今回はTappa Zukieのアルバム

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「Raggamuffin」です。

Tappa Zukie(Tapper Zukie)はRanking
Dreadなどとともに「第2世代」の
ディージェイとして知られている人です。
この「第2世代」のディージェイ特徴と
しては、U Royなどの「第1世代」の
ディージェイと較べて、より政治性が
強い事があげられます。
当時のジャマイカは極貧国のひとつで、
政治抗争も激しく、当時の2大政党
ジャマイカ労働党 (JLP)と人民国家党
(PNP) の間で銃撃戦が起きるほど荒れた
国だったんですね。
このTapper ZukieとRanking Dreadは、
ジャマイカ労働党 (JLP)の熱烈な支持者
として有名で、銃ではなく言葉(トース
ティング)で政治を変える主張をしていた
んですね。

その彼の思想性のあるトースティングは、
ジャマイカだけに留まらず、多くの
パンクスなどの社会に不満を持つ人々
にも影響を与えました。
当時「ニューヨーク・パンクスの女王」と
呼ばれたPatti Smithも彼に影響を受けた
ひとりで、ツアーを共にした彼女は
Tapper Zukieにトースティングの手ほどき
を受けたと言われています。
そうした過激で政治的なリリックで世界的
にも人気を博したのが、このTapper Zukie
という人です。

彼は他にもプロデューサーとしても活躍
し、自身のレーベルStarsやNew Starを
中心に、Prince Allah「Bosrah」やJunior
Ross & The Spearsの「Babylon Fall」
など多くのアルバムを残しています。

ネットのDiscogsによると、15枚ぐらい
のアルバムと、117枚ぐらいのシングル
盤を残しています。

Tapper Zukie - Wikipedia

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Tapper Zukie ‎– M.P.L.A. (1976)

今回のアルバムは1986年にUSの
Tappa Zukie自身のレーベルTappa
Recordsよりリリースされた彼のソロ・
アルバムです。

プロデュースとアレンジはTappa Zukie
本人で、この時代はジャマイカでは
デジタルのダンスホール・レゲエが大流行
していた時代ですが、バックはほぼ
アナログのアルバムで、Sly & Robbieや
Dwight Pickney、Dean Frazerなどが
バックを務めたアルバムです。
表題曲といえる「Raggamuffin Soldier」
をはじめとして、ルーツ・ディージェイ
らしいオールド・スタイルのトース
ティングが楽しめるアルバムとなっていま
す。

手に入れたのはTappa Recordsから
リリースされたLPの中古盤でした。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Drums: Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespare
Guitar: Dwight Pickney
Keyboards: Tyronne Downe
Horns: Dean Frazer
Mixed at: Blue Mountain
Recorded at: Blue Mountain
Mixed by: Donovan Phillip

All Songs Written by Tappa Zukie
Produced and Arranged by Tappa Zukie

となっています。

演奏に参加したメンバーは、ドラムにSly
Dunbar、ベースにRobbie Shakespare、
ギターにDwight Pickney、キーボードに
Tyronne Downe、ホーンにDean Frazerと
いう布陣です。
レコーディングとミックスはBlue
Mountainというスタジオで行われ、
ミックス・エンジニアはDonovan Phillip
が担当しています。

すべての曲は作曲とプロデュース、
アレンジはTappa Zukieが行っています。

残念ながらジャケット・デザインに関する
表記はありません。

また裏ジャケにはTappa Zukieが用心棒を
務めていた事があるBunny 'Striker' Lee
による、ライナー・ノーツが書かれていま
す。
またこの裏ジャケの写真5枚のうち4枚は
Tappa Zukieと恋人か奥さんと思われる
女性との2ショット写真が使われていま
す。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、このデジタル
のダンスホールの時代になっても
Tappa Zukieらしいオールド・スタイルの
トースティングは健在で、全盛期ほどの
勢いはないものの、彼らしい味わいのある
トースティングが楽しめるアルバムと
なっています。

このTappa Zukieですが、やはりその全盛
期はなんといっても70年代で、当時の
ジャマイカの政治をぶった切るような歌を
バシバシと歌い、Patti Smithをはじめと
する当時のパンク・ロッカー達からも絶大
な人気を集めていたんですね。
ネットのDiscogsの彼の15枚のアルバム
のうち11枚が70年代にリリースされた
アルバムです。
特に78年は彼がもっとも人気が高かった
時のようで、「Tapper Roots」をはじめと
して6枚ものアルバムをリリースしている
んですね。

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Tapper Zukie ‎– Tapper Roots (1978)

