今回はTappa Zukieのアルバム

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「Living In The Ghetto」です。

Tappa Zukie(Tapper Zukie、本名:
David Sinclair)はRanking Dreadなどと
ともに「第2世代」のディージェイとして
知られている人です。
この「第2世代」のディージェイ特徴と
しては、U Royなどの「第1世代」の
ディージェイと較べて、より政治性が
強い事があげられます。
当時のジャマイカは極貧国のひとつで、
政治抗争も激しく、当時の2大政党
ジャマイカ労働党 (JLP)と人民国家党
(PNP) の間で銃撃戦が起きるほど荒れた
国だったんですね。
このTapper ZukieとRanking Dreadは、
ジャマイカ労働党 (JLP)の熱烈な支持者
として有名で、銃ではなく言葉(トース
ティング)で政治を変える主張をしていた
んですね。

その彼の思想性のあるトースティングは、
ジャマイカだけに留まらず、多くの
パンクスなどの社会に不満を持つ人々
にも影響を与えました。
当時「ニューヨーク・パンクスの女王」と
呼ばれたPatti Smithも彼に影響を受けた
ひとりで、ツアーを共にした彼女は
Tapper Zukieにトースティングの手ほどき
を受けたと言われています。
そうした過激で政治的なリリックで世界的
にも人気を博したのが、このTapper Zukie
という人です。

彼は他にもプロデューサーとしても活躍
し、自身のレーベルStarsやNew Starを
中心に、Prince Allah「Bosrah」やJunior
Ross & The Spearsの「Babylon Fall」
など多くのアルバムを残しています。

ネットのDiscogsによると、15枚ぐらい
のアルバムと、117枚ぐらいのシングル
盤を残しています。

Tapper Zukie - Wikipedia

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Tapper Zukie ‎– Tapper Roots (1978)

今回のアルバムは1979年にジャマイカ
のTapper Zukie本人のレーベルStarsから
リリースされた彼のソロ・アルバムです。

プロデュースはTapper Zukieで、ミックス
はKing Tubby's時代のPrince Jammyで、
バックはSly & RobbieやChinna Smithなど
が揃ったほぼThe Aggrovatorsか
The Revolutionariesともいえる布陣が
参加したアルバムで、ジャケットに
「Includes The Big Hit Oh Lord!」と
書かれているようにヒット曲の「Oh Lord」
や、表題曲の「Living In The Ghetto」
など、この時代にアルバムを量産していた
彼の勢いを感じるアルバムとなっていま
す。

手に入れたのはTappa Recordsから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Mixed and viced at King Tubby's studio
Engineer: Jammies

Bass: Robert Shakespeare
Drums: Sly Dunbar
Guitar: Earl Smith, Georgie Issacs

Special thanks to: Oswald Hibbert As 'No Go', Johnnie Clark,
Bunny Lee, Tony Brevitt ('Don't Get Crazy'),
Ansel Collins ('Oh Lord'), Echo Tone, Studio Companion
Charles Allen, Norman Hutchinson and Michael Samuels

Album Design: Moo Young/Butler Assoc. Ltd.

となっています。

ミックスと声入れはKing Tubby's studio
で、エンジニアはJammies(Prince Jammy)
が担当しています。

参加したミュージシャンはベースにRobert
Shakespeare、ドラムにSly Dunbar、
ギターにEarl 'Chinna' SmithとGeorgie
Issacs、他にOswald HibbertやJohnnie
Clark、Tony Brevitt、Ansel Collinsなど
の名前があります。
この布陣はほぼThe Aggrovatorsか
The Revolutionariesともいえる布陣と
思われます。

ジャケット・デザインはMoo Young/Butler
Assoc. Ltd. となっています。
ジャケットにはジャマイカのゲットーと
思われる場所で、子供たちに囲まれた
Tappa Zukieの写真が使われています。
「Includes The Big Hit Oh Lord!」と
いう文字があり、当時「Oh Lord」が
大ヒットした事が解ります。
手に入れたアルバムは再販されたアルバム
のようで、ジャケットに黄色いインクが
飛び散ったようなかなり汚れたジャケット
でした。

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Tappa Zukie「Living In The Ghetto」裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、この80年代
の後半はTapper Zukieが世界のパンクス達
からも認められ、もっとも勢いのあった
時代で、ちょっと荒い作りながらその勢い
を感じさせる好内容のアルバムとなって
います。

このTapper Zukieですが、彼がもっとも
アルバムをリリースしているのは78年
で、ネットのDiscogsによると1年で6枚
ぐらいのアルバムをリリースしています。
その翌年の79年も、このアルバムを含め
て2枚のアルバムをリリースしているん
ですね。
ところが80年代になるとプロデュース業
が忙しくなったのか、82年の「Raggy
Joey Boy」と86年の「Raggamuffin」の
2枚だけで、さらにそれ以降となると
明らかに70年代のコンピュレーションと
思われるアルバムが2枚あるだけなんです
ね。

