今回はSizzlaのアルバム

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「Black Woman And Child」です。

Sizzla(本名:Miguel Orlando Collins)
は、90年代から活躍するシング・ジェイ
のディージェイです。
ボボ・アシャンティという頭にターバンを
巻くラスタファリズムの宗派に属し、その
教えを歌ったコンシャスなメッセージを
届け続けているのがこのSizzlaという人
です。

その宗教的信念から同じ宗派のCapleton
などとともに、ホモ・セクシャルなど
の同性愛者を厳しく攻撃するメッセージ
(バティマン批判)を発している事でも
知られています。
その為アメリカやヨーロッパなどでツアー
がキャンセルされたり、入国を拒否される
というトラブルも起きています。
ただ07年に同じように国際的に活躍する
Beenie Manなどとともに、そうした同性愛
者批判をしないという同意書にサインした
と伝えられています。

アンチ・ゲイとレゲエの関係…

ネットのDiscogsによると現在までに共演
盤を含めて61枚ぐらいのアルバムと、
1000枚を超えるシングル盤、15枚
ぐらいのコンピュレーション・アルバムを
リリースしているのが、このSizzlaという
人です。
90年代以降のレゲエという音楽の中で、
もっとも活躍しているのがこの人なんです
ね。

アーティスト特集 Sizzla (シズラ)

シズラ - Wikipedia

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Sizzla ‎– Praise Ye Jah (1997)

今回のアルバムは1997年にUSの
Bobby 'Digital' Dixonのレーベル
Digital-Bからリリースされた彼のソロ・
アルバムです。

彼の「Praise Ye Jah」に続く3枚目の
と思われるアルバムで、プロデュースは
Bobby 'Digital' Dixonで、バックに
Sly & RobbieやサックスのDean Frazer、
ドラマーのMelbourne Millerなどが参加
したアルバムで、表題曲の「Black Woman
And Child」をはじめとして、「Love Is
Divine」や「Give Them A Ride」など、
レゲエの名リディムなどを巧みに使った曲
が多く収められた、彼のアルバムの中でも
代表作とされるアルバムのひとつです。

手に入れたのはBrickwall Recordsから
リリースされたCDの中古盤でした。

全15曲で収録時間は約58分。
オリジナルは10曲で、残りの5曲は
CDボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

1.1 Give Them The Ride
Drums: M. Miller
Bass, Keyboards: P. Enton
Guitar: E. Wilks
Sax: D. Frazer
Backing Vocals: D. Frazer & M. Gitten

2. Love Is Devine
Drums: Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespeare
Keyboards: D. Dennis
Sax: D. Frazer
Backing Vocals: D. Browne

3. Make It Secure
Drums: Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespeare
Congas: Bongo Herman
Sax: D. Frazer

4. Black Woman & Child
Drums, Bass, Keyboards: Barry O'Hare
Sax: D. Frazer
Guitar – E. Wilks

5. Guide Over Us
Drums: M. Miller
Bass: D. Dennis
Keyboards: P. Crosdale
Sax: D. Frazer

6. Hard Ground
Drums, Bass, Piano: Paul Enton

7. One Away
Drums, Bass, Keyboards: B. Ohare
Congas: Dish
Guitar: D. Browne
Sax: D. Frazer
Backing Vocals: D. Browne & M. Gitten

8. Oh What A Joy
Drums, Bass, Keyboards: Jazzwad
Guitar: E. Wilks

9. Babylon A Use Dem Brain
Drums: M. Miller
Bass, Keyboards: D. Dennis
Sax: Saxie
Trombone: Nambo

10. Princess Black
Drums: Paul
Bass, Keyboards: B. Myers
Backing Vocals: M. Gitten

11. No Time To Gaze
Drums, Bass, Keyboards: P. Enton

12. More Guidance
Drums, Bass, Keyboards: Jazzwad
Backing Vocals: D. Browne

13. Mi Lord
Drums: M. Miller
Bass, Keyboards: D. Dennis

14. Give Them A Ride (Remix)
Morgan Heritage Mix

15. Too Much To Bare
Drums: M. Miller
Bass, Keyboards: D. Dennis
Sax: Saxie

Published by: Crage Music & Jam Rec
Engineers: Bobby 'Digital' Dixon
Assistant Engineers: M. Nugent, S. Stewart, Bucky & L.P. Pinnock
Produced and Arranged by: Bobby 'Digital' Dixon & The Crew for Digital B Music L.T.D.
Recorded and Mixed at: Digital B Studio
Illusyration by: Oswald Greene

となっています。

長いので細かいメンバーは省略しますが、
Sly & RobbieやサックスのDean Frazer、
ドラマーのMelbourne Millerなどが参加
したアルバムです。

エンジニアはBobby 'Digital' Dixonで、
アシスタント・エンジニアにM. Nugent
やS. Stewart、Bucky、L.P. Pinnock
などが参加しています。
プロデュースはBobby 'Digital' Dixon
とそのクルーとなっています。