ところが80年代になると82年に
「Raggy Joey Boy」と、今回の86年の
「Raggamuffin」の2枚のアルバムの2枚
しかリリースしていないんですね。

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Tapper Zukie ‎– Raggy Joey Boy (1982)

他に96年に「Deep Roots」、2004年
に「Cork & Tar」というアルバムを
リリースしていますが、バックのメンバー
などを見るとどうも70年代の音源らしく
思われ、実質的には今回のアルバムが
Tappa Zukieがリリースした最後のアルバム
という事になりそうです。

70年代に政治的な歌でパンク・ロッカー
からも人気を博した彼ですが、今回の
アルバムの中に「Bed Room Boogy」という
曲が入っている事などから見て、80年代
から流行し始めたスラックネス(下ネタ)
路線のダンスホール・レゲエに合わせたの
か、歌詞の内容もだいぶ柔らかい路線に
変わって来ているのが感じられます。

ただこの時代はすでにデジタルのダンス
ホール・レゲエが大流行した時代ですが、
サウンド面は少しデジタルらしさを装って
いるもののまだアナログで、彼のトース
ティングからも70年代のオールド・
スタイルの匂いがプンプンと漂っており、
必ずしも時代の流れに合わせ切れていない
面が感じられます。
おそらくそのあたりは当時は「時代遅れ」
と感じられたのかもしれません。
ただ今の時代に聴くと、その必ずしも時代
に合わせ切れていない「彼らしさ」が、
とても魅力的に感じられます。

そこに「語り芸」としてのトースティング
の、彼らしい「面白さ」があるんですね。
時代の変化で多少勢いは削がれているもの
の、彼らしいトースティングはまだ充分に
楽しめるアルバムだと思います。

Side 1の1曲目は「Space Shuttle」
です。
ギターとベースのメロディに、Tappa
Zukieのソフトで流れるようなトース
ティング。

2曲目は「History」です。
リディムは「Tempo」か?
ちょっとデジタルっぽいキーボードの
メロディに、Tappa Zukieの明るいトース
ティング。

Tappa Zukie - History - 1986 - Tempo Killer


リズム特集 Tempo (テンポ)

3曲目は「Don Lucks」です。
リズミカルなドラミングにキーボードの
メロディ、Tappa Zukieの流れるような
心地良いトースティング。

Tappa Zukie - Don Lux & Version

↑後半のダブは入っていません。

4曲目は「The Sting」です。
ユッタリとしたリズムに乗せた、Tappa
Zukieのけっこう早口のトースティングと
合いの手として入る規制が面白い曲です。

5曲目は「Pack Up And Run」です。
リディムは「Stalag」。
ギターとベース、キーボードを中心とした
メロディに、Tappa Zukieのトース
ティングが味わい深い曲です。
ドスの効いたベースがイイ感じ。

リズム特集 Stalag (スタラグ)

Side 2の1曲目は「Human Rights」です。
リディムはThe Abyssiniansの
「Declaration Of Rights」か?
漂うようなキーボードの哀愁を秘めたメロディに、
ちょっと悲し気なTappa Zukieのトース
ティングと、もう一人合いの手を入れて
いるディージェイが居る曲です。

2曲目は「Raggamuffin Soldier」
です。
リディムはBob Marleyの「Buffalo
Soldier」か?
明るいホーンとキーボードのメロディに、
Tappa Zukieのちょっと外したような元気
で楽しいトースティング。

3曲目は「Three Raggamuffin Guys」
です。
ギターとフルートのようなキーボードの
メロディに、Tappa Zukieのノリノリの
トースティングが印象的な曲です。

4曲目は「Done With」です。
打ち込みのようなドラミングにリリカルな
キーボードのメロディ、Tappa Zukieの
ワザとちょっと外したようなトース
ティング。

5曲目は「Bed Room Boogy」です。
特徴的なキーボードに打ち込みのリズム、
ズシっとしたベース音、Tappa Zukieの
流れるようなトースティング。

ざっと追いかけてきましたが、時代の流れ
を意識しながらも、自分らしいトース
ティングを追求するTappa Zukieの姿勢が
うかがえるアルバムで、内容はなかなか
悪くありません。
微妙にこのデジタルの時代の空気が感じ
られるのも、ちょっと面白いところです。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Tappa Zukie
○アルバム: Raggamuffin
○レーベル: Tappa Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1986

○Tappa Zukie「Raggamuffin」曲目
Side 1
1. Space Shuttle
2. History
3. Don Lucks
4. The Sting
5. Pack Up And Run
Side 2
1. Human Rights
2. Raggamuffin Soldier
3. Three Raggamuffin Guys
4. Done With
5. Bed Room Boogy