今回はLone Rangerのアルバム

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「Badda Dan Dem」です。

Lone Ranger(本名:Anthony Waldron)は
70年代のルーツ・レゲエの時代から活躍
するSシング・ジェイ・スタイルで人気を
博したディージェイです。
ルーツ・レゲエの時代にはStudio Oneから
Dub Specialistのダブが半分収められた
ユニークなアルバム「On The Other Side
Of Dub」でアルバム・デビューし、その後
も80年代のダンスホール・レゲエの時代
になってもその人気は衰えず、「M 16」
などのヒット曲を出して活躍したという
ディージェイです。

ネットのDiscogsによると、11枚ぐらいの
アルバムと、135枚ぐらいのシングル盤
を残しています。

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The Lone Ranger ‎– On The Other Side Of Dub (1977)

Lone Ranger (musician) - Wikipedia

アーティスト特集 Lone Ranger (ローン・レンジャー)

Studio Oneというレーベルについても一言
書いておきます。

スカ→ロックステディ→レゲエと
ジャマイカの音楽界をリードして来た
Studio Oneですが、70年代も半ばを
過ぎるとChannel Oneなど他のレーベルの
台頭によって、その勢いにも陰りが見え
始めます。
その要因のひとつが主催者C.S. Doddの
金払いの悪さだと言われています。
スカ→ロックステディ→初期レゲエの頃
までは、ジャマイカではこのStudio Oneと
Duke Reidの主催するTrssure Isleが2大
レーベルとして君臨していて、歌手として
デビューするにはその2つしか選択肢が
なかったんですね。
ところがレゲエが世界的に認められてくる
と、他のレーベルも力を付けて競争が激し
くなり、金払いの悪いStudio Oneは、徐々
にミュージシャンから見限られて行き
ます。
70年代半ば以降はそうした状況に
C.S. Doddも情熱を失って、エンジニアの
Sylvan Morris(通称:Dub Specialist)
に、ほとんどの仕事を任せていたと言われ
ています。

ただ「レゲエのモータウン」とまで言わ
れたこのStudio Oneには、それまでに録り
貯めしたたくさんの素晴らしい音源が
あったんですね。
Sylvan Morrisはその古い音源を使って
Dub Specialist名で素晴らしいダブを
作ったり、多くのミュージシャンのプ
ロデュースをしているんですね。
(プロデューサー名はC.S. Doddに
なっていても、実際にはSylvan Morris
がプロデュースをしていたようです。)
今回のアルバムはそうした時代の
Studio Oneのアルバムのひとつなんです
ね。

レーベル特集 Studio One (スタジオ・ワン)

今回のアルバムは1982年にジャマイカ
のStudio Oneレーベルからリリースされた
Lone Rangerのソロ・アルバムです。

上に書いたようにStudio Oneの過去の音源
に、当時人気だったLone Rangerのトース
ティングを乗せたアルバムで、後期の
Studio Oneらしい独特の味わいのある
アルバムとなっています。
「Shank I Sheck」リディムの表題曲
「Badda Dan Dem」をはじめとして、
「Throw Me Corn」リディムの「Dance A
Fe Cork」や「Bobby Babylon」リディムの
「My Number」、「Take A Ride」リディム
の「Automatic」など、10年以上前の
ロックステディのリディムを巧みに使い、
当時大人気だったLone Rangerのトース
ティングを乗せた、古くて新しい独特の
世界を生み出しています。

手に入れたのはStudio Oneからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Drums: Cleveland Brownie
Bass: Bryan Atkinson, Earl Walker
Rhythm Guitar: E. Frater
Lead Guitar: E. Frater
Percussion: D. Laing, C. Dodd
Keyboards: Jackie Mittoo
Synthesizer: J. Mittoo, Paul Dixon, G. Adams
Piano: Jackie Mittoo
Trumpet: Johnny Moore
Alto Sax: Karl Bryan
Tenor Sax: Roland Alphonso

Mixed by: C. S. Dodd
Engineer: C. S. Dodd
Recorded, Remixed at Studio One

Cover Artwork by: Jamaal Pete

となっています。

ドラムにCleveland Brownie、ベースに、
Bryan AtkinsonとEarl Walker、リズムと
リード・ギターにE. Frater、
パーカッションにD. LaingとC. Dodd、
キーボードにJackie Mittoo、シンセに
J. MittooとPaul Dixon(別名:Pablove
Black)、G. Adams、ピアノにJackie
Mittoo、トランペットにJohnny Moore、
アルト・サックスにKarl Bryan、テナー・
サックスにRoland Alphonsoという布陣
です。
書いたようにほとんどは10年以上前の
ロックステディの時代の音源です。
多少楽器をオーヴァー・ダブしているかも
しれません。

