今回はRicoのアルバム
「That Man Is Forward」です。
Rico Rodriguez(本名:Emmanuel
Rodriguez)はジャマイカやイギリスで
長く活躍したトロンボーン奏者です。
トロンボーン奏者として多くのセッション
に参加したほか、多くのソロ・アルバムを
残しています。
イギリスでネオ・スカのブームが起きた時
には、その中心グループであった白人と
黒人の混成グループThe Specialsの
サポート・メンバーに参加した事でも知ら
れています。
今年2015年9月4日にロンドンで、
80歳で亡くなっています。
ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て19枚ぐらいのアルバムと、65枚
ぐらいのシングル盤を残しているのが、
このRico Rodriguezという人です。
アーティスト特集 Rico Rodriguez (リコ・ロドリゲス)
リコ・ロドリゲス (音楽家) - Wikipedia
今回のアルバムは1981年にUKの
Two-Tone Recordsからリリースされた
Ricoのソロ・アルバムです。
当時ネオ・スカの「2 toneブーム」を起こ
していたTwo-Tone Recordsからリリース
されたアルバムで、プロデュースはDick
CuthellとRico、バックにSly & Robbieや
Earl 'Chinna' Smithなどが参加した
アルバムで、当時The Specialsの
サポート・メンバーに参加した事もあって
か、表題曲の「That Man Is Forward」を
はじめとして、かなりスカの色合いが強い
楽曲が並んだアルバムとなっています。
手に入れたのは私が初めにレゲエを聴いて
いた20代当時で、80年代ぐらいに新盤
で購入したアルバムでした。
Side 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。
ミュージシャンについては以下の記述が
あります。
Produced by Dick Cuthell and Rico
Recorded at Joe Gibbs Studio, Kingston, Jamaica
Engineers: Errol Thompson, Dick Cuthell
Mixed by: Dick Cuthell at The Townhouse Studio, London
Tepe Op: Marlis Dunklau
Sleeve Design: David Storey
Front Cover Photo: Jean Bernard Soheiz
Colouring by: David Storey
Back Cover Snaps: Dick Cuthell
Trombone, Repeater, Percussion: Rico Rodriquez
Flugelhorn, Cornet, Percussion, Pick Guitar(on Red Top): Dick Cuthell
Section 1: Easy Snappin, Fiesta, Chang Kai Shek, X
Musicians:
Drums: Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespeare
Rhythm Guitar: Mikey Chung
Piano: Robbie Lyn
Organ: Ansel Collins
Percussion: Skully
Section 2: Stay Out Late, Red Top, Ganja, That Man Is Forward
Musicians:
Drums: Santa
Bass: George Fullwood
Rhythm Guitar, Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Ska Guitar: Jah Jerry
Piano: Winston Wright
Off Mic Repeater: Oswald 'Ras Culture' Palmer
Brother Brass:
Tenor Sax: Glen DaCosta (on all tracks except Red Top),
Cedric Brookes (on Easy Snappin and Red Top)
Alto Sax: 'Deadly' Headley Bennett (on all tracks except Red Top)
Trumpet, Flugelhorn: David Madden (on all tracks except Red Top, Flugel solo on X)
2nd Trombone: Nambo (on Easy Snappin)
Liner Notes: Richard Williams
となっています。
プロデュースはDick CuthellとRicoで、
レコーディングはジャマイカのキング
ストンにあるJoe Gibbs Studioで行われ、
レコーディング・エンジニアはErrol
ThompsonとDick Cuthellが担当し、
ミックスはロンドンのThe Townhouse
Studioで、ミックス・エンジニアは
