今回はMr. Vegasのアルバム

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「Ism」です。

Mr. Vegas(本名:Clifford Smith)は、
90年代から活躍するハイトーン・
ヴォイスが人気のダンスホール・シンガー
です。

ネットのDiscogsによると、9枚ぐらいの
アルバムと、454枚ぐらいのシングル盤
を残しています。
(持っているアルバムで抜けているものが
いくつかあるので、もしかしたらもっと
多くのアルバムやシングルをリリースして
いるかもしれません。)

ちなみにDiscogsに書かれている彼の履歴
によると、70年代から活躍する3人組の
コーラス・グループThe TamlinsのCarlton
Smithは彼のお兄さんのようです。
活躍時期がかなりズレているので、かなり
歳の離れた兄弟のようです。

アーティスト特集 Mr. Vegas (Mr. ベガス)

Mr. Vegas - Wikipedia

今回のアルバムは2018年にUSの
MV Musicというレーベルからリリースされ
た彼のソロ・アルバムです。

「Ism」というタイトルのように、
「Colorism(人種主義)」や「Racism
(人種差別主義)」、「Loveism(博愛
主義)」など様々な社会の思想にまで
テーマを拡げた、彼がそれまでのダンス
ホール・シンガーのイメージから一歩踏み
出した作品で、YouTubeにアップされた
「Colorism」や「Wakanda Jam」、
「Wake Up」など、彼らしいアッパーな
歌唱の中に彼の新しい一面が垣間見える
意欲作です。

手に入れたのはMV Musicからリリースされ
たCD(新盤)でした。

全12曲で収録時間は約46分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians:
Kirk 'Kirkledove' Bennett, Cleveland 'Clevie' Browne,
Francois 'Cisko' Laclotte, Carol 'Bowie' McLaughlin,
Clifford Ray Smith, Owen Rennalls, Mitchum 'Khan' Chin,
Dean Fraser, Dwight Richards, The Kemist, Liam Fudge,
Natel Hewitt, Dalton Browne, Birch, Frenchie, Yishka
Mixing Engineers:
Rohan Dwyer, Riva Browne, Romel Marshall, Gregory Morris
Recording Engineers:
The Kemist, Nile Browne, Cleveland Browne, Natel Hewitt
Assistant Engineer:
Kevin Bultler
Harmonies:
Gary McNell, Shauna Dixon, Natel Hewitt, Jason Edmond,
Aliethia Evans, Tiana Henry, Cleveland Browne, Nyanda, Jahlil
Photographer:
David I Photo/David Muir
Graphic Design:
Cover Artwork: Robust Graphic
Album Artwork: Luxunery

となっています。

ミュージシャンはKirk 'Kirkledove'
Bennett、Cleveland 'Clevie' Browne、
Francois 'Cisko' Laclotte、Carol 'Bowie'
McLaughlin、Clifford Ray Smith、Owen
Rennalls、Mitchum 'Khan' Chin、
Dean Fraser、Dwight Richards、
The Kemist、Liam Fudge、Natel Hewitt、
Dalton Browne、Birch、 Frenchie、
Yishkaという人が参加しています。
Steelie & Clevieで知られるCleveland
'Clevie' Browneやサックス奏者の
Dean Fraserなど、多彩なメンバーが参加
したアルバムです。

ミックス・エンジニアはRohan Dwyerと
Riva Browne、Romel Marshall、Gregory
Morrisで、レコーディング・エンジニアは
The KemistとNile Browne、Cleveland
Browne、Natel Hewitt、アシスタント・
エンジニアにKevin Bultlerという人達が
参加しています。

ハーモニーにGary McNell、Shauna Dixon、
Natel Hewitt、Jason Edmond、Aliethia
Evans、Tiana Henry、Cleveland Browne、
Nyanda、Jahlilという人達が参加して
います。