ミックスとエンジニアはC. S. Doddが担当
しています。
書いたようにC. S. Doddとなっていても、
実際にはSylvan Morrisがまとめた音源
かもしれません。
レコーディングとリミックスはStudio One
で行われています。

アルバム・ジャケットはこの時代のレゲエ
のアルバムのイラストを多く手掛けて
いる、Jamaal Peteが担当しています。
表ジャケットにはコントロール・ルーム
からロケットの打ち上げを見守るC. S. Dodd
とモニターに映ったロケット、宇宙服を
着たLone Rangerの姿が描かれています。
おそらく当時人気だったScientistの
「漫画ジャケ」シリーズをかなり意識した
ジャケットだと思われます。

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裏ジャケ

ちなみにJamaal Peteは同年にリリース
されたLone Rangerのアルバム「M 16」の
ジャケットも手掛けているようです。

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The Lone Ranger ‎– M 16 (1982)

ハッキリした記載はありませんが、絵柄を
見ると彼の作品のようです。
こちらはChannel Oneで録音されたアルバム
で、バックにThe Revolutionaries、
ミックスをScientistやErnest Hookimなど
が務めたアルバムのようです。

さて今回のアルバムですが、この時代の
Studio Oneらしいロックステディの時代
の音源をうまく利用したアルバムで、
内容は悪くなく、今となってはかえって
面白いアルバムなんですね。

書いたようにこの時代のStudio Oneは
かなり力を失っていて、ミュージシャンが
集まらない状態だったようです。
ただこのレーベルにはそれまでに録り貯め
していた、たくさんの素晴らしい音源が
あったんですね。
そうした昔のロックステディの時代の音源
などを再利用して、最低限のオーヴァー・
ダブなどを施し、80年代でも聴ける音源
にして、Lone Rangerのトースティングを
乗せたのが今回のアルバムのようです。

ちなみにロックステディとはレゲエの前身
の音楽で、スローなリズムと甘いメロディ
を特徴とする音楽で、1966年から
68年のわずか3年間だけジャマイカで
流行した音楽です。

ロックステディ - Wikipedia

その中心人物のひとりが、今回のアルバム
にも名前のあるJackie Mittooだったん
ですね。
今回のアルバムでも「Full Up」や「Real
Rock」、「Hot Milk」といった彼が作曲
したリディムが多く使われています。
このアルバムがリリースされたのが82年
ですから、それより10年以上前の音源に
オーヴァー・ダブなどを施して、使用して
いるんですね。
ただそれほど古い音源でありながら、元の
サウンドが良い為にそれなりに聴こえて
しまうところに、このStudio Oneという
レーベルの凄さがあるんですね。

またこの82年はまさにLone Rangerの
人気が頂点に達した時代だったようで、
ネットのDiscogsを見ると全11枚の
アルバムのうち、このアルバムと「M 16」、
「Hi-Yo, Silver, Away!」と、彼の履歴の
中で最も多い3枚のアルバムをリリース
しているんですね。

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Lone Ranger ‎– Hi-Yo, Silver, Away! (1982)

いわばもっとも旬なディージェイとして、
このアーリー・ダンスホールの時代に
大活躍していたのが彼だったんですね。
そのノリノリだった頃のLone Rangerと、
Studio Oneのサウンドが出会ったのがこの
アルバムで、その古くて新しいサウンドが
このアルバムの魅力なんですね。

Larry Marshalの「Throw Me Corn」
リディムの「Dance A Fe Cork」から始ま
り、Freddie McGregorの「Bobby Babylon」
リディムの「My Number」、「Answer」
リディムの「World War One」、Alexander
Henryの「Please Be True」リディムの
「Fist-Tea」、Jackie Mittooの「Full Up」
リディムの「Three Mile Shank」、
Al Campbellの「Take A Ride」リディムの
「Automatic」、Baba Brooks の「Shank I
Sheck」リディムの表題曲「Badda Dan Dem」、
Sound Dimensionの「Real Rock」リディム
の「You Too Greedy」、Jackie Mittooの
「Hot Milk」リディムの「Can't Stand It」、
The Bassiesの「Things A Come Up To Bump」
リディムの「Plant Up A Vineyard」と続く
一連の曲は、Lone Rangerのこの時代らしい
ダンスホール魅力とどこか懐かしさもある
ロックステディの時代の組み合わせが一部
のスキのないほど面白く、聴きどころ満載
の充実した内容となっています。