Dick Cuthellが担当しています。
トロンボーンとリピーター、
パーカッションをRico Rodriquezが担当
し、コルネット(金管楽器)と
パーカッション、Side 2の1曲目「Red
Top」のピック・ギターをDick Cuthellが
担当しています。
今回のアルバムはこのRico Rodriquezと
Dick Cuthellが中心になって制作された
アルバムのようです。
今回のアルバムは2回に分けての録音
だったらしく、メンバーが「Section 1」
と「Section 2」に分けて書かれていま
す。
ちなみに「Section 1」の楽曲がSide 1の
1曲目「Easy Snappin」と2曲目の
「Fiesta」、3曲目「Chang Kai Shek」、
Side 2の2曲目「X」の4曲で、残りの
Side 1の4曲目「Stay Out Late」と、
Side 2の1曲目「Red Top」、3曲目
「Ganja」、4曲目「That Man Is
Forward」の4曲は「Section 2」の
楽曲です。
まずは「Section 1」のメンバーは
ドラムにSly Dunbar、ベースにRobbie
Shakespeare、リズム・ギターにMikey
Chung、ピアノにRobbie Lyn、オルガンに
Ansel Collins、パーカッションにNoel
'Scully' Simmsという布陣です。
「Section 2」ののメンバーはドラムに
Carlton 'Santa' Davis、ベースにGeorge
Fullwood、リズムとリード・ギターに
Earl 'Chinna' Smith、スカ・ギターに
Jah Jerry、ピアノにWinston Wright、
オフ・マイク・リピーターにOswald
'Ras Culture' Palmerという布陣です。
ブラスはテナー・サックスにGlen
DaCosta(「Red Top」を除く全曲)と
Cedric Brookes(「Easy Snappin」と
「Red Top」)、アルト・サックスに
'Deadly' Headley Bennett(「Red Top」
を除く全曲)、トランペット(「Red
Top」を除く全曲)とフリューゲルホーン
(「X」のソロ)にDavid Madden、「Easy
Snappin」のセカンド・トロンボーンに
Ronald 'Nambo' Robinsonという布陣
です。
ジャケット・デザインと表ジャケの色の
加工はDavid Storeyで、表ジャケの写真は
Jean Bernard Soheiz、裏ジャケの
スナップ写真はDick Cuthellとなっていま
す。
裏ジャケ
裏ジャケに書かれたライナー・ノーツは
Richard Williamsという人が書いていま
す。
さて今回のアルバムですが、レゲエより
ずいぶんと古いスカのビートを再現した
アルバムで、とてもリラックスした明るい
スカのビートが楽しめる、なかなか面白い
アルバムだと思います。
このアルバムを私が初めて聴いたのは、
私がまだ20代だった80年代頃でした。
このアルバムより前に彼のアルバム
「Man From Wareika」を聴いていて、
すごく期待して買ったアルバムでした。
Rico – Man From Wareika (1976)
ただ正直なところ当時の私はその期待ほど
は、このアルバムが面白くは感じられま
せんでした。
おそらく「Man From Wareika」という
アルバムは今でもRicoの一番の代表作と
いえるアルバムだと思いますが、その重厚
なサウンドの中に漂う緊張感が、この
アルバムからは当時の私にはあまり感じ
られなかったんですね。
そのせいか「Man From Wareika」ほどは、
このアルバムを繰り返し聴く事はありま
せんでした。
ただかなり久しぶりにこのアルバムを
ジックリ聴いてみると、当時感じたよりは
かなり内容の濃い良い、出来のアルバム
なんですね。
おそらく当時の私は、このアルバムと
「Man From Wareika」というアルバムの
方向性の違いに戸惑いを感じていたんだと
思います。
「Man From Wareika」というアルバムは
かなりルーツ・マナーに沿ったアルバム
で、ラスタファリズムのチャント集会の
ような重厚なうねるようなサウンドの中に
緊張感の漂う荘厳なアルバムでした。
それに較べると今回の「That Man Is
Forward」というアルバムは、レゲエ誕生
以前の60年代に流行ったスカのサウンド
を80年代に再現したアルバムで、かなり
リラックスしたミュージシャン同士の息の
合ったプレイが心地良い、「Man From
Wareika」と較べるとちょっと軽めの内容
のアルバムなんですね。
当時の私はそのサウンドの重さの差に、
ちょっと違和感を感じてしまったんです
ね。
まあ「軽めの内容」と言いましたが、逆に
「Man From Wareika」がかなりヘヴィーと
言った方が良いのかもしれません。
ただダブを除けば「Man From Wareika」の
次にリリースされたのがこのアルバムです
が、その「Man From Wareika」から5年
ぐらいも経ってのアルバムなので、それ
なりに内容の違いがあって当然だったのだ
と思います。
実は「Man From Wareika」というアルバム
