今回はPinchersのアルバム

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「Agony」です。

Pinchers(本名:Delroy Thompson)は
80年代の半ばごろから活躍するダンス
ホール・レゲエのシンガーです。
Tenor Sawばりのアウト・オブ・キーを
得意としたシンガーで、ヒット曲に
「Bandelero」などがあります。

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Pinchers ‎– Bandelero (1991)

ネットのDiscogsの彼の履歴を見ると、
86年にアルバム「Can't Take The
Pressure」をリリースしてから現在まで
に、4枚の共演盤を含めて13枚ぐらいの
アルバムと、400枚を超えるシングル盤
をリリースしている人気シンガーです。

アーティスト特集 Pinchers (ピンチャーズ)

今回のアルバムは1987年にジャマイカ
のKing JammyのレーベルJammy's Records
からリリースされたPinchersのソロ・
アルバムです。

この80年代後半はPrince Jammyが
プロデュースしたWayne Smithの
「Under Mi Sleng Ting」が大ヒット
して以降ジャマイカではデジタル・レゲエ
の大ブーム「コンピューター・ライズド」
が起きていたんですね。
(それを機にPrince Jammyは、King Jammy
に改名しています。)
その大ブームを起こしたJammy's Records
からリリースされた今回のアルバムは、
プロデュースとアレンジがKing Jammyで、
軽快なデジタルなリズムに乗せたPinchers
のアウト・オブ・キーが堪能出来る
アルバムとなっています。

ちなみにこのアルバムはUKでも87年に
Live And Loveというレーベルから
リリースされていますが、ジャケットの
絵柄は同じでタイトルだけが改題されて
「Got To Be Me」となっています。
これはSide 1の1曲目のタイトルなんです
ね。
どうしてタイトルを改題したのか?本当の
ところは解りませんが、販売サイトの
「Agony」のシングル盤の説明に「下ネタ
全開のジャマイカ大ヒット曲」という記述
がありました。
もしかしたら「Agony」という曲が
スラックネス(下ネタ)全開の曲だったの
で、UKではタイトル曲に相応しくないと
改題したのかもしれません。

ちなみにタイトルの「Agony」を自動翻訳
してみると、「苦しみ」という意味のよう
です。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

Producer and Arranged by King Jammy

という記述があります。

プロデュースとアレンジがKing Jammyと
いう記述しかありません。

さて今回のアルバムですが、この時代に
もっとも勢いのあったKing Jammyの
デジタル・サウンドに乗せたPinchersの
アウト・オブ・キーはとても魅力的で、
内容は悪くないと思います。

80年代頃からジャマイカで流行したの
が、この「アウト・オブ・キー」という
歌唱法です。
その名前からキーを外して歌うという
イメージが強いですが、通常のルート音
より5度上のキーで歌い切るというのが
この歌唱法なんですね。
それによって独特の浮遊感やヘタウマ感が
あるのが、この歌唱法です。
代表的なシンガーとしてはTenor Sawや
Nitty Grittyという人が挙げられます。

アウト・オブ・キー(Out of key)という歌唱法とその歌手・アルバムについて

このPinchersもそのTenor Sawの
フォロワーとして、登場して来た人なん
ですね。
特にデビューした80年代後半頃の
アルバムは、Tenor Sawの歌いぶりに
とてもよく似ているんですね。
その後の90年代は「Bandelero」などの
アウトロー路線と歌のウマさで人気を
博しますが、この80年代後半の若々しく
エネルギッシュなPinchersもなかなか悪く
ないんですね。
特に今回のアルバムは当時一番勢いの
あったKing Jammyのプロデュースで、
コンピューター・ライズドのちょっと
イカレたノリにPinchersのハイ・
テンションなアウト・オブ・キーがうまく
マッチして、この時代らしい独特の空気感
が感じられるアルバムとなっています。

Slim Smith & The Uniquesの「My
Conversation」リディムのSide 1の1曲目
「Got To Be Me」から始まり、Bert
Kaempfertの「African Beat」リディムの
2曲目「Don Is Don」、デジタル感のある
Wayne Smithの「In Thing」リディムの
3曲目「Magnet To Steal」、Cocoa Teaの
「You Me Love」リディムの4曲目「Baby
Love」、そして表題曲の「Big Belly Man」
リディムのスラックネス全開な5曲目
「Agony」、Sound Dimensionの「Heavy
Rock」リディムのSide 2の1曲目「Hell
In Harlem」、浮遊感のあるキーボードに
乗せた2曲目「Si Down Pon It」、
Cocoa Teaの「Stand Accused」リディムの
3曲目「No Ice Cream Love」、心地良さ
そうに歌うPinchersのヴォーカルが魅力の
4曲目「Request To Deniese」、Pinchers
のエモーショナルなヴォーカルが印象的な
5曲目は「Geany In My Life」まで、この
デジタルのダンスホールの時代とPinchers
という稀有のヴォーカリストの魅力が
うまく詰め込まれたアルバムに仕上がって
います。

