今回はSugar Minottのアルバム

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「Rydim」です。

Sugar Minott(本名:Lincoln Barrington
Minott)はレゲエを代表するシンガーの
一人です。
70年代のルーツ・レゲエの時代にDerek
'Eric Bubbles' HowardとWinston 'Tony
Tuff' MorrisとAfrican Brothersという
3人組コーラス・グループAfrican Brothers
として音楽キャリアをスタートさせた彼は、
グループ解散後もStudio Oneをはじめと
して多くのレーベル、多くのプロデューサー
の元に素晴らしい楽曲を残し活躍した人
です。
そのかたわら「ゲットーの兄貴」として、
多くの若者をシンガーとして育てる事にも
尽力した事でも知られています。

そうした彼ですが2010年に54歳で
亡くなっています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て57枚ぐらいのアルバムと、659枚
ぐらいのシングル盤を残しているのが、
このSugar Minottという人です。

アーティスト特集 Sugar Minott (シュガー・マイノット)

今回のアルバムは1985年にジャマイカ
のPower Houseレーベルからリリースされ
た彼のソロ・アルバムです。

プロデュースはPower Houseレーベルの
George Phangで、バックにSly & Robbie
やBlack Roots Playersなどが参加した
アルバムで、Power Houseらしい
ミディアム・テンポのワンドロップの演奏
に乗せた、Sugar Minottらしいスウィート
なヴォーカルが冴えるアルバムとなって
います。

手に入れたのはPower Houseレーベルから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が4曲Side 2が4曲の全8曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians: Sly Dunbar, Robbie Shakespeare & Black Roots
Studios: Channel 1 & Dynamic Sounds
Engineers: Soldgie & Michael Riley
Produced & Arranged by: George Phang

Album Design: Wilfred Limonious

となっています。

ミュージシャンはSly DunbarとRobbie
Shakespeare、Black Roots Playersなど
が参加しています。
Black Roots PlayersはSugar Minottの
レーベルBlack Rootsのバック・バンドと
いう意味ですが、メンバーの詳細が書かれ
ていないのがちょっと残念なところです。
この85年はPrince Jammy(のちにKing
Jammyに改名)によるデジタルのダンス
ホール・レゲエが登場した年ですが、
まだ演奏はアナログで、アーリー・ダンス
ホールで活躍したPower Houseレーベル
らしいミディアム・テンポのワン・
ドロップの演奏です。

録音とミックスはChannel OneとDynamic
Soundsで行われ、エンジニアはSoldgieと
Michael Rileyが担当しています。

プロデュースとアレンジはPower House
レーベルのGeorge Phangが担当していま
す。
ジャケット・デザインはWilfred
Limoniousが担当しています。
ジャケット写真にはミキサー・ルームでの
Sugar MinottとGeorge Phangの写真が使わ
れています。
裏ジャケはLimoniousらしいイラストが
印象的。

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裏ジャケ

今回のアルバムですが、同じく85年に
リリースされたGeorge Phangプロデュース
のアルバム「A True」と、着ているピンク
のTシャツなどが一緒なんですね。
もしかしたら同時期の録音なのかもしれま
せん。

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Sugar Minott ‎– A True (1985)

さて今回のアルバムですが、80年代初め
のアーリー・ダンスホールで活躍した
Power HouseレーベルらしいSly & Robbie
を中心としたミディアム・テンポのワン・
ドロップをバックに、Sugar Minottの
スウィートなヴォーカルが堪能出来る
アルバムで、内容はとても良いと思い
ます。

たびたび書いていますが、この80年代
前半のアーリー・ダンスホールの時代は、
Henry 'Junjo' Lawesが率いるVolcano
レーベルのRoots Radicsなどのバック・
バンドによるスローなワン・ドロップの
リズムが大流行した時代だったんですね。
そのスローなワン・ドロップに対抗して、
あえてミディアム・テンポのワン・
ドロップで勝負したのが、このGeorge
PhangのPower Houseレーベルだったん
ですね。
この競争は初めの頃はVolcanoレーベルの
圧勝だったようですが、80年代半ば頃に
なるとPower Houseレーベルも盛り返して、
両者の力関係は拮抗していたようです。

いずれにしてもレゲエ=ワン・ドロップの
リズムという世界が定着したのは、この
80年代の初めだった事は間違いありま
せん。

ちなみにワン・ドロップとはThe Wailes
などで活躍したドラマーのCarlton Barrett
が開発した「1拍目にアクセントがなく、
3拍目のみがスネアドラムのリムショット
とバスドラムによって強調される」奏法
です。

レゲエ - Wikipedia

70年代のレゲエではロッカーズ
(ミリタント・ビート)やフライング・
シンバル、ステッパーズなど様々なドラム
の奏法が開発されていますが、今の時代に
まで愛され続けているレゲエのビートが、
このワン・ドロップなんですね。

話を戻しますが、今回のアルバムではこの
80年代の前半にレゲエのビートとして
定着したワン・ドロップのリズムに乗せた
Sugar Minottのスウィート・ヴォイスが
堪能出来る内容で、とても聴き心地の良い
アルバムに仕上がっています。
おそらく「Rydim」というタイトルから
見て、すべての曲が既にあるリディムから
作られた曲だと思われますが、残念ながら
すべての曲のリディムを特定する事は出来
ませんでした。
ただ解る範囲で書いて行くと、Side 1の
1曲目は「Feel The Rydim」は「Answer」
リディム、2曲目「Mass Mi Mass」は
「Real Rock」リディム、3曲目「Old
King Cole」は「Vanity」リディム、
Side 2の2曲目「Bubbling」は「Solomon」
リディムが使われています。

