今回はToyanのアルバム

toyan_08a

「Toyan」です。

Toyan(本名:Byron Everton Letts)は
80年代のダンスホール・レゲエで活躍
したディージェイです。
この人のDiscogsなどのディスコグラフィ
を見ると、82年と83年にすごく多くの
アルバムを出しているんですが、それ以降
はあまりアルバムを出していないんです
ね。
彼の活躍は1981年から85年ぐらい
に限定されているようです。
アーリー・ダンスホール時代には大活躍
したけれど、その後は…という人だったの
かもしれません。

英語のWikipediaを見ると、
He was murdered in Jamaica in 1991
とあるので、91年に殺されて亡くなって
いるようです。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て12枚ぐらいのアルバムと、110枚
ぐらいのシングル盤をリリースしていま
す。

Toyan - Wikipedia

yellowman_11a
Yellowman & Toyan ‎– Super Star Yellowman Has Arrived With Toyan (1982)

今回のアルバムは1982年にUSの
J&L RecordsからリリースされたToyan
のアルバムです。

この82年はToyanの当たり年で、共演盤
を含めて5枚のアルバムをリリースして
います。
今回のアルバムはChannel Oneで制作され
たアルバムで、プロデューサーは書かれて
いませんが、エンジニアはErnest Hookim
とScientist、バックはThe Revolutionaries
と思われるメンバーが担当したアルバム
で、このアーリー・ダンスホールの時代
らしいスローなワン・ドロップのリズムに
乗せた、Toyanらしいトースティングが
楽しめるアルバムとなっています。

手に入れたのはChannel Oneからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Drums: Sly Dunbar, Santa
Bass: Robbie Shakespeare
Percussion: Sticky
Rhythm Guitar: Rad Bryan
Lead Guitar: Rad Bryan
Keyboards: Ansell Collins
Synthesizer: Robin Lyn
Piano: Glady Anderson
Trumpet: Madden
Alto Sax: Dean Frazier
Tenor Sax: Dean Frazier

Recorded + Remixed at Channel One Studio, Kingston, Jamaica
Engineers: Ernest Hookim, Scientist

Artwork by: Jamaal Pete

となっています。

ミュージシャンはChannel Oneの
バック・バンドThe Revolutionariesと
思われ、ドラムにSly DunbarとCarlton
'Santa' Davis、ベースにRobbie
Shakespeare、パーカッションに
Uziah 'Sticky' Thompson、リズム・
ギターとリード・ギターにRadcliffe
'Dougie' Bryan、キーボードにAnsell
Collins、シンセにRobin Lyn、ピアノに
Gladstone Anderson、トランペットに
David Madden、アルトとテナー・サックス
にDean Frazierという布陣です。

プロデューサーの記述はありません。
レコーディングとリミックスはジャマイカ
のキングストンにあるChannel One Studio
で行われ、エンジニアはErnest Hookimと
Scientistが担当しています。
ミックスは全体的に華やかでディレイが
深め、エフェクトなども多用した感じは、
Scientistらしい特徴が感じられます。

ジャケット・デザインは、この時代の
レゲエのアルバムを多く担当している
Jamaal Peteが行っています。

toyan_09a
裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、この
アーリー・ダンスホールの時代らしい
スローなワン・ドロップのリズムに乗せ
た、Toyanの男臭いトースティングが魅力
的なアルバムで、内容はとても良いと思い
ます。

このToyanですが書いたように80年代
前半のアーリー・ダンスホールではすごく
人気のあった人なんですが、その後は時代
の波に乗り切れなかったのか、あまり活躍
していないんですね。
その分かえってこのアーリー・ダンス
ホールの輝きが際立つ人で、特にこの
82年は共演盤を含めて5枚のアルバム、
83年は共演盤を含めて4枚のアルバムと
リリースが多く、彼の最盛期は82年から
83年だったと思われます。
やはりこの時代らしいスローなワン・
ドロップのリズムに乗せた、Toyanの
ちょっと粗削りなところのある男らしい
トースティングはとても魅力的です。
彼の誕生年が解らないので彼がこの当時
いくつだったのか?解りませんが、写真
から見る限りではまだ10代半ばくらいの
感じで、かなり若かったのではないかと
思われます。
ただそのトースティングはすでに成熟した
魅力があり、シッカリと聴かせる
ディージェイとしての資質を確かに示して
います。

今回のアルバムはSly & Robbieを中心と
したThe Revolutionariesと思われる
メンバーが、バックを担当しています。
このSly & Robbieですが、George Phang
のレーベルPower Houseのバック・バンド
も務めていますが、Power Houseでは
ミディアム・テンポのワン・ドロップの
演奏をしています。
このアーリー・ダンスホールの時代は、
Henry 'Junjo' LawesのレーベルVolcano
を中心にバック・バンドRoots Radicsの
叩き出すスローなワン・ドロップのリズム
が大流行した時代ですが、それに対して
Power Houseレーベルはミディアム・
テンポのワン・ドロップで対抗したんです
ね。
この「ワン・ドロップ対決」は、初めの頃
はVolcanoレーベルの圧勝だったようです
が、80年半ばに近付くにつれPower House
も人気が出て来て、両者の勢力は拮抗して
いたと言われています。

