今回はVarious(オムニバス)ものの
アルバム

prince_buster_02a

「15 Oldies But Goodies」です。

まずはこのアルバムに関係のあるPrince
Busterについて書いておきます。

Prince Buster(本名:Cecil Eustace
Bustamente Campbell)はスカから
ルーツ・レゲエの時代まで人気を博した
シンガーです。
元ボクサーだった彼はC.S.Doddのサウンド
システムの用心棒としてこの世界に足を
踏み入れ、やがて自分のサウンドシステム
を持ち、自身もシンガーとしてスカの時代
に活躍するんですね。
スカは当時イギリスにも輸出されていて、
その輸入元のレーベルBlue Beatの名前
から「ブルー・ビート」と呼ばれ、UKの
不良少年(ルード・ボーイ)の間で人気の
音楽になって行くんですね。
Prince Busterのスカの楽曲もUKに輸出
され、彼はそうした不良少年の間で
「キング・オブ・ブルー・ビート」と呼ば
れ、人気者となって行くんですね。
ただイスラム教徒だった彼は、70年代の
ルーツ・レゲエの時代になると
ラスタファリズムの台頭とともに勢いを
失い、活躍の場を失ってしまいます。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て18枚ぐらいのアルバムと、318枚
ぐらいのシングル盤を残しているのが、
このPrince Busterという人です。

アーティスト特集 Prince Buster (プリンス・バスター)

今回のアルバムは1968年にUKの
Fabというレーベルからリリースされ
た、Prince BusterやDerrick Morganなど
スカの時代に活躍したアーティストの音源
を集めたコンピュレーション・アルバム
です。

ジャケットにプロデューサーなどの細かい
記載はありませんが、Prince Busterが
おそらくプロデュースしたのではないかと
思われるアルバムで、The Princeという
名前でクレジットされている「Feel Up」
や、Derrick Morganの「Throw Them
Away」などの、スカの時代の有名
アーティストの曲の他に、Keith & Enid
やRuddy & Sketto、The Flamesなど知名度
の低いアーティストのスカの楽曲も集め
られたアルバムで、スカの時代の熱い
エネルギーを感じる内容のアルバムと
なっています。

手に入れたのはPrince Buster自身の
レーベルPrince Busterからリリースされ
たLPの中古盤でした。

なお今回のアルバムですが、Side 2の
3~5曲目の3曲の曲順が、クレジット
とは違っているようです。

プリントされた曲順は
3. Got A New Girl - F.D. Long
4. South Virginia - Buster All Stars
5. Fay Is Gone - Winston & Errol
となっていますが、実際は
3. Fay Is Gone - Winston & Errol
4. Got A New Girl - F.D. Long
5. South Virginia - Buster All Stars
が正しいようです。
(最後にクレジットされた曲順と、正しい
曲順を表記しています。)

Side 1が7曲、Side 2が8曲の全15曲。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。
今回のアルバムにはプロデュースや
スタジオ、バックのミュージシャン、
ジャケット・デザイン等の記載が一切無い
んですね。
表ジャケにデザインされた感じで、曲の
タイトルとアーティスト名が並んでいて、
裏ジャケにタイトルと曲目、他にリリース
されたアルバムのタイトルとアーティスト
名が書かれているだけなんですね。

収められているアーティストは
Keith & Enid、Duke Reid's Group、
Ruddy & Sketto、Bell's Group、
The Flames、The Folks Brothers、
Derrick Morgan、Buster All Stars
(3曲)、F.D. Long、Winston & Errol、
Jamaica Greatest、The Prince(Prince
Buster)、The Monarchsという人達です。

このうちDuke Reid's GroupとBell's
Group、Buster All Starsはバック・
バンドの名前で、インスト曲が収められて
います。

その他のアーティストの中で一番有名な
アーティストはシンガーのDerrick Morgan
(本名:Derrick Seymour Morgan)で、
彼は60年代のスカの時代から活躍し、
共演盤を含めて24枚ぐらいのアルバム
と、379枚ぐらいのシングル盤を残して
います。

このDerrick MorganとThe Prince(Prince
Buster)を除くと、後のアーティストは
知名度がグッと落ちます。

Keith & EnidはAltamont StewartとEnid
Campbellから成る男女混成のデュオのよう
です。
1963年に「Keith And Enid Sing」と
いうアルバム1枚と、シングル盤を14枚
ぐらいリリースしているようです。

