今回はMax Romeoのアルバム

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「A Dream」です。

Max Romeo本名:(Maxwell Livingston
Smith)は初期レゲエの時代から活躍する
シンガーです。
1968年にプロデューサーのBunny Lee
と制作した曲「Wet Dream」は、歌詞が
セクシーな内容で大スキャンダルを引き
起こし、ジャマイカでは放送禁止、UK
でも1回放送されただけで放送禁止に
なったといういわくつきの曲なのですが、
それがUKのスキン・ヘッド(不良少年)
にウケて、放送禁止にもかかわらず
大ヒットしたという人です。

その後はスラックネス(下ネタ)の歌手と
いうイメージが抜け切れずにいた彼です
が、1976年にLee Perryのプロデュース
でThe Upsettersをバックにしたルーツ・
アルバム「War Ina Babylon」で、
コンシャスな正統派のルーツ・シンガーと
いうイメージを得る事に成功し、活躍した
人です。

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Max Romeo & The Upsetters ‎– War Ina Babylon (1976)

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て29枚ぐらいのアルバムと、257枚
ぐらいのシングル盤をリリースしているの
が、このMax Romeoという人です。

アーティスト特集:Max Romeo(マックス・ロメオ)

マックス・ロメオ - Wikipedia

今回のアルバムは1969年にUKの
Pama Recordsというレーベルからリリース
されたMax Romeoのファースト・アルバム
です。

プロデュースはBunny Leeで、バックは
The Rudeesとなっており、UKで放送禁止
になるというスキャンダルを引き起こし
ながらヒットした「Wet Dream」をはじめ
として、初期レゲエのちょっと弾けた曲が
並ぶアルバムとなっています。

手に入れたのは2018年にイタリアの
Radiation Rootsからリイシューされた
CD(新盤)でした。
このRadiation Rootsというレーベルです
が、あまり音質に良いアルバムを
リイシューしていないレーベルなんです
ね。
ただ今回のアルバムは、比較的あまり変な
ザーザー音やパリパリ音などが入って
いないアルバムです。
ただこの60年代当時の録音なので、
チャンネル数の違いなどから多少は音質の
平板さを感じるところがあります。
そのあたりは60年代ぐらいの音源を聴く
時の、仕方の無い事なんですね。

ちなみに「Wet Dream」とは?…う~ん、
ヤッパリ書きづらいな…(苦笑)…。
興味のある人はネットの自動翻訳で
「Wet Dream」と入れると出て来るので、
自分で調べてみてください。

全11曲で収録時間は約32分。

ミュージシャンについては以下の記述があり
ます。

Musical Arrangements: Ronnie Williams and Derrick
Morgan Musical Backing by: The Rudees
Lead Guitar Work: Errol Daniel
Studio Engineer: Tony Pike
Cover Design: Jeff and Carl Palmer
Produced by: H. Dee, B. Lee, D. Morgan

となっています。

アレンジはRonnie WilliamsとDerrick
Morganのバックを務めたバンドThe Rudees
となっています。
今回のアルバムの目玉曲「Wet Dream」は、
原曲がDerrick Morganの「Hold Your Jack
(Hol' The Jack Me Tie The Jinny)」と
いう曲なんですね。
その為バックを務めたバンド名が書かれて
いるようです。

おそらくThe Rudeesのメンバーのようです
が、リード・ギターにErrol Danielという
記載があります。
ネットのレゲエレコード・コムにある
Max Romeoが語る「Wet Dream」の誕生
ストーリーによると、Derrick Morganの
オリジナル曲はTreasure Isleで録音
され、ピアノにGladstone Anderson、
ベースにJackie Jackson、ドラムに
Horsemouth Wallace、ギターにDougie
という布陣で録音されたんだとか。

マックス・ロメオ(Max Romeo)、「Wet Dream」の誕生ストーリーを語る ...

