今回はSingers & Playersのアルバム

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「War Of Words」です。

Singers & Playersはレゲエとパンクの
中間的なレーベルOn-U Soundで活動した
ユニットです。
シンガーのBim Shermanやディージェイの
Prince Far IやJah Wooshなどが参加した、
ヴォーカルを中心としたユニットで、On-U
Soundのミュージシャンの他にゲストで
Public Image Limited(P.I.L.)の
ギタリストKeith Leveneや、The Slits
などで活躍したAri Upなどが参加した事で
知られています。

ネットのDiscogsによると、81年から
88年までに5枚のアルバムを残している
ほか、シングルやミニ・アルバムを6枚
ぐらい残しています。

Singers & Players - Wikipedia

このアルバムの多くでリード・ヴォーカル
を務めるBim Shermanについても紹介して
おきます。

Bim Sherman(本名:Jarrett Lloyd
Tomlinson Vincent)は70年代の後半
ぐらいから活躍するシンガーで、
プロデューサーでもある人です。
彼はUKのパンクレゲエの中間ぐらいの
レーベル、白人のAdrian Sherwoodの主催
するOn U Soundsでも活躍したシンガーと
してよく知られています。
2000年にロンドンで50歳という若さ
で亡くなっています。

ネットのDiscogsによると、21枚ぐらい
のアルバムと、55枚ぐらいのシングル盤
を残しています。

Bim Sherman - Wikipedia


今回のアルバムは1981年にUSの
99 Recordsというレーベルからリリース
されたSingers & Playersのファースト・
アルバムです。
ちなみに翌82年にはUKのOn-U Sound
からもリリースされています。

プロデュースはOn-U Soundの白人
プロデューサーAdrian Sherwoodで、
Bim ShermanのヴォーカルやPrince Far I
のトースティングなどを中心にした
アルバムで、ゲストにP.I.L.のギタリスト
Keith Leveneや、The SlitsのAri Up
(Ari 'Stepper')が参加したアルバム
です。
On-U Soundらしいヘヴィーでタイトな、
パンク色の強いレゲエ・サウンドが楽し
めるアルバムとなっています。

このアルバムは私がまだ初めにレゲエを
聴いていた20代の頃(おそらく80年
代)に、On-U SoundのLP(もちろん
新盤)で購入したアルバムです。

ちなみにこのSingers & Playersという
プロジェクトのアルバムは、81年から
88年までに5枚のアルバムが作られて
います。

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Singers & Players ‎– Revenge Of The Underdog (1982)

Side 1が4曲、Side 2が3曲の全7曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Drums: 'Style' Scott, Eskimo Fox
Bass: Lizard, 'Crucial' Tony, George Oban
Guitar: 'Crucial' Tony, Keith Levene
Keyboards: Ari 'Stepper', 'Bigga' Morrison, Doctor Pablo, Nick Plytas, 'Crucial' Tony
Percussion: Mr. Ranking Magoo
Vocals: Bim Sherman, Prince Far I, Lizard, Jah Woosh, 'Crucial' Tony
Harmony: Basheeba, Ari Stepper, Eskimo Fox

Produced by Adrian Sherwood

Recorded at Berry St, The Manor, Goosberry & Freerange Studios
Recording Engineers: John Walkerman, Roger, Albert, D. Bovell, Howard
Mixed at Berry St & The Manor
Mixing Engineers: Steve Smith, Richard Manwaring, Nobby Turner, Chris
Mastered at Utopia by Kevin Metcalfe

Sleeve Design & Photography by: Kishi

となっています。

ドラムはLincoln 'Style' ScottとEskimo
Fox、ベースはLizardと'Crucial' Tony、
George Oban、ギターは'Crucial' Tonyと
Keith Levene、キーボードにAri 'Stepper'
と'Bigga' Morrison、Doctor Pablo、
Nick Plytas、'Crucial' Tony、
パーカッションはMr. Ranking Magoo、
ヴォーカルはBim ShermanとPrince Far I、
Lizard、Jah Woosh、'Crucial' Tony、
ハーモニー・ヴォーカルにBasheebaと
Ari Stepper、Eskimo Foxという布陣です。

