今回はSamory Iのアルバム

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「Black Gold」です。

Samory I(本名:Samory Frazer)は、
2015年頃から活躍するラスタ・
シンガーです。
ネットのDiscogsによると、2017年に
今回のアルバム「Black Gold」をリリース
しているほか、4枚ぐらいのシングルを
リリースしています。

今回のアルバムは2017年にUSの
RoryStoneLoveのレーベルBlack Dubから
リリースされたSamory Iのファースト・
アルバムです。

シングル・ヒットした「Rasta Nuh
Gangsta」をはじめ、表題曲「Black Gold」
や、ブルースとソウルにまたがって
活躍したアメリカの名シンガー
Syl Johnsonの名曲「Is It Because I'm
Black」のカヴァーなど、彼のルーツ・
シンガーとしての魂の感じられるアルバム
に仕上がっています。

手に入れたのはBlack Dubからリリース
されたCD(新盤)でした。

全13曲で収録時間は約65分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Players of Instruments:
Kirk Bennett, Danny Bassie, Aieon Hoillett, Kevon Webster,
Sheldon Bernard, Rohan Dwyer, Bubbler, Mitchell Khan, Gizmo,
Denver, Dean Fraser, Nambo, Stingwray, Dwight, Orville

Singers of Songs:
Sherieta Lewis, Raslyn, Natel, Chevaughn

となっています。

バックのミュージシャンはKirk Bennett、
Danny Bassie、Aieon Hoillett、Kevon
Webster、Sheldon Bernard、Rohan Dwyer、
Franklyn 'Bubbler' Waul、Mitchell
Khan、Courtney 'Gizmo' Whyte、Denver、
Dean Fraser、Ronald 'Nambo' Robinson、
Everol 'Stingwray' Wray、Dwight
Richards、Orvilleといった人達が務めて
います。

バック・ヴォーカルはSherieta Lewis、
Roslyn Williams、Natel、Chevaughn
Claytonといった人達が務めています。

他の表記はありませんが、プロデュースは
Black Dubレーベルの主催者RoryStoneLove
だと思われます。
このStoneLoveのRoryという人は、あの
Jah9のファースト・アルバムの
プロデュースをしたりと、注目の
プロデューサーです。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、Samory Iの
ラスタ・シンガーらしい魂のこもった
ヴォーカルが楽しめるアルバムで、
ルーツ・レゲエや最近のラスタ・
リヴァイヴァル・ムーヴメントなどの楽曲
が好きな人ならシビレること間違いなしの
アルバムで、内容はとても良いと思い
ます。

このSamory Iですが、おそらく2010年
代頃から起って来たラスタ・リヴァイ
ヴァル・ムーヴメントのアーティストの
ひとりなんじゃないかと思います。
ラスタファリズムを基盤としたリリックに
乗せた、彼のヴォーカルはなかなか魅力的
です。
ヒット曲の2曲目「Rasta Nuh Gangsta」
のアドリブで聴かれる、あのEek-A-Mouse
を彷彿とさせる「ウィル・ベン・ベン・
ベン~♪」といった意味不明な早口言葉
などを聴いても、若い人なのに70年代
から80年代ぐらいのレゲエをよく知って
いる人だなぁという印象です。

Samory I - Rasta Nuh Gangsta [Official Video 2017]


サモリーI(Samory I) - Rasta Nuh Gangsta - 2017 - リリック

「ラスタはギャング・スターじゃない。」
と歌うその姿は滅茶苦茶カッコイイです。

また12曲目「Is It Because I'm Black」
は、ブルースとソウルにまたがって活躍
したアメリカの名シンガーSyl Johnsonの
曲で、黒人である事の悲哀をソウルフルに
歌い上げる名曲ですが、Samory Iの感情を
乗せたヴォーカルは素晴らしく、聴くべき
魅力があります。
この曲「Is It Because I'm Black」は
多くのレゲエ・アーティストにも歌われて
いる曲で、あのSteve Barrow氏のレーベル
Blood & Fireが2001年に出した、
レゲエ・シンガーが歌うソウルの名曲
を集めたアルバム「Darker Than Blue」
でも、Ken Boothの歌うこの曲が収められ
ているんですね。

