今回はWarrior Kingのアルバム

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「Virtuous Woman」です。

Warrior King(本名:Mark Dyer)は、
2000年代から活躍するラスタ・
シンガーです。
2001年に女性賛歌の「Virtuous
Woman」でシングル・デビューした彼は、
その曲が世界中で大ヒットし、翌年の
2002年にはアルバム「Virtuous
Woman」もリリースし、たちまちラスタの
人気シンガーとなるんですね。
その後は大きなヒット曲に恵まれないもの
の、今も活躍を続けるのがこのWarrior
Kingという人です。

ネットのDiscogsによると、今までに4枚
ぐらいのアルバムと、59枚ぐらいの
シングル盤をリリースしています。

Warrior King (musician) - Wikipedia

今回のアルバムは2002年にUSの
VP RecordsからリリースされたWarrior
Kingのファースト・アルバムです。

エグゼクティブ・プロデューサーはJoel
ChinとSheldon Stewartで、バックは
Firehouse Crewなどが務めたアルバムで、
大ヒットした女性賛歌の表題曲
「Virtuous Woman」を中心に、
Warrior Kingの個性的なヴォーカルと、
ラスタファリアンらしいリリックが楽し
めるアルバムとなっています。

手に入れたのはVP Recordsからリリース
されたCD(新盤)でした。

全18曲で収録時間は約70分。
オリジナルは14曲で、残りの4曲はCD
のみのボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Executive Producers: Joel Chin, Sheldon Stewart
Project Coordinators: Edwin Howell, Barry Wilson for VP Records Inc.
Edited and Matered by: Paul Shelds, Joel Chin at VP Mastering NY
Mixing Engineers: Arthur Simms, L. Pinnock, Boby Digital

Art Direction, Design, Illustration: Kerry Debruce
'Woman' Illustration: Barrington Clarke
Photography: William Richards

1. Power To Chant
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Firehouse Crew
Congo: R.Bonitto
Backing Vocals: Dalton Browne, Neisha K
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

2. Never Go Wher Pagans Go
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Firehouse Crew
Backing Vocals: Neisha K
Writers: S. Stewart, M. Dyer, G. Isaacs
Publishers: Copyright Control, STB Music, African Museum

3. Jah Is Always There
Producer: Richards 'Chabano' Brown
Writers: R. Brown, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

4. Africa Shall Be Free
Producer: Michael Johnson
Writers: M. Johnson, M. Dyer
Publishers: Yekim Music, STB Music

5. Breath Of Fresh Air
Producer: Chad 'Goofy' Simpson
Musicians: Firehouse Crew
Horns: Dean Fraser
Keyboards: Nigel Staff
Writers: M. Dyer, C. Simpson
Publishers: STB Music, Copyright Control

6. Boast Not Myself
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Benji Myers
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

7. Love Jah And Live
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Firehouse Crew
Horns: Dean Fraser
Congo: R.Bonitto
Backing Vocals: Neisha K
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

8. Rough Road
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Firehouse Crew
Horns: Dean Fraser
Congo: R.Bonitto
Backing Vocals: Neisha K
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

9. Education Is The Key
Producer: Donovan Germain
Writers: G. Isaacs, M. Dyer
Publishers: African Museum, STB Music

10. Baby Don't Worry
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Benji Myers
Horns: E. Hird
Congo: R.Bonitto
Backing Vocals: Dalton Browne, Neisha K
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

11. Empress So Divine
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Jazzwad
Guitar: Dalton Browne
Horns: Dean Fraser
Writers: C. Dodd, M. Dyer, S. Stewart
Publishers: Jamrec Music, STB Music, Copyright Control

12. Virtous Woman
Producer: Michael Johnson
Writers: C. Dodd, M. Johnson, M. Dyer
Publishers: Yekim Music, Jamrec Music, STB Music

13. Oh Mama - featuring DYCR
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Firehouse Crew
Horns: E. Hird
Backing Vocals: Neisha K
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

14. Health And Strength
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Danny Marshall
Congo, Guitars: R.Bonitto
Backing Vocals: J. Barrett
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

15. What's Going On
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: D. Marshall, D. Bassie, B. Myer, D. Browne, Dean Fraser
Backing Vocals: Dalton Browne
Writers: M. Gaye
Publishers: EMI Music Publishing