ドラムのLincoln 'Style' Scottは、
Roots RadicsやこのOn-U Soundのバック・
バンドDub Syndicateなどで活躍した人
です。
ゲスト・プレイヤーとして、P.I.L.の
ギタリストKeith Leveneや、The Slitsや
New Age Steppersなどで活躍したAri Up
(Ari 'Stepper')が参加しています。
ちなみにPublic Image Limited(P.I.L.)
はパンク・ロックでブームを巻き起こした
The Sex Pistolsのヴォーカリストだった
John Lydon(The Sex Pistols在籍時は
Johnny Rottenと名乗っていた)が結成
したポスト・パンク・グループです。
メタル缶に入った「Metal Box」(のち
に2枚組LPの「Second Edition」と
改題)や、ドラムにギターにヴォーカル
のみという究極のミニマルな編成で話題を
呼んだ「Flowers Of Romance」など、何か
と話題の多いポスト・パンク・バンド
だったんですね。

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Public Image Ltd. ‎– Second Edition (1979)

プロデュースはOn-U Soundの白人
プロデューサーAdrian Sherwoodが担当
しています。

レコーディングはBerry StやThe Manor、
Goosberry、Freerange Studiosなどで
行われています。
レコーディング・エンジニアはJohn
WalkermanやRoger、Albert、D. Bovell、
Howardという人が担当しています。
ミックスはBerry StとThe Manorで行わ
れ、ミックス・エンジニアは
Steve Smith、Richard Manwaring、
Nobby Turner、Chrisという人が担当
しています。

レコーディング・エンジニアにMatumbiで
活躍したギタリストでプロデューサー、
ミキサーのDennis Bovellの名前があり
ます。

ジャケット・デザインと写真はKishi
Yamamotoという日本人の人が担当して
います。
当時のOn-U Soundのデザインはこの
Kishiという人が手掛けていたようで、
ジャケットはほぼモノクロの写真と
タイトル文字というシンプルなデザイン
でした。
それがこのレーベルのアヴァンギャルドな
サウンドを、よりイメージ付けていたよう
に思います。

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裏ジャケ

今回のアルバムは裏表のジャケット共に
多くの曲でリード・ヴォーカルをとって
いるBim Shermanの写真が使われていま
す。

また裏ジャケの曲目のところには、曲の
作曲者と思われる名前が記載されていま
す。
それを写すと以下のようになります。

1. Devious Woman 〈j.vincent〉
2. Quanté Jubila 〈m.williams/a.phillips〉
3. Sit And Wonder 〈j.vincent〉
4. Fit To Survive 〈j.vincent〉
5. Reaching The Bad Man 〈j.vincent/a.maxwell〉
6. World Of Dispensation 〈j.vincent〉
7. 91 Vibiration 〈a.maxwell/a.phillips〉

一番多くある〈j.vincent〉はBim Sherman
の本名Jarrett Lloyd Tomlinson Vincent
です。
〈m.williams〉はPrince Far Iの本名
Michael James Williamsで、〈a.phillips〉
は'Crucial' Tonyの本名Antonio Alpheuse
Phillips、〈a.maxwell〉 はAdrian Sherwood
の本名Adrian Maxwell Sherwoodです。
これを見ると今回のアルバムは、リード・
ヴォーカルを主にとっているBim Sherman
を中心に作られたアルバムだという事が
よく解ります。

さて今回のアルバムですが、いかにもこの
時代のOn-U Soundらしいハード・エッジな
サウンドに乗せたBim Shermanを中心と
したヴォーカルが楽しめるアルバムで、
内容は悪くないと思います。

このレゲエとパンクの中間的なレーベル
On-U Soundのアルバムですが、私が初めに
レゲエを聴いていたまだ20代の頃
(80年代)には、いろいろなアルバムを
買ってはよく聴いていました。
若かった頃の私にはこのレゲエとパンクの
入り混じったようなアヴァンギャルドな
サウンドが、とても斬新に感じられたん
ですね。

当時はAfrican Head ChargeやCreation
Rebelなどのユニットのほか、サックス
奏者のDeadly HeadleyやBim Shermanの
アルバムなどを、むさぼるように聴いて
いました。
特にDeadly Headleyのソロ・アルバム
「35 Years From Alpha」は、私が
インスト・アルバムの中でももっとも衝撃
を受けたアルバムで、今でもレゲエの
もっとも素晴らしいアルバムのひとつでは
ないかと思うアルバムのひとつです。