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Various ‎– Darker Than Blue: Soul From Jamdown 1973-1980 (2001)

この「Darker Than Blue」というアルバム
は、Blood & Fireのアルバムの中でも特に
素晴らしいアルバムのひとつですが、こう
した過去のルーツ・レゲエのリイシュー
からも学んでいるようなところがあるん
ですね。
若いシンガーなのに、70年代のルーツ・
レゲエの時代の空気感やグルーヴ、その
精神性などをうまく取り入れて作られたの
が、今回のアルバムだと思います。

個人的な見解ですが、このラスタ・
リヴァイヴァル・ムーヴメントで登場して
来たアーティストには、少なからず
90年代から2000年代にリイシュー・
レーベルとして多くの素晴らしいルーツ・
レゲエのリイシューをした、Blood & Fire
の影響があるのではないかと思ってい
ます。
彼らがルーツ・レゲエを学ぶには、この
Blood & Fireのリイシューが身近な素材
だったんですね。
ラスタ・リヴァイヴァル・ムーヴメントの
アーティストの登場が2010年代だった
事を考えても、Blood & Fireから学んだ事
は充分に考えられます。

このSamory Iにもルーツ・レゲエの「血」
が感じられ、その魂のこもった熱い
ヴォーカルはとても魅力的です。

この「Rasta Nuh Gangsta」(9分17秒)
と「Is It Because I'm Black」(7分
27秒)の2曲が、前半は歌、後半はダブ
のロング・ヴァージョンで収められて
いて、今回のアルバムの目玉曲となって
います。

他にもポップスのヒット曲Pop Topsの
「Mamy Blue」のリディムを使った11曲
目「Fear Of Jah」など、適度に
ポピュラー感覚を織り込みながらも、
ルーツのマナーで作られた楽曲はとても
説得力があり、ルーツ好きにはシビレる
内容のアルバムとなっています。

ちなみにSamory Iという名前ですが、
ネットのYouTubeのライヴ映像などを見る
と、「サモリー・アイ」ではなくて
「サモライ」と発音しているように聴こえ
ます。
もしかしたら日本語の「サムライ(侍)」
が、名前の由来なのかもしれません。
そういう名前だと考えると、親しみが湧き
ますよね(笑)。

1曲目は「Son Of David」です。
心地良いホーン・セクションのメロディに
乗せた、Samory Iのちょっとクセのある
ヴォーカルがとても良い味を出している曲
です。
このアルバム全体に言える事ですが、
刻むようなギターとズシっとした重量感の
あるベースが、このルーツ・サウンドを
うまく支えています。

Samory I - Son Of David


2曲目は「Rasta Nuh Gangsta」です。
書いたように前半は歌、後半はダブの
ロング・ヴァージョンです。
心地良いドラミングから哀愁のある
リリカルなピアノ、ズシっとしたベースに
ホーン・セクション、心を込めた「ラスタ
はギャング・スターじゃない」と歌う
Samory Iのヴォーカル…。
レゲエ好きだったら絶対にシビレる曲
です。
後半は重いベースを軸に、リリカルな
ピアノとホーンが鳴り響くダブ。
最後のターーンというドラミングの終わり
まで、良い緊張感のある1曲です。

Samory I - Rasta Nuh Gangsta


3曲目は「Not Because」です。
キーボートとピアノホーン・セクションの
メロディに、Samory Iの語るような
ヴォーカルがとても心地良い曲です。

Samory I - Not Because [ Black Gold ]