は賞も受賞するなど高評価された半面、
セールス的に見るとあまり振るわない
アルバムだったのだとか。
60年代からUKに渡り、様々なバンドで
プレイして実績を積み上げ、ようやく満足
のいく内容のアルバムをリリースしたのに
セールスが振るわない…。
トロンボーン奏者としてのRicoの苦悩は、
あの素晴らしい「Man From Wareika」と
いうアルバムをリリースした後も続いて
いたんですね。
そうしたRicoに手を貸したのが、当時も
ルード・ボーイ(不良少年)に人気の
あったスカを演奏するネオ・スカ・バンド
The Specialsで、彼らは尊敬するRicoを
サポート・メンバーに加え、ネオ・スカの
新ブーム「2 toneブーム」を起こすんです
ね。
このThe Specialsの79年のファースト・
アルバム「Specials」や80年の
セカンド・アルバム「More Specials」
には、RicoとDick Cuthellがサポート・
メンバーとして参加しています。
The Specials – Specials (1979)
The Specials – More Specials (1980)
The Specials featuring Rico – The Special A.K.A. Live: Too Much Too Young (1980)
The Specials A Message To You Rudy OGWT 1979
The Specials - Ghost Town (Official Music Video)
こうしたThe Specialsの成功などもあり、
Rico Rodriquezというトロンボーン奏者の
知名度も徐々に上がって、彼自身も演奏者
としての地位を徐々に築いて行くんです
ね。
そうした彼自身がネオ・スカのブームに
乗っていた時期に作られたのが今回の
アルバムで、60年代に培ったスカの
サウンドを80年代に再現しているのが
今回のアルバムです。
ちなみにRicoはこのアルバムの翌年の
82年に、このTwo-Tone Recordsから
「Jama Rico」というアルバムもリリース
しています。
一番The Specialsと蜜月関係にあったの
は、79年から81年の頃だったんです
ね。
(その後The Specialsは、The Special
AKAとFun Boy Threeというグループに
分裂してしまうようです。)
また当時ちょっと違和感を感じた理由と
しては、このアルバムが作られたのが
ルーツ・レゲエからダンスホール・レゲエ
の時代へと変わりつつあった80年代初め
の頃ですが、その時代に60年代のスカの
サウンドを再現していたという事もある
かもしれません。
前のアルバム「Man From Wareika」が
70年代のルーツ・レゲエのアルバム
だったのに対して、今回のアルバムは
それより以前の60年代のスカの時代に
先祖返りしたようなサウンドだったんです
ね。
またThe Specialsの作り出していたような
ネオ・スカのサウンドともちょっと違った
んですね。
そうした時代的な違和感を感じたような
気がします。
ただ時代が経った今の時代にこのアルバム
を聴くと、自分自身も少しは成長した事も
あるかもしれませんが、とてもリラックス
した雰囲気の中に音楽的な密度のある、
とても良い出来のアルバムなんですね。
ホーン・セクションとピアノのメロディが
楽しいSide 1の1曲目「Easy Snappin」
から始まり、懐かしさを感じるような
クラシック感のある2曲目「Fiesta」、
Baba Brooksの「Shank I Sheck」リディム
の3曲目「Chang Kai Shek」、スカの時代
に活躍したLord Creatorのカヴァーの
4曲目「Stay Out Late」、Ricoのトロン
ボーンとスカ・ギターやピアノソロが魅力
のSide 2の1曲目「Red Top」、Jazzyな
メロディが印象的な2曲目「X」、トロン
ボーンのユッタリとしたメロディが
魅力的な3曲目「Ganja」、トロンボーン
の陽気で明るいメロディが心地良い4曲目
表題曲の「That Man Is Forward」まで、
リラックスした雰囲気の中にも中身が
ビッシリと詰まった内容のアルバムに
仕上がっています。
Side 1の1曲目は「Easy Snappin」です。
オリジナルはTheophilus Beckfordの名曲
です。
ピアノ―とキーボードにギター、重厚な
ホーン・セクションの楽し気なメロディが
魅力的な曲です。
入れ替わりのサックス・ソロがイイ感じの
曲です。
RICO RODRIGUEZ - EASY SNAPPIN
2曲目は「Fiesta」です。
キーボードとギター、ピアノのメロディ
から、ユッタリとしたRicoのトロンボーン
に心奪われる1曲。
懐かしさを感じるような、良い意味の
クラシック感が魅力。
Rico Rodriguez "Fiesta"
3曲目は「Chang Kai Shek」です。
リディムはBaba Brooksの「Shank I
Sheck」。
ギターとピアノの寂しげなメロディから、
一気にホーン・セクションとギター、
パーカッション、ピアノの明るいメロディ
になる展開の曲です。
Jazzyなサックス・ソロもイイ感じ。