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Deadly Headley ‎– 35 Years From Alpha (1982)

このDeadly Headleyは60年代から
ジャマイカで活躍したサックス奏者です
が、意外にもこのUKのOn-U Soundで自身
の才能をより開花させたようなところが
ある人なんですね。
このレーベルのAfrican Head Chargeや
Creation Rebelといったユニットの演奏
にも、ちょっとイっちゃっているような
鬼気迫る演奏を聴かせています。

またBim ShermanやPrince Far I、'Style'
Scott、Doctor Pabloといった人達も、
このOn-U Soundに他では聴けないような
面白い音源を残しているんですね。
そういう意味ではレゲエという枠組みから
はちょっとはみ出したUKのこのU Sound
というレーベルですが、レゲエの歴史の中
で無視は出来ないレーベルなんですね。
自分の知る限りではレゲエとパンクの融合
という、レゲエと他ジャンルの融合を試み
たのはこのレーベルが初めてだったんじゃ
ないかと思います。
そういう意味では先見の明があったかなり
進んだレーベルが、このOn-U Soundだった
と言えるかもしれません。

ただそれだけ若い時には聴いていたOn-U
Soundですが、10年ぐらい前から再び
レゲエを聴きだしてからは、あまりこの
レーベルのアルバムを聴いていません。
理由は単純で、レゲエのグルーヴを味わい
たいと思ってこのレーベルの音楽を聴く
と、あまりにも白人らしい独善的な
Adrian Sherwoodの音作りがすごく耳障り
で、レゲエ本来の魅力を消しているように
感じられてしまうからなんですね。
若い頃の私はロックやパンク、ニュー・
ウェーヴといった音楽の感性でレゲエを
聴いていましたが、その後レゲエを離れ
アフリカン・ミュージックや様々な音楽を
経験したのちにレゲエに戻って来ると、
レゲエ本来のグルーヴ感を無視したような
白人的な音作りには、すごく抵抗を感じる
ようになったんですね。

このAdrian Sherwoodという人はある意味
レゲエという音楽の枠組みを拡げたような
ところもありますが、その感性はあくまで
パンクとニュー・ウェーヴ寄りの人で、
半面レゲエという音楽を破壊したところが
あるような、とても微妙な人なんですね。

ただそういう境界線に居たレベルだから
こそ、他では絶対作れないようなハード・
エッジなDeadly Headleyの素晴らしい
アルバムが生まれた訳だし、Bim Sherman
やPrince Far Iといったアーティストも
他では絶対に見せられなかったであろう
独自の個性を輝かせています。
ただ反面レゲエという視点から見た場合
には、あまりにニュー・ウェーヴ寄りで
ちょっとレゲエとしてはどうなの?という
アルバムも山ほどありますが…(苦笑)。

80年代ぐらいになって来るとUKでは、
こうしたレゲエとパンクを融合したような
サウンドや、The Specialsなどを中心と
したネオ・スカの「2トーン・ブーム」が
起きたり、ラヴ・ソングを中心とした
ラヴァーズロック・レゲエが人気になった
りと、本場ジャマイカとはまた違った動き
が活発になって来るんですね。
それはレゲエという音楽がよりワールド・
ワイドな音楽になって行った証しかもしれ
ません。

話をこのアルバムに戻しますが、今回の
アルバムではBim Shermanのヴォーカルを
中心に、レゲエとポストパンクやニュー・
ウェーヴを融合したような重くヘヴィーな
斬新なサウンドが展開しています。
Side 1の1曲目「Devious Woman」などは
リズムはレゲエらしいワン・ドロップです
が、かなりエッジの立ったギターのギュン
ギュンしたサウンドの演奏で、それまでの
レゲエに無いような感覚がうまく盛り込ま
れているんですね。
他の曲もPrince Far IやJah Wooshと
いったディージェイのトースティングを
盛り込みながら、ソリッドなポスト・
パンク的な演奏だったりします。
そのレゲエとパンクやロックを盛り込ん
だ、重くヘヴィーなサウンドが今回の
アルバムの魅力なんですね。

