今回はFlick Wilsonのアルバム

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「School Days」です。

Flick Wilson(本名:P. Allen)は
80年代に活躍したシンガーです。

ネットのDiscogsによると、1枚の
アルバムと13枚ぐらいのシングル盤を
残しています。

今回のアルバムは1980年にUSの
Jah Lifeレーベルからリリースされた
Flick Wilsonの唯一のソロ・アルバム
です。

プロデュースはJah LifeのHyman Wright
とVolcanoのHenry 'Junjo' Lawesで、
バックはRoots Radicsが担当し、
ミックスはScientistで、80年代前半の
アーリー・ダンスホールをけん引した
スタッフが揃ったアルバムで、表題曲の
「School Days」をはじめとして、スロー
なワン・ドロップのリズムに乗せた
Flick Wilsonのハイトーン・ヴォイスが
堪能出来る内容のアルバムとなっていま
す。

手に入れたのはUSのDub Iratorから
リイシューされたLP(新盤)でした。

なお今回のアルバムに収められた曲など
も入ったScientistによるダブ・アルバム
「...The Dub Album They Didn't Want
You To Hear!」が、2014年に
Jah Lifeレーベルよりリリースされて
います。
おそらく80年代当時はダブは作ったもの
の、売れないと判断してリリースは見送ら
れていた作品ではないかと思われます。

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Scientist ‎– ...The Dub Album They Didn't Want You To Hear! (2014)

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Backed by: Roots Radics Band
Drums: Carlton 'Santa' Davis
Bass: Errol 'Flabba' Holt
Keyboards: Gladstone 'Gladdy' Anderson, Ansel Collins
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Rhythm Guitar: Bo Peep
Percussions: Christopher 'Sky Juice' Blake

All rythm tracks laid at Channel One Studio
Viced and mixed at King Tubby's
Engineers: Scientist

Produced by: Hyman 'Papa Life' Wright & Henry 'Junjo' Lawes
Published by Jah Life Music (ASCAP)

Cover art & design by O'Neil Nanco

となっています。

バックはRoots Radics Bandで、ドラムに
Carlton 'Santa' Davis、ベースにErrol
'Flabba' Holt、キーボードにGladstone
'Gladdy' AndersonとAnsel Collins、
リード・ギターにEarl 'Chinna' Smith、
リズム・ギターにBo Peep、パーカッション
にChristopher 'Sky Juice' Blakeという
布陣です。
この80年頃はRoots Radics Bandの
ドラマーはStyle Scottではなく'Santa'
Davisがメインのドラマーだったんです
ね。
それが81年頃から'Santa' Davisと
Style Scottが併用されるようになり、
82年頃からは完全にStyle Scottが
レギュラーとなるんですね。

すべてのリズム・トラックはChannel One
Studioで録音され、声入れとミックスは
King Tubby'sで録音され、ミックスは
Scientistが担当しています。
この時ScientistはまだKing Tubby'sの
ミキサーですが、のちにChannel Oneに
移籍しています。

プロデュースはHyman 'Papa Life' Wright
とHenry 'Junjo' Lawesが担当していま
す。

ジャケット・デザインはO'Neil Nancoが
担当しています。
表ジャケットにはFlick Wilsonと思われる
小柄な青年(少年?)の姿が写った写真が
使われています。
Flick Wilsonの情報はネットを調べても
あまりありませんが、この写真を見る限り
では10代ぐらいの若いシンガーだったの
かもしれません。
このアーリー・ダンスホールの時代は、
Little JohnやToriston Palmaなど10代
の若い歌手が多く活躍した時代だったん
ですね。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、Roots Radics
のワン・ドロップのリズムに乗せた
Flick Wilsonのハイトーン・ヴォイスが
印象的なアルバムで、内容はなかなか悪く
ないと思います。

この時代にプロデュースはHenry 'Junjo'
Lawes、演奏はRoots Radics、ミックスは
Scientistという、アーリーダンスホール・
レゲエを確立した面々が揃ったアルバムで
デビューするという恵まれたスタートを
切ったFlick Wilsonですが、その後は
あまり活躍をしていないようです。

このFlick Wilsonについては、本名が
P. Allenである事ぐらいしかネットには
情報がありません。
なのである程度推測で書きますが、
アルバム・ジャケットの小柄な体系や
ハイトーン・ヴォイスのちょっとまだ
あまりウマいとは言い難い歌い方から
みて、かなり若い10代ぐらいのシンガー
だったのではないかと推測されます。

書いたようにこの時代はLittle Johnや
Toriston Palmaなど10代の若いシンガー
が、よく活躍した時代だったんですね。
70年生まれのLittle Johnなどは79年
にシングル・デビューしているので、8歳
か9歳の少年の頃から活躍しているんです
ね。
おそらくこのFlick Wilsonも、そうした
10代の早いデビューのシンガーだったの
ではないかと推測されます。

この人の魅力はそのハイトーン・ヴォイス
で、かなり高い音程で歌っているのが特徴
となっています。
ただいく分性急過ぎる、ちょっと間が無い
歌い方で、シンガーとしてちょっと幼さを
感じる部分があります。
シングルの履歴などを見ても、この
アルバム以後はあまり活躍出来なかった
シンガーのようです。

