今回はYellowman, Toyan, (Ringo)の
アルバム

yellowman_11a

「Super Star Yellowman Has Arrived
With Toyan」です。

Yellowman(本名:)は80年代の
ダンスホール・レゲエの時代に
「King」と呼ばれるほどの人気を博した
ディージェイです。
アルビノ(先天性色素欠乏症)で生まれた
彼は、幼い頃に両親に捨てられ孤児院で
育つという辛い経験をし、成長してから
もなかなかスタジオに入れてもらえない
日々を過ごしました。
しかしその容姿を逆手に取って、キザで
ユーモラスな伊達男というキャラクターを
確立し、ダンスホール・レゲエの世界で
人気ディージェイになって行くんですね。
80年代前半のアーリー・ダンスホール
の時代に、その個性的なトースティングで
絶大な人気を誇ったディージェイが、この
Yellowmanです。

ネットのDiscogsによると、Yellowman単独
名義が共演盤を含めて56枚ぐらいの
アルバムと、164枚ぐらいのシングル盤
をリリースしていて、さらにYellowman &
Fathead名義が共演盤を含めて8枚ぐらいの
アルバムと、14枚ぐらいのシングル盤を
リリースしています。

アーティスト特集 Yellowman(イエローマン)

イエローマン - Wikipedia

Toyan(本名:Byron Everton Letts)は
80年代のダンスホール・レゲエで活躍
したディージェイです。
この人のDiscogsなどのディスコグラフィ
を見ると、82年と83年にすごく多くの
アルバムを出しているんですが、それ以降
はあまりアルバムを出していないんです
ね。
彼の活躍は1981年から85年ぐらい
に限定されているようです。
アーリー・ダンスホール時代には大活躍
したけれど、その後は…という人だったの
かもしれません。

英語のWikipediaを見ると、
He was murdered in Jamaica in 1991
とあるので、91年に殺されて亡くなって
いるようです。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て12枚ぐらいのアルバムと、110枚
ぐらいのシングル盤をリリースしていま
す。

Toyan - Wikipedia

Ringo(Johnny Ringo)(本名:Bradley
Miller)は、80年代前半のアーリー・
ダンスホールで活躍したディージェイ
です。

ネットのDiscogsの履歴を見ると、Ringo
の名前で6枚のアルバムと57枚ぐらいの
シングル盤をリリースしているほか、
Johnny Ringoの名前で4枚のアルバムと
38枚ぐらいのシングル盤をリリースして
います。

Johnny Ringo (musician)

今回のアルバムは1982年にUSの
Joe Gibbs Musicからリリースされた
YellowmanとToyan名義のアルバムです。
(Ringoの曲も1曲入っていますが、
ジャケットに彼の名前はありません。)

プロデュースはJoe GibbsとErrol
Thompson、Ruddy Thomasで、バックは
Joe Gibbsのバック・バンド
The Professionalsが務めたと思われる
アルバムで、この時代らしいスローな
ワン・ドロップのリズムに乗せた
Yellowman(3曲)とToyan(4曲)、
Ringo(1曲)のトースティングが楽し
めるアルバムとなっています。

手に入れたのはJoe Gibbs Musicから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が4曲、Side 2が4曲の全8曲。
Side 1の1曲目がRingo、2~4曲目が
Yellowman、Side 2の4曲がToyanの曲が
収められたアルバムとなっています。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians:
Bass: George Fullwood, Robert Shakespear, Lloyd Parks
Rhythm Guitar: Willie Lindo
Keyboards: Bo-Pe, Franklyn Waul
Drums: Michael Richards, Sly Dunbar
Saxophone: Horsemouth
Trombone: Dean Fraser
Trumpet: Nambo
Lead Guitar: Chico, Andy

Produced by: Joe Gibbs, Errol Thompson, Ruddy Thomas
Engineer: Errol Thompson
Arranged by: Joe Gibbs, Errol Thompson
Published by: Joe Gibbs Music Publishing, Inc. (BMI)

となっています。

バックはJoe Gibbsのバック・バンド
The Professionalsと思われ、
ミュージシャンはベースにGeorge
FullwoodとRobert Shakespear、Lloyd
Parks、リズム・ギターにWillie Lindo、
キーボードにWinston 'Bo-Pee' Bowenと
Franklyn Waul、ドラムにMichael
RichardsとSly Dunbar、サックスに
Leroy 'Horsemouth' Wallace、
トロンボーンにDean Fraser、
トランペットにRonald 'Nambo'
Robinson、リード・ギターにJunior
'Chico' ChinとAndy Bassfordという
布陣です。