RICO RODRIGUEZ - CHANG KAI SHEK
リズム特集 Shank I Sheck (シャンク・アイ・シェック)
4曲目は「Stay Out Late」です。
リディムはスカの時代に活躍したシンガー
Lord Creatorの同名ヒット曲です。
ドラマチックなホーンのオープニング
から、華やかなトロンボーンのメロディが
心地良い曲です。
Stay out Late
Side 2の1曲目は「Red Top」です。
ギターの印象的なメロディから、トロン
ボーンを中心とした心地良いメロディへと
変化して行く曲です。
途中のスカ・ギターやピアノのソロも
イイ感じのJazzyな曲。
2曲目は「X」です。
ギターとピアノ、ホーン・セクションの
メロディの、Jazzyなインスト曲です。
3曲目は「Ganja」です。
心地良いドラミングにピアノ、ギター、
トロンボーンのユッタリとしたメロディが
魅力的な曲です、
RICO RODRIGUEZ - GANJA
4曲目は表題曲の「That Man Is Forward」
です。
リズミカルなピアノとギターのメロディ
から、トロンボーンの陽気で明るい
メロディが心地良い曲です。
Rico Rodriguez "That Man Is Forward"
ざっと追いかけてきましたが、当時は多少
軽く感じられたアルバムでしたが、今回
改めて聴き直してみるとかなり中身の濃い
アルバムで、リラックスした中に個々の
プレイヤーの個性が光る好内容のアルバム
だと思います。
ただ原曲が10年以上も前の曲が多く、
今聴いてもけっこうクラシックに聴こえる
ところがあり、そうした印象でちょっと損
をしている感があるのが惜しまれるところ
かもしれません。
ただこのアルバムが、その後の彼の道筋を
作った事は間違いがありません。
機会があればぜひ聴いてみてください。
○アーティスト: Rico
○アルバム: That Man Is Forward
○レーベル: Two-Tone Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年:
○Rico「That Man Is Forward」曲目
Side 1
1. Easy Snappin
2. Fiesta
3. Chang Kai Shek
4. Stay Out Late
Side 2
1. Red Top
2. X
3. Ganja
4. That Man Is Forward
●今までアップしたRico関連の記事
〇Rico「Man From Wareika」
〇Rico「Warrika Dub - Ghetto Rockers」
「That Man Is Forward」です。
Rico Rodriguez(本名:Emmanuel
Rodriguez)はジャマイカやイギリスで
長く活躍したトロンボーン奏者です。
トロンボーン奏者として多くのセッション
に参加したほか、多くのソロ・アルバムを
残しています。
イギリスでネオ・スカのブームが起きた時
には、その中心グループであった白人と
黒人の混成グループThe Specialsの
サポート・メンバーに参加した事でも知ら
れています。
今年2015年9月4日にロンドンで、
80歳で亡くなっています。
ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て19枚ぐらいのアルバムと、65枚
ぐらいのシングル盤を残しているのが、
このRico Rodriguezという人です。
アーティスト特集 Rico Rodriguez (リコ・ロドリゲス)
リコ・ロドリゲス (音楽家) - Wikipedia
今回のアルバムは1981年にUKの
Two-Tone Recordsからリリースされた
Ricoのソロ・アルバムです。
当時ネオ・スカの「2 toneブーム」を起こ
していたTwo-Tone Recordsからリリース
されたアルバムで、プロデュースはDick
CuthellとRico、バックにSly & Robbieや
Earl 'Chinna' Smithなどが参加した
アルバムで、当時The Specialsの
サポート・メンバーに参加した事もあって
か、表題曲の「That Man Is Forward」を
はじめとして、かなりスカの色合いが強い
楽曲が並んだアルバムとなっています。
手に入れたのは私が初めにレゲエを聴いて
いた20代当時で、80年代ぐらいに新盤
で購入したアルバムでした。
Side 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。
ミュージシャンについては以下の記述が
あります。
Produced by Dick Cuthell and Rico
Recorded at Joe Gibbs Studio, Kingston, Jamaica
Engineers: Errol Thompson, Dick Cuthell
Mixed by: Dick Cuthell at The Townhouse Studio, London
Tepe Op: Marlis Dunklau
Sleeve Design: David Storey
Front Cover Photo: Jean Bernard Soheiz
Colouring by: David Storey
