今回はCharlie Chaplinのアルバム

charlie_chaplin_04a

「Two Sides Of Charlie Chaplin」です。

Charlie Chaplin(本名:Richard Patrick
Bennett)は、80年代のダンスホール・
レゲエで活躍したディージェイです。
ルーツ・ディージェイのU Royに才能を
認められた彼は、U Royのサウンド・
システムKing Stur Gav Hifiで看板
ディージェイとなり、活躍した人なん
ですね。
この80年代のダンスホール・レゲエの
時代になると、レゲエの世界はそれまでと
違い、スラックネス(下ネタ)中心の世界
へと変わって行くんですが、彼は一貫して
コンシャス(真面目)な姿勢を貫いた
ディージェイとして知られています。

ちなみにCharlie Chaplinという名前は
無声映画の大スターの名前を取ってのもの
ですが、子供頃この映画スターの物マネを
よくしていた事から付いたあだ名なんだ
そうです。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て23枚ぐらいのアルバムと、117枚
ぐらいのシングル盤を残しています。

アーティスト特集 Charlie Chaplin (チャーリー・チャップリン)

charlie_chaplin_01a
Charlie Chaplin ‎– Quenchie (1982)

今回のアルバムは1989年にUSの
RAS Recordsからリリースされた、彼の
スタジオ・ライヴ・アルバムです。

1989年1月15日にジャマイカの
キングストンにあるDynamic Studioで
行われたスタジオ・ライヴの模様を記録
したアルバムで、プロデュースはDoctor
Dread、バックはRoots Radicsが担当した
アルバムで、少人数の観客を前にした
Charlie Chaplinのアドリヴを交えた
リラックスしたトースティングが楽しめる
内容のアルバムとなっています。

手に入れたのはRAS Recordsからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Recorded January 15, 1989 at Dynamic Studio, Kingston Jamaica.
Engineer: Steven Stanley
Remixed at Lion+Fox, Washington, D.C.
Engineer: Jim Fox
Producer: Doctor Dread
Executive Producer: Real Authentic Sound Inc.

Special Thanks to Roots Radics (A.K.A.)
Drums: Style Scott
Bass: Flabba Holt
Guitar: Bingy Bunny
Piano: Earl Fitzsimmonds

Special Salute to The Charlie Chaplin Massive Crew:
Whitty, Junior Vibes, David, Devon, Bobbett, Bimzie,
Charlie Blue, Blacka, Lincoln, Fatman, Mark, Victor

Original Photos: Gary Himelfarb
Art, Design: Mitch Goldberg (A.K.A. Art Holiday)

となっています。

レコーディングは1989年1月15日
に、ジャマイカのキングストンにある
Dynamic Studioで行われ、
レコーディング・エンジニアはSteven
Stanleyが担当しています。
リミックスはワシントンにあるLion+Foxで
行われ、ミックス・エンジニアはJim Fox
が担当しています。
プロデュースはRAS Recordsの主催者
Doctor Dreadで、エグゼクティヴ・
プロデューサーはReal Authentic Sound
Inc.となっています。

「Special Thanks」となっているバックの
ミュージシャンはRoots Radicsで、ドラム
にStyle Scott、ベースにFlabba Holt、
ギターにBingy Bunny、ピアノに
Earl Fitzsimmondsという布陣です。

面白いのは参加した観客が「The Charlie
Chaplin Massive Crew(Charlie Chaplin
の大切な仲間達)」として書かれている
事で、Whitty、Junior Vibes、David、
Devon、Bobbett、Bimzie、Charlie Blue、
Blacka、Lincoln、Fatman、Mark、Victor
という12人の名前が書かれています。

写真はGary Himelfarb、ジャケット・
デザインはMitch Goldberg (別名:
Art Holiday)となっています。

charlie_chaplin_05a
裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、少人数の観客
を集めたスタジオでのライヴ・アルバム
ですが、その距離の近さが良い具合に作用
したアルバムで、アドリヴを交えた
Charlie Chaplinのリラックスしたトーク
やトースティング、観客のリアルな反応が
とても魅力的なアルバムとなっています。

このアルバムはシンコー・ミュージック
刊行のあのレゲエ本「Roots Rock
Reggae」にも紹介されたアルバムで、その
「米光」さんという方の解説文には
「ダイナミック・サウンズに30名ほどの
観客とルーツ・ラディクスを仕込んで録ら
れたレゲエでは珍しいスタジオ・ライヴ
盤。」と書かれています。
裏ジャケには12人の「The Charlie
Chaplin Massive Crew」の名前が書かれて
いますが、実際には30人ぐらい集めての
スタジオ・ライヴだったようで、そうした
少人数の観客のリアルな反応を前にした
Charlie Chaplinの臨機応変のトークや
トースティング、バック・バンドの演奏が
収められています。

実際に聴いた印象でもそうした間近で聴い
ているようなリアルで生の反応が、この
アルバムの魅力なんですね。

ラップの元祖と言われるレゲエから誕生
したディージェイという音楽ですが、
もともとは曲の前や間奏で観客を煽る
「盛り上げ係」のような仕事だったんです
ね。
ところが60年代の後半ごろ、曲を歌うの
ではなく、曲の中で「喋る」ディージェイ
が登場するんですね。
それがU Royというディージェイです。
この曲の中で喋るというのは発想の転換の
大発明で、それまで曲を歌った人は居た
けれど、曲の中で喋った人は居なかったん
ですね。

このディージェイという音楽は、たちまち
ジャマイカで大流行して、U Royを真似た
ディージェイが次々と登場するんですね。
そしてその流行はアメリカにまで飛び火
して、らプという音楽も誕生するんです
ね。
その為U Royは「元祖ラッパー」と言われ
たりして、今でも新しい音楽を作った人と
して、リスペクトされているんですね。