Side 1の1曲目は「Dance A Fe Cork」
です。
リディムはLarry Marshalの「Throw Me
Corn」。
歯切れの良いギターとリズミカルなピアノ
のメロディ、Lone Rangerの流れるように
スムーズなトースティングに間合いの良い
合いの手の楽しい曲です。

Lone ranger - Badda dan dem (82) - 06 - dance a fe cork


リズム特集 Throw Me Corn (スロウ・ミー・コーン)

2曲目は「My Number」です。
リディムはFreddie McGregorの「Bobby
Babylon」として知られる曲です。
ホーンの特徴的なメロディにキーボード、
エコーの効いたLone Rangerの表情豊かな
トースティングが楽しい曲です。

Lone Ranger - My Number


リズム特集 Bobby Babylon/Hi Fashion (ボビー・バビロン/ハイファッション)

3曲目は「World War One」です。
リディムはLone Ranger自身の「Answer」
リディムとして知られる曲で、オリジナル
はSlim Smithの「Never Let Go」です。
独特の甲高いホーンのメロディからエコー
の効いたドラミングに乗せた、Lone Ranger
の流れるようなトースティング。

リズム特集 Answer (アンサー)

4曲目は「Fist-Tea」です。
リディムはAlexander Henryの
「Please Be True」。
華やかなホーン・セクションのメロディ
からピアノとギター、Lone Rangerの
エコーの効いた滑らかなトースティング。

Lone Ranger - Fish Tea


5曲目は「Three Mile Shank」です。
リディムはJackie Mittoo & Sound
Dimensionの「Full Up」。
ギターとキーボード、ホーンを中心とした
メロディに、Lone Rangerのシング・
ジェイのスムーズなトースティング。

リズム特集 Full Up (フル・アップ)

Side 2の1曲目は「Automatic」です。
リディムはAl Campbellの「Take A Ride」。
Johnny Osbourneの「Truth & Rights」と
してよく知られているリディムです。
漂うようなキーボードのメロディにワン・
ドロップのドラミング、エコーの効いた
Lone Rangerのスムーズなトースティング。

AUTOMATIC LONE RANGER


リズム特集 Take A Ride/Truth & Rights (テイク・ア・ライド/トゥルース・アンド・ライツ)

2曲目は「Badda Dan Dem」です。
リディムはBaba Brooksのスカの時代の
ヒット曲「Shank I Sheck」です。
スペース音からギターとホーンのメロディ
に乗せた、Lone Rangerのちょっと
Eak-A-Mouseを思わせるようなオノマトペ
なトースティングが楽しい曲です。

Studio One Rockers - Lone Ranger - Badder Dan Dem


リズム特集 Shank I Sheck (シャンク・アイ・シェック)

3曲目は「You Too Greedy」です。
リディムはSound Dimensionの
「Real Rock」。
キレの良いドラミングにキーボード、
ホーンのメロディ、エコーの効いた
Lone Rangerの表情豊かなシング・ジェイ
のトースティング。

Lone Ranger - You too greedy


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

4曲目は「Cant Stand It」です。
リディムはJackie Mittoo & Soul
Vendorsの「Hot Milk」。
Jackie Mittooらしいハモンド・
オルガンのメロディに、Lone Rangerの
ノリの良いトースティング。

リズム特集 Hot Milk/Murderer (ホット・ミルク/マーダラー)

5曲目は「lant Up A Vineyard」です。
リディムはThe Bassiesの「Things A Come
Up To Bump」。
歯切れの良いギターとホーンのメロディ
に、Lone Rangerの楽しいトースティング
が魅力的。

ざっと追いかけてきましたが、Lone Ranger
のもっとも充実していた時代のトース
ティングが楽しめるアルバムで、そこに
Studio One独特のサウンドがひと味添えて
いるのも大きなプラス材料で、内容は
とても良いと思います。

特にSide 2の1曲目「Automatic」から
2曲目オノマトペの入った「Badda Dan
Dem」のトースティングは圧巻で、この
アルバムの中でも特に白眉の出来です。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Lone Ranger - Sweet Reggae Music



○アーティスト: Lone Ranger
○アルバム: Badda Dan Dem
○レーベル: Studio One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Lone Ranger「Badda Dan Dem」曲目
Side 1
1. Dance A Fe Cork
2. My Number
3. World War One
4. Fist-Tea
5. Three Mile Shank
Side 2
1. Automatic
2. Badda Dan Dem
3. You Too Greedy
4. Cant Stand It
5. Plant Up A Vineyard