Back Cover Snaps: Dick Cuthell
Trombone, Repeater, Percussion: Rico Rodriquez
Flugelhorn, Cornet, Percussion, Pick Guitar(on Red Top): Dick Cuthell
Section 1: Easy Snappin, Fiesta, Chang Kai Shek, X
Musicians:
Drums: Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespeare
Rhythm Guitar: Mikey Chung
Piano: Robbie Lyn
Organ: Ansel Collins
Percussion: Skully
Section 2: Stay Out Late, Red Top, Ganja, That Man Is Forward
Musicians:
Drums: Santa
Bass: George Fullwood
Rhythm Guitar, Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Ska Guitar: Jah Jerry
Piano: Winston Wright
Off Mic Repeater: Oswald 'Ras Culture' Palmer
Brother Brass:
Tenor Sax: Glen DaCosta (on all tracks except Red Top),
Cedric Brookes (on Easy Snappin and Red Top)
Alto Sax: 'Deadly' Headley Bennett (on all tracks except Red Top)
Trumpet, Flugelhorn: David Madden (on all tracks except Red Top, Flugel solo on X)
2nd Trombone: Nambo (on Easy Snappin)
Liner Notes: Richard Williams
となっています。
プロデュースはDick CuthellとRicoで、
レコーディングはジャマイカのキング
ストンにあるJoe Gibbs Studioで行われ、
レコーディング・エンジニアはErrol
ThompsonとDick Cuthellが担当し、
ミックスはロンドンのThe Townhouse
Studioで、ミックス・エンジニアは
Dick Cuthellが担当しています。
トロンボーンとリピーター、
パーカッションをRico Rodriquezが担当
し、コルネット(金管楽器)と
パーカッション、Side 2の1曲目「Red
Top」のピック・ギターをDick Cuthellが
担当しています。
今回のアルバムはこのRico Rodriquezと
Dick Cuthellが中心になって制作された
アルバムのようです。
今回のアルバムは2回に分けての録音
だったらしく、メンバーが「Section 1」
と「Section 2」に分けて書かれていま
す。
ちなみに「Section 1」の楽曲がSide 1の
1曲目「Easy Snappin」と2曲目の
「Fiesta」、3曲目「Chang Kai Shek」、
Side 2の2曲目「X」の4曲で、残りの
Side 1の4曲目「Stay Out Late」と、
Side 2の1曲目「Red Top」、3曲目
「Ganja」、4曲目「That Man Is
Forward」の4曲は「Section 2」の
楽曲です。
まずは「Section 1」のメンバーは
ドラムにSly Dunbar、ベースにRobbie
Shakespeare、リズム・ギターにMikey
Chung、ピアノにRobbie Lyn、オルガンに
Ansel Collins、パーカッションにNoel
'Scully' Simmsという布陣です。
「Section 2」ののメンバーはドラムに
Carlton 'Santa' Davis、ベースにGeorge
Fullwood、リズムとリード・ギターに
Earl 'Chinna' Smith、スカ・ギターに
Jah Jerry、ピアノにWinston Wright、
オフ・マイク・リピーターにOswald
'Ras Culture' Palmerという布陣です。
ブラスはテナー・サックスにGlen
DaCosta(「Red Top」を除く全曲)と
Cedric Brookes(「Easy Snappin」と
「Red Top」)、アルト・サックスに
'Deadly' Headley Bennett(「Red Top」
を除く全曲)、トランペット(「Red
Top」を除く全曲)とフリューゲルホーン
(「X」のソロ)にDavid Madden、「Easy
Snappin」のセカンド・トロンボーンに
Ronald 'Nambo' Robinsonという布陣
です。
ジャケット・デザインと表ジャケの色の
加工はDavid Storeyで、表ジャケの写真は
Jean Bernard Soheiz、裏ジャケの
スナップ写真はDick Cuthellとなっていま
す。
裏ジャケ
裏ジャケに書かれたライナー・ノーツは
