今回はJah Wooshのアルバム

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「Some Sign」です。

Jah Woosh(本名:Neville Beckford)は
レゲエのディージェイやプロデューサーと
して活躍した人です。
おもに70年代から80年代前半に
ディージェイとして多くのアルバムや
シングルをリリースしているほか、
プロデューサーとしての実績もある人の
ようです。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て18枚ぐらいのアルバムと、91枚
ぐらいのシングル盤をリリースしている
のが、このJah Wooshという人です。

Jah Woosh - Wikipedia

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Jah Woosh - Marijuana World Tour (1979)

今回のアルバムは1985年にUKの
Sky Juiceというレーベルからリリース
されたJah Wooshのソロ・アルバムです。

プロデュースはJah Woosh本人で、バック
はStyle ScottやFlabba Holt、Bingy
BunnyといったRoots Radicsのメンバーや
Chinna Smithなどが参加したアルバム
で、Jah Wooshのシング・ジェイのトース
ティングが楽しめる、ルーツ色の強い内容
のアルバムとなっています。

手に入れたのはSky Juiceからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Recorded in Channel 1 Studio, Easy St. Studio
Engineer: Joe Jeff, P. Chemist
Produced by N. Beckford
All tracks written by Jah Woosh except track 2 on side 1

Drums: Style Scott, Benbow, Bubbler
Bass: Flabba Holt, George Oban
Rhythm Guitar: Bingy Bunny, Tony Phillips
Lead Guitar: Chinna Smith, Tony Phillips, Gus
Keyboards: Bubbler Asser, Bobby Kalphat
Synthesizer: Joe

となっています。

レコーディングはChannel One Studioと
Easy St. Studioで行われ、エンジニアは
Joe JeffとPeter Chemistが担当し、
プロデュースはN. Beckford(Jah Woosh
本人)が行っています。
Side 1の2曲目「Gimmie Some Sign」を
除くすべての曲の作曲は、Jah Wooshが
担当しています。

ミュージシャンはドラムにStyle Scottと
Benbow、Bubbler、ベースにFlabba Holt
とGeorge Oban、リズム・ギターにBingy
BunnyとTony Phillips、リード・ギター
にChinna SmithとTony Phillips、Gus、
キーボードにBubbler AsserとBobby
Kalphat、シンセサイザーにJoeという
布陣です。
Style ScottやFlabba Holt、Bingy Bunny
はRoots Radicsのメンバーとして知られ
ています。

残念ながらジャケット・デザインに関する
記述はありません。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、ルーツ期から
活躍するディージェイJah Wooshらしい
歯切れの良いシング・ジェイのトース
ティングが魅力的なアルバムで、内容は
悪くないと思います。

このアルバムがリリースされた85年と
いうのは、70年代に流行したルーツ・
レゲエの時代が終わり、80年代前半に
流行したアーリー・ダンスホール・レゲエ
から、プロデューサーのKing Jammyを中心
としたデジタルのダンスホール・レゲエの
時代に入ろうとしていた時期なんですね。

ただそうした時代の流れに流されず、
Jah Wooshは自分が培った、ルーツを感じ
させるトースティングで勝負しています。
今回のバックにはアーリー・ダンスホール
でスローなワン・ドロップのリズムで
一世を風靡したRoots Radicsのメンバーも
居ますが、Jah Wooshの個性に合わせたの
か、そこまで極端なスローなリズムでは
なく、軽快なミディアム・テンポのワン・
ドロップのビートでうまくJah Wooshを
盛り上げているんですね。
そうした演奏をうまく合わせられるところ
に、彼らのスタジオ・ミュージシャンと
しての優秀さがうかがえます。

ちょっと地味目な印象はあるものの、
Jah Wooshの時々歌っているシング・
ジェイのトースティングと合わせて、ツボ
を心得た好アルバムに仕上がっています。

表題曲ともいえるSide 1の2曲目
「Gimmie Some Sign」は、ロスアンゼルス
のソウル・シンガーBrenton Woodの67年
のヒット曲「Give A Little Sign」という
曲のリディムです。
その曲ではJah Wooshはほとんど歌って
いて、とてもソウルフルな歌唱が魅力的
です。
そうした歌も歌えてトースティングも
出来るというのがこの人の持ち味で、その
実力の高さもこの人が長く活躍できた理由
のひとつなんですね。