ちなみにBim Shermanは今回のアルバムの
多くでヴォーカルをとっていますが、
Side 1の1曲目の「Devious Woman」と
3曲目「Sit And Wonder」は、自身の
82年のソロ・アルバム「Across The
Red Sea」にも収められた曲なんですね。

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Bim Sherman ‎– Across The Red Sea (1982)

このアルバムが81年で、彼のソロ・
アルバムが82年ですから、この2曲は
ソロ・アルバムに先立って録音された、
別ヴァージョンの曲のようです。

今回のアルバムでは彼Bim Shermanの、
ちょっと引きずるような個性的な
ヴォーカルが大きな魅力になっています。
このSingers & Playersというユニット
では、彼とディージェイのPrince Far I
が中心で活躍していて、大きな魅力に
なっている事は間違いがありません。

Side 1の1曲目は「Devious Woman」
です。
スローなワンドロップのリズムに、
おそらくKeith Leveneと思われるギュン
ギュンと鳴くギター、Bim Shermanの
ディープなヴォーカルが魅力。

Devious Woman Bim Sherman Singers & Players OnU


2曲目は「Quanté Jubila」です。
軽快なドラミングにギターとベースの
メロディ、男性ヴォーカルにPrince
Far Iの語るようなダミ声の特徴的な
トースティング。

Singers & Players & Prince Far I - Quante Jubila 1981


3曲目は「Sit And Wonder」です。
リズム感なドラミングに刻むような
ギター、女性コーラスに乗せたBim
Shermanらしい滑らかなヴォーカルが、
なかなか心地良い曲です。
途中からディージェイのヴァ―ジョンに
変化しますが、Jah Wooshか?

Singers And Players - Sit And Wonder


4曲目は「Fit To Survive」です。
心地良いミリタントなドラミングから、
刻むようなギター、ちょっと脱力した
Bim Shermanの感情を乗せたヴォーカルが
イイ感じ。

Singers & Players - Fit To Survive


Side 2の1曲目は「Reaching The Bad
Man」です。
エコーの効いたギターとピアノ、キー
ボードの演奏に、Bim Shermanのこちらも
エコーの効いたヴォーカルのディープ感の
強い曲です。
作曲にAdrian Sherwoodの名前もあります
が、彼らしいアヴァンギャルドな要素が
たくさん盛り込まれた曲です。

2曲目は「World Of Dispensation」
です。
力強いドラミングにギターとベースの
メロディ、女性コーラスに乗せたBim
Shermanちょっとムーディーなヴォーカル。

Singers & Players & Bim Sherman - World Of Dispensation / Revolution 1981


3曲目は「91 Vibiration」です。
Prince Far Iのエコーの効いたトース
ティングから、遠くで聴こえるような
ヴォーカル、激しいドラミングとズシン
と思いベースの演奏、Doctor Pabloの
メロディカ…。
こちらはDoctor Pabloを中心とした
プレイヤー・サイドに光を当てた、ハード
でモノクロームな演奏の曲です。

Singers & Players - 91 Vibration


ざっと追いかけてきましたが、こうした
レゲエとパンクの中間的なサウンドは
ちょっと好き嫌いの分かれるところがある
かと思いますが、ただその中でも今回の
アルバムは重いサウンドの中に適度な緊張
感があり、何よりレゲエらしいグルーヴ感
もうまく盛り込まれた内容で、なかなか
悪くないアルバムだと思います。

全体には普通のレゲエと較べるとモノ
クロームでハード・コアな陰影の濃い演奏
ですが、そこにBim Shermanの彼独特の
ヴォーカルがうまく色を置いて行っている
印象で、Singers & Playersという命名
通りにヴォーカルがうまく際立った
アルバムとなっています。
On-U Soundが好きな人やBim Shermanが
好きな人は、聴いて損はないアルバムだと
思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Singers & Players
○アルバム: War Of Words
○レーベル: On-U Sound
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Singers & Players「War Of Words」曲目
Side 1
1. Devious Woman
2. Quanté Jubila
3. Sit And Wonder
4. Fit To Survive
Side 2
1. Reaching The Bad Man
2. World Of Dispensation
3. 91 Vibiration