今回はSingers & Playersのアルバム

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「Revenge Of The Underdog」です。

Singers & Playersはレゲエとパンクの
中間的なレーベルOn-U Soundで活動した
ユニットです。
シンガーのBim Shermanやディージェイの
Prince Far IやJah Wooshなどが参加した、
ヴォーカルを中心としたユニットで、On-U
Soundのミュージシャンの他にゲストで
Public Image Limited(P.I.L.)の
ギタリストKeith Leveneや、The Slits
などで活躍したAri Upなどが参加した事で
知られています。

ネットのDiscogsによると、81年から
88年までに5枚のアルバムを残している
ほか、シングルやミニ・アルバムを6枚
ぐらい残しています。

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Singers & Players ‎– War Of Words (1981)

Singers & Players - Wikipedia

このアルバムでトースティングをしている
ディージェイのPrince Far Iについても
書いておきます。

Prince Far I(本名:Michael James
Williams)はルーツ・レゲエの時代から
活躍したディージェイで、プロデューサー
でもあった人です。
自ら「チャンティング」と称した、独特の
朗読するようなトースティング・スタイル
で知られています。
そうしたチャンティング・スタイルの
ディージェイ・アルバムのほか、
「Cry Tuff Dub Encounter」シリーズなど
のダブ・アルバムもリリースしています。

またUKのパンクとレゲエを融合した
ようなレーベルOn U Soundsレーベルの
白人の主催者Adrian Sherwoodとも交流が
深く、On U SoundsのユニットSingers &
Playersなどにも参加しています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て19枚ぐらいのアルバムと、67枚
ぐらいのシングル盤をリリースしているの
が、このPrince Far Iという人です。

1983年に銃により殺害されています。

Prince Far I - Wikipedia

今回のアルバムは1982年にUKの
On-U SoundからリリースされたSingers
& Playersのセカンド・アルバムです。

プロデュースはAdrian Sherwoodで、
ヴォーカルにPrince Far IやBim Sherman、
Lizard、Jah Wooshなどが参加した
アルバムで、このレーベルらしいレゲエと
パンクの中間的なサウンドが楽しめる
アルバムとなっています。

このアルバムは私がまだ初めにレゲエを
聴いていた、20代の頃(80年代)に
新盤で購入したアルバムでした。

ちなみにタイトルの「Revenge Of The
Underdog」をネットの自動翻訳で翻訳して
みたところ、「弱者の復讐」というのが
出て来ました。

Side 1が6曲、Side 2が4曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Drums: 'Style' Scott
Bass: 'Crucial' Tony, Lizard
Guitar: 'Crucial' Tony
Percussion: Bonjo I
Keyboards: Nick 'Houmous Mouse' Plytas, Giant Dread
Vocals: Prince Far I, Bim Sherman, Lizard, Jah Woosh

Special Thanks to:
Saxophone on tk.5: Tony Wraffer
Drums/Vocals on tk.5: Eskimo Fox a.k.a. "Mus'Come"
Vocals on tk.5: Mr. Ranking Magoo
Guitar on tk.9: Viv Albertine

Produced by Adrian Sherwood another 1992 On-U Sound Creation

Recorded at Berry St.
Engineers: Steve Smith, John Walkerman, Roger
Sleeve Design & Photography by: Kishi

となっています。

Singers & Playersのメンバーはドラムに
'Style' Scott、ベースに'Crucial' Tony
とLizard、ギターに'Crucial' Tony、
パーカッションにBonjo I、キーボードに
Nick 'Houmous Mouse' PlytasとGiant
Dread、ヴォーカルにPrince Far Iと
Bim Sherman、Lizard、Jah Wooshという
布陣です。

またゲストミュージシャンとして5曲目
「Prodigal Son」にサックスで
Tony Wraffer、ドラムとヴォーカルで
Eskimo Fox(別名:"Mus'Come")、
ヴォーカルでMr. Ranking Magoo、9曲目
「Thing Called Love [Don't Fight]」に
ギターでViv Albertineが参加していま
す。