その中でも特に注目は3曲目「Old King
Cole」で、この曲は彼のヒット曲でもある
「Vanity」のリディムが使われています。
もともとこのSugar Minottですが「Vanity」
などを収めたStudio Oneからリリースした
アルバム「Showcase」などで人気が挙がっ
た人なんですね。

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Sugar Minott - Showcase (1979)

この70年代後半当時のStudio Oneという
レーベルは振興レーベルに押されてかなり
苦境に立っていたのですが、60年代の
スカやロックステディの時代から
ジャマイカの音楽界を支えてきたこの
レーベルには、過去の素晴らしい音源が
たくさんあったんですね。
Sugar Minottはそうした古い音源に新しい
リリックを乗せて、「Showcase」などの
素晴らしいアルバムを作ったんですね。
「Vanity」という曲も、Alton Ellisの
ロックステディ時代のヒット曲「I'm Just
A Guy」のメロディにSugar Minottの
新しいリリックを乗せた曲でした。

昔の楽曲のリズムを何度も何度も使用する
「リディム」の文化は、ある意味この
70年代後半ぐらいに誕生したと言え
ます。

今回のアルバムではその「Vanity」を
ヒットさせたSugar Minott自身が再び同じ
「Vanity」リディムを使って、新しい曲
を作っているのが面白いところです。
Studio Oneで行った古い曲に新しい
リリックを盛り込んで、曲を再生する試み
をまた行っているんですね。
そのしつこいまでの音楽への情熱が、この
アルバムの最大の魅力なのかもしれま
せん。

Side 1の1曲目は「Feel The Rydim」
です。
Lone Rangerの「Answer」リディムとして
知られていますが、オリジナルは
Slim Smithのロックステディのヒット曲
「Never Let Go」です。
刻むようなギターとキーボードのメロディ
に、Sugar Minottのスウィートで
リズミカルなヴォーカルが冴える曲です。

Sugar Minott - Feel The Rydim


リズム特集 Answer (アンサー)

2曲目は「Mass Mi Mass」です。
リディムはSound Dimensionのロック
ステディのヒット曲「Real Rock」。
ギターとピアノを中心としたワン・
ドロップのリズムに、ソフトに語るような
Sugar Minottのヴォーカルが魅力的。

Sugar Minott - Mass Mi Mass (Real Rock Riddim)


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

3曲目は「Old King Cole」です。
書いたように彼の「Vanity」リディム
として知られる曲で、オリジナルは
Alton Ellisの「I'm Just A Guy」。
ギターとピアノのメロディに、ソフトな
Sugar Minottのヴォーカルがとても心地
良い曲です。
ツボを心得たセルフ・カヴァーです。

Old King Cole


リズム特集 I'm Just A Guy (アイム・ジャスト・ア・ガイ)

4曲目は「Nah Go To South Africa」
です。
ギターとキーボードのメロディに、
Sugar Minottの語るようなヴォーカルが
印象的な曲です。

Side 2の1曲目は「Jah Is On My Side」
です。
キーボード刻むようなギターのメロディ
に、Sugar Minottの表情豊かなソフトな
ヴォーカルがイイ感じの曲です。

2曲目は「Bubbling」です。
リディムはDerrick Harriottの
「Solomon」。
キーボードとギターの明るいメロディに
心地良いワン・ドロップ、Sugar Minott
のソフトで歯切れの良いヴォーカル…。

SUGAR MINOTT. Bubbling


3曲目は「If I Didn't Love You」
です。
心地良いワン・ドロップのリズムに
キーボードのメロディ、ちょっとエコー
の効いたSugar Minottのソフトな
ヴォーカル。

4曲目は「Chatty Chatty Mouth」です。
リズミカルなギターとキーボードの
メロディに、明るいSugar Minottのソフト
なヴォーカルがイイ感じの曲です。

Chatty Chatty Mouth


ざっと追いかけてきましたが、この
アーリー・ダンスホールで活躍した
Power Houseレーベルと、この時代に
もっとも輝いていたヴォーカリスト
Sugar Minottのコンビネーションはとても
魅力的です。
リディムを自由に乗りこなし、新しい
リリックを盛り込んで行くSugar Minottの
傑出した才能が煌めくアルバムだと思い
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Sugar Minott - Nah go to South Africa (Live)



○アーティスト: Sugar Minott
○アルバム: Rydim
○レーベル: Power House
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1985

○Sugar Minott「Rydim」曲目
Side 1
1. Feel The Rydim
2. Mass Mi Mass
3. Old King Cole
4. Nah Go To South Africa
Side 2
1. Jah Is On My Side
2. Bubbling
3. If I Didn't Love You
4. Chatty Chatty Mouth

●今までアップしたSugar Minott関連の記事
〇Sugar Minott, Frankie Paul「Show-Down Vol. 2」
〇Sugar Minott「A True」
〇Sugar Minott「Black Roots」
〇Sugar Minott「Dance Hall Showcase Vol.II」
〇Sugar Minott「Ghetto-Ology」
〇Sugar Minott「Showcase」
〇Sugar Minott「Sugar Minott At Studio One」
〇Sugar Minott「Wicked Ago Feel It」
〇Soul Syndicate (Black Roots Players)「Ghetto-Ology Dubwise」
〇Sugar Minott「African Girl」