Ruddy And Skettoはシングル盤を16枚
ぐらいリリースしているデュオのよう
です。

この中で比較的知られていると思われる
のがThe Flamesで、彼らはAlton Ellisの
バック・コーラスを務めていた事でよく
知られています。
メンバーはLeslie EllisとDavid 'Baby G'
Gordon、Winston Jarrett、Lloyd
Charmersで、のちにWinston Jarrettと
Lloyd Charmersがソロとして活躍して
います。
このグループとしては10インチ・ミニ・
アルバム1枚と、シングル盤14枚ぐらい
をリリースしています。

The Folkes BrothersはJohn FolkesとMico
Folkes、Junior Folkesの3人からなる
トリオのグループで、シングル盤を9枚
ぐらいリリースしています。
名字が同じなので、兄弟グループなのかも
しれません。

F.D. Long(Fritzroy D. Long)は、この
コンピュレーション・アルバムの1曲しか
記録の無いシンガーです。

Winston & Errolは、シングル盤3枚
ぐらいをリリースしているデュオのよう
です。

Jamaica Greatest(本名: Cecil
Eustace Bustamente Campbell)は、
シングル盤を4枚ぐらいリリースしている
シンガーのようです。

The Monarchsはこのグループ名でシングル
盤を」3枚、Black Headという別名で
コンピュレーションに1曲、 The Movers
という名前でシングル盤を8枚ぐらい、
The Plannersという名前でシングル盤を
2枚ぐらいリリースしているグループ
です。

以上がネットのDiscogsなどを使って調べ
た、このアルバムについて解った事です。
サウンドを聴く限りでは60年代前半の
スカの時代の音源と思われ、華やかな
ホーンの軽快なビートに乗せたスカの楽曲
が魅力的なアルバムだと思います。
大半のアーティストは無名に近い
アーティストですが、このスカの時代なら
ではのビートに乗せた楽曲はとても魅力的
です。

おススメはSide 1の6曲目The Folks
Brothersの「Carolina」で、ピアノの
メロディにハンド・クラップ(手拍子)、
心地良いパーカッション(Count Ossieが
演奏しているらしいです)という組み合わ
せが、その後のレゲエ(ルーツ・レゲエ)
への展開を予見させるような面白さがあり
ます。

またインスト・ナンバーではSide 2の
1曲目はBuster All Starsの「City Riot」
は、アドリブのサックス・ソロも入った
Jazzyな展開がとても魅力的。
当時のジャマイカにはジャズを学んだ
プレイヤーが多く、スカにおけるジャズの
影響を感じさせる1曲となっています。

またこのコンピの1曲「Got A New Girl」
しか発表歴のないF.D. Longの曲も、ある
意味ではとても貴重で注目すべきところ
かもしれません。
他のアーティストもけっこうレアな人が
多いですが、スカという音楽の誕生が
1950年代という事を考えれば、今から
60年以上前の音源であり、どの音源も
とても貴重なんですね。
こちらもレアなSide 2の6曲目Jamaica
Greatestの「It's Burkes Law」なども、
この時代らしい口でのスキャットが入って
いたりして、とても面白い曲です。

このスカの時代らしいノリが解るコンピュ
レーション・アルバムで、内容はとても
良いと思います。

Side 1の1曲目はKeith & Enidの「Worried
Over You」です。
ムーディーなホーンとピアノのメロディ
に、優しい女性ヴォーカルとデュエット
する男性ヴォーカルの組み合わせが魅力的
な曲です。

Worried Over You - Keith and Enid


2曲目はDuke Reid's Groupの「What
Makes Honey」です。
明るいホーンとギターのメロディの
インスト曲です。

3曲目はRuddy & Skettoの「My Heart's
Desire」です。
スローなギターとピアノのメロディに、
感情を乗せたドラマチックな歌唱が印象的
な曲です。
途中から入るサックス・ソロもイイ感じ。

Ruddy & Sketto - My Heart's Desire (FAB)


4曲目はBell's Groupの「Kingston 13」
です。
明るいホーンとリズミカルなピアノを中心
とした、ダンサブルなインスト曲です。

5曲目はThe Flamesの「Helena Darling」
です。
ホーンとギターの郷愁を誘うメロディに、
ちょっと幼めのヴォーカルにコーラスが
イイ感じの曲です。

Helena Darling - The Flames


6曲目はThe Folks Brothersの
「Carolina」です。
ピアノにハンド・クラップ(手拍子)、
心地良いパーカッションのメロディに、
コーラスに乗せたナイスなヴォーカル。
パーカッションはYouTubeの記述を見る
と、Count Ossieらしいです。