プロデュースはOn-U Soundの主催者
Adrian Sherwoodです。
レコーディングはBerry St.で行われ、
エンジニアはSteve SmithとJohn
Walkerman、Rogerが担当しています。

ジャケット・デザインと写真は、この時代
のOn-U Soundのジャケットを担当している
Kishi Yamamotoが担当しています。
表ジャケは「ヴォイス・オブ・サンダー
(雷声)」として知られるPrince Far I
で、裏ジャケの人物は誰かよく解りま
せん。
Bim ShermanとJah Wooshではないよう
ですが、他にヴォーカルをとっている
Lizardあたりなんでしょうか?

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裏ジャケ

また裏ジャケには曲目の横に、それぞれの
曲の作曲者が書かれています。
それを写すと以下のようになります。

1. Dungeon 〈g. miller〉
2. Merchant Ship〈m. williams〉
3. Jah Army Band〈j. vincent〉
4. Too Much Work Load〈j. vincent〉
5. Prodigal Son〈m. williams〉
6. Follower〈a. maxwel/a. phillips〉
7. Water The Garden〈m. williams/a. phillips〉
8. Resolution [Pt. 2/Version 2]〈a. phillips〉
9. Thing Called Love [Don't Fight]〈v. rose/v. rickets〉
10. Cha-Ris-Ma〈m. williams〉

〈m. williams〉はPrince Far Iの本名
Michael James Williams、〈j. vincent〉
はBim Shermanの本名Jarrett Lloyd
Tomlinson Vincent、〈a. maxwel〉は
Adrian Sherwoodの本名Adrian Maxwell
Sherwood、〈a. phillips〉は'Crucial'
Tonyの本名Antonio Alpheuse Phillips 、
〈v. rose〉はゲストのMr. Ranking Magoo
の本名Veral Roseのようです。

残りの〈g. miller〉はMelbourne George
Miller、〈v. rickets〉はVernal Rickets
という名前がネットのDiscogsでは出て
来たのですが、本当にそうなのかちょっと
確信が持てませんでした。

さて今回のアルバムですが、On-U Sound
らしいレゲエとパンクが融合したような
独特のサウンドで緊張感があり、内容は
悪くないと思います。

このOn-U SoundというレーベルでUKで
70年代後半頃から活動しているレーベル
で、白人のプロデューサーAdrian Sherwood
を中心に、レゲエとポスト・パンクを混ぜ
合わせたような独特なアヴァンギャルドな
サウンドで人気を博したレーベルなんです
ね。
このレーベルではシンガーのBim Sherman
や、ディージェイのPrince Far IやJah
Woosh、サックス奏者のFelix 'Deadly
Headley' Bennettなどが活躍し、アルバム
を残しています。

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Bim Sherman ‎– Across The Red Sea (1982)

実はこのOn-U Soundのアルバムは、私が
まだ初めにレゲエを聴いていた20代の頃
の80年代には、よく買って聴いていまし
た。
理由は単純でロックからレゲエを聴き始め
た私には、当時のパンク色の強いOn-U
Soundのサウンドはとても聴き易い気が
したんですね。
またそれまでに無いようなアヴァン
ギャルドさも、若かった私には魅力的に
映ったんですね。
Kishiさんという方の特徴的なモノクロの
ジャケットも並んでいるとすごく印象が
強く、On-U Soundのアルバムを見つける
とよく買っていました。

ところが2010年頃から再びレゲエを
聴くようになってからは、あんまりこの
On-U Soundのアルバムは買っていないん
ですね。
理由は単純で、再びレゲエを聴きだした
大きな理由はレゲエの持つ黒人的な
グルーヴ感に強く惹かれたからで、
このOn-U Soundのサウンドは白人の
プロデューサーAdrian Sherwoodの
あまりに我の強いプロデュースがその
グルーヴ感を損なっているように感じられ
るようになってしまったからなんですね。
要するに当時はロック的で聴き易いと感じ
ていたこのレーベルのサウンドが、逆に
ウザく感じるようになってしまったんです
ね(笑)。