ただこのアーリー・ダンスホールの時代
に、プロデュースはHenry 'Junjo' Lawes、
演奏はRoots Radics、ミックスはScientist
という、アーリーダンスホール・レゲエを
確立した面々が揃ったアルバムでデビュー
したという実績だけでも、今となると
スゴい事なんですね。
実際にこのアルバムを手に入れようと思い
ディスクユニオンのセールに行きました
が、中古盤が6千円超の値段で売られて
いました。
ちょっと高過ぎるので泣く泣く断念したの
ですが、そのしばらく後にリイシュー盤が
2200円ぐらいでディスクユニオンで
新盤で販売されていて、ようやく手に入れ
る事が出来たアルバムでした。
こうしたアルバムを集めるには、ある程度
根気も必要だなぁと感じた出来事でした。

そうしたFlick Wilsonの今回のアルバム
ですが、多少ハイトーン・ヴォイスは単調
で、ヴォーカルもウマくないところはある
ものの、このアーリー・ダンスホールの
時代らしいバックの演奏に支えられて、
なかなかの健闘を見せています。
おそらくリリース当時より今の時代になる
と、より面白く聴けるアルバムではないか
と思います。

書いたようにこの80年のRoots Radicsの
レギュラーのドラマーはStyle Scottでは
なく、Carlton 'Santa' Davisだったん
ですね。
その為あのRoots Radicsの極端に落とす
Style Scottの特徴的なスローなワン・
ドロップではなく、もう少し滑らかな
ドラミングで、リズムもまだミディアム・
テンポに近い演奏です。
そのあたりがまだ過渡期のサウンドと
いう感じがします。
そうした'Santa' Davisの滑らかなワン・
ドロップと'Flabba' Holtのベース、
'Chinna' Smithのリード・ギターなどを
中心とした勢いのある演奏に乗せて、
Flick Wilsonはノビノビとしたハイ
トーン・ヴォイスを披露しています。
ヴォーカルが多少一本調子なところはある
ものの、新しく誕生したダンスホールの、
ちょっと湿った空気感が感じられてとても
魅力的です。

「Slave Master」や「Jah Turn Them
Down」などルーツの匂いのするタイトル
の曲もありますが、このあたりから時代は
ルーツからダンスホールへと、確実に
変わって行く匂いが強くします。
その時代の変わり目のアルバムという事
が、このアルバムの価値をより高めていま
す。

Side 1の1曲目は「I Don't Mind」です。
心地良いワン・ドロップのドラミングに、
ギターとハーモニカ?のメロディ、
Flick Wilsonのファルセットなヴォーカル
がグッドな曲です。

2曲目は「Yallas Pond」です。
キーボードのメロディに心地良い
ドラミング、Flick Wilsonの感情を乗せた
ノビのあるハイトーン・ヴォイスが印象的
な曲です。

FLICK WILSON "YALLAS POND" SCHOOL DAYS LP


3曲目は「Slave Master」です。
「奴隷監督」というタイトルの曲で、この
あたりはまだルーツ・レゲエを感じさせる
タイトルです。
キーボードの陰影乗るメロディにワン・
ドロップのドラミング、伸びやかなハイ
トーン・ヴォイスのFlick Wilsonの
ヴォーカル…。

Slave Master


4曲目は「Where Wicked Gonna Run」
です。
リズミカルなドラミングにキーボードの
メロディ、Flick Wilsonのノビやかな
ヴォーカルがイイ感じの曲です。

5曲目は「Facts Of Life」です。
心地良いワン・ドロップのドラミングに
キーボードのメロディ、伸びやかなハイ
トーン・ヴォイスで歌うFlick Wilsonの
ヴォーカルが魅力的。

Flick Wilson - The Facts Of Life (School Days Lp 197X)


Side 2の1曲目は表題曲の「School
Days」です。
ギターとキーボードのメロディに、
伸びやかなFlick Wilsonの哀愁を秘めた
ヴォーカルが心地良い曲です。

Flick Wilson - School Days (197X)


2曲目は「My Ladie」です。
華やかなドラミングとキーボードの
メロディに、伸びやかなFlick Wilsonの
ファルセットなヴォーカルがとても魅力
的。

My Lady


3曲目は「Jah Turn Them Down」です。
キーボートとギター、ハーモニカの
メロディに、伸びやかなFlick Wilsonの
ヴォーカルが冴える曲です。

4曲目は「Don't Give Up Your Culture」
です。
キーボードと派手な金属音のエフェクト
に、初めからファルセット全開なFlick
Wilsonのヴォーカルがとても魅力的な曲
です。

Flick Wilson - Don't Give Up Your Culture


5曲目は「Pretty Blue Eyes」です。
ギターとリリカルなキーボードのメロディ
に、Flick Wilsonのファルセットを駆使
した伸びやかなヴォーカルが印象的な曲
です。

Flick Wilson - Pretty Blue Eyes


ざっと追いかけてきましたが、いかにも
70年代から80年代前半のアーリー・
ダンスホールの過渡期を感じさせる
アルバムで、そこがこのアルバムの最大の
魅力なんですね。
Roots Radicsのシッカリしたワン・
ドロップの演奏と、Flick Wilsonの味わい
のあるファルセットもなかなか悪くありま
せん。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Flick Wilson
○アルバム: School Days
○レーベル: Dub Irator
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1980

○Flick Wilson「School Days」曲目
Side 1
1. I Don't Mind
2. Yallas Pond
3. Slave Master
4. Where Wicked Gonna Run
5. Facts Of Life
Side 2
1. School Days
2. My Ladie
3. Jah Turn Them Down
4. Don't Give Up Your Culture
5. Pretty Blue Eyes