レコーディングはDigital B Studioで
行われています。

イラストレーションはOswald Greeneと
なっています。

さて今回のアルバムですが、いかにも
Sizzlaらしいレゲエ・マナーに沿って
作られたアルバムで、「Stars」や
「Drum Song」、「Satta Massa Ganna」
などのクラシック・リディムを使った曲
や、表題曲の「Black Woman And Child」
や「Give Them The Ride」など魅力的な
楽曲が揃ったアルバムで、このアルバムが
彼の代表作のひとつといわれるのは
あながち間違いではないでしょう。

このSizzlaですが現在までにすでに
アルバムを70枚以上リリースするなど、
90年代以降のアーティストの中でも
もっとも精力的に活動を続けて来た
アーティストなんですね。
おそらく50年ぐらい続くレゲエの歴史の
中でも、Bob Marleyに次ぐビッグ・ネーム
が彼Sizzlaなのではないかと思います。
(まあ、いろいろ異論はあると思います
が…。)
それほど彼のレゲエという音楽への貢献
は、大きなものがあるんですね。

すべての楽曲を歌こなそうとするその
探究心は、レゲエを聴く人間としては、
やはり高く評価すべきものがあります。
そういう彼の卓越した歌いこなす能力は、
彼だからこそ出来た素晴らしい能力なん
ですね。

それほどのレゲエの実力者のSizzlaです
が、やはそのボボ・アシャンティとしての
あまりのリゴリスト(厳格主義者)ぶりの
為、その評価を少し下げている側面があり
ます。
両親がともにラスタファリアンという
ラスタ2世として生まれた彼ですが、その
純粋なラスタの精神ゆえに、教義に反する
ホモ・セクシャル(バティマン)批判など
をしてしまった為にゲイのコミュニティ
などからその音楽を「ヘイト・
ミュージック(差別音楽)」と批判され、
海外公演なども中止に追い込まれた事も
あったんですね。
自分の正しいと思う事をしただけの事かも
しれませんが、やはりそうした敵を作る
姿勢は逆に批判される事もあるんですね。

またジャマイカという国自体にも、そう
したホモ・セクシャルを許容しない国柄
なんですね。
このSizzla以外にも多くのアーティスト
が、バティマン批判の発言をして国際的な
摩擦を起こしています。
90年以降のレゲエでは、このバティマン
批判の問題は、とても悩ましい問題なん
ですね。

特にこのボボ・アシャンティ系の
アーティストはその教義の厳格さゆえか
その傾向が顕著で、たびたび摩擦を起こし
ているんですね。
彼らのアルバムを聴いていると多少黒人
優位主義みたいなものを感じてしまう部分
もあり、少し冷めた引いた位置から見て
しまう事もあります。

そうした意味ではこのSizzlaの音楽には
必ずしも共感しない部分もあるのですが、
それでも聴いてしまうのがこのSizzlaと
いうアーティストなんですね。
やはりその純粋な魂の音楽は魅力があり
ます。

「Lecturer」リディムの1曲目「Give
Them The Ride」から始まり、ロック
ステディの時代の「Stars」リディムの
2曲目「Love Is Divine」、優雅な
「Drum Song」のリディムに乗せた3曲目
「Make It Secure」、表題曲の4曲目
「Black Woman & Child」、「Queen Of
The Minstrel」リディムの5曲目「Guide
Over Us」、「Leaving To Zion」リディム
の6曲目「Hard Ground」、「Satta Massa
Ganna」リディムの7曲目「One Away」、
感情をうまく乗せた8曲目「Oh What A
Joy」、「He Prayed」リディムの9曲目
「Babylon A Use Dem Brain」、Capleton
とコラボした「He Prayed」リディムの
9曲目「Babylon A Use Dem Brain」、
モダンなセンスの10曲目「Princess
Black」と、レゲエ・マナーに沿った
とても充実した内容のアルバムとなって
います。

また残りの5曲はCDボーナス・トラック
ですが、The Wailing Soulsの「Mr. Fire
Coal Man」リディムの12曲目「More
Guidance」や、1曲目「Give Them The
Ride」のMorgan Heritageミックス・
ヴァージョンの14曲目「Give Them A
Ride (Remix)」など、なかなか面白い曲が
ボーナス・トラックにもあるので、その
あたりも聴き逃しなく。

このSizzlaを発見したのがExterminator
レーベルのPhilip 'Fatis' Burrellだと
言われていますが、彼の魅力をさらに
引き出したのが今回のDigital Bレーベル
のBobby 'Digital' Dixonなんですね。
セカンドのPhilip 'Fatis' Burrell
プロデュースのアルバム「Praise Ye Jah」
でブレイクした彼の評価をさらに高めたの
が今回のアルバムで、前作が非常にラスタ
色の強いアルバムだったのに対して、
こちらはラヴ・ソングなども織り込んだ
幅広い構成のアルバムとなっています。