Richard Williamsという人が書いていま
す。
さて今回のアルバムですが、レゲエより
ずいぶんと古いスカのビートを再現した
アルバムで、とてもリラックスした明るい
スカのビートが楽しめる、なかなか面白い
アルバムだと思います。
このアルバムを私が初めて聴いたのは、
私がまだ20代だった80年代頃でした。
このアルバムより前に彼のアルバム
「Man From Wareika」を聴いていて、
すごく期待して買ったアルバムでした。
Rico – Man From Wareika (1976)
ただ正直なところ当時の私はその期待ほど
は、このアルバムが面白くは感じられま
せんでした。
おそらく「Man From Wareika」という
アルバムは今でもRicoの一番の代表作と
いえるアルバムだと思いますが、その重厚
なサウンドの中に漂う緊張感が、この
アルバムからは当時の私にはあまり感じ
られなかったんですね。
そのせいか「Man From Wareika」ほどは、
このアルバムを繰り返し聴く事はありま
せんでした。
ただかなり久しぶりにこのアルバムを
ジックリ聴いてみると、当時感じたよりは
かなり内容の濃い良い、出来のアルバム
なんですね。
おそらく当時の私は、このアルバムと
「Man From Wareika」というアルバムの
方向性の違いに戸惑いを感じていたんだと
思います。
「Man From Wareika」というアルバムは
かなりルーツ・マナーに沿ったアルバム
で、ラスタファリズムのチャント集会の
ような重厚なうねるようなサウンドの中に
緊張感の漂う荘厳なアルバムでした。
それに較べると今回の「That Man Is
Forward」というアルバムは、レゲエ誕生
以前の60年代に流行ったスカのサウンド
を80年代に再現したアルバムで、かなり
リラックスしたミュージシャン同士の息の
合ったプレイが心地良い、「Man From
Wareika」と較べるとちょっと軽めの内容
のアルバムなんですね。
当時の私はそのサウンドの重さの差に、
ちょっと違和感を感じてしまったんです
ね。
まあ「軽めの内容」と言いましたが、逆に
「Man From Wareika」がかなりヘヴィーと
言った方が良いのかもしれません。
ただダブを除けば「Man From Wareika」の
次にリリースされたのがこのアルバムです
が、その「Man From Wareika」から5年
ぐらいも経ってのアルバムなので、それ
なりに内容の違いがあって当然だったのだ
と思います。
実は「Man From Wareika」というアルバム
は賞も受賞するなど高評価された半面、
セールス的に見るとあまり振るわない
アルバムだったのだとか。
60年代からUKに渡り、様々なバンドで
プレイして実績を積み上げ、ようやく満足
のいく内容のアルバムをリリースしたのに
セールスが振るわない…。
トロンボーン奏者としてのRicoの苦悩は、
あの素晴らしい「Man From Wareika」と
いうアルバムをリリースした後も続いて
いたんですね。
そうしたRicoに手を貸したのが、当時も
ルード・ボーイ(不良少年)に人気の
あったスカを演奏するネオ・スカ・バンド
The Specialsで、彼らは尊敬するRicoを
サポート・メンバーに加え、ネオ・スカの
新ブーム「2 toneブーム」を起こすんです
ね。
このThe Specialsの79年のファースト・
アルバム「Specials」や80年の
セカンド・アルバム「More Specials」
には、RicoとDick Cuthellがサポート・
メンバーとして参加しています。
The Specials – Specials (1979)
The Specials – More Specials (1980)
The Specials featuring Rico – The Special A.K.A. Live: Too Much Too Young (1980)
The Specials A Message To You Rudy OGWT 1979
The Specials - Ghost Town (Official Music Video)
こうしたThe Specialsの成功などもあり、
Rico Rodriquezというトロンボーン奏者の
知名度も徐々に上がって、彼自身も演奏者
としての地位を徐々に築いて行くんです
ね。
そうした彼自身がネオ・スカのブームに
乗っていた時期に作られたのが今回の
アルバムで、60年代に培ったスカの
サウンドを80年代に再現しているのが
今回のアルバムです。
ちなみにRicoはこのアルバムの翌年の
82年に、このTwo-Tone Recordsから
「Jama Rico」というアルバムもリリース
しています。
一番The Specialsと蜜月関係にあったの
は、79年から81年の頃だったんです
ね。
(その後The Specialsは、The Special
AKAとFun Boy Threeというグループに
分裂してしまうようです。)
また当時ちょっと違和感を感じた理由と
しては、このアルバムが作られたのが
ルーツ・レゲエからダンスホール・レゲエ
の時代へと変わりつつあった80年代初め
の頃ですが、その時代に60年代のスカの
サウンドを再現していたという事もある
かもしれません。