実はSide 1の3曲目「He Made Us」と
4曲目「Dedicated To Them」の2曲と、
Side 2の1曲目「Cool Collie」と2曲目
「Chalice To Chalice」、3曲目「Collie
Dub」の3曲は、それぞれに同じ曲を使って
いるんですね。
(3曲の方はDon Carlosの「I'm Not
Getting Crazy」のリディムが使われてい
ます。)
Side 1が4曲でSide 2が4曲の全8曲が
収められていますが、5曲分の録音で8曲
を収録しているんですね。
ただ同じ曲をそのまま使用している訳では
無く、Side 1の3曲目「He Made Us」では
Jah Wooshの歌とトースティングが混じっ
たシング・ジェイ・スタイルのトース
ティング、同じ曲を使った「Dedicated To
Them」では完全なトースティング・
スタイルと、うまくヴォーカルで変化を
付けているんですね。
同じようにSide 2の1曲目は「Cool
Collie」はJah Wooshの歌とトース
ティングが混じったシング・ジェイの
トースティング、2曲目「Chalice To
Chalice」は同じようなシング・ジェイ・
スタイルながら微妙に表情を変えて、
3曲目「Collie Dub」はタイトル通りの
ダブと、うまく同じDon Carlosの「I'm
Not Getting Crazy」という曲を使い
回しています。

こうした工夫はレゲエが人気が出始めた
70年代初め頃から、よく行われていま
す。
当時ジャマイカは極貧国のひとつで、
ジャマイカのプロデューサーはスタジオ
を持たない、弱小のプロデューサーが
多かったんですね。
彼らが録音をする時にはミュージシャンを
集め、スタジオをレンタルし、レコードを
作るというのが一般的でした。
その費用はすべてプロデューサー持ちで、
儲けも損もすべてプロデューサーの負担
だったんですね。

その録音のコストを下げる為には、一度
録音した音源を再利用する必要があったん
ですね。
そうして一度録音した音源を別の歌手で、
別のリリックで歌わせたり、ディージェイ
にトースティングさせたり、テープを切り
刻んでまったく違う音楽ダブにしたりと、
様々な工夫をしたんですね。
70年代はダブやディージェイといった、
それまでに無いような革新的な音楽が
レゲエから誕生した時代でしたが、その
裏には一度録音した音源を何とか再利用
したいという、プロデューサーの切実な
金銭的な事情があったんですね。

話を戻しますが、このアルバムも85年
のアルバムですが、おそらく低予算で
作られたアルバムではないかと思います。
ただ一聴した感じでは、同じ曲が使われて
いる事をあまり意識しないで聴けてしまう
んですね。
そのあたりはJah Wooshの歌もトース
ティングも出来る、かなり小器用な才能が
うまく生きています。

Side 1の1曲目は「Fight Apartheid」
です。
いきなり「Black People!」という
Jah Wooshの呼びかけから、軽快な
キーボードとギターのメロディに乗せた
Jah Wooshの時には歌い時にはトース
ティングするようなシング・ジェイ・
スタイルがイイ感じの曲です。

2曲目は「Gimmie Some Sign」です。
オリジナルはBrenton Woodというソウル・
シンガーの67年のヒット曲「Give A
Little Sign」という曲です。
キーボードとギターを中心とした軽快な
メロディに、Jah Wooshの完全に歌って
いるようなトースティング(?)がとても
ソウルフルで魅力的な曲です。

3曲目は「He Made Us」です。
ホーンとギターの明るいメロディに、
Jah Wooshの半分歌っているような
リラックスしたトースティングが魅力的
な曲です。

4曲目は「Dedicated To Them」です。
3曲目「He Made Us」と同じメロディを
使用した曲です。
歯切れの良いドラミングにホーンと
ギターのメロディに、Jah Wooshの
リズミカルなトースティング。
こちらはJah Wooshが完全にトース
ティングをしている曲です。

Side 2の1曲目は「Cool Collie」です。
リディムはDon Carlosの「I'm Not
Getting Crazy」です。
刻むようなギターのメロディに心地良い
パーカッション、Jah Wooshの半分歌って
いるようなリラックスしたシング・ジェイ
のトースティング。

2曲目は「Chalice To Chalice」です。
こちらもリディムはDon Carlosの「I'm
Not Getting Crazy」です。
刻むようなギターにピアノのメロディ、
印象的なワンドロップのドラミング、
語るようなJah Wooshのシング・ジェイ
のトースティング。

3曲目は「Collie Dub」です。
こちらもリディムはDon Carlosの「I'm
Not Getting Crazy」です。
こちらはタイトル通りダブになっていま
す。
リリカルなピアノと刻むようなギター、
パーカッションなどがうまく組み合わ
さったダブです。

4曲目は「Jah Is Good」です。
ギターとベース、パーカッションなどを
中心とした演奏に、Jah Wooshの半分
歌っているシング・ジェイがイイ感じの
グルーヴィーな曲です。

ざっと追いかけてきましたが、こうした
「使い回しの美学」は、今となっては
かえって面白く感じられます。
そこには何とか人を楽しませようという、
作り手のやるせないほどの気持ちが隠れて
いるんですね。
その思いがこのアルバムを好盤としていま
す。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Jah Woosh
○アルバム: Some Sign
○レーベル: Sky Juice
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1985

○Jah Woosh「Some Sign」曲目
Side 1
1. Fight Apartheid
2. Gimmie Some Sign
3. He Made Us
4. Dedicated To Them
Side 2
1. Cool Collie
2. Chalice To Chalice
3. Collie Dub
4. Jah Is Good