今回はCoco Tea (Cocoa Tea)のアルバム

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「I Lost My Sonia」です。

Coco Tea (Cocoa Tea 本名:Calvin
George Scott)は80年代のダンス
ホール・レゲエの時代から活躍する
シンガーです。
キャリアの初めはなかなかヒットに恵まれ
ず苦労したものの、Henry 'Junjo' Lawsの
Volcanoレーベルから「Lost My Sonia」や
「Rocking Dolly」などのヒットを飛ばし
トップ・アーティストとしての地位を確立
しました。
その後も順調にキャリアを重ね、80年代
後半のコンピューター・ライズドの
デジタル化にもうまく対応し、90年代
にはXterminatorやDigital Bといった
レーベルで活躍したのが、このCocoa Tea
という人です。

ネットのDiscogsによると、現在までに
共演盤を含めて36枚ぐらいのアルバム
と、345枚ぐらいのシングル盤を
リリースしています。

アーティスト特集 Cocoa Tea (ココ・ティー)

Cocoa Tea - Wikipedia

今回のアルバムは1985年にジャマイカ
のVolcanoからリリースされたCocoa Teaの
おそらくファースト・アルバムと思われる
アルバムです。
この年は彼の「当たり年」で、共演盤を
含めて5枚ぐらいのアルバムをリリース
しているんですね。
その中でも82年リリースのシングル
「Lost My Sonia」や83年のシングル
「Rocking Dolly」などが収められたこの
アルバムが、おそらくファーストでは
ないかと思われます。

プロデュースはVolcanoレーベルの
Henry 'Junjo' Lawesで、バックの表記は
ありませんがこの時代に活躍したRoots
RadicsやHigh Times Bandなどがバックを
務めたと思われるアルバムで、まだ80年
代前半のアーリー・ダンスホールの香りが
残るアルバムで、スローなワン・ドロップ
のリズムに乗せたCoco Tea (Cocoa Tea)の
ヴォーカルが冴えるアルバムとなっていま
す。

手に入れたのはVolcanoレーベルから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が4曲、Side 2が5曲の全9曲。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

Produced & Arranged by Junjo Lawes

という記述があります。

プロデュースとアレンジはVolcano
レーベルのHenry 'Junjo' Lawesとなって
います。

バックのミュージシャンの表記はありま
せん。
ただこのアルバムは同85年にリリース
された「Weh Dem A Go Do... Can't Stop
Coco Tea」というアルバムとかなり曲目が
ダブっています。

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Coco Tea ‎– Weh Dem A Go Do... Can't Stop Coco Tea (1985)

「Yes I'm Wanted」と「Rocking Dolly」、
「Informer」、「Evening Time」、
「Lost My Sonia」、「I'm Going Home」
と、なんと9曲中6曲がダブっているん
ですね。
そういう意味ではこの2枚のアルバムは、
かなり近い関係のアルバムと言えます。
その「Weh Dem A Go Do...」には、次の
ようなメンバーが書かれています。

Produced by: Henry "Junjo" Lawes
Backed by: Roots Radics, High Times
Recorded at: Channel One Recording Studio
Recording Engineers: Soldgie, Scientist
Mixed by: Harry J
Mixing Engineer: Sylvan Morris

となっています。

残念ながら細かいメンバーの表記はあり
ませんが、バックはRoots Radicsや
High Times Bandが務めた事が解ります。

レコーディング・エンジニアにSoldgie
とScientist、ミックス・エンジニアに
Sylvan Morrisの名前があります。

今回のアルバムもそれらのメンバーが、
関わっていると思われます。
一応参考程度に見ておいてください。

ジャケット・デザインの表記はありま
せん。
ジャケットには自転車にまたがるCoco Tea
と、それを取り囲む2人の人物が写って
いますが、その2人については誰か解りま
せん。
ただ中腰で構えるその様子が、何か雰囲気
のあるジャケットです。

さて今回のアルバムですが、80年代前半
のリーリー・ダンスホールのスローな
ワン・ドロップのサウンドに乗せた
Coco Tea (Cocoa Tea)のヴォーカルは、
ちょっと成功に飢えた青年の匂いがして
とても魅力的です。

その後の彼はレゲエの大物シンガーとして
常に一線で活躍しますが、この時代の彼の
ヴォーカルにはその成功を手にする前の
強い渇きのようなものがあって、彼の履歴
の中でも一番ヴォーカルに切々と心に
迫ってくるものがあるのは、実はこの時代
なんですね。
「Real Rock」リディムのヒット曲
「Rocking Dolly」や、「Informer」、
「Mad Mad」リディムの表題曲の「Lost
My Sonia」、「Vanity」リディムの
「I'm Going Home」など、アーリー・
ダンスホールの空気が目一杯に詰まった
アルバムで、この時代のレゲエの好きな人
にはタマラない内容のアルバムとなって
います。