16. It's Been A While
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Firehouse Crew
Horns: Dean Fraser
Congo: R.Bonitto
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

17. Make Me Feel
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Michael Spence
Horns: E. Hird
Backing Vocals: Neisha K
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

18. Mama Remix
Producer: Sheldon Stewart
Musicians: Benji Myers
Horns: E. Hird
Writers: S. Stewart, M. Dyer
Publishers: Copyright Control, STB Music

となっています。

エグゼクティブ・プロデューサーはJoel
ChinとSheldon Stewartで、ミックス・
エンジニアはArthur SimmsとL. Pinnock、
Boby Digitalが担当しています。

曲の多くのプロデュースはSheldon
Stewartが担当していますが、Richards
'Chabano' BrownやMichael Johnson、
Chad 'Goofy' Simpson、Donovan
Germainといった人達がプロデュースした
曲もあります。

ミュージシャンは多いので省略しますが、
Firehouse CrewやホーンのDean Fraser、
コンゴにR.Bonitto、バック・コーラスに
Dalton BrowneやNeisha Kなどが参加した
アルバムのようです。

ジャケット・デザインとイラストはKerry
Debruce、「Woman(おそらく表ジャケの
ターバンを巻いた人物)」のイラストは
Barrington Clarke、写真はWilliam
Richardsとなっています。

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裏ジャケ

表ジャケの裏側には、この当時らしい
派手なラスタ・カラーのジャケットを着た
Warrior Kingの写真があります。

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表ジャケ裏側

さて今回のアルバムですが、おそらく
レゲエという音楽でなければ生まれて
来ないような、ちょっと個性的なシンガー
Warrior Kingの音楽が楽しめるアルバム
で、内容はとても良いです。

彼のちょっとしゃがれた上ずったような、
その突飛な感じさえする個性的なシング・
ジェイ・スタイルのヴォーカルは、この
レゲエという音楽だからこそ生まれて来た
スタイルと言えそうです。

レゲエという音楽をずっと追いかけている
と、たまにこうした凄く個性的なシンガー
が時代ごとに登場して来るんですね。
例えば80年代にはTenor Sawなどが
始まりと言われる「アウト・オブ・キー」
という歌唱法が流行しています。
これは通常のルート・キーより5度高い
キーで最後まで歌い切るという独特の歌唱
法で、多くのシンガーがTenor Sawを真似
て大流行した歌唱法なんですね。
そういう独特の個性を持ったシンガーなど
に割と許容力があるのがこのレゲエという
音楽で、そうした新しい魅力をどんどん
取り入れて、さらに進化していく自由度が
あるのがレゲエという音楽の特徴でもある
んですね。

今回のWarrior Kingの歌唱にもそうした
レゲエだからこそ生まれ出た独特の個性が
あり、そこがとても魅力的です。
レゲエ本「Dancehall Reggae Atandards」
にこのアルバムが紹介されていますが、
「かつてのレゲエが持っていた日向の匂い
がする」という好評価が書かれています。

特に大ヒットした「Virtuous Woman」は、
イントロで口ずさむ「シュバシュバ~♪」
といったオノマトペなヴォーカルが印象的
な曲ですが、その女性賛美な歌詞も人気
だったようです。

ウォーリアー・キング(Warrior King) - Virtuous Woman - リリック
ウォーリアー・キング(Warrior King)の語る'Virtuous Woman'の誕生秘話 Part.1
ウォーリアー・キング(Warrior King)の語る'Virtuous Woman'の誕生秘話 Part.2

ネットのレゲエレコード・コムにある
「誕生秘話」の記事を読むと、この曲は
ジャマイカで13週連続1位だったそう
で、彼がパフォーマンスをするとまるで
マイケル・ジャクソンのように、車や
フェンスを壊してまで女の子たちが駆け
寄って来たんだとか。
それほどこの曲はヒットし、当時の彼の
人気は凄まじいものがあったようです。

ネットのレゲエレコード・コムにある
この「Virtuous Woman」の歌詞を今見て
みると、唐突に「すべてのゲイを燃やして
しまえ」という言葉が登場したり、「高潔
で清く純粋な女性」といったラスタファリ
ズムを感じさせる歌詞の内容が目に付き
ます。
正直なところ今の時代から見れば、すごく
差別的な歌詞ととられかねない内容が含ま
れています。