おそらくその元の音源にStudio One
(あるいは別のスタジオ)でリード・
ギターをオーヴァー・ダブして、Max Romeo
のヴォーカルを乗せたのが「Wet Dream」
という曲のようです。
今回のアルバムではそのリード・ギターの
弾けた演奏が際立ちますが、他の曲も
リード・ギターがオーヴァー・ダブされて
いるのかもしれません。
ちなみにこの「Wet Dream」については、
その卑猥な歌詞をSlim SmithやDerrick
Morganなどが批判したという事が、多く
のサイトに書かれています。
曲を使われたDerrick Morgan自身は、
あまり使われたことを喜んでいなかった
ようです。

また「Wet Dream」という曲にについて
は、C.S. DoddのスタジオStudio Oneを
Bunny Leeがレンタルして録音(おそらく
声入れ)されたのですが、その卑猥な歌詞
に怒ってC.S. Doddがスタジオを出て行って
しまったという逸話があります。
先に挙げた「誕生ストーリー」によると、
C.S. Doddに変わってミックスを手掛けた
のが、まだ当時は見習いエンジニアだった
Errol Thompsonだったんだそうです。
その後Randy'sで初期の有名なダブ・
アルバム「Java Java Java Java」を制作
したり、Joe Gibbsと組んでMighty Twoと
して多くの楽曲をミックスし、「African
Dub Almighty」シリーズなどのダブ・
アルバムを制作したりと、エンジニアと
して大活躍したErrol Thompsonですが、
その「初仕事」はこの「Wet Dream」だった
んですね。

ちなみにこのアルバムにはエンジニアは
Errol Thompsonでは無く、Tony Pikeと
書かれています。
おそらくですが、「Wet Dream」自体の
録音はStudio Oneだったようですが、
アルバム制作時はおそらくUKかどこかの
別のスタジオで、曲をオーヴァーダブした
りして、まとめられたのではないかと思わ
れます。
エンジニアもリード・ギターの人も、
ジャマイカのレコーディングではあまり
聞かない名前の人なんですね。

カヴァー・デザインはJeff and Carl
Palmerとなっています。

プロデュースはH. DeeとBunny Lee、
D. Morganとなっています。
Derrick Morganの名前が入っているのは、
彼の曲を使ったからだと思われます。

さて今回のアルバムですが、この69年と
いうとまだジャマイカの音楽がロック
ステディからレゲエに変わったばかりの
初期レゲエの時代で、そのちょっと
ハッチャけた時代の空気が感じられる
アルバムで、そのあたりがとても面白い
アルバムなんですね。

まずは本題に入る前にMax Romeoの、この
アルバム以前の経歴についてちょっと書い
ておきます。
というのもいくつかの販売サイトに
Max Romeoが「The Emotions解散後」に
Bunny Leeの要請を受けて「アメリカの
ルーディーなR&Bスタイルを取り入れ
『WET DREAM』を制作」という事が書かれ
ていたんですね。
そこでネットのDiscogsでThe Emotionsと
いうグループを調べてみたところ、次の
ような文章を見つけました。

Jamaica vocal group from the rocksteady and early reggae era.
The original line up of the Emotions was Max Romeo, Lloyd Shakespeare
(the brother of bassist Robbie Shakespeare) and Kenneth Knight.
With this line up the group recoded around five tunes for producer
Blondel Calnek's Caltone set up circa 1967.
Max Romeo left the group shortly after and was replaced by Audley Rollens,
when Rollens left he was replaced by Milton Henry.