このアルバムからはまだデジタルのダンス
ホールの匂いは感じられませんが、むしろ
そこが魅力で、このCoco Tea (Cocoa Tea)
を知るには、まずはここからという重要な
アルバムである事は間違いありません。

Side 1の1曲目は「Jah Bless The I」
です。
明るいキーボードとギターのワン・
ドロップのメロディに、Coco Teaのソフト
で力強いヴォーカルが心地良い曲です。

2曲目は「Yes I'm Wanted」です。
リディムはDerrick Morganの
「Conqueror」。
ギターとキーボードの心地良いメロディ
に、Coco Teaのちょっとしゃげれたソフト
なヴォーカルがとても魅力的な曲です。

3曲目は「Rocking Dolly」です。
リディムはSound Dimensionの
「Real Rock」。
彼の初期のヒット曲です。
歯切れの良いドラミングにギターとピアノ
のメロディ、Coco Teaの語るように丁寧な
ヴォーカルが魅力。

Cocoa Tea - Rocking Dolly


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

4曲目は「Informer」です。
こちらも彼の代表曲のひとつです。
今回のジャケットには自転車に乗った彼の
姿がありますが、これも「Informer」の
イメージなのか?
リリカルなピアノとギターの刻むような
メロディに、Coco Teaのユッタリとした
説得力のあるヴォーカルがとても素晴ら
しい曲です。

Cocoa Tea - Informer


Side 2の1曲目は「Evening Time」
です。
リディムはBaba Brooksの「Shank I
Sheck」。
スカの時代のオールド・リディムです。
漂うようなキーボードのワン・ドロップの
メロディに、Coco Teaの明るく楽し気な
ヴォーカルがとても心地良い曲です。

Cocoa Tea - Evening Time


リズム特集 Shank I Sheck (シャンク・アイ・シェック)

2曲目は「Style & Harmony」です。
ギターとベースを中心とした歯切れの良い
ワン・ドロップに、Coco Teaの明るくノビ
のあるヴォーカルがとても心地の良い1曲
です。

Coco Tea - Style & Harmony


3曲目は表題曲の「Lost My Sonia」
です。
リディムはAlton Ellisの「Mad Mad」。
ギターの印象的なメロディに心地良い
ワン・ドロップのリズム、Coco Teaの
歯切れよく力強いヴォーカルが魅力的な曲
です。

Cocoa Tea - I Lost My Sonia


リズム特集 Mad Mad/Diseases (マッド・マッド/ディジーゼズ)

4曲目は「Driving Down」です。
ギターとベースを中心とした歯切れの良い
ワン・ドロップに、心地良さそうなCoco
Teaのヴォーカル。

5曲目は「I'm Going Home」です。
リディムはSugar Minottの「Vanity」
リディムと知られているリディムです
が、オリジナルはロックステディの時代の
Alton Ellisの「I'm Just A Guy」という
曲です。
キーボードとギターの心地良いワン・
ドロップに、Coco Teaの何とも味わいの
ある感情を乗せたヴォーカルがすごく
魅力的。

COCOA TEA - I Am Going Home


リズム特集 I'm Just A Guy (アイム・ジャスト・ア・ガイ)

ざっと追いかけてきましたが、ソフトな
ヴォーカルながらも自然に身に付いた、
Coco Teaのルード・ボーイとしての空気感
がとても魅力的です。
彼がこの後スターへと登り詰めて行ったの
は、むしろ当然だったのかもしれません。

80年代前半に流行したスローなワン・
ドロップのリズムで歌う、彼Coco Teaの
ヴォーカルは何とも言えないほど素敵で、
この時代のダンスホールの魅力をうまく
伝えています。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Cocoa Tea - Live 1989



○アーティスト: Coco Tea (Cocoa Tea)
○アルバム: I Lost My Sonia
○レーベル: Volcano
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1985

○Coco Tea (Cocoa Tea)「I Lost My Sonia」曲目
Side 1
1. Jah Bless The I
2. Yes I'm Wanted
3. Rocking Dolly
4. Informer
Side 2
1. Evening Time
2. Style & Harmony
3. Lost My Sonia
4. Driving Down
5. I'm Going Home

(参考資料)
○Coco Tea「Weh Dem A Go Do...Can't Stop Coco Tea」曲目
1. Rocking Dolly *
2. Informer *
3. Jah Made Them That Way
4. Evening Time *
5. Can't Stop Cocoa Tea
6. Lost My Sonia *
7. I'm Wanted *
8. I'm Going Home *
9. On Top Of The World
10. Chalice Nuh Fi Ramp With
* 今回のアルバムと一致する曲