今回はLittle Johnのアルバム

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「English Woman」です。

Little John(本名John McMorris)は
80年代のダンスホール・レゲエの時代に
活躍したシンガーです。
1970年に生まれた彼は80年代前半の
アーリー・ダンスホールで、10歳に満た
ない年齢からシンガーとして活躍し、独特
のシングジェイ・スタイルで当時の人気
レーベルVolcanoなどに多くの録音を残し
ました。
その後も自身のレーベルRomanticで
プロデューサーとしても活躍するなど、
レゲエの歴史に名を残したのがこの人なん
ですね。

ネットのDiscogsによると共演盤を含めて
24枚ぐらいのアルバムと、375枚
ぐらいのシングル盤を残しています。

アーティスト特集 Little John (リトル・ジョン)

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Little John ‎– Reggae Dance (1982)

今回のアルバムは1983年にジャマイカ
のGorgon Recordsからリリースされた彼の
ソロ・アルバムです。

プロデュースはUKのRusty International
レーベルの主催者Rustyで、バックは
Roots Radicsが務めたアルバムで、
ジャケットにも「Showcase Style」と書か
れているように、曲はすべて歌とダブが
繋がったショーケース・スタイルの
アルバムとなっています。
表題曲の「English Woman」をはじめと
して、この時代らしいアーリー・ダンス
ホールの空気感が堪能出来る内容の
アルバムとなっています。

Side 1が3曲、Side 2が3曲の全6曲。
今日はすべて前半がLittle Johnの歌、
後半がダブというショーケース・スタイル
のアルバムとなっています。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

All Tracks Backed by The Number One Band Roots Radics
Recorded and Mixed at Channel One Studio
Viced and Remixed at Tony King Studio, London, England
All trackes written by Little John except Track 3, B Side "Endlessly" Adapted
Arranged and Produced by Rusty for Rusty International Productions

Also special thanks to Anthony J. Noel as "The Photo Man"
Artwork and Design by Tony

という記述があります。

バックはこの時代のナンバー・ワン・
バンドRoots Radicsで、レコーディングは
Channel One Studioで行われ、声入れと
リミックスはUKのロンドンのTony King
Studioで行われています。
Side 2の3曲目「Endlessly」を除いて、
作曲はLittle Johnとなっています。
アレンジとプロデュースはRusty
International ProductionsのRustyが
担当しています。

印象的なのは声入れとリミックスがUKの
ロンドンのTony King Studioで行われて
いる事です。
声入れはもちろんLittle Johnが行って
いて、曲を聴くとファルセットなコーラス
もLittle John本人が多重録音で行って
いるようです。
気になるリミックスですが、だれが行った
かが書かれていません。
サウンド自体を聴くとScientistの
ミックスのようにも聴こえるのですが…、
現地のスタッフが行ったのでしょうか。
聴いた印象としても、とても良いミックス
だと思います。

写真は「The Photo Man」ことAnthony
J. Noelで、ジャケット・デザインはTony
となっています。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、アーリー・
ダンスホールらしいRoots Radicsの
湿った空気感のあるスローなワン・
ドロップの演奏に乗せた、Little Johnの
個性的なヴォーカルが堪能出来るアルバム
で、内容はとても良いと思います。

この83年はLittle Johnはまだ13歳
ぐらいですが、「Leggo Me Hand」
(別タイトル「Give The Youth A Try」)
などのソロ・アルバムを4枚、Barry
Brownとの「Show-Down Vol. 1」などの
共演盤2枚と、実に6枚ものアルバムを
リリースしている当たり年なんですね。

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Little John ‎– Give The Youth A Try (1983)

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Little John & Barry Brown ‎– Show-Down Vol. 1 (1983)

ちなみにLittle Johnが一番アルバムを
多く発表しているの85年で、共演盤を
含めて7枚ものアルバムを発表しているん
ですね。
ネットのDiscogsの彼の彼の履歴を見る
と、共演盤を含めた24枚のうち、82年
から86年の間に20枚のアルバムを発表
しているんですね。
その時期は彼はまだ11~16歳ぐらいの
少年なんですね。
いかにこのアーリー・ダンスホールの時代
に、彼が若くして成功をつかみ、人気が
高かったかが解ります。
Little Johnの多少鼻が詰まったような
ヴォーカルは多少好き嫌いがあると思い
ますが、弱冠13歳にしてこの歌唱力は
やはり見事というしかありません。