《ロックステディや初期レゲエ時代の
ジャマイカのボーカル・グループ。
The Emotionsのオリジナル・ライン
ナップはMax Romeo、Lloyd Shakespeare
(ベーシストのRobbie Shakespeareの
兄弟)とKenneth Knightでした。
このラインナップで、グループはプロ
デューサーBlondel CalnekのCaltone
レーベルで、1967年頃にセット・
アップされた約5曲を録音しました。
Max Romeoはその後間もなくグループを
去り、Audley Rollensと交代した。
Rollensが去ったときはMilton Henryと
交代した。》

これを見ると、The Emotionsはロック
ステディから初期レゲエの頃に活躍した
3人組のヴォーカル・グループで、初めの
メンバーはMax Romeo(Maxie Smith)と
Lloyd Shakespeare(Robbie Shakespeare
の兄弟)とKenneth Knightで、のちに
Max Romeoが抜け、Audley Rollensが加入
し、そのAudley Rollensが抜け、Milton
Henryが加入したグループのようです。
ネットのDiscogsによると、アルバムの
リリースは無く、23枚ぐらいのシングル
盤をリリースしているグループらしい
です。

YouTubeで「The Emotions Reggae」で検索
すると、いくつか曲も出て来ました。

Romeo and the Emotions Dont Want To Let You Go - Caltone


The Emotions Max Romeo - Soulful Music - Caltone


The Emotions - Buy You A Rainbow


ちなみに最後に加入したMilton Henry
は、のちにWackie'sから「Who Do You
Think I Am?」というアルバムをリリース
したシンガーとして知られています。

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Milton Henry ‎– Who Do You Think I Am? (1985)

ちょっと話がそれましたが、「Wet Dream」
という曲はMax RomeoがThe Emotionsを
脱退後に、プロデューサーのBunny Leeと
組んで出した曲だったんですね。
そのスキャンダラスでアナーキーな曲は
UKのスキンヘッドの間で大評判となり、
放送禁止になったにも関わらずUKで
大ヒットしたんですね。

ネットの販売サイトの文章などを読むと
「アメリカのルーディーなR&Bスタイル
を取り入れ」た楽曲という事ですが、
キーボードとギターのイケイケのリズムに
乗せたMax Romeoのちょっとスウィート
だけれど卑猥な歌詞が載ったヴォーカル
は、当時としてはかなりアナーキーで
なかなか衝撃的だったと思います。

Max Romeo - Wet Dream (Official Audio)


この「Wet Dream」が作られた68年頃と
いうのは、ジャマイカの音楽界ではスロー
でメロディアスなロックステディの時代
から、ミディアム・テンポの初期レゲエの
時代へと変わって行く転換期の時代だった
んですね。
ある意味ジャマイカの音楽界が一度振り
出しに戻って、新しい音楽を模索していた
時代だったんですね。
彼の曲を「ハッチャけた」と書きました
が、この後レゲエという音楽はシリアスな
ルーツ・レゲエとなって行くのでけっこう
初めは真面目な音楽だったと思われがち
ですが、この初期レゲエの頃はいろいろな
模索があり、こうしたちょっとクレイジー
なノリの楽曲も作られているんですね。
そうしたそれまでの音楽に無いちょっと
異常なノリに反応したのがUKのスキン
ヘッドと呼ばれる若者達で、その後そう
したノリの音楽は「スキンヘッド・
レゲエ」という呼び方をされるようになり
ます。
スキンヘッド・レゲエのバンドとしては
Lee Perryのプロデュースした
The UpsettersやHarry J Allstarsなどが
知られています。
(のちにThe UpsettersはLee Perryの
ダブを演奏するバンドへと変化します。)

いずれにしてもこのMax Romeoの「Wet
Dream」という楽曲はもっとも早い時期の
初期レゲエの楽曲であり、もっとも早く
スラックネス(下ネタ)でヒットした楽曲
であった事は間違いがありません。
そういう意味では彼Max Romeoは、元祖
スラックネス・シンガーと言える人なん
ですね。
またロックステディのスローなリズムとは
ちょっと違う、The Rudeesの演奏する
スピード感のある弾けたノリの演奏は、
もっとも早い時期のスキンヘッド・レゲエ
のノリの演奏なんですね。

今回のアルバムは多少一本調子なところが
あるものの、この「Wet Dream」に代表
されるように、グイグイ通して来る誕生
したばかりのレゲエの魅力が詰まった
アルバムで、なかなか興味深い内容の
アルバムだと思います。

