。
浮遊感のあるキーボードとベース、
ギター、ピアノのメロディに、Michael
Roseの泣きのヴォーカルが魅力的。
11曲目はU-Blackの「Crocodile Style」
です。
10曲目「Hard Ground」のリディムを
使った曲です。
浮遊感のあるキーボードのメロディに、
Michael Roseのヴォーカルに続き入って
来るU-Blackのイカしたトースティング。
12曲目は「African Love」です。
コーラス・ワークから浮遊感のある
キーボードのメロディ、歯切れの良い
パーカッション、感情を乗せたMichael
Roseのナイスなヴォーカル。
13曲目はU-Blackの「Ride Into Zion」
です。
12曲目「African Love」のリディムの
曲です。
ダブワイズした浮遊感のあるキーボードと
コーラスに、U-Blackのナイスなトース
ティング。
U Black Ride into Zion YouTube
14曲目は「Willow Tree」です。
キーボードとギターを中心としたメロディ
に、感情を乗せたMichael Roseの
ヴォーカルがとても魅力的な曲です。
ざっと追いかけてきましたが、元の音源は
77年のアルバムですが、この頃の彼ら
Black Uhuruには心の陰りや迷いがなく、
素直に自分たちの愛するルーツ・
ミュージックを歌っています。
その後81年に音を足して作られたのが
今回の「Black Sounds Of Freedom」です
が、上モノが付いてより豪華にはなった
ものの、元の音源が良い為か内容は悪く
なっていないんですね。
そのあたりは稀代のプロデューサー
Prince Jammy(のちのKing Jammy)の
手腕が光ります。
その後の度重なるメンバー・チェンジや
Puma Jonesの病死などで、とかくマイナス・
イメージが付きまとい「不遇なグループ」
などと呼ばれてしまうBlack Uhuruですが、
その原点ではこうした魅力的なアルバムを
作っていたんですね。
その事は忘れずに覚えておきたいもの
です。
機会があればぜひ聴いてみてください。
Black Uhuru - I Love King Selassie (Live in London)
○アーティスト: Black Uhuru
○アルバム: Black Sounds Of Freedom (Deluxe Edition)
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CDX2
○オリジナル・アルバム制作年: 1977 (1981, 1982)
○Black Uhuru「Black Sounds Of Freedom (Deluxe Edition)」曲目
Disc 1
(Black Sounds Of Freedom - 1981)
1. I Love King Selassie
2. Satan Army Band
3. Time To Unite
4. Natural Mystic
5. Eden Out Deh
6. Love Crisis
7. African Love
8. Hard Ground
9. Willow Tree
10. Sorry For The Man
(Prince Jammy: Uhuru In Dub - 1982)
11. Eden Dub
12. Mystic Mix
13. His Imperial Majesty
14. Weeping Willow
15. Bad Girls Dub
16. Tonight Is The Night
17. Firehouse Special
18. African Culture
19. Crisis Dub
20. Sound Man Style
Disc 2
(Love Crisis - 1977)
1. Crisis For Love
2. Satan Army Band
3. Tonight Is The Night To Unite
4. Eden Out Deh
5. Sorry For The Man
6. Love You Girl - U-Black
7. I Love King Selassie
8. King Of All Time - U-Black
9. Natural Mystic
10. Hard Ground
11. Crocodile Style - U-Black
12. African Love
13. Ride Into Zion - U-Black
14. Willow Tree
●今までアップしたBlack Uhuru関連の記事
〇Black Uhuru「Chill Out」
〇Black Uhuru「Red」
〇Black Uhuru「Sinsemilla」
〇Black Uhuru「Tear It Up - Live」
〇Black Uhuru「The Dub Factor」
〇Ranking Joe With Black Uhuru, Dennis Brown「Zion High」
〇Various「King Jammy Presents New Sounds Of Freedom」
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