ただ他の「ニュー・ルーツ」などという
呼び方をされるレゲエと他の音楽が
混じった分類の音楽と較べると、この
On-U Soundはいち早くそうしたポスト・
パンク的なレゲエを手掛けていて、しかも
クオリティもかなり高いのではないかと
徐々に思うようになりました。
(「ニュー・ルーツ」という呼び方は
90年代に起こった「ルーツ・
リヴァイヴァル」を指す事もありますが、
今回はそちらの意味ではなく、レゲエと
他の音楽と融合したような新しいルーツ・
レゲエという意味で使用しています。)
意外とこのレーベルのアルバムの中に、
良いアルバムもけっこうあるんですね。

実は私が再びレゲエを聴き始めたきっかけ
も、このレーベルのアルバムでした。
ネットのレゲエレコード・コムでOn-U
Soundからリリースされたサックス奏者の
Deadly Headleyの「35 Years From Alpha」
と、そのDeadly Headleyがサックスで参加
しているユニットAfrican Head Chargeの
「Environmental Studies」の2枚のCD
を購入したのがきっかけなんですね。

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Deadly Headley ‎– 35 Years From Alpha (1982)

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African Head Charge ‎– Environmental Studies (1982)

この「35 Years From Alpha」については
再三書いていますが、このアルバムは私に
とっては「神アルバム」で、今まで聴いた
インスト・アルバムの中でももっとも衝撃
を受けたアルバムのひとつだったんです
ね。
2010年頃のある日「そういえばあの
アルバム凄く良かったけれど、LPでは
持っているけどCDで売っていないか
な?」と、ネットで検索してレゲエ
レコード・コムというサイトを見つけて
通販で購入し、それ以来再びレゲエのCD
を集め始めたのが、これだけレゲエに
ハマるきっかけでした(笑)。

考えてみるとあの時レゲエのアルバムを
ネットで探さなければ、このブログも書く
事は無かったのかもしれません。

話を戻しますが、このOn-U Soundという
レーベルは歴史的にも意外と侮れない
レーベルで、かなり早い時期の70年代
後半からレゲエとパンクの融合したような
ポスト・パンク的な新しいサウンドを模索
したレーベルだったんですね。
この70年代後半頃からは、もっとも早く
ジャマイカ以外でレゲエが誕生したUK
では、このOn-U Soundのポスト・パンク的
なレゲエやラヴァーズロック・レゲエ、
またはThe Specialsなどによるネオ・スカ
の2トーン・ブームなど本場のジャマイカ
ではなかったような、新しいレゲエを模索
するような動きが活性化して来るんです
ね。
そうした動きもあってレゲエという音楽
は、よりワールド・ワイドな音楽へと
なって行きます。

特に初期のOn-U Soundのサウンドは明らか
にレゲエ色の強いものもかなりあり、
やはりニュー・ルーツの源流として押さえ
ておきたいところがあるんですね。

このSingers & Playersというユニットも、
ヴォーカルにPrince Far IやBim Sherman、
Jah Wooshなどのルーツ期から活躍する
シンガーやディージェイが入っている事も
あって、かなりレゲエを感じる内容の
アルバムとなっています。
そのレゲエらしさとポスト・パンク的な
サウンドの融合が、このアルバムの面白い
ところなんですね。

ちなみにファースト・アルバムの「War Of
Words」はシンガーのBim Shermanの作曲の
曲が多く、ヴォーカルもBim Shermanが
歌っている曲が多かったアルバムですが、
今回のアルバムではディージェイの
Prince Far Iの作曲の曲が全10曲中4曲
ともっとも多く、彼が際立ったアルバムと
なっています。
そのせいかジャケットも彼の写真が使われ
ています。
このPrince Far Iはその翌年の83年に
銃によって殺害されているので、この
アルバムは彼の音楽を愛する人には
けっこう貴重なアルバムなんですね。