今回のバックはThe Revolutionariesの
ようですが、Sly & Robbieが参加している
ものの、サウンド的にはスローなワン・
ドロップの演奏になっています。
そのあたりは雇い主の好みに合わせての事
のようです。
実際に聴いた印象としては、あのRoots
RadicsのドラマーStyle Scottのすごく
特徴的なドスンと落とすようなワン・
ドロップではありませんが、名ドラマー
Sly Dunbarのドラミングはしっかりとした
ビートを刻んでいて、なかなか悪くありま
せん。
バックの手堅い演奏がうまくToyanの
トースティングを支えています。

ちなみにもう一人のドラマーCarlton
'Santa' Davisは、80年頃はRoots
Radicsのレギュラーのドラマーだったん
ですね。
それが81年頃からStyle Scottが入って
来て、82年頃にはStyle Scottが完全に
レギュラーに収まっています。

話を戻しますが、この80年代の
アーリー・ダンスホールの時代は、70年
代のルーツ・レゲエの時代と80年半ば
からのデジタルのダンスホール・レゲエの
時代に挟まれてとかく忘れられがちな時代
ですが、レゲエという音楽がスローな
ワン・ドロップという独特の美学の形式を
持って完成し、まさに爛熟した、とても
興味深く面白い時代なんですね。
レゲエが好きな方は、ぜひこの時代の音楽
も聴いて欲しいと思います。

Side 1の1曲目は「Curfew」です。
ピアノとベース、ギターを中心とした
ワン・ドロップのユッタリとしたメロディ
に、Toyanのノリの良いトースティングが
うまくハマった曲です。
ミックスはScientistか?ディープ感の
あるミックスです。

2曲目は「Chalice」です。
リディムはDon Drummond & Skatalitesの
「Heavenless」。
ピアノとギター、ベースを中心とした
ワン・ドロップに、Toyanのちょっと
しゃがれた男らしいヴォーカルがイイ感じ
の曲です。
スペース間のあるエフェクトが効果的な曲
です。

Ranking Toyan - Chalice


リズム特集 Heavenless (ヘブンレス)

3曲目は「Wife + Sweetheart」です。
華やかなホーンにピアノ、ギターのワン・
ドロップに、立て板に水のようなToyanの
言葉が溢れ出すようなトースティング。
ディレイが深めのミックスもイイ感じ
です。

4曲目は「Spar With Me」です。
リディムはBaba Brooksの「Shank I
Sheck」。
ホーンのメロディに合わせたToyanの
イカしたトースティングから、ギターと
ベース、リリカルなピアノを中心とした
渋い演奏に、Toyanの流れるように滑らか
なトースティング。

Ranking Toyan - Spar With Me


リズム特集 Shank I Sheck (シャンク・アイ・シェック)

5曲目は「Cuss + Cuss」です。
リディムはLloyd Robinsonの
「Cuss Cuss」。
ダブワイズしたサックスにギターとベース
の渋いメロディ、遅れて入って来るピアノ
に、Toyanの流ちょうなトースティングが
魅力的。

Toyan - Cuss & Cuss


リズム特集 Cuss Cuss (カス・カス)

Side 2の1曲目は「Life In Jam Down」
です。
ギターとピアノ、ベースのエコーの効いた
ワン・ドロップのメロディに、Toyanの
節回しの効いたトースティングがイイ感じ
です。

2曲目は「World War Affair」です。
ギターとリリカルなピアノ、ドスの効いた
ワン・ドロップのドラミングに、Toyanの
滑らかなトースティングが魅力的。

3曲目は「Gun Shot」です。
リディムはAnthony Johnsonの「Gunshot」
か?
Toyanのアカペラのトースティングから
ホーン→ギターと入って来るメロディ、
ダンスホール・ディージェイらしい流れる
ようなトースティングが魅力的。

toyan - gun shot


4曲目は「Ronnie + Lou」です。
リディムはSlim Smithの
「Rougher Yet」。
エコーの効いたドラミングに、ベースと
ギターのメロディ、流ちょうなToyanの
トースティング。

Toyan - Ronnie And Lou


リズム特集 Rougher Yet (ラファー・イェット)

5曲目は「Posse」です。
リディムはLone Rangerの「M 16」。
ホーンとギターのユッタリしたワン・
ドロップのメロディに、Toyanの味わいの
あるトースティングがイイ感じの曲です。
この時代に大流行したリディムですが、
いかにもToyanらしいトースティングで
うまく歌いこなしています。

TOYAN - POSSE


ざっと追いかけてきましたが、この時代に
大活躍したディージェイらしく、生き生き
としたToyanのトースティングはとても
魅力的です。
今の時代に聴いてもその輝きは失われて
いません。

スローなワン・ドロップという独特の美学
に溢れた時代、アーリー・ダンスホールを
聴くには、このToyanというディージェイ
は絶対外せないひとりなんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Toyan Live session



○アーティスト: Toyan
○アルバム: Toyan
○レーベル: Channel One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Toyan「Toyan」曲目
Side 1
1. Curfew
2. Chalice
3. Wife + Sweetheart
4. Spar With Me
5. Cuss + Cuss
Side 2
1. Life In Jam Down
2. World War Affair
3. Gun Shot
4. Ronnie + Lou
5. Posse