今回はTapper Zukieのアルバム

tappa_zukie_07a

「Raggy Joey Boy」です。

Tapper Zukie(Tappa Zukie)はRanking
Dreadなどとともに「第2世代」の
ディージェイとして知られている人です。
この「第2世代」のディージェイ特徴と
しては、U Royなどの「第1世代」の
ディージェイと較べて、より政治性が
強い事があげられます。
当時のジャマイカは極貧国のひとつで、
政治抗争も激しく、当時の2大政党
ジャマイカ労働党 (JLP)と人民国家党
(PNP) の間で銃撃戦が起きるほど荒れた
国だったんですね。
このTapper ZukieとRanking Dreadは、
ジャマイカ労働党 (JLP)の熱烈な支持者
として有名で、銃ではなく言葉(トース
ティング)で政治を変える主張をしていた
んですね。

その彼の思想性のあるトースティングは、
ジャマイカだけに留まらず、多くの
パンクスなどの社会に不満を持つ人々
にも影響を与えました。
当時「ニューヨーク・パンクスの女王」と
呼ばれたPatti Smithも彼に影響を受けた
ひとりで、ツアーを共にした彼女は
Tapper Zukieにトースティングの手ほどき
を受けたと言われています。
そうした過激で政治的なリリックで世界的
にも人気を博したのが、このTapper Zukie
という人です。

彼は他にもプロデューサーとしても活躍
し、自身のレーベルStarsやNew Starを
中心に、Prince Allah「Bosrah」やJunior
Ross & The Spearsの「Babylon Fall」
など多くのアルバムを残しています。

ネットのDiscogsによると、15枚ぐらい
のアルバムと、117枚ぐらいのシングル
盤を残しています。

Tapper Zukie - Wikipedia

tappa_zukie_04a
Tapper Zukie ‎– M.P.L.A. (1976)

今回のアルバムは1982年にUKの
Mobiliser Musicというレーベルから
リリースされたTapper Zukieのソロ・
アルバムです。

プロデュースはTapper Zukie本人で、
バックにSly & Robbieなどが参加した
アルバムで、このアーリー・ダンスホール
の時代らしいスローなワン・ドロップの
リズムに乗せたトースティングが楽しめる
アルバムとなっています。

手に入れたのはUKのリイシュー・
レーベルJamaican Recordings傘下の
Kingston Soundsから、2010年に
リイシューされたCD(新盤)でした。

全12曲で収録時間は約48分。
オリジナルは9曲で、残りの3曲は
CDボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians Include:
Drums: Sly Dunbar, Leroy 'Horsemouth' Wallace
Bass: Robbie Shakespeare, Lloyd Parks
Lead Guitar: Willie Lindo
Rhythm Guitar: Bo Pe
Keyboards: Keith Sterling, Robbie Lyn
Organ: Winston Wright
Horns Section: Dean Fraser, Vin Gordon, Deadly Headly, Nambo
Vocals, Percussion: Tapper Zukie

Recorded at: Dynamic Sounds Studio
Mixed at: Tuff Gong Studios
Produced by: Tapper Zukie
Design by: Voodoo London
Photography: Tapper Zukie Archive

となっています。

バックのミュージシャンはドラムに
Sly DunbarとLeroy 'Horsemouth'
Wallace、ベースにRobbie Shakespeare
とLloyd Parks、リード。ギターに
Willie Lindo、リズム・ギターにWinston
'Bo Pe' Bowen、キーボードにKeith
SterlingとRobbie Lyn、オルガンに
Winston Wright、ホーン・セクションに
Dean FraserとVin Gordon、Deadly
Headly、Ronald 'Nambo' Robinsonと
いう布陣です。
これはTapper Zukieのバック・バンド
The Musical Intimidatorsという事に
なるのでしょうか。

レコーディングはDynamic Sounds
Studio、ミックスはTuff Gong Studios
で行われ、プロデュースはTapper Zukie
本人となっています。

ジャケット・デザインはVoodoo London、
写真はTapper Zukie Archiveから使用
されています。
ネットのDiscogsなどを見ると、
オリジナルのジャケットはブルーのトタン
の塀の前に居るTapper Zukieの写真が使わ
れていて、「Raggy Joey Boy」の飾り文字
が入っているんですね。
その同じ写真を使って、バックをブルーで
塗りつぶし、ロゴも変更したのが今回の
ジャケットです。

さて今回のアルバムですが、この80年代
初めに流行したアーリー・ダンスホールの
スローなワン・ドロップのリズムに乗せた
Tapper Zukieのトースティングが楽しめる
アルバムで、内容はなかなか良いと思い
ます。

このTapper Zukieですが、彼が最も旬
だった時期は70年代のルーツ・レゲエ
全盛の頃だったと思います。
ネットのDiscogsなどを見ると、73年に
アルバム「Man Ah Warrior」をリリース
して以降、合計11枚ぐらいのアルバムを
リリースしていて、一番多い78年には
5枚のアルバムをリリースしており、
アルバムのほとんどがこの70年代に集中
しているんですね。
それ以降になると82年に今回の
アルバム、86年に「Raggamuffin」、
90年代と2000年代にそれぞれ1枚
ずつのアルバムと、極端にリリースが無く
なるんですね。
それを見てもこのTapper Zukieの全盛期が
70年代のルーツ・レゲエの時代だった事
は間違いありません。

当時はジャマイカの2大政党ジャマイカ
労働党 (JLP)と人民国家党 (PNP) の間で
銃撃戦が起きるほどジャマイカは荒れた国
で、ジャマイカ労働党 (JLP)の熱烈な
支持者だった彼Tapper Zukieは、その過激
な政治的なリリックでジャマイカだけでは
なく多くのパンク・ロッカーなどからも
支持され、世界的に人気なミュージシャン
となって行くんですね。