ただ当時のジャマイカという国の国柄を
考えると、この曲はとてもフェミニンな歌
だったんじゃないかと思われます。
おそらく今もホモ・セクシャルに対する
ホモフォビア(同性愛嫌悪)の思想は今も
色濃く残っていると思われますが、この
時代でもまだジャマイカは男尊女卑の思想
が色濃かったんじゃないかと思われます。
それを証明しているのが上に書いた、女性
が車やフェンスを壊してまで駆け寄って
来たという一文で、当時のジャマイカの
女性にとってこの曲は男尊女卑を否定した
とてもフェミニンな曲に聴こえ、それほど
の熱狂的な支持に繋がったのではと思われ
ます。

ある意味「時代の変化」、「女性の権利」
を謳った歌が、この曲なのではないで
しょうか。
人の考えは一気には変わらないけれど、
時代の変化とともに考え方は徐々に変わ
る…。
正直なところラスタファリズムのホモ
フォビアな歌詞にも見えるこの曲ですが、
丁寧に見て来ると時代の変化を歌った女性
賛歌が、この曲なのではないかと思い
ます。
そう考えると女性の熱狂的な支持は、
すごく頷ける部分があるんですね。
時代の変化を謳った曲として、記憶すべき
1曲と言えるかもしれません。

ちなみにこの曲に続く13曲目に「Oh
Mama - feat. DYCR」と、ボーナス・
トラックとして18曲目に「Mama Remix」
が収められていますが、この曲はあの
Sizzlaの「Thank You Mama」(オリジナル
のリディムはBob Marleyの「Thank You
Lord」)のカヴァー曲です。
この曲も自分を産んでくれた母親に感謝
するラスタ・ソングとしてよく知られて
いますが、ある意味発想はこの「Virtuous
Woman」とすごくよく似た女性賛歌なん
ですね。
そういう意味ではこの曲も特に注目して
聴いてみてください。
特にボーナス・トラックの「Mama Remix」
は、すごく良い出来の曲です。

ある意味今の時点で見ると、ラスタ
ファリズムのカルト性も感じてしまう
ところのあるリリックのアルバムですが、
丁寧に見て行くと時代の変化の中での
一人の「男」としての彼の女性を尊重する
歌も入った、とてもコンシャス(真面目)
な内容の良いアルバムなんですね。
2000年代の聴くべきアルバムのひとつ
ではないかと思います。

ちなみに最近発売されたレゲエ本
「ラスタ・アンバサダーズ:現代の
ロッカーズ-進化するルーツ・ロック・
レゲエ」という本には、このWarrior King
のインタビューと彼に関する記事が載って
います。

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アレクサンドル・グロンドー著 - ラスタ・アンバサダーズ

それによると彼は初めはBounty Killerに
憧れてディージェイを始め、「リトル・
ブラックス」という人物とデュオで活躍
したのちに、ソロに転身したんだそう
です。
そのソロに転身後に出会ったのが、あの
Admiral Tibettで、彼によってラスタ
ファリズムに目覚めたんだそうです。
今回のアルバムからは、そうした彼の純粋
な魂が感じられる内容となっています。

1曲目は「Power To Chant」です。
ギターとベースを中心としたユッタリと
したメロディに、Warrior Kingのちょっと
しゃがれた歌声がとても心地良い曲です。

Warrior King - Power To Chant


2曲目は「Never Go Wher Pagans Go」
です。
リディムはGregory Isaacsの
「Tune In」。
ギターとピアノ、ベースを中心とした
メロディに、Warrior Kingのちょっと
しゃがれた軽快なヴォーカル。

3曲目は「Jah Is Always There」です。
「Escape」というリディムのようです。
ギターとキーボードピアノを中心とした
メロディに女性コーラス、Warrior King
の特徴的でソフトなヴォーカル。

Warrior King - Jah is Always There


4曲目は「Africa Shall Be Free」です。
リディムはLittle Royの「Tribal War」。
キーボードとギターのメロディに女性
コーラス、Warrior Kingの伸びやかな
ヴォーカルが印象的。

Warrior King -- Africa Shall Be Free


5曲目は「Breath Of Fresh Air」です。
リズミカルなドラミングにキーボードと
ホーンのメロディ、女性コーラスに乗せた
Warrior Kingの伸びやかなヴォーカルが
心地良い曲です。

