今回はWelton Irieのアルバム

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「Ghettoman Corner」です。

Welton Irie(本名:Welton Dobson)は
80年代前半のアーリー・ダンスホール・
レゲエの時代に活躍したディージェイ
です。
ネットのWikipediaの彼のページには、次
のような紹介文が書かれています。

Welton Irie (born Welton Dobson, 1961 in Jamaica),
sometimes credited simply as Welton, is a Jamaican
reggae deejay, best known for his work in the late
1970s and early 1980s.

《Welton Irie(本名Welton Dobson。
1961年ジャマイカ生まれ。)は時に
シンプルにWeltonとクレジットされる事の
ある、70年代後期から80年代初期に
活躍したジャマイカのレゲエ・
ディージェイです。》

ネットのDiscogsで彼の履歴を調べてみる
と、その言葉通り彼のリリースした8枚の
アルバムのうち7枚が80~83年までに
リリースしたアルバムなんですね。
この経歴を見ても彼が80年代前半の
アーリー・ダンスホールの時代に、人気の
あったディージェイであった事が解り
ます。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含めて
8枚ぐらいのアルバムと、62枚ぐらいの
シングル盤をリリースしているのが、この
Welton Irieという人です。

Welton Irie - Wikipedia

今回のアルバムは1982年にジャマイカ
のPantomineレーベルからリリースされた
Welton Irieのソロ・アルバムです。

プロデュースはGlen Brownで、バックに
Lloyd ParksやWillie Lindo、Tommy McCook
などが参加したアルバムで、「Slaving」
リディムを使用した表題曲の「Slaving
Ghettoman Corner」やSylford Walkerの
同名曲「Lamb's Bread」など、まだ
ルーツ・レゲエの匂いの残る演奏に
Welton Irieのダンスホールを感じさせる
鮮やかなトースティングが冴えるアルバム
となっています。

手に入れたのはPantomineレーベルから
リリースされたLPの中古盤でした。

なおこのアルバムとほぼ同じバックの演奏
を使ったSylford Walkerのアルバム
「Lamb's Bread」が、1988年にUKの
Greensleeves Recordsからリリースされて
います。

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Sylford Walker ‎– Lamb's Bread (1988)

この「Lamb's Bread」というアルバムは
2016年にVP Recordsからリイシュー
されていますが、その際にこのWelton Irie
のアルバム「Ghettoman Corner」がほぼ
全曲ボーナス・トラックとして収められて
います。

なお Pantomineレーベルからは1985年
にWelton Irieのほぼ同じタイトルの
「Ghetto Man Corner」というアルバムが
リリースされていますが、今回のアルバム
の曲も含めたWelton Irieのベスト盤的な
アルバムのようです。
「Ghetto Man Corner」のような同じ
タイトルの曲もありますが、違うタイトル
の曲も入った全10曲入りのアルバムなん
ですね。

Side 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Classical Pantomine Reggae tracks recorded at King Tubby's, Harry J,
Randy's & Federal Recording

Drums: Eric 'Fish' Clarke, Santa, Carlton Barrett
Bass: Val Douglas, Lloyd Parks, Jackie Jackson
Guitar: Willie Lindo, Glen Brown, Mikey Chung, Bo P
Keyboards: Earl 'Wire' Lindo, Winston Wright, Gladstone Anderson, Glen Brown
Percussion: Skully, Herman
Saxophone: Tommy McCook

Produced by: GLB

となっています。

レコーディングはKing Tubby'sやHarry J、
Randy's、Federal Recordingなどで行われ
ています。

ミュージシャンはドラムにEric 'Fish'
ClarkeとCarlton 'Santa' Davis、Carlton
Barrett、ベースにVal DouglasとLloyd
Parks、Jackie Jackson、ギターにWillie
Lindo、Glen Brown、Mikey Chung、
Bo-Pee Bowen、キーボードにEarl 'Wire'
LindoとWinston Wright、Gladstone
Anderson、Glen Brown、パーカッション
にNoel 'Scully' SimmsとBongo Herman、
サックスにTommy McCookとなっています。

スタジオやミュージシャンが多いのは、
曲が一度に録音されたものではなく、
シングル盤用に曲ごとに録音された為の
ようです。
調べてみるとSide 2の1曲目「Lamb's
Bread」は77年にシングルがリリース
されているんですね。
そうして77頃からこのアルバムを作った
82年頃までの録り貯めた曲をまとめたの
が、今回のアルバムなんですね。

プロデュースはGLB(Glen Brown)と
なっています。

残念ながら、ジャケット・デザインに対
する記述はありません。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、ルーツ後期の
70年代後半から80年代前半の
アーリー・ダンスホールの時代のWelton
Irieの楽曲が集められたアルバムで、内容
はなかなか悪くないと思います。

このWelton Irieという人ですが、ほぼ
このアーリー・ダンスホールの時代に活躍
した人なんですね。
しかも彼の残した8枚のアルバムのうち、
「Reprobate」や「Army Life」など半分の
4枚が、この82年のアルバムなんです
ね。

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Welton Irie ‎– Reprobate (1982)