ドラマーのLeroy 'Horsemouth' Wallace
がサックスだったり、サックスの
Dean Fraserがトロンボーンだったり、
サックスのJunior 'Chico' Chinが
リード・ギターだったりと、多少?の
残る布陣ですが、器用な人も多いので
何とも言えません。

プロデュースはJoe GibbsとErrol
Thompson、Ruddy Thomasで、ミックス・
エンジニアはErrol Thompson、アレンジ
はJoe Gibbs, Errol Thompsonとなって
います。

ジャケット・デザインに関する記述は
ありません。
タイトルは直訳すると「スーパー・スター
のYellowmanがToyanとともに到着した」
というタイトルのようです。
ジャケットにはスーパーマンの格好をした
Yellowmanと、バットマンの相棒ロビン・
マスクの格好をしたToyanが争っている
ようなイラストが描かれています。
気になるのはスーパーマンの格好をした
Yellowmanのイラストで、黒いチリチリ・
パーマで肌は黒人らしく茶色で描かれて
います。
よく知られているように彼はアルビノで、
肌は白く(黄色?)、髪は金髪なんです
ね。
彼をあまり知らない人が描いたのでしょう
か?

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、この
アーリー・ダンスホールの時代らしい
スローなワン・ドロップのリズムに乗せた
YellowmanやToyanの華やかなトース
ティングが楽しめるアルバムで、内容は
なかなか悪くないと思います。

今回のアルバムで気になるのは裏ジャケの
曲目の下に書かれた作曲者(作詞者)と
思われる記述で、それを写すと以下のよう
になります。

Side A
1. I'm Getting Married
(Ringo)(Yellowman)
2. Love Struck
(Yellowman)
3. Them A Fight I
(Yellowman)
4. Which One A Dem Wear De Ring
(Yellowman)
Side B
1. Love Night
(Yellowman)
2. Modeling Time
(Yellowman)
3. Come Fi Mash It
(Toyan)
4. Talk Of The Town
(Toyan)

Side A(Side 1)の1曲目のRingoの
歌う「I'm Getting Married」が
RingoとYellowmanの共作、Side B
(Side 2)の1曲目「Love Night」と
2曲目「Modeling Time」はいずれもToyan
の歌っている曲ですが、作曲者(作詞者)
はYellowmanになっているんですね。
Ringoの歌う「I'm Getting Married」の方
は、Yellowmanが同年にリリースされた
別のアルバム「Them A Mad Over Me」で
歌っていて、その歌詞をちょっと変えて
Ringoが歌っているようです。

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Yellow Man ‎– Them A Mad Over Me (1982)

ただToyanの2曲の方は、Yellowmanが
歌っているヴァージョンは見つかりません
でした。
ただ作詞をYellowmanが行っている事から、
本来は彼が歌うはずだった曲なのではない
かと推測されます。
この時期Yellowmanはすごく多忙だったん
ですね。
ジャマイカでは彼の人気があまりにもあり
過ぎて、アルバムが次々と作られた為に
「どれが彼の一番新しいアルバムか解ら
ない」というほどの状態だったんですね。
ネットのDiscogsの82年の彼の履歴を
見ると、Yellowman単独の名義のアルバム
が8枚、Yellowman & Fathead名義の
アルバムが6枚もリリースされています。
(ともに共演盤を含む)
つまり彼の名前の付いたアルバムが、この
年だけで14枚もリリースされているん
ですね。

多少想像も入りますが、おそらくToyanが
歌ったYellowmanが作詞の2曲は、本来は
Yellowman本人が歌うはずだったものなん
じゃないかと思われます。
それがあまりに多忙過ぎて、詞まで出来て
いながらToyanがトースティングをする事
になったんじゃないかと推測されます。
そう考えるとRingoのトースティングした
1曲も、曲が1曲足りなかったので、急遽
Yellowmanのヒット曲を彼にトース
ティングさせて、名前を伏せてYellowman
という事で出したのかも…。
ある意味窮余の策だったのかもしれません
が、今になると当時のジャマイカの状況が
いろいろ想像される、面白いアルバムなん
ですね(笑)。
3人のアーティストが入っている事で
ヴァラエティがあり、とても楽しく聴ける
アルバムとなっています。

Ringoの名前があまり出ていないのは、
YellowmanとToyanのクラッシュ・アルバム
(対決盤)としてリリースしたい意図が
あったのかもしれません。
ジャケットもそのような体裁なんですね。

Side 1の4曲目「Which One A Dem Wear
De Ring」以外の曲は、すべて前半は
ディージェイのトースティング、後半は
ダブというショーケース・スタイルの仕様
になっていて、そのあたりもこの時代
らしさが満載で魅力です。
Errol Thompsonがミックスしたダブは全体
にディレイが深めで、このあたりは当時
大人気だったScientistのダブを意識した
印象があります。
ただ後半のダブにもディージェイのトース
ティングを少し混ぜるなど、ダブ職人
Errol Thompsonらしい細かい気配りが
随所に感じられます。
彼のミックスはどこか暖かみがあり、
すごく楽しく聴ける曲に仕上げるんです
ね。

