今回はPrince Lincoln Thompson &
The Royal Rassesのアルバム

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「Experience..!」です。

Prince Lincoln Thompson & The Royal
Rassesは79年にアルバム「Humanity 」
でデビューした、Prince Lincolnの
ヴォーカルを中心としたレゲエ・バンド
です。

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The Royal Rasses ‎– Humanity (1979)

デビュー当時はThe Royal Rassesという
名前で活動していましたが、別のバンド
The Royalsとの混同を避ける為にバンド名
をThe Rassesに改名し、いくつかの素晴ら
しいアルバムを残しています。
ただデビューが79年と遅かった事が災い
したのか、80年中盤からはダンス
ホール・レゲエの波に乗り切れず、活動と
沈黙を繰り返して1999年にPrince
Lincolnが亡くなっています。

ネットのDiscogsによると、8枚ぐらいの
アルバムと、15枚ぐらいのシングル盤を
残しています。

Lincoln Thompson - Wikipedia

今回のアルバムは1979年にUKの
Ballistic RecordsからThe Rass-es名義で
リリースされた彼らのセカンド・アルバム
です。

シッカリとしたバック陣の演奏に乗せた
Lincoln Thompsonのファルセットな
ヴォーカルが堪能出来るアルバムで、内容
は悪くないと思います。

手に入れたのは私がまだ初めにレゲエを
聴いていた20代の頃で、UKのVista
Soundsから83年にリリースされたLP
でした。
初めにリリースされたLPとは別ジャケ
で、アーティスト名もPrince Lincoln
Thompson & The Royal Rassesとなって
いて、タイトルも「Experience..!」と
微妙に変わっています。

Side 1が5曲、Side 2が5曲の全10曲。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians:
Drums: Leroy 'Horsey' Wallace, Mikey Booth
Keyboards: Wire Lindo, Pablo Black, Geoffrey Chung, Cecil Lloyd
Guitars: Lincoln Thompson, George Miller, Diggles
Lead Guitar: Ernest Ranglin
Horns: Tommy McCook, Bobby Ellis, Bubbler, Headley Bennett
Percussion: Stick, Brother Jomo
Bass: Bagga, Val Douglas

Tracks 3,4, Wayne McGee, Willie Lindo, Lennox Gordon,
also Special Thanks to Errol Thompson of JBC for
Assistance on Tracks 3,4

Engineered & Mixed by Sylvan 'The Genius' Morris, Harry J Studio
All Tracks Written, Composed Lirically, Harmoniously and
Musically by Lincoln Thompson

The Royal Rasses are:
Lincoln Thompson (Sax)
Keith Perkins (Cap)
Clinton Hall (Johnny Kool)

Photographs by David 'I'm Not Coming Here Again' Hendley

となっています。

ミュージシャンはドラムにLeroy
'Horsemouth' WallaceとMikey Booth、
キーボードにEarl 'Wire' Lindoと
Pablove Black、Geoffrey Chung、Cecil
Lloyd、(リズム)ギターにLincoln
ThompsonとGeorge Miller、Diggles、
リード・ギターにErnest Ranglin、ホーン
にTommy McCookとBobby Ellis、Calvin
'Bubbles' Cameron、Felix 'Deadly
Headley' Bennett、パーカッションに
StickyとBrother Jomo、ベースに
Earl 'Bagga' WalkerとVal Douglasと
いう布陣です。

3曲目「Slave Driver」と4曲目「You
Gotta Have Love (Jah Love)」の演奏は
Wayne McGeeとWillie Lindo、Lennox
Gordonが行っていて、「Special Thanks」
としてErrol Thompsonの名前があるので、
ミックスは彼が行っているようです。

レコーディングとミックスはHarry J
StudioのSylvan 'The Genius' Morrisが
行っています。
彼はDub Specialist名で、あのStudio One
のダブを作った人として知られています。

すべての曲の作曲はLincoln Thompson
が行っています。

The Royal Rassesのメンバーはリード・
ヴォーカルのLincoln Thompson (通称Sax)
と、ハーモニーにKeith Perkins
(通称Cap)とClinton Hall (Johnny Kool)
の3人です。
ちなみにレゲエ本「Roots Rock Reggae」
によると、3枚目のアルバム「Natural
Wild」以降は「トリオを解消し、コーラス
も自分で多重録音するようになる」との事
です。

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Lincoln Thompson and The Rasses ‎– Natural Wild (1980)

写真はDavid 'I'm Not Coming Here Again'
Hendleyとなっています。
この写真家の人はジャマイカの環境が気に
入らなかったのか、あだ名が「I'm Not
Coming Here Again(二度と来るかこんな
所!)」となっているのが面白いところ
です(笑)。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、Lincoln
Thompsonの彼独特のファルセットな
ヴォーカルが堪能出来るアルバムで、内容
はとても良いと思います。

このPrince Lincoln Thompson & The
Royal Rassesですが、一部のレゲエ・
ファンから熱烈な支持を受ける
ヴォーカル・グループなんですね。
その人気の大きな要因はやはりPrince
Lincoln Thompsonの独特なファルセット・
ヴォイスに魅力があるからなんですね。
曲のサビで聴かれる振り絞るような
ブルブルと震えるファルセットな
ヴォーカルは、他のシンガーに無い彼独特
の魅力で、他とはひと味違うルーツ・
サウンドを作り上げています。
登場した時期がルーツ・レゲエの後期で、
すぐにダンスホール・レゲエの時代が来て
しまった為に時代の波に乗り切れなかった
ようなのですが、その才能は本物でとても
惜しまれる人なんですね。