またSizzlaはその後いろいろなリディム
を使って数多くのアルバムを作っています
が、このアルバムはその原点ともいえる
クラシック・リディムを多く使った
レゲエ・マナーな作りが大きな特徴と
なっています。

このBobby 'Digital' Dixonはその後も、
2002年にSizzlaの代表作のひとつと
いわれる「Da Real Thing」を作るなど、
名コンビとして素晴らしいアルバムを
残しているんですね。

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Sizzla ‎– Da Real Thing (2002)

Sizzlaというアーティストに欠かせない、
素晴らしいプロデューサーのひとりが、
このBobby 'Digital' Dixonなんですね。

1曲目は「Give Them The Ride」です。
リディムは「Lecturer」というリディム
のようです。
Dean Frazerの印象的なサックスに、ドス
の効いたベース、勢いのあるSizzlaの
シング・ジェイが魅力的な曲です。

Give Them The Ride


2曲目は「Love Is Divine」です。
リディムはCornell Campbell & The
Eternalsのロックステディの時代の
ヒット曲「Stars」です。
こちらもDean Frazerの味わいのある
サックスにピアノとギターのメロディ、
丁寧に語るようなSizzlaの感情を乗せた
ヴォーカルがとても魅力的。

Sizzla - Love Is Divine


リズム特集 Stars (スターズ)

3曲目は「Make It Secure」です。
リディムはJackie Mittoo & Sound
Dimensionの、こちらもロックステディの
ヒット曲「Drum Song」。
ホーンとパーカッション、キーボードを
中心としたユッタリと優雅なメロディに、
歯切れの良いSizzlaの感情を乗せた
シング・ジェイがとても味わい深い曲
です。

Sizzla Kalonji 04 - Make It Secure.wmv


リズム特集 Drum Song (ドラム・ソング)

4曲目は表題曲の「Black Woman & Child」
です。
リズミカルなパーカッションに、ホーンと
キーボードを中心としたメロディ、
Sizzlaの感情をうまく乗せたヴォーカルが
グッド。

sizzla - black woman & child


5曲目は「Guide Over Us」です。
リディムはCornell Campbell & The
Eternalsのヒット曲「Queen Of The
Minstrel」です。
ロックステディらしいホーンのメロディ
とキーボード、Sizzlaらしいシング・
ジェイ・スタイルがすごくマッチした曲
です。

Sizzla- "Guide Over Us"


6曲目は「Hard Ground」です。
リディムはBlack Uhuruの「Leaving To
Zion」。
ギターとキーボードのリズミカルな
メロディに、Sizzlaらしい歌いこなしが
光る曲です。
コーラス部はGregory Isaacsの「Night
Nurse」のようにも聴こえます。

7曲目は「One Away」です。
リディムはThe Abyssiniansの「Satta
Massa Ganna」。
華やかなホーンとパーカッションの
メロディに、感情をうまく乗せたSizzla
のヴォーカルが素晴らしい曲です。

Sizzla - One Away


リズム特集 Satta Massa Ganna (サタ・マサ・ガナ)

8曲目は「Oh What A Joy」です。
キーボードとギターを中心とした陰影の
あるリズムに、Sizzlaの感情をうまく乗せ
たヴォーカルが魅力的。

9曲目は「Babylon A Use Dem Brain」
です。
リディムはBurning Spearの「He Prayed」。
ヘヴィーなサックスのメロディから
キーボードとベースを中心とした演奏、
もう一人のヴォーカリストのトース
ティングとSizzlaのシング・ジェイの
コラボがグッド。
ネットのDiscogsやYouTubeなどを見ると、
もう一人はCapletonのようです。

sizzla ft capleton - babylon


10曲目は「Princess Black」です。
リズミカルなドラミングにホーンと
キーボードを中心としたメロディ、女性
コーラスにSizzlaのナイスなヴォーカル
の、とてもモダンな曲です。

11~15曲目まではCDボーナス・
トラックですが、ここでは説明は割愛しま
す。

ざっと追いかけてきましたが、この
アルバムがSizzlaというアーティストの
「もう一つの原点」である事は否定が出来
ません。
彼はこのアルバムと通してさらに実力を
付け、幅広い音楽を学んだ彼は、その後
70枚以上のアルバムを制作する事となり
ます。

そして彼の心に付いた「火」はまだ燃え
続けていて、彼は立ち止まる事無く、その
精力的なアルバム制作はまだまだ続いて
いるんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Sizzla - Taking Over - Jussbuss Acoustic (2018)



○アーティスト: Sizzla
○アルバム: Black Woman And Child
○レーベル: Brickwall Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1997

○Sizzla「Black Woman And Child」曲目
1. Give Them The Ride
2. Love Is Divine
3. Make It Secure
4. Black Woman & Child
5. Guide Over Us
6. Hard Ground
7. One Away
8. Oh What A Joy
9. Babylon A Use Dem Brain
10. Princess Black
(CD Bonus Tracks)
11. No Time To Gaze
12. More Guidance
13. Mi Lord
14. Give Them A Ride (Remix)
15. Too Much To Bare

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