この80年代の前半のアーリー・ダンス
ホールの時代にもっとも人気のあった
バック・バンドはRoots Radicsだったん
ですね。

この前の時代の70年代後半のルーツ・
レゲエの時代にもっとも人気のあった
バック・バンドは、Channel Oneレーベル
で活躍したThe Revolutionariesだったん
ですね。
ところが80年代に入るとその
The Revolutionariesの中心メンバー
だったSly & Robbie(ドラムのSly Dubar
とベースのRobbie Shakespear)が、
Black Uhuruの海外ツアーのバックの
メンバーなどでジャマイカを留守にする
事が多くなるんですね。
その為彼らが中心メンバーだった
The Revolutionariesや、Bunny Leeの
バック・バンドThe Aggrovatorsなどは、
事実上の解散状態になってしまいます。

そのSly & Robbieに代わって人気を
博したのが、ベースのFlabba Holtと
ドラムのStyle Scottを中心とした
バック・バンドRoots Radicsだったん
ですね。
彼らはFlabba Holtのズシっとしたベース
と、Style Scottの特徴的なワン・
ドロップのドラミングのシンプルな演奏
で、たちまち人気バンドへとなって行くん
ですね。

今回のアルバムではそのRoots Radicsの
ジャマイカのChannel One Studioでの
録音に、Little JohnのUKのTony King
Studioの声入れを乗せたアルバムで、
しかも歌+ダブというこの時代らしい
ショーケース・スタイルとなっている事も
大きな魅力です。
内容はとても良いと思います。

Side 1の1曲目は「This New Love Of
Mine」です。
ギターとベースを中心としたスローな
ワン・ドロップのリズムに、女性と聴き
まごうようなファルセットなコーラスに、
乗せたLittle Johnらしいヴォーカルが
良い味を出しています。
いかにもアーリー・ダンスホールらしい、
湿った空気感がとても魅力的。
後半はギターとリリカルなピアノ、ベース
と、ドスンドスンと落とすStyle Scottの
特徴的なドラミングが印象的なダブと
なっています。

2曲目は「It's Me」です。
リディムはCornell Campbellの
「Boxing」。
ホーンの華やかなメロディにLittle John
のヴォーカル、ギターの刻むような
メロディにStyle Scottのワン・ドロップ
のドラミング。
間奏に合間良く入って来るサックス・ソロ
も魅力的。
後半のダブはギターとベース、特徴的な
ドラミングと、いかにもRoots Radics
らしさが出た演奏です。

3曲目は表題曲の「English Woman」
です。
刻むようなギターに甲高いリリカルな
ピアノ、ファルセットなコーラスに乗せた
Little Johnらしいヴォーカルもイイ感じ
の1曲。
このファルセットなヴォーカルも、どう
やらLittle Johnの多重録音のようです。
後半のダブもリリカルなピアノが冴え
ます。

Little John - English Woman w/Version - Rusty International LP


Side 2の1曲目は「Name And Number」
です。
リディムはAnthony Johnsonの
「Gunshot」。
エコーの効いたホーン・セクションの
メロディに、Little Johnの感情を乗せた
ヴォーカルがイイ感じの曲です。
後半のダブもホーンとStyle Scottの
ドラミングが印象的。

リズム特集 Gun Shot (ガン・ショット)

2曲目は「Make A Way」です。
リディムはJoe Rileyの「You Should
Have Known」。
ベースのギターのメロディにLittle John
のソフトなヴォーカル、特徴的なワン・
ドロップのドラミング…。
後半のダブはヴォーカルが抜けた分、より
ベースとギターが強調された印象です。

3曲目は「Endlessly」です。
リディムはJah Thomasの「Shoulder
Move」。
Little Johnのアカペラのエコーの効いた
ヴォーカルから多重録音のコーラスに
リリカルなピアノ、刻むようなギターに
スローなワン・ドロップのドラミング。
後半はエコーが効いたスローなワン・
ドロップにリリカルなピアノ、重厚な
ベース、刻むようなギターが冴えるダブに
なっています。

Little John Endlessly


ざっと追いかけてきましたが、この80年
代前半のアーリー・ダンスホールの時代
らしいちょっと湿った空気感のある、
スローなワン・ドロップのリズムに乗せた
Little Johnのヴォーカルは、やはり
とても魅力的です。
時代の寵児としてのLittle Johnの輝きが
そこにあります。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Little John (Rockers Award 1984)


Little John Live session



○アーティスト: Little John
○アルバム: English Woman
○レーベル: Gorgon Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1983

○Little John「English Woman」曲目
Side 1
1. This New Love Of Mine
2. It's Me
3. English Woman
Side 2
1. Name And Number
2. Make A Way
3. Endlessly

●今までアップしたLittle John関連の記事
〇Little John / Anthony Johnson「Unite / Reggae Feelings」
〇Little John「Early Days」
〇Little John「Ghetto Youth」
〇Little John「Give The Youth A Try」
〇Little John「Reggae Dance」
〇Little John「True Confession」
〇Barry Brown, Little John「Show-Down Vol. 1」
〇Various「Junjo Presents A Live Session With Aces International」