ここのところ最近購入したレゲエ本
「レゲエ・アンバサダーズ 現代の
ロッカーズ - 進化するルーツ・ロック・
レゲエ」を少しずつ読み進めています。

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レゲエ・アンバサダーズ

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レゲエ・アンバサダーズ(帯付き)

これは著者であるフランスの作家/大学
教授のアレクサンドル・グロンドーさんと
いう方が、「〈本当のレゲエとは何か?〉
を追求し、さまざまなアーティストに話を
訊いて旅した10年に及ぶ探求プロジェクト
の成果」をまとめた本なんだとか。
本は総勢55名に及ぶインタビューから
構成されていて、2010年以降の
「レゲエ・リヴァイヴァル」の
アーティストとしてProtoje、Chronixx、
Jah9、Kabaka Pyramidの4名が、90年
代から2000年代の「ニュー・ルーツ」
のアーティストとしてBuju Banton、
Sizzla、Capleton、Anthony B、Damian
Marley、Lucianoなど14名が、それ以前
の「ルーツ・ロック・レゲエ」の
アーティストとしてLee Perry、Toots
Hibbert、John Holt、Ken Boothe、Max
Romeo、Bunny Wailer、Jimmy Cliff、
U-Roy、Big Youthなど17名の
アーティストが掲載されており、さらに
本にあるURLとパスワードを入力すると
20名分のアーティストのドキュメン
タリーが見られる仕組みになっているよう
です。

さらに多くの写真が掲載されており、
ライヴなどのアーティストの表情豊かな
写真が掲載されているのも、この本の
大きな魅力になっています。

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Damian Marley

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Lee Perry

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Protoje

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Capleton

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Kabaka Pyramid

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Jah9

1日に2,3人ずつ少しずつ読み進めて
いるところですが、その内容はなかなか
面白く、興味深い記述も多いです。

本は2010年以降の「レゲエ・
リヴァイヴァル」のアーティストProtoje
やChronixx、Jah9、Kabaka Pyramidという
アーティストから始まっており、そこから
90年代から2000年代の「ニュー・
ルーツ」系のアーティスト、それ以前の
「ルーツ・ロック・レゲエ」系の
アーティストへと時代を遡って行く形式で
掲載されていて、今は「ニュー・ルーツ」
系のアーティストを少し読み始めたあたり
です。

「レゲエ・リヴァイヴァル」のアーティ
ストでは、Protojeが影響を受けた
アーティストとしてBlack Uhuruと
Ini Kamozeの名前を挙げていたり、Jah9
はジャズとダブの影響を受けている事、
Kabaka Pyramidはヒップホップの影響と、
実際の音楽を聴いただけでは解らない、
それぞれの元になったルーツ・ミュー
ジックが語られています。
(この本ではないがネットのインタビュー
でJesse RoyalがCultureのJoseph Hillの
影響を受けたと語っていたのを呼んだ事が
あります。)
そうした実際の音楽と好みのアーティスト
の微妙な「ズレ」も、むしろ面白いところ
です。

あとこうした「レゲエ・リヴァイヴァル」
のアーティストの多くは、裕福な家庭に
育ったインテリ層なんですね。
ProtojeやChronixxはミュージシャンの
子供であり、Jah9は子供の頃から
Chinna Smithの「庭」で歌っていたと
語っています。
またProtojeは裕福な家庭に育った事と、
政治的な歌を歌う事は矛盾しないとも
語っています。

あえてこの「レゲエ・リヴァイヴァル」の
アーティストの記述を先に持って来たのが
この本の素晴らしい点で、それによって
より明確にレゲエという音楽が「終わった
音楽」ではなく「未来に繋がる音楽」で
あり、「レゲエ・リヴァイヴァル」の
アーティストがその役割を果たし始めた
事が解る構成となっています。

「ニュー・ルーツ」のアーティストでは
SizzlaやCapleton、Anthony Bなどの
「ボボ・アシャンティ」系のアーティスト
の記述がやはり気になるところです。
ボボ・アシャンティといえばラスタ
ファリアンの中でも特に厳格な宗派です
が、やはりその厳格さゆえの「同性愛者
嫌悪(ホモフォビア)」の問題は避けて
通れないところです。