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Tapper Zukie ‎– Raggy Joey Boy (1982)

履歴を見る限りでは、彼がもっとも輝いて
いたのは70年代中盤から後半のルーツ・
レゲエの時代だったと思われます。
その彼がもっとも輝いていた時代の
アルバムのひとつが今回のアルバムで、
さらにヒット曲の「Oh Lord」まで収め
られているとなると、これはもうルーツ
好きにとってはぜひ聴いておきたい
アルバムなんですね(笑)。

全体を通して聴くと多少音量のバランスの
悪さなどがちょっと気になるアルバムなん
ですが、そうした事を含めても当時の彼の
荒々しいほどの勢いを感じるアルバムと
なっています。

Side 1の1曲目は「Oh Lord」です。
リディムはGregory Isaacsの「Storm」
です。
華やかなホーンとピアノ、ギターの
ミディアム・テンポのメロディに、
Tappa Zukieらしい味わい深いトース
ティングが魅力的。
書いたように当時の大ヒット曲のよう
です。

Tappa Zukie - Oh Lord


リズム特集 Storm (ストーム)

2曲目は「Dub Them Zukie」です。
リディムはThe Soul Vendersの「Real
Rock」。
ダブワイズの効いたホーンとズッシリと
したベースに浮遊感のあるキーボードの
ユッタリとしたメロディに、Tappa Zukie
らしい味のあるトースティングが冴える曲
です。

Tappa Zukie, "Dub Them Zukie"


リズム特集 Real Rock (リアル・ロック)

3曲目は「Clean Up The Ghetto」です。
ギターとベース、パーカッションを中心と
したリズミカルなメロディに、Tappa
Zukie流れるように流ちょうなトース
ティング。

Tappa Zukie - Clean Up The Ghetto


4曲目は「The Chick」です。
ホーンの特徴的なメロディにJohnny
Clakeと思われるソフトなヴォーカル、
ギターとパーカッション、ホーン、
キーボードのメロディに乗せた、
Tappa Zukieらしい良い味わいのトース
ティング。

5曲目は表題曲の「Living In The
Ghetto」です。
リディムはThe Silvertonesの「Smile」。
心地良いサックのメロディからギターと
ベース、サックの絡むメロディに、
Tappa Zukieのちょっと急ぎ足のトース
ティング。

リズム特集 Smile (スマイル)

Side 2の1曲目は「First Street Girl」
です。
ホーン・セクションとギター、ベースの
ダブワイズしたメロディに、明るいTappa
Zukieのトースティング。

2曲目は「Simpleton Badness」です。
ギターの特徴的なダブワイズしたメロディ
に、Tappa Zukieのワザとちょっとハズし
たようなトースティング。

Tapper Zukie - Simpleton Badness


3曲目は「Don't Get Crazy」です。
リディムはThe Melodiansの「Don't Get
Weary」。
Tappa Zukieの語りから、刻むような
ギターのメロディ、男性ヴォーカル、
イイ感じで入って来るTappa Zukieの
トースティング。
「Special thanks」に名前のある
Tony Brevittも「Don't Get Weary」と
いう曲を歌っていますが、この人の
ヴォーカルのようです。

Tapper Zukie - Don't Get Crazy


4曲目は「Freedom Street」です。
リディムはGregory Isaacsの
「The Winner」です。
明るホーンとギター、ベースのダブワイズ
したメロディに、ハリのあるTappa Zukie
のトースティング。

Tappa Zukie - Freedom Street


5曲目は「Different Fashion」です。
元気のあるホーン・セクションとギターと
ベースのメロディ、勢いのあるTappa
Zukieのトースティング。

Tapper Zukie - Different Fashion


ざっと追いかけてきましたが、まるで
溢れる言葉を抑えきれないような
Tappa Zukieのトースティングが魅力的な
アルバムで、構成の多少の粗さもかえって
魅力的に感じてしまうようなアルバムなん
ですね(笑)。
この時代にTappa Zukieがいかに生き生き
と生きていたか、その証しのような
アルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Tappa Zukie
○アルバム: Living In The Ghetto
○レーベル: Tappa Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1979

○Tappa Zukie「Living In The Ghetto」曲目
Side 1
1. Oh Lord
2. Dub Them Zukie
3. Clean Up The Ghetto
4. The Chick
5. Living In The Ghetto
Side 2
1. First Street Girl
2. Simpleton Badness
3. Don't Get Crazy
4. Freedom Street
5. Different Fashion

●今までアップしたTappa Zukie関連の記事
〇Tappa Zukie「Raggamuffin」
〇Tappa Zukie「Tappa Zukie In Dub」
〇Tappa Zukie「Tapper Roots」
Tapper Zukie「Escape From Hell」
〇Tapper Zukie「MPLA」
〇Tapper Zukie「Raggy Joey Boy」
〇Tapper Zukie「The Man From Bozrah」