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Welton Irie ‎– Army Life (1982)

それほどこの8年は彼がもっとも活躍した
年であり、彼がもっとも旬なアーティスト
であった時なんですね。
おそらくプロデューサーのGlen Brownも
その事を見越して、ルーツ・シンガーの
Sylford Walkerのアルバムよりも彼
Welton Irieのディージェイ・アルバムの
方を先にリリースしたのではないかと思わ
れます。

弱小のプロデューサーであったGlen Brown
は、資金集めに苦労していたせいか、
アルバムのリリースはかなり遅れる傾向が
あるんですね。
今回のアルバムでもSide 2の1曲目
「Lamb's Bread」は77年にシングルが
リリースされているんですが、アルバムに
収められたのはこの82年で、5年近くの
ブランクがあるんですね。
また表題曲「Slaving Ghettoman Corner」
の元となったLloyd Parksの「Slaving」と
いう曲は、72年にシングルでリリース
された曲なんですね。
Glen Brownというプロデューサーは、そう
した古い楽曲を何度も何度も使う事で知ら
れたプロデューサーで、今回のアルバム
でも昔録音したリディムにWelton Irieの
トースティングを乗せ、うまくアーリー・
ダンスホールの時代らしい楽曲に仕上げて
います。
そうした涙ぐましい努力が、このアルバム
の隠れた面白さでもあります。

Welton Irieのトースティングはこの人
らしい独特の味わいがあり、なかなか見事
です。
おもに70年代後半から80年前半という
短期間に活躍した人ですが、特に
アーリー・ダンスホールで活躍した人と
して聴いておくべきものがあります。
明るいホーンのメロディで始まるSide 1
の1曲目「Money Man Skank」から、
ちょっと悲し気な「Slaving」リディムの
2曲目「Slaving Ghettoman Corner」、
Tommy McCookのJazzyなホーンが印象的な
4曲目「Wicked Running」、Sylford
Walkerの代表曲ともいえるSide 2の
1曲目「Lamb's Bread」、Welton Irieの
陽気なトースティングが魅力の3曲目
「Greetings」、かなりエコーの効いた
ダブワイズした4曲目「Give JAH The
Glory」と、この時代ならではの面白さの
詰まった内容となっています。

Side 1の1曲目は「Money Man Skank」
です。
明るいホーンのメロディから、ベースを
中心とした演奏に、ちょっとしゃがれた
Welton Irieのトースティングがイイ感じ
の曲です。

Money Man Skank


2曲目は表題曲の「Slaving Ghettoman
Corner」です。
リディムはLloyd Parksの「Slaving」。
語りからギターとベース、漂うような
キーボードのメロディ、Welton Irieの
歯切れの良いトースティングがグッド。

Welton Irie - Ghettoman Corner


3曲目は「Stone Throwing」です。
リディムはSylford Walkerの
「Cleanliness Is Godliness」。
華やかなホーンにギターとベースを中心と
した刻むようなリズム、Welton Irieの
表情豊かなトースティング。

4曲目は「Wicked Running」です。
Tommy McCookと思われるJazzyなホーンの
メロディに、Welton Irieの立て板に水の
ような溢れ出すようなトースティング。

Welton Irie - Wicked Have Fe Run ( Green Bay Killing - Pantomine )


Side 2の1曲目は「Lamb's Bread」です。
リディムはSylford Walkerの同名曲です。
華やかなホーンのメロディにパーカッ
ションのリズム、ノリの良いWelton Irie
のトースティング。

Sylford Walker & Welton Irie Lamb's Bread International 1977 78 04 Welton Irie Lambs Bread


2曲目は「Unite」です。
ギターとキーボードのユッタリとした
メロディに、ノリの良いWelton Irieの
トースティング。

Unite


3曲目は「Greetings」です。
ホーンとキーボード、ギターを中心とした
明るいメロディに、Welton Irieの陽気な
トースティング。

Welton Irie - Greetings


4曲目は「Give JAH The Glory」です。
ちょっとエコーの効いたダブワイズした
ドラミングにギター、Welton Irieの
はつらつとしたトースティングがイイ感じ
の曲です。

Welton Irie - Give Jah The Glory


ざっと追いかけてきましたが、バックの
サウンドだけ聴いているとルーツ・レゲエ
のアルバムと言えなくもないですが、
Welton Irieの明るく陽気なトース
ティングはアーリー・ダンスホールの空気
も感じさせるところがあります。
そうした時代の変わり目の微妙な匂いも、
このアルバムの魅力なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Welton Irie



○アーティスト: Welton Irie
○アルバム: Ghettoman Corner
○レーベル: Pantomine
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Welton Irie「Ghettoman Corner」曲目
Side 1
1. Money Man Skank
2. Slaving Ghettoman Corner
3. Stone Throwing
4. Wicked Running
Side 2
1. Lamb's Bread
2. Unite
3. Greetings
4. Give JAH The Glory

●今までアップしたWelton Irie関連の記事
〇Welton Irie「Army Life」
〇Welton Irie「Reprobate」
〇Various「Junjo Presents A Live Session With Aces International」
〇Welton Irie「It Feels So Good」