1曲目は「Wet Dream (Electronically
Rebalanced)」です。
歯切れの良いドラミングから流れるような
キーボードとギターのメロディ、ソフトに
入って来るMax Romeoのヴォーカルが魅力
的。

2曲目は「A No Fe Me Piccn'y」です。
勢いのあるギターとキーボードの演奏に、
Max Romeoの表情豊かなヴォーカルが
イイ感じの曲です。

Max Romeo- A no fe mi Picc'ny


3曲目は「Far Far Away」です。
ピアノとギターを中心としたちょっと
バラード調のメロディに、堂々と歌い込む
ような感情を乗せたMax Romeoのスウィート
なヴォーカルが魅力的。

MAX ROMEO...FAR FAR AWAY


4曲目は「The Horn」です。
リズミカルなギターとキーボードの南国調
なメロディに、ノリの良いMax Romeoの
ヴォーカルがイイ感じの曲です。

5曲目は「Hear My Plea」です。
ギターとピアノを中心としたノリの良い
リズムに、Max Romeoの表情豊かな
ヴォーカルが面白い曲です。

Max Romeo - Hear my plea


6曲目は「Love」です。
ギターと重いベースを中心とした演奏に、
感情を乗せたMax Romeoのヴォーカル。

Max Romeo - Love


7曲目は「I Don't Want To Lose Your
Love」です。
ピアノとベース、ギター、キーボードを
中心とした演奏に、ファルセットの駆使
したMax Romeoのヴォーカル。

8曲目は「Wood Under Cellar」です。
刻むようなギターに乗せた演奏に、
Max Romeoの語るようにユッタリとした
ヴォーカルがイイ感じ。

9曲目は「Wine Her Goosie」です。
ユッタリとしたピアノのリリカルな
メロディから、ノリの良い刻むような
ギターに乗せた、Max Romeoの表情豊かな
ヴォーカル。

Max Romeo - Wine Her Goosie [1969] CD/V0 [High Quality HD]


10曲目は「Club Raid」です。
ギターとリリカルなピアノのロックン
ロール調のメロディに、ノリの良い
Max Romeoのヴォーカル。

11曲目は「You Can't Stop Me」です。
スピード感のあるギターとピアノの
メロディ、流れるようなMax Romeoの
ヴォーカルがグッド。

ざっと追いかけてきましたが、音源として
は多少時代を感じさせるもの、初期レゲエ
らしい意欲を感じるアルバムで、内容は
悪くないと思います。

ざっと追いかけてきましたが、このロック
ステディから初期レゲエへの変わり目なら
ではのサウンドは、この時代にしか聴け
ない面白さがあります。
それと共にこのMax Romeoという独特の
自我を持ったアーティとの、面白さも注目
してもらいたいところがあります。
彼の履歴を見ると、結局はLee Perryと
組んだ「War Ina Babylon」よりも、この
「Wet Dream」のような世間の常識を壊し
た曲の方に本質があったのではないか?
そんな事を考えさせるアルバムなんです
ね。
「人に歴史あり」という言い方が正しいか
は解りませんが、このあたりのMax Romeo
というシンガーのちょっと他の音楽に無い
「変な面白さ」は、レゲエという音楽を
楽しむ上ではぜひ聴いておきたいところ
ではないかと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Max Romeo - Reggae Festival Empire Roller Skating Center in Brooklyn, NY 1983



○アーティスト: Max Romeo
○アルバム: A Dream
○レーベル: Radiation Roots
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1969

○Max Romeo「A Dream」曲目
1. Wet Dream (Electronically Rebalanced)
2. A No Fe Me Piccn'y
3. Far Far Away
4. The Horn
5. Hear My Plea
6. Love
7. I Don't Want To Lose Your Love
8. Wood Under Cellar
9. Wine Her Goosie
10. Club Raid
11. You Can't Stop Me