ホモフォビア - Wikipedia

この本にはそうしたSizzlaやCapleton
などの「ホモを燃やしてしまえ!」などの
激しいリリックが、大きな問題を引き起こ
した事や、それに対して当事者である
SizzlaやCapletonなどがどういうスタンス
を取ったかなどが、かなりストレートに
書かれています。

実はこのあたりの事はボボ・アシャンティ
系のアーティストについてアルバム評を
書く時に、いつも頭の痛い問題なんです
ね。
初めは黒人差別などを訴える社会性のある
プロテスト・ソングとして70年代に人気
を博したレゲエ(ルーツ・レゲエ)です
が、90年代頃になるとむしろラスタ
ファリズムの「暗黒面」が見えて来て、
こうしたホモフォビアや黒人優位を謳う
ヘイト・ミュージックと取られてしまう
ような側面が見えて来るんですね。
そのあたりをどう書いたものか、いつも
頭の痛い問題でした。

実はこうしたホモフォビアの問題などは、
あまりハッキリと書かれた記事とかは意外
と少ないんですね。
私も長年レゲエという音楽を聴いている
うちに、実はこうした事なのではないか?
と、徐々に解ってきた感じです。
まあ私の不勉強という事もあるのでしょう
が、今回のこの本のインタビューや著者の
説明などを読んで、自分の考えていた事と
かなり符合したので、やっと胸のつかえが
取れた気がしました。

ただ誤解の無いように書いておきますが、
そうしたホモフォビアの問題があるに
せよ、今までのレゲエを支え続けたSizzla
やCapletonの働きは大きなものがあったと
思います。
そのSizzlaやCapletonは音楽的に素晴ら
しい実績も残しているんですね。
ジャマイカという国では日本以上にそう
したホモ・セクシャルなどに対して、仮に
宗教的な事を抜きにしたとしても、すごく
厳しい目を向ける国なんですね。
人の意識というものは、時代や環境に
よって変わるものです。

ただそうしたレゲエという音楽の内向きな
姿勢が多くの人をドン引きさせてしまった
のも事実で、その反省から再び政治に目を
向けた外向きなレゲエ・リヴァイヴァルが
登場して来たという事があるのではないで
しょうか。
そう考えるとレゲエはあらためて健全な
方向に向かっていると、言えるかもしれま
せん。

今回の本の良いところは、こうしたレゲエ
という音楽の「マイナス面」にもシッカリ
と言及している点で、これによりレゲエと
いう音楽の輪郭がよりハッキリと見えて
来る点です。
著者のアレクサンドル・グロンドーさんの
良い点も悪い点もしっかりと見据えて書く
姿勢は、文章を書く人間としては見習い
たい点です。
どうも日本のこうした文章は、論点をズラ
したりで、ハッキリと問題点を指摘しない
傾向があるんですね。
それはやはり健全ではないと思います。
私は大した文章を書いている訳ではありま
せんが、見習いたいと思いました。

まだ読みかけですべての文章を読んでいる
訳では無いのですが、レゲエという音楽を
聴く上でとても参考になる本ではないかと
思います。

ちょっと迷っているのがそのレゲエの
ムーヴメントの名称で、この本では
70~80年代ぐらいのレジェンド級の
アーティストを「ルーツ・ロック・
レゲエ」、90~2000年代ぐらいの
アーティストを「ニュー・ルーツ」、
2010年以降のアーティストを
「レゲエ・リヴァイヴァル」と分類して
います。
(もちろんこの分類は便宜的のようで、
「ニュー・ルーツ」に分類されたTarrus
Rileyは「ニュー・ルーツ」と「レゲエ・
リヴァイヴァル」を繋ぐアーティストと
文章中に紹介されています。)

この分類を自分の文章で採用するかは、
ちょっと迷うところがあります。
2010年以降の「レゲエ・リヴァイ
ヴァル」は、ネット上のいろいろな文章を
読むと「ラスタ・リヴァイヴァル」とか
「ルーツ・リヴァイヴァル」とか、いろ
いろな言い方をされているんですね。
さらにその中の「ルーツ・リヴァイ
ヴァル」という名前ですが、90年代に
Garnett SilkやTony Rebelの興した
ムーヴメントを「ルーツ・リヴァイ
ヴァル」と呼ぶ事があります。

1990年代のルーツ・リバイバルに迫る!