4曲目は「Serve Jah」です。
心地良いドラミングにキーボードの
メロディ、感情を乗せたSamory Iの
ヴォーカルがとても魅力的な曲です。

5曲目は「Suit & Tie」です。
華やかなホーンセクションにコーラス、
ノビのあるSamory Iのヴォーカル…。

6曲目は「Lost Africans」です。
ナイヤビンギ調のパーカッションに
ズシっと腹に響くベース、刻むような
ギター、リリカルなピアノ、ホーン・
セクションとキーボードのメロディ、
ジワっと入って来るSamory Iのよく通る
ヴォーカル…。

Samory I - Lost Africans [ Black Gold ]


7曲目は「There Is A Spirit」です。
ユッタリと流れるようなホーンのメロディ
に、感情を込めたSamory Iのソウルフルな
ヴォーカルがグッと来る曲です。

8曲目は表題曲の「Black Gold」です。
力強いドラミングにピアノとベース、
ギターのメロディに、ちょっと粘っこい
感じのSamory Iの魂の入ったヴォーカルが
魅力的。

Samory I - Black Gold


9曲目は「Weed」です。
ベースとトロンボーンの野太いメロディ、
感情の乗ったSamory Iのヴォーカル…。
心地良いベース、リリカルなピアノ、
ちょっとヴォーカルにダブワイズの入った
曲調も秀逸。

Samory I - Weed [ Black Gold ]


10曲目は「Power」です。
Eek-A-Mouseに似た意味不明な早口言葉が
入る、2曲目の「Rasta Nuh Gangsta」の
続編のような曲です。
キーボードにベース、ピアノのメロディ
に、女性コーラスに乗せたSamory Iの
早口言葉から、心地良いヴォーカル…。

11曲目は「Fear Of Jah」です。
リディムはポップ・グループPop Topsの
「Mamy Blue」です。
「オ~、マミ、オ~マミ、マミ、ブル~♪」
というメロディで、日本でも大ヒットした
曲です。
ホーンの親しみやすいメロディに、うまく
感情を乗せたSamory Iのヴォーカルが良い
味を出しています。

Samory I - Fear Of Jah


12曲目は「Is It Because I'm Black」
です。
書いたようにブルースとソウルで活躍した
アメリカの名シンガーSyl Johnsonの名曲
のカヴァーです。
ブルースのようなギター・ワークに、心を
込めたSamory Iのヴォーカル…。
黒人に生まれた悲哀を歌った曲ですが、
Samory Iの歌唱には力があり、心臓を
鷲掴みされるような痛みをうまく表現して
います。
途中から挿入されるサックス・ソロ
も、すごく魅力的。

Samory I - Is it Because I'm Black (Official Music Video)


↑このプロモーション・ヴィデオで見る
と、サックスを吹いているのはDean
Fraserのようです。
他にKabaka PyramidやKen Boothe(最後
に涙を流す人)などが、イメージ映像の
ゲストで参加しています。

13曲目は「Rastaman」です。
華やかなホーンとベースのメロディに、
一言一言を大切に歌うSamory Iの
ヴォーカル…。
最後は少し明るい曲でシメています。

ざっと追いかけてきましたが、まだ
リリースの少ないSamory Iですが、歌唱力
もあり、そのルーツ・シンガーとしての
姿勢はなかなか魅力的で、これからが
とても期待が出来るシンガーだと思い
ます。

10年代に入って徐々に盛り上がって来た
ラスタ・リヴァイヴァル・ムーヴメント
ですが、こうしたSamory Iのような若い
アーティストの参戦は、このムーヴメント
をより面白いものにしていると思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Samory I - Black Gold /Suit and Tie [ official video ]


Samory I -Lost Africans


Samory I & Najavibes - Call On Jah [Official Lyric Video 2018]



○アーティスト: Samory I
○アルバム: Black Gold
○レーベル: Black Dub
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2017

○Samory I「Black Gold」曲目
1. Son Of David
2. Rasta Nuh Gangsta
3. Not Because
4. Serve Jah
5. Suit & Tie
6. Lost Africans
7. There Is A Spirit
8. Black Gold
9. Weed
10. Power
11. Fear Of Jah
12. Is It Because I'm Black
13. Rastaman