全体にこのアーリー・ダンスホールの時代
らしい楽しい空気感があり、聴き心地の
すごく良いアルバムに仕上がっています。

Side 1の1曲目はRingoの「I'm Getting
Married」です。
ドラマチックなピアノからキーボードの
ウェディング・マーチのメロディ、
ユッタリしたワン・ドロップのリズムの
ギターとキーボードのメロディに乗せた
Ringoの楽し気なトースティングが
とても良いです。
書いたようにYellowman自身は別の
アルバム「Them A Mad Over Me」で、
この曲を披露しています。

Ringo And Yellowman Getting Married

↑後半にYellowmanのトースティングが
入っていますが、LPには入っておらず、
代わりにダブのショーケース・スタイルと
なっています。

2曲目はYellowmanの「Love Struck」
です。
リディムはThe Royalsの「Pick Up The
Pieces」。
キーボード(ハーモニカ?)のメロディに
乗せた、Yellowmanらしいスマートな
トースティングに、「Right!」という
合いの手と女性コーラスが入る曲です。
こちらも後半はギターとキーボードの
ダブのショーケース・スタイルです。

Yellowman Feat.Toyan - Love Struck


リズム特集 Pick Up The Pieces (ピック・アップ・ザ・ピーシズ)

3曲目はYellowmanの「Them A Fight I」
です。
リディムはBig Willeの「College Rock」
として知られる曲で、オリジナルは
Jackie Mittooの「Freak Out」。
いきなりのヴォーカルからキーボードと
メロディカのメロディに、Yellowmanの
滑らかな流れるようなトースティング
とコーラス・ワークが楽しい曲です。
こちらも後半はキーボードとベース、
メロディカを中心としたダブ。

Yellowman- Them a Fight I


リズム特集 Ballistic Affair/College Rock (バリスティック・アフェア/カレッジ・ロック)

4曲目はYellowmanの「Which One A Dem
Wear De Ring」です。
ギターとベースを中心としたシンプルな
ワン・ドロップの演奏に、Yellowmanの
立て板に水のトースティングと女性
コーラスがイイ感じの曲です。

Side 2の1曲目はToyanの「Love Night」
です。
リディムは「General」で、オリジナルは
The Heptonesの「Love Me Girl」。
ギターのメロディに乗せたスローなワン・
ドロップに、Toyanらしい声に張りのある
トースティング。
こちらは後半はホーンの華やかなメロディ
から始まる、ホーンギター、ベースが
効いたダブの入った、ショーケース・
スタイルです。

Toyan- Love Night


リズム特集 General (ジェネラル)

2曲目はToyanの「Modeling Time」です。
キーボードとピアノの漂うようなメロディ
に感情の乗った女性ヴォーカル、畳み掛け
るように入って来るToyanの勢いのある
トースティング。
後半はベースとギターの効いたド・渋な
ダブ。

3曲目はToyanの「Come Fi Mash It」
です。
ギターのダブワイズしたワン・ドロップの
メロディに、エコーの効いたToyanの
男らしいトースティングがイイ感じの曲
です。
こちらも後半はギターとベースを中心と
したダブになっています。

Toyan- Come Fi Mash it


4曲目はToyanの「Talk Of The Town」
です。
リディムはCornell Campbellの
「Boxing」。
シン・ドラムのトビ音の入ったワン・
ドロップのドラミングに、ピアノとギター
を中心としたメロディ、Toyanの楽し気な
明るいトースティングが魅力。
こちらは後半はトビ音もふんだんに
あってホーン・セクションのメロディも
入った、華やかなダブとなっています。

Toyan - Talk Of The Town


ざっと追いかけてきましたが、スローな
ワン・ドロップのリズムに乗せたYellowman
やToyan、Ringoのトースティングは、
楽しい空気感に満ちていてとても魅力的
です。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Yellowman, Toyan, (Ringo)
○アルバム: Super Star Yellowman Has Arrived With Toyan
○レーベル: Joe Gibbs Music
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Yellowman, Toyan, (Ringo)「Super Star Yellowman Has Arrived With Toyan」曲目
Side 1
1. I'm Getting Married - Ringo
2. Love Struck - Yellowman
3. Them A Fight I - Yellowman
4. Which One A Dem Wear De Ring - Yellowman
Side 2
1. Love Night - Toyan
2. Modeling Time - Toyan
3. Come Fi Mash It - Toyan
4. Talk Of The Town - Toyan

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