その90~2000年代はこの本では
「ニュー・ルーツ」となっていますが、
その「ルーツ・リヴァイヴァル」と呼んだ
方が良いのか迷うところ。
さらにレゲエレコード・コムのページなど
を見ると、「ニュー・ルーツ」という言葉
はこうしたルーツ色の強い楽曲ではなく、
Adrian SherwoodのOn-U Soundsや
Mad ProffesorのAriwaなど、もう少し
ロック色やポップス色を強めた亜流の
レゲエの総称として使われているんです
ね。
おそらく多くの人は「ニュー・ルーツ」と
聴くと、そちらの音楽を連想するのでは
ないでしょうか。

その為自分で書いたアルバム評では、
90年代のGarnett SilkやTony Rebelの
興したムーヴメントを「ルーツ・リヴァイ
ヴァル」、2010年以降のルーツ系の
サウンドを「ラスタ・リヴァイヴァル」と
区分けをしていました。
ただこの本などを読むとその区分けで本当
に良かったのかは、ちょっと悩むところ
です。

いろいろ書いて来ましたが、今のレゲエが
「聴くべき音楽」の地位を一気に取り戻し
つつあるのは事実で、多くのレゲエに興味
を持つ人達に聴いて貰いたいと思います。

実は私自身も1年ぐらい前まではそれほど
今のレゲエを聴いていなくて、70年代の
ルーツ・レゲエや80年代のダンス
ホール・レゲエが収集の中心でした。
ところがこうしてレゲエのブログを書く
うちに90年代のレゲエあたりでちょっと
行き詰ってしまって、「それじゃあ、今の
レゲエはどうなんだろう?」と聴いてみた
ら、これがすごく面白かったんですね。

具体的にその2010年以降の「レゲエ・
リヴァイヴァル」のどこが面白かったか?
というと、90年代ぐらいのレゲエは
レゲエ自身がポピュラー・ミュージックに
すり寄っている感があるのですが、この
2010年以降のレゲエはダンス系の
Major Lazerなどの参入などもあるせいか
レゲエ・ミュージックにポピュラー・
ミュージックがすり寄っている感じなん
ですね。
つまりレゲエ自体のポジションはズレて
いないのに、他の音楽がレゲエの
ヴァイブスを取り入れている感じなんです
ね。
むしろレゲエ自体がポピュラー・
ミュージックのセンター・ポジションに
なりつつあるように見えるのが、今の
ムーヴメントの面白さです。

実際に今のレゲエはダンスホール系だと
ダンス・ミュージックのMajor Lazerの
参入により、Busy SignalやSean Paul
などの活躍が目立つし、「ラスタ・
リヴァイヴァル」などのルーツ系では
名前の挙がったProtoje、Chronixx、
Jah9、Kabaka Pyramidのほか、Jesse
RoyalやIba Mahr、Samoy I、Hempress
Stiva、Dre Island、Esco Leviといった
ルーツ・レゲエを基調とした新しい
ミュージシャンが次々と登場して来て
います。
それに伴って新しいレゲエの定番アルバム
や楽曲が、次々と誕生して来ているんです
ね。
少なくとも今のレゲエの方が、5年前
ぐらいのレゲエより明らかに面白くなって
来ているんですね。

Chronixx - "I Can" (Official Music Video)


Dre Island - Ganja I'm Smoking [Official Video 2017]


Exco Levi - Welcome The King (Official HD Video)


あえて断言しますが、今レゲエという音楽
は、その始まりにあったような熱いドグマ
が確実に蘇りつつあるように思います。
それを聴き逃すのは、あまりにももったい
ない…。
レゲエという音楽を聴いている人は、今の
レゲエもぜひ視野に入れて、聴いてもらい
たいものだと思います。

ではこの辺で。

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