前のアルバム「Man From Wareika」が
70年代のルーツ・レゲエのアルバム
だったのに対して、今回のアルバムは
それより以前の60年代のスカの時代に
先祖返りしたようなサウンドだったんです
ね。
またThe Specialsの作り出していたような
ネオ・スカのサウンドともちょっと違った
んですね。
そうした時代的な違和感を感じたような
気がします。
ただ時代が経った今の時代にこのアルバム
を聴くと、自分自身も少しは成長した事も
あるかもしれませんが、とてもリラックス
した雰囲気の中に音楽的な密度のある、
とても良い出来のアルバムなんですね。
ホーン・セクションとピアノのメロディが
楽しいSide 1の1曲目「Easy Snappin」
から始まり、懐かしさを感じるような
クラシック感のある2曲目「Fiesta」、
Baba Brooksの「Shank I Sheck」リディム
の3曲目「Chang Kai Shek」、スカの時代
に活躍したLord Creatorのカヴァーの
4曲目「Stay Out Late」、Ricoのトロン
ボーンとスカ・ギターやピアノソロが魅力
のSide 2の1曲目「Red Top」、Jazzyな
メロディが印象的な2曲目「X」、トロン
ボーンのユッタリとしたメロディが
魅力的な3曲目「Ganja」、トロンボーン
の陽気で明るいメロディが心地良い4曲目
表題曲の「That Man Is Forward」まで、
リラックスした雰囲気の中にも中身が
ビッシリと詰まった内容のアルバムに
仕上がっています。
Side 1の1曲目は「Easy Snappin」です。
オリジナルはTheophilus Beckfordの名曲
です。
ピアノ―とキーボードにギター、重厚な
ホーン・セクションの楽し気なメロディが
魅力的な曲です。
入れ替わりのサックス・ソロがイイ感じの
曲です。
RICO RODRIGUEZ - EASY SNAPPIN
2曲目は「Fiesta」です。
キーボードとギター、ピアノのメロディ
から、ユッタリとしたRicoのトロンボーン
に心奪われる1曲。
懐かしさを感じるような、良い意味の
クラシック感が魅力。
Rico Rodriguez "Fiesta"
3曲目は「Chang Kai Shek」です。
リディムはBaba Brooksの「Shank I
Sheck」。
ギターとピアノの寂しげなメロディから、
一気にホーン・セクションとギター、
パーカッション、ピアノの明るいメロディ
になる展開の曲です。
Jazzyなサックス・ソロもイイ感じ。
RICO RODRIGUEZ - CHANG KAI SHEK
リズム特集 Shank I Sheck (シャンク・アイ・シェック)
4曲目は「Stay Out Late」です。
リディムはスカの時代に活躍したシンガー
Lord Creatorの同名ヒット曲です。
ドラマチックなホーンのオープニング
から、華やかなトロンボーンのメロディが
心地良い曲です。
Stay out Late
Side 2の1曲目は「Red Top」です。
ギターの印象的なメロディから、トロン
ボーンを中心とした心地良いメロディへと
変化して行く曲です。
途中のスカ・ギターやピアノのソロも
イイ感じのJazzyな曲。
2曲目は「X」です。
ギターとピアノ、ホーン・セクションの
メロディの、Jazzyなインスト曲です。
3曲目は「Ganja」です。
心地良いドラミングにピアノ、ギター、
トロンボーンのユッタリとしたメロディが
魅力的な曲です、
RICO RODRIGUEZ - GANJA
4曲目は表題曲の「That Man Is Forward」
です。
リズミカルなピアノとギターのメロディ
から、トロンボーンの陽気で明るい
メロディが心地良い曲です。
Rico Rodriguez "That Man Is Forward"
ざっと追いかけてきましたが、当時は多少
軽く感じられたアルバムでしたが、今回
改めて聴き直してみるとかなり中身の濃い
アルバムで、リラックスした中に個々の
プレイヤーの個性が光る好内容のアルバム
だと思います。
ただ原曲が10年以上も前の曲が多く、
今聴いてもけっこうクラシックに聴こえる
ところがあり、そうした印象でちょっと損
をしている感があるのが惜しまれるところ
かもしれません。
ただこのアルバムが、その後の彼の道筋を
作った事は間違いがありません。
機会があればぜひ聴いてみてください。
○アーティスト: Rico
○アルバム: That Man Is Forward
○レーベル: Two-Tone Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年:
○Rico「That Man Is Forward」曲目
Side 1
1. Easy Snappin
2. Fiesta
3. Chang Kai Shek
4. Stay Out Late
Side 2
1. Red Top
2. X
3. Ganja
4. That Man Is Forward
●今までアップしたRico関連の記事
〇Rico「Man From Wareika」
〇Rico「Warrika Dub - Ghetto Rockers」
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