Warrior King - Breath of Fresh Air


6曲目は「Boast Not Myself」です。
浮遊感のあるキーボードとヴァイオリンの
メロディに、Warrior Kingの伸びやかな
ヴォーカル。

7曲目は「Love Jah And Live」です。
華やかなホーンとギター、キーボードの
メロディに、Warrior Kingの感情を乗せた
ヴォーカル。

Love Jah and Live


8曲目は「Rough Road」です。
ホーン・セクションとギターに女性
コーラス、Warrior Kingの歯切れの良い
ヴォーカル。

9曲目は「Education Is The Key」です。
明るいホーンとギターのメロディに、
心地良さそうに歌うWarrior Kingの
ヴォーカルが魅力的。

Warrior King - Education Is Key - Penthouse 7" (Storm Riddim) 2001


10曲目は「Baby Don't Worry」です。
ギターとサックスを中心としたメロディ
に、女性コーラスに乗せたWarrior King
の伸びやかなヴォーカルが魅力的。

11曲目は「Empress So Divine」です。
リディムはThe Heptonesの「We Are In
The Mood」。
キーボードとホーンを中心としたメロディ
にパーカッション、Warrior Kingの感情を
乗せたヴォーカル。

リズム特集 We're In The Mood/Rock Me (ウィ・アー・イン・ザ・ムード/ロック・ミー)

12曲目は表題曲の「Virtous Woman」
です。
リディムはHorace Andyの「Zion Gate」。
イントロの「シュバシュバ~♪」という
オノマトペなヴォーカルに、ギターと
ピアノを中心としたメロディの楽し気な曲
です。

Warrior King - Virtuous Woman


13曲目は「Oh Mama - feat. DYCR」
です。
Sizzlaの「Thank You Mama」のカヴァー
曲ですが、オリジナルのリディムは
Bob Marley & The Wailersの「Thank You
Lord」。
「Oh Mama!」というソウルフルなトース
ティングと、サックスに乗せたWarrior
Kingのヴォーカルが絡む曲です。
「お母さん、僕を産んでくれてありが
とう」という女性賛歌です。

Warrior King with D.Y.C.R. - Oh Mama


リズム特集 Thank You Lord (サンキュー・ロード)

14曲目は「Health And Strength」
です。
心地良いパーカッションとキーボードの
穏やかなメロディ、伸びやかなWarrior
Kingのヴォーカルが印象的なバラード曲
です。

Warrior King Health and Strenght


15~18曲目までの4曲はCDのみの
ボーナス・トラックです。

15曲目は「What's Going On」です。
ソウル・シンガーMarvin Gayeの同名
大ヒット曲のカヴァーです。
サックスの印象的なメロディに、男性
ディージェイ(Jah Mali)とWarrior King
のヴォーカルの絡みがとても魅力的。

Warrior King ft Jah Mali - What's Going On


16曲目は「It's Been A While」です。
ホーンの華やかなメロディに、楽し気に
歌うWarrior Kingのヴォーカルが魅力的。

17曲目は「Make Me Feel」です。
サックスのちょっとセクシーなメロディ
に、Warrior Kingの感情をうまく乗せた
ヴォーカルがグッド。

18曲目は「Mama Remix」です。
こちらは13曲目「Oh Mama」の
リミックス・ヴァージョンです。
よりSizzlaの「Thank You Mama」に近い
印象で、すごく良いです。

Warrior King - Oh mama remix


ざっと追いかけてきましたが、一番勢いの
あった時代のWarrior Kingのヴォーカルが
楽しめるアルバムで、内容はとても良いと
思います。

こうしたとてつもない個性を持った人が
突然現れるのも、レゲエという音楽独特の
面白さなんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Warrior King "JAH IS ALWAYS THERE" live in new York



○アーティスト: Warrior King
○アルバム: Virtuous Woman
○レーベル: VP Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2002

○Warrior King「Virtuous Woman」曲目
1. Power To Chant
2. Never Go Wher Pagans Go
3. Jah Is Always There
4. Africa Shall Be Free
5. Breath Of Fresh Air
6. Boast Not Myself
7. Love Jah And Live
8. Rough Road
9. Education Is The Key
10. Baby Don't Worry
11. Empress So Divine
12. Virtous Woman
13. Oh Mama - feat. DYCR
14. Health And Strength
(CD Bonus Tracks)
15. What's Going On
16. It's Been A While
17. Make Me Feel
18. Mama Remix