そのU Roy直系のディージェイのひとり
が、このCharlie Chaplinなんですね。

もともと観客の「盛り上げ係」や「煽り
係」だったディージェイに大切なのは、
何といってもその場の観客を温める事で、
アドリヴを交えた機転の利いたトークや
トースティングが出来る事がとても大切
なんですね。
U Royのサウンド・システムKing Stur
Gav Hifiで叩き上げたCharlie Chaplinの
ディージェイとしての力はさすが!と思わ
せるものがあり、聴いていてとても楽しい
んですね。

「Duck」や「Heavenless」、「Answer」、
「Punaany」などこの時代に流行した有名
リディムを次々と駆使して、時に奇声や
笑い、ワザとハズしたトースティング、
曲のブレイクなど、様々なテクニックを
駆使して、観客を温めて行くテクニックは
すごく見事で、リアルにステージングの
面白さを伝えています。

レゲエ本Roots Rock Reggae」によると、
「オーディエンスとのやり取りに魅せられ
たドクター・ドレッドが発案」と書かれて
いますが、観客を前にしたCharlie Chaplin
の自由自在なトースティングがとても
素晴らしく、聴き心地の良いアルバムに
仕上がっています。
このノリの良さはスタジオ録音には無い
もので、Doctor Dreadの試みはほぼ成功
したと言えるでしょう。
「現場主義」のディージェイCharlie
Chaplinならではの魅力がここにあり
ます。

Side 1の1曲目は「Enter Charlie」
です。
リディムは「Solomon」。
オープニングのウェスタンを思わせる
ピアノのメロディから、観客の囃し声、
Charlie Chaplinの口上、ピアノの
リリカルなメロディに乗せたCharlie
Chaplinのシング・ジェイのリラックス
したトースティング。
Enter Charlie (Amazing Grace) - Charlie Chaplin


2曲目は「Cultural D.J. Business」
です。
リディムはJo Jo Bennettの
「Lecturer」。
Charlie Chaplinの楽しい語りから
ピアノのリリカルなメロディ、一度
ブレイクしてから再びピアノとギターの
ワン・ドロップに乗せたCharlie Chaplin
のノリノリのトースティング。

3曲目は「Charlie In The Party」
です。
リディムはRed Dragonの「Duck」。
賑やかな観客の声援にリリカルなピアノ
のメロディ、Charlie Chaplinの明るい
早口言葉のようなトースティング。
しつこいほどに何度もブレイクを入れ
て盛り上げるスタイルが、ちょっと面白い
曲です。

Charlie Chaplin - Charlie in the party


リズム特集 Duck (ダック)

4曲目は「Cool The Violence」です。
リディムはDon Drummond & Skatalites
の「Heavenless」。
盛り上がった観客を煽り、盛り上げてから
の、リリカルなピアノのメロディに乗せ
た、Charlie Chaplinのノリノリのトース
ティングがイイ感じの曲です。
こちらも何度もブレイクを入れて、観客を
煽っています。

Charlie Chaplin - Cool The Violence


リズム特集 Heavenless (ヘブンレス)

Side 2の1曲目は「Struggle」です。
リディムはGregory Isaacsの「Storm」と
して知られるリディムで、オリジナルは
Tappa Zukieの「Oh Lord」です。
観客の煽りからCharlie Chaplinのトーク、
ピアノとギターのワン・ドロップに乗せ
た、Charlie Chaplinの明るいシング・
ジェイのトースティング。

リズム特集 Storm (ストーム)

2曲目は「Freedom」です。
リディムはLone Rangerの「Answer」と
して知られるリディムで、オリジナルは
Slim Smithの「Never Let Go」。
こちらも観客とのトークから、ピアノと
ギターのリズミカルなメロディに乗せた、
Charlie Chaplinのノリノリのシング・
ジェイのトースティング。
観客の異常なほどの盛り上がりが、一華
添えています。

Charlie Chaplin - Freedom


リズム特集 Answer (アンサー)

3曲目は「D.J. Rollcall」です。
リディムはFreddie McGregor の
「Bobby Babylon」。
こちらもCharlie Chaplinのトークから、
ピアノのリリカルなメロディに乗せた
Charlie Chaplinの歯切れの良いトース
ティング。

リズム特集 Bobby Babylon/Hi Fashion (ボビー・バビロン/ハイファッション)

4曲目は「Nah Go Married」です。
リディムはAdmiral Baileyの
「Punaany」。
観客を盛り上げるCharlie Chaplinの
トークから、心地良い連弾のピアノの
メロディ、Charlie Chaplinの時に奇声も
交えた観客を乗せるトースティングが
魅力的。

リズム特集 Punanny (プナニー)

ざっと追いかけてきましたが、特にラスト
の「Nah Go Married」の盛り上がりは最高
で、ステージングの素晴らしいCharlie
Chaplinならではの魅力がうまく収められ
たアルバムだと思います。

このライブ盤は評判を呼んだようで、その
翌年の90年には同じRoots Radicsを
バックにした、第2弾の「Take Two !」と
いうスタジオ・ライヴ・アルバムが作られ
ています。

やはりディージェイの命はステージ!そう
思わせてくれるライヴ・アルバムが、今回
のアルバムです。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Charlie Chaplin (Reggae Sunsplash 1991)



○アーティスト: Charlie Chaplin
○アルバム: Two Sides Of Charlie Chaplin
○レーベル: RAS Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1989

○Charlie Chaplin「Two Sides Of Charlie Chaplin」曲目
Side 1
1. Enter Charlie
2. Cultural D.J. Business
3. Charlie In The Party
4. Cool The Violence
Side 2
1. Struggle
2. Freedom
3. D.J. Rollcall
4. Nah Go Married