写真にDavid Muir、カヴァー・アート
ワークにRobust Graphic、アルバム・
アートワークにLuxuneryとなっています。

表ジャケは赤いジャージを着た腹筋の割れ
たMr. Vegasの写真の周りに、「Racism
(人種差別主義)」、「Loveism(博愛
主義)」、「Capitalism(資本主義)」
など文字が見える印象的なジャケット
です。
裏ジャケはタイツ姿のMr. Vegasの
かなりインパクトの強い写真が使われて
います。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、それまで
ダンスホール・シンガーとして活躍して
来たMr. Vegasですが、このアルバムは
そこから一歩踏み出そうという意欲を感じ
るアルバムで、内容はとても良いと思い
ます。

やはりこのアルバムを語る上で、YouTube
にアップされた「Colorism」の映像から
語るべきでしょう。

Mr Vegas - Colorism (Official Video)


首に鎖を巻かれ炎天下に木に吊るされた
Mr. Vegasの姿は、黒人が奴隷として扱わ
れていた時代を彷彿とさせて衝撃的です。
それまでの明るいアッパーなダンス
ホール・シンガーとしてのMr. Vegasの姿
とは別の姿が、ここには描かれています。
さらに優しく諭すようなMr. Vegasの歌が
心を締め付けます。
明らかにそれまでの彼とは違うイメージ
が、ここにはあるんですね。

今回のアルバムはそうしたいろいろな
「Ism(思想)」をテーマとした作品で、
それまでのアッパーな楽曲を得意とした
ダンスホール・シンガーMr. Vegasとは
また違った顔を見せた楽曲が収められて
いるのが大きな特徴のようです。

ネットのYouTubeにアップされた
「Wake Up」という曲では、奴隷として
連れて来られたMr. Vegasが、白人と黒人
の男性に責められて、黒人の男性に聖書と
銃を持って追い掛け回されるという内容
です。

Mr Vegas - Wake Up (Official Video)


最後はMr. Vegasが反撃して去っていくと
いう映像なんですが、こちらはキリスト教
などの宗教の押し付けを批判した内容か?

他に「Mamma Africa」は年齢認証が必要な
楽曲で、おそらくかなりセクシャルな内容
のヴィデオのようです。

そして最後に収められた「Wakanda Jam」
は彼らしいアッパーなナンバーです。

Mr Vegas - Wakanda Jam (Official Video)


最後は「難しい事言わないでみんなで愛し
合おうよ!」といった感じでシメているの
ですが、「Colorism」のようなシリアスな
曲の後にこうして明るい曲を聴くと、今
まで以上にダンスホール・レゲエの意味を
感じる部分があります。

今回のアルバムは「Ism(~主義)」と
いうテーマ性を持たせる事で、今まで以上
に音楽のクオリティをあげる事に成功して
いるんですね。
ダンスホール・レゲエという音楽に新しい
境地を切り開いた、なかなか面白い
アルバムだと思います。

こうしたダンスホール・レゲエにシリアス
な要素を持ち込むというのは、この
2018年頃から起った傾向のような気が
します。
このMr. Vegas以外にも18年にリリース
されたPopcaanのアルバム「Forever」にも
「Firm and Strong」のようなかなり
シリアスな曲が収められているんですね。

popcaan_01a
Popcaan - Forever (2018)

Popcaan - Firm and Strong (Official Video)


今までのレゲエの世界はダンスホール・
レゲエ(=スラックネス、ガン・トーク)
とルーツ・レゲエ(=コンシャス、
シリアス)が、相反する世界として競争
しているような世界だったのですが、
2010年以降は、徐々にその境界線が
崩れ始めているような気がします。
スラックネス(下ネタ)やガン・トーク
(暴力ネタ)で快楽的な世界を作り上げて
いたダンスホール・レゲエがコンシャス
(真面目)なリリックも歌うようになり、
半面あまりにコンシャスでシリアス
(厳粛)だったルーツ・レゲエが徐々に
柔らかいラヴ・ソングやソフトな楽曲も
ヤルようになって来ている気がします。
コンシャス系のラスタ・リヴァイヴァル・
ムーヴメントなどのアーティストも、
ボボ・アシャンティ系のアーティストほど
の厳格さがあまり無いんですね。
そうしたレゲエの中の境界線が徐々に崩れ
て来たのが、2010年以降のレゲエの
大きな特徴かもしれません。