Side 1の1曲目は「Got To Be Me」
です。
リディムはSlim Smith & The Uniquesの
「My Conversation」。
デジタルらしい軽快なリズムにピアノの
リリカルなメロディ、Pinchersの鼻に
かかったようなハイトーンなヴォーカル。

Pinchers - Got To Be Me


リズム特集 My Conversation (マイ・カンバセーション)

2曲目は「Don Is Don」です。
リディムはBert Kaempfertの「African
Beat」。
デジタルの軽快なリズムにキーボードの
メロディ、滑らかなPinchersの
ハイトーン・ヴォイス。

リズム特集 African Beat/Under Mi Sensi (アフリカン・ビート/アンダー・ミ・センシ)

3曲目は「Magnet To Steal」です。
リディムはWayne Smithの「In Thing」。
デジタルらしい刺激的なリズムに、
Pinchersらしい鼻にかかったヴォーカルが
魅力的。

Pinchers . Magnet To Steal - CD Dance Hall Clasics AO!


4曲目は「Baby Love」です。
リディムはCocoa Teaの「You Me Love」。
心地良いキーボードとピアノのメロディに
打ち込みのドラミング、流れるように
滑らかなPinchersのヴォーカル。

5曲目は「Agony」です。
Pinchersの人気曲ですが、オリジナルは
「第2のSleng Ting」と呼ばれた人気
リディム「Big Belly Man」です。
デジタルのリズムにピアノのメロディ、
ハイトーンなPinchersの強烈に耳に残る
ヴォーカル。
書いたように歌詞はかなりスラックネス
(下ネタ)なもののようです。

PINCHERS AGONY


リズム特集 Big Belly Man/Agony (ビッグ・ベリーマン/アガニー)

Side 2の1曲目は「Hell In Harlem」
です。
リディムはロックステディの時代のSound
Dimensionのヒット曲「Heavy Rock」。
甲高いキーボードとピアノのメロディ、
Pinchersの甲高いヴォーカル。

Pinchers - Hell In Harlem


リズム特集 Heavy Rock (へヴィー・ロック)

2曲目は「Si Down Pon It」です。
デジタルなリズムに漂うようなキーボード
のメロディ、伸びやかなPinchersの
ヴォーカル。

3曲目は「No Ice Cream Love」です。
リディムはCocoa Teaの「Stand Accused」。
デジタルなキーボードの軽快なメロディ
に、リラックスした鼻にかかった歌声の
Pinchersのヴォーカル。

PINCHERS - NO ICE CREAM LOVE


4曲目は「Request To Deniese」です。
イントロにちょっとふざけたような
Pinchersの口上が入ります。
デジタルな歯切れの良いリズムにピアノを
中心としたメロディ、心地良いPinchersの
ヴォーカルがグッド。

Pinchers - Request To Denise


5曲目は「Geany In My Life」です。
軽快なデジタルのリズムにピアノの
メロディ、感情をうまく乗せたPinchers
のエモーショナルなヴォーカル。

ざっと追いかけて来ましたが、この
デジタルのダンスホール・レゲエの時代に
活躍したPinchersというヴォーカリストの
魅力がうまく詰め込まれたアルバムだと
思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Pinchers
○アルバム: Agony
○レーベル: Jammy's Records
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1987

○Pinchers「Agony」曲目
Side 1
1. Got To Be Me
2. Don Is Don
3. Magnet To Steal
4. Baby Love
5. Agony
Side 2
1. Hell In Harlem
2. Si Down Pon It
3. No Ice Cream Love
4. Request To Deniese
5. Geany In My Life

●今までアップしたPinchers関連の記事
〇Pinchers, Pliers「Pinchers With Pliers」
〇Pinchers, Sanchez「Pinchers Meets Sanchez」
〇Pinchers「Bandelero」
〇Pinchers「Lift It Up Again」