今聴くと勢いのあるルーツ・サウンドに
乗せたPrince Lincolnのヴォーカルは、
とても魅力的であり、個性的でもあり
ます。
これだけの高いクウォリティがありながら
なぜこのグループがその後尻すぼみに
なってしまったのか、ちょっと不思議に
感じるほどなんですね。
まあそれが「時代の魔力」といったもの
なのかもしれません。
そうした時代の波にもまれたこのPrince
Lincoln Thompson & The Royal Rasses
ですが、このアルバムやファーストの
「Humanity」、サード・アルバムの
「Natural Wild」などは本当に素晴らしい
アルバムで、レゲエの歴史に名前を残して
います。

また合間良く入って来るコーラス・ワーク
や、まるでデュエットするように絡み合う
サックス・ソロ、コロコロと心地良い
ギター・ワークなど、Lincoln Thompson
を支えるバック陣の奮闘も見逃せない
ところ。
この質の高いルーツ期のバック陣は、
出過ぎず引っ込み過ぎずという頃合いの
良い演奏で、バランスの取れたルーツ・
サウンドで、うまくこのコーラス・
グループを盛り上げています。
またレゲエ本「Roots Rock Reggae」
にも書かれていますが、Sylvan Morris
のミックスも素晴らしい出来です。

Side 1の1曲目は「Nobody Here But Me」
です。
華やかなホーンのイントロから、Prince
Lincolnのよく通るファルセット気味の
ノビのあるヴォーカルにコーラス・
ワーク…。
パーカッションや合間良く入るサックス
が、うまく曲を盛り上げています。

Prince Lincoln & The Royal Rasses - Nobody Here But Me


2曲目は「Blessed Are The Meek」
です。
ギターとキーボードのミリタント・ビート
のメロディに、伸びやかなPrince Lincoln
のヴォーカルにコーラス・ワーク、前向き
で心地良いパーカッションのリズム…。

Blessed are the Meek


3曲目は「Slave Driver」です。
心地良いパーカッションのリズムから
華やかなホーン・セクション、よく通る
Prince Lincolnに追いかけて行く
コーラス・ワーク…。
ちょっとBob Marley & The Wailersの
「I Shot The Sheriff」に似たイントロ
や、間奏のパーカッションに乗せた
ギター・ソロが印象的。

4曲目は「You Gotta Have Love (Jah
Love)」です。
ギターとキーボードのメロディに、伸び
やかで感情表現豊かなPrince Lincolnの
ヴォーカルとファルセットの入った
コーラス。

THE RASSES - You Gotta Have Love (Jah Love) [1979]


5曲目は「Babylon Is Falling」です。
ミリタント・ビードに乗せたギターと
キーボードの影のあるメロディに、感情の
こもったPrince Lincolnの伸びやかな
ヴォーカルがすごく魅力的。
鳴くようにメロディを奏でるギターも
グッド。

Prince Lincoln Thompson and the Royal Rasses - Babylon is falling


Side 2の1曲目は表題曲ともいえる
「True Experience」です。
ギターとベースを中心とした勢いのある
ミリタント・ビートの演奏に、伸びやかで
表情豊かなPrince Lincolnのヴォーカルに
コーラス。
コーラス・グループとしての魅力も発揮
した、とてもグルーヴィーな曲です。

Prince Lincoln & The Royal Rasses - True Experience


2曲目は「For Once In My Life」です。
勢いのあるピアノとホーン、ギターによる
メロディ、ソフトに入って来るPrince
Lincolnのヴォーカルにコーラス・
ワーク。
質の高いルーツ期の演奏、特にコロコロと
心地良いギター・ワークは秀逸で、
Prince Lincolnのヴォーカルをうまく引き
立てています。

Prince Lincoln & The Royal Rasses - For Once In My Life


3曲目は「Walk In Jah Light」です。
キーボードとギター、ベースのメロディ
に、伸びやかなPrince Lincolnの
ヴォーカルにコーラス。

4曲目は「Jungle Fever」です。
ギター・ソロからパーカッション、ドラム
と徐々に楽器の入って来るイントロから、
Prince Lincolnの初めから全開のファル
セットにコーラス…。
ソウルフルなノリが心地良い1曲。

Jungle Fever - Prince Lincoln Thompson [HQ Audio)]


5曲目は「Thanksgiving」です。
ギターとホーンのメロディに、語るような
Prince Lincolnのノビのあるヴォーカルが
魅力的。

ざっと追いかけてきましたが、ルーツ・
レゲエのアルバムとしてもすごく魅力的
ですが、シッカリとした個性を感じさせる
Prince Lincoln Thompsonの独特のファル
セット・ヴォーカルが、このアルバムの
魅力をさらにアップしています。
ネットの情報などを見ると、録音する為に
母親に出してもらったお金を博打に使って
しまったというエピソードがある、かなり
破天荒な性格のPrince Lincoln Thompson
ですが、その実力は本物でレゲエの歴史に
名前を刻むべき人だったのは間違いがあり
ません。

書いたように必ずしも大成したという人
(グループ)ではありませんが、ルーツ期
に「Humanity」や「Experience」、
「Natural Wild」など記憶に残る素晴ら
しいアルバムを残したのは事実で、強く
記憶に残る人なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Prince Lincoln Thompson & The Royal Rasses
○アルバム: Experience..!
○レーベル: Vista Sounds
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1979

○Prince Lincoln Thompson & The Royal Rasses「Experience..!」曲目
Side 1
1. Nobody Here But Me
2. Blessed Are The Meek
3. Slave Driver
4. You Gotta Have Love (Jah Love)
5. Babylon Is Falling
Side 2
1. True Experience
2. For Once In My Life
3. Walk In Jah Light
4. Jungle Fever
5. Thanksgiving