その中でも彼に熱烈なコールを送ったのが
あのPatti Smithで、彼女は彼を自分の
ツアーのオープニング・アクトに起用し、
さらには楽屋でトースティングの手ほどき
を受けたと言われています。

今ではこうした話を知らない人もだいぶ
増えたようですが、当時はパンクとレゲエ
はその政治性などから兄弟の音楽のような
ところがあり、ミュージシャン同士の交流
もあったんですね。
当たり前の話ですが、パンクをヤッてる
からといってパンクの人しか付き合わ
ない、パンクしか聴かないという事は無い
んですね。
あのパンク・バンドSex Pistolsの
メンバーが、プライベートではレゲエを
よく聴いていたというのは有名な話です。

話を戻しますが、そうした70年代に
かなり人気の高かったTapper Zukieです
が、80年以降はあまりアルバムを
リリースしていないんですね。
おそらく90年代以降のアルバムは、70
年代の音源を集めたコンピュレーション
なのではないかと思われます。
そう考えるとこの80年代前半のこの
アルバムぐらいまでが、ディージェイと
してのこの人の一番良い時期のアルバムと
いう事になりそうです。

実際に聴いてみた印象としても、80年代
初めに流行したアーリー・ダンスホールの
スローなワン・ドロップのリズムにうまく
対応していて、とてもグルーヴ感のある
良いアルバムに仕上がっているんですね。

Jo Jo Bennettの「Lecturer」リディムの
1曲目「Women Ah No Me Trouble」から
始まり、6分48秒にも及ぶ大曲の表題曲
2曲目「Raggy Joey Boy」、ラヴ・ソング
の3曲目「Natty Princess」、まるで
ファンクのような7曲目「Reggae」、
Alton Ellisの「Mad Mad」リディムの
8曲目「Mr Bubbler」、Bob Marley &
Wailersの「Keep On Moving」リディムの
9曲目「Mr. Finnigan」まで、うまく
ワン・ドロップのリズムを使いながらも
彼らしいメリハリの効いたトースティング
を聴かせています。

1曲目は「Women Ah No Me Trouble」
です。
リディムはJo Jo Bennettの初期レゲエの
頃のヒット曲「Lecturer」です。
ホーン・セクションの華やかなメロディ
に、ワン・ドロップのリズムに乗せた
ズシっとしたベースの伴奏に、Tapper
Zukieの余裕のあるトースティング。
途中にEak-A-Mouseをような意味不明な
口マネが入るのもご愛敬です。

TAPPA ZUKIE - Woman no me trouble


2曲目は表題曲の「Raggy Joey Boy」
です。
このアルバムの中でも一番長い6分48秒
にも及ぶ曲です。
心地良いドラミングから、重いベースと
キーボードとギターのメロディ、半分
歌っているようなTapper Zukieのシング・
ジェイ・スタイルのトースティング。
この時代らしいベースを軸としたスローな
ワン・ドロップのリズムが、とても心地
良い曲です。

Tapper Zukie - Raggy Joey Boy


3曲目は「Natty Princess」です。
キーボードとギター、ベースのメロディ
に乗せた、Tapper Zukieの歌うような
トースティングが心地良い曲です。

Tapper Zukie - Natty Princess


4曲目は「Jailhouse Rock」です。
ホーンの華やかなメロディに、ズシっと
したベース、Tapper Zukieの滑らかな
トースティング。

5曲目は「Manners & Respect」です。
ギターとベースを中心としたメロディに、
表情豊かなTapper Zukieの表情豊かな
シング・ジェイのトースティング。

6曲目は「Believe Me Baby」です。
鳴きのギターにピアノとベースの
メロディ、Tapper Zukieの歌うような
トースティング。

7曲目は「Reggae」です。
リディムはTechniquesレーベルの名
リディム「Stalag」です。
ファンキーなギターに、歓声のような
「Reggae」というコーラス、ファンキーな
Tapper Zukieのトースティング。

リズム特集 Stalag (スタラグ)

8曲目は「Mr Bubbler」です。
リディムはAlton Ellisの「Mad Mad」。
ホーンの印象的なメロディに、ズシっと
したベース、ちょっとふざけたような
Tapper Zukieの投げやりな感じのトース
ティング。

Tapper Zukie - Mr Bubbler


リズム特集 Mad Mad/Diseases (マッド・マッド/ディジーゼズ)

9曲目は「Mr. Finnigan」です。
リディムはBob Marley & Wailersの
「Keep On Moving」。
ピアノとベース、ホーンのメロディに、
Tapper Zukieの明るいトースティング。

Tapper Zukie - Mr Finnigan


10~12曲目まではCDボーナス・
トラックで、彼の70年代のトース
ティングが収められています。
ここでは省略しますが、このアルバムの
スローなワン・ドロップとリズムの違いを
聴き較べてみると、面白いかもしれま
せん。

ざっと追いかけてきましたが、80年代に
入るとパッタリとリリースが少なくなる
Tapper Zukieですが、このアルバムの時点
ではまだそのトースティングの魅力を充分
に維持していて、内容は悪くないと思い
ます。
むしろこのアーリー・ダンスホールの
スローなワン・ドロップのリズムをうまく
乗りこなしているところが魅力的ですら
あります。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Tapper Zukie
○アルバム: Raggy Joey Boy
○レーベル: Kingston Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Tapper Zukie「Raggy Joey Boy」曲目
1. Women Ah No Me Trouble
2. Raggy Joey Boy
3. Natty Princess
4. Jailhouse Rock
5. Manners & Respect
6. Believe Me Baby
7. Reggae
8. Mr Bubbler
9. Mr. Finnigan
(CD Bonus Tracks)
10. Tom Shot The Barber
11. What Da Do
12. River Jordan