また前回のファースト「War Of Words」
にはゲストにポスト・パンクのバンド
Public Image Limited(P.I.L.)の
ギタリストKeith Leveneなどが参加して
いて、けっこう華やかさのある布陣の
アルバムでしたが、それに較べると今回の
アルバムはゲストは全体に地味目の印象
です。
ただその分よりOn-U Soundらしい、
プロデューサーのAdrian Sherwoodの
目指すサウンドで作られている印象があり
ます。
全体に適度な緊張感があり、聴き心地は
なかなか悪くありません。

Side 1の1曲目は「Dungeon」です。
ギターとキーボード、ベースの明るい
メロディに、ソフトなヴォーカルと
コーラスが心地良い曲です。

Singers & Players - Dungeon / Merchant Ship / Jah Army Band


2曲目は「Merchant Ship」です。
Prince Far Iの「雷声」のトース
ティング、ベースとギターのメロディ…。

3曲目は「Jah Army Band」です。
実際には2曲目「Merchant Ship」と続い
ていて、ベースのメロディに乗せたBim
Shermanのソフトなヴォーカルが印象的な
曲です。。

4曲目は「Too Much Work Load」です。
明るいホーンのメロディに歯切れの良い
パーカッション、Bim Shermanらしい
ソフトなヴォーカルがとても心地良い曲
です。

Singers & Players - Too Much Work Load


5曲目は「Prodigal Son」です。
ギターのメロディにユッタリとした
ドラミング、Prince Far Iらしい語るよう
なチャンティング・スタイルのトース
ティング。

Singers & Players - Prodigal Son


6曲目は「Follower」です。
ベースとギターのメロディに、ユッタリと
したドラミング、エフェクトやダブワイズ
も入ったポスト・パンク色の強いインスト
曲です。
こういうところがAdrian Sherwood
らしさ?(笑)。
最後にちょっとだけヴォーカルが入り
ます。

Side 2の1曲目は「Water The Garden」
です。
ギターの刻むようなメロディにユッタリと
したドラミング、Prince Far Iのこちら
もユッタリとした語るようなトース
ティング。

Singers & Players - Water the Garden


2曲目は「Resolution [Pt. 2/Version
2]」です。
エコーの効いたドラミングから、ベースと
ドラム、パーカッションなどの演奏の
インスト・ナンバー。
途中からDoctor Pabloあたりかと思われ
るメロディカが入って来ます。

Singers And Players - Resolution Pt. 2


3曲目は「Thing Called Love [Don't
Fight]」です。
心地良いドラミングに自由度の高いホーン
のメロディ、アドリヴ的なトース
ティング…。

4曲目は「Cha-Ris-Ma」です。
ユッタリしたドラミングにピアノとギター
のメロディ、「Cha-Ris-Ma…」という言葉
を繰り返すPrince Far Iのトース
ティング。

Singers & Players & Prince Far I - Cha-Ris-Ma 1982


ざっと追いかけてきましたが、明るい
メロディもありながらもどこか全体に
ダークでアンニュイな空気感が漂うような
アルバムで、そのOn-U Soundならではの
独特なサウンドが魅力です。

書いたようにこの翌年の83年に、この
アルバムで独特のトースティングを聴かせ
ているPrince Far Iが亡くなっています。
レゲエとロックを繋ぐような独特の活動を
続けていた人だったので、彼の死はとても
残念でなりません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Singers & Players
○アルバム: Revenge Of The Underdog
○レーベル: On-U Sound
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Singers & Players「Revenge Of The Underdog」曲目
Side 1
1. Dungeon
2. Merchant Ship
3. Jah Army Band
4. Too Much Work Load
5. Prodigal Son
6. Follower
Side 2
1. Water The Garden
2. Resolution [Pt. 2/Version 2]
3. Thing Called Love [Don't Fight]
4. Cha-Ris-Ma

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