The Folks Bros & Count Ossie - Oh Carolina . ( Original Version )


7曲目はDerrick Morganの「Throw Them
Away」です。
陽気で明るいホーンとギターのメロディ
に、ちょっとトボけたDerrick Morganの
余裕のあるヴォーカルが楽しい曲です。

derrick morgan - throw them way (bluebeat 311 1965)


Side 2の1曲目はBuster All Starsの
「City Riot」です。
ギターのブギのリズムに華やかなホーンの
メロディが楽しいインスト曲です。
入れ替わり入って来る

Prince Busters All Stars - City Riot


2曲目はBuster All Starsの「Down Beat
Burial」です。
ノリの良いギターに味のあるホーンの
メロディのインスト曲です。

3曲目はWinston & Errolの「Fay Is
Gone」です。
明るいホーンとギターのメロディに、
女性ヴォーカルと男性ヴォーカルがうまく
絡み合う、楽しいデュエット曲です。

Winston & Errol - Fay Is Gone


4曲目はF.D. Longの「Got A New Girl」
です。
書いたようにF.D. Longはこのアルバムで
しか聴けないアーティストです。
明るいホーンと刻むようなギターの
メロディに、ソフトに歌うF.D. Longの
ヴォーカルがイイ感じの曲です。

Prince Buster - Got A New Girl - F.D. Long


5曲目はBuster All Starsの「South
Virginia」です。
軽快なギターとホーン・セクション、
ハーモニカのメロディのインスト曲です。

6曲目はJamaica Greatestの「It's
Burkes Law」です。
掛け声柄ホーンのメロディ、スキャットの
リズムに乗せた明るく陽気なヴォーカル。
遊び心の溢れた、この時代らしい面白い曲
です。

Jamaica Greatest - It's Burke's Law (1965) Blue Beat 309 B


7曲目はThe Prince(Prince Buster)の
「Feel Up」です。
明るいホーン・セクションのメロディに、
女性ヴォーカルとPrince Busterの息の
合ったデュエットがとても楽しい曲です。

prince buster - feel up ( prince buster vop blank 1965 )


8曲目はThe Monarchsの「Sauce & Tea」
です。
急くようなギターとホーンのブギのリズム
に、コーラス・ワークに乗せた滑らかな
ヴォーカルが魅力的。
サックス・ソロもイイ感じの曲です。

SAUCE AND TEA THE MONARCHS


ざっと追いかけてきましたが、このスカと
いう音楽の成功がジャマイカの音楽界に
もたらしたものは大きく、音楽産業は徐々
に発展し、その後のロックステディ→
レゲエの発展へと繋がって行くんですね。

今回のアルバムはそのスカの時代の
コンピュレーションとして、なかなか
悪くない内容のアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: 15 Oldies But Goodies
○レーベル: Prince Buster
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1968

(クレジットされた曲順)
○Various「15 Oldies But Goodies」曲目
Side 1
1. Worried Over You - Keith & Enid
2. What Makes Honey - Duke Reid's Group
3. My Heart's Desire - Ruddy & Sketto
4. Kingston 13 - Bell's Group
5. Helena Darling - The Flames
6. Carolina - The Folks Brothers
7. Throw Them Away - Derrick Morgan
Side 2
1. City Riot - Buster All Stars
2. Down Beat Burial - Buster All Stars
3. Got A New Girl - F.D. Long
4. South Virginia - Buster All Stars
5. Fay Is Gone - Winston & Errol
6. It's Burkes Law - Jamaica Greatest
7. Feel Up - The Prince
8. Sauce & Tea - The Monarchs

(実際の曲順)
○Various「15 Oldies But Goodies」曲目
Side 1
1. Worried Over You - Keith & Enid
2. What Makes Honey - Duke Reid's Group
3. My Heart's Desire - Ruddy & Sketto
4. Kingston 13 - Bell's Group
5. Helena Darling - The Flames
6. Carolina - The Folks Brothers
7. Throw Them Away - Derrick Morgan
Side 2
1. City Riot - Buster All Stars
2. Down Beat Burial - Buster All Stars
3. Fay Is Gone - Winston & Errol
4. Got A New Girl - F.D. Long
5. South Virginia - Buster All Stars
6. It's Burkes Law - Jamaica Greatest
7. Feel Up - The Prince
8. Sauce & Tea - The Monarchs