いずれにしても今回のMr. Vegasのアルバム
はかなりの力作であり、彼が新しい境地を
切り開いた、聴いておくべきアルバムで
ある事は間違いがありません。

1曲目は「Black Princess」です。
明るいキーボードとギターのメロディに、
よく通るMr. Vegasのハイトーンな
ヴォーカルが魅力的。

Black Princess


2曲目は「Kemet」です。
ホーン・セクションの力強いメロディに
ドスの効いたベースを軸とした演奏、
流れるように滑らかなMr. Vegasの
ヴォーカルにコーラス。

3曲目は「Wake Up」です。
YouTubeに映像がアップされている1曲
です。
ギターとピアノを軸としたちょっと重めの
演奏に、サイレン音、合間良く入って来る
生ギター、Mr. Vegasらしいよく通る
ヴォーカルが語るように物語を紡ぎます。

4曲目は「Mamma Africa」です。
こちらもYouTubeに映像がアップされている
ようですが、年齢認証が必要な曲です。
Mr. Vegasの掛け声から勢いのあるホーン
とギターのメロディ、Mr. Vegasのよく
通るヴォーカルがグッド。

Mamma Africa


5曲目は「Give I Strength」です。
明るいホーンのメロディに、ベースと
ギターを中心としたメロディ、Mr. Vegas
の表情豊かなヴォーカル。

6曲目は「Moral Decayed Society」
です。
ピアノとフルートの軽妙なメロディにドス
の効いたベース、甲高いMr. Vegasの
ヴォーカルがイイ感じの曲です。

7曲目は「Bring Back The Reggae」
です。
水見カルナギターを中心とした演奏に、
よく通るMr. Vegasのヴォーカル。
レゲエやBob Marleyについて歌われている
ようです。

Bring Back The Reggae


8曲目は「Colorism」です。
こちらもYouTubeにアップされた問題作
です。
生ギターの刻むメロディを中心に、よく
通るMr. Vegasの感情を乗せたヴォーカル
がグッと来る曲です。

9曲目は「To Jah We Pray」です。
生ギターとパーッカッションを中心とした
演奏に、Mr. Vegasの伸びやかな
ヴォーカルにコーラスがとても魅力的。

To Jah We Pray


10曲目は「That's The Way God
Planned It」です。
ソウルのBilly Prestonの同名曲の
カヴァーのようです。
静かにユッタリと入って来るキーボードの
メロディに、伸びやかに歌うMr. Vegasの
感情を乗せたハイトーン・ヴォイス。

That's The Way God Planned It


11曲目は「Love Up There」です。
キーボードのリリカルなメロディに、
抜けの良いMr. Vegasのよく通る
ヴォーカルが魅力的。

12曲目は「Wakanda Jam」です。
こちらもYouTubeにアップされた曲です。
リズミカルなピアノのメロディに踊りだし
たくなるようなドラミング、Mr. Vegasの
心地良く楽しいヴォーカルがイイ感じの曲
です。
Mr. Vegasのアッパーなノリは、やはり
この人の個性でとても魅力的。

ざっと追いかけてきましたが、Mr. Vegas
という人のレゲエという音楽にかける情熱
が伝わって来るアルバムで、内容はとても
良いと思います。
これからもこのMr. Vegasは注目すべき
アーティストだと思います。

残念なのはこのアルバムが、なかなか手に
入れづらそうなことです。
ダウンロードでは入手が可能ですが、
アルバムがまだあまり売られていないん
ですね。
ただ出来れば多くの人に聴いてもらいたい
アルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Mr. Vegas - Te Amo (Official Video)



○アーティスト: Mr. Vegas
○アルバム: Ism
○レーベル: MV Music
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2018

○Mr. Vegas「Ism」曲目
1. Black Princess
2. Kemet
3. Wake Up
4. Mamma Africa
5. Give I Strength
6. Moral Decayed Society
7. Bring Back The Reggae
8. Colorism
9. To Jah We Pray
10. That's The Way God Planned It
11. Love Up There
12. Wakanda Jam

●今までアップしたMr. Vegas関連の記事
〇Mr. Vegas「Reggae Euphoria」
〇Mr. Vegas「This Is Dance Hall」