今回はJah Wooshのアルバム

jah_woosh_02a

「Ital Movement」です。

Jah Woosh(本名Neville Beckford)は
レゲエのディージェイやプロデューサーと
して活躍した人です。
おもに70年代から80年代前半にディー
ジェイとして多くのアルバムやシングルを
リリースしているほか、プロデューサーと
しての実績もある人のようです。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て18枚ぐらいのアルバムと、91枚
ぐらいのシングル盤をリリースしている
のが、このJah Wooshという人です。

Jah Woosh - Wikipedia

今回のアルバムはネットのDiscogsによる
と、1976年にUKのStudentという
レーベルからリリースされた「Chalis
Blaze」というアルバムがこのアルバムの
元のアルバムのようです。
それが制作年は不詳(Unknown)ですが、
カナダのAbrahamというレーベルから
リリースされる際に、ジャケットと
タイトルが変更されて今回のアルバム・
タイトル「Ital Movement」となった
ようです。

ただこのアルバムは謎の多いアルバムで、
本当にそうなのか?はイマイチはっきり
とは確認出来ません。
というのも「Chalis Blaze」と今回の
「Ital Movement」とでは、曲目が
まったく違うんですね。
Side 2のタイトルなどは微妙に似ている
し、2曲目の「Natty I」では「Chalis
Blaze」という言葉が入っていたりして
同じ曲のようでもあるのですが、これを
確認するにはアルバム「Chalis Blaze」
の方も手に入れないと解らないんですね。

さらにもう一つ謎なのが、この76年に
Jah WooshはUKのTrojan Recordsから
「Dreadlocks Affair」というアルバムを
リリースしているのですが、そのアルバム
と今回のアルバムがタイトルが違うだけで
かなり酷似したジャケットなんですね。
アルバム「Dreadlocks Affair」の方が
抜きでタイトルが入っているのに対して、
今回のアルバムの方はそのタイトルの部分
にベタを敷いて「Ital Movement」という
文字を入れたぐらいの違いなんですね。
曲目も調べましたがタイトルも全て違い
ましたし、類似性もあまり感じられず、
おそらく違う曲が入ったアルバムのよう
なんですが…。
なぜ待った位同じ写真を使って、違う
アルバムを作ったのか?そのあたりも
ちょっと謎なんですね(笑)。

そういう不思議な事の多い今回のアルバム
なんですが、内容的にはなかなか悪くない
アルバムなんですね。
この70年代のルーツ・レゲエの時代
らしいバックのサウンドに乗せた
Jah Wooshのルーツ・ディージェイらしい
トースティングは、聴き応えがあり
なかなか魅力的です。

手に入れたのはAbrahamからリリース
されたLPの中古盤でした。

Side 1が6曲、Side 2が6曲の全12曲。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。
それらしい記述は一つも載っていない
アルバムなんですね。

ただネットのDiscogsには、元のアルバム
と思われる「Chalis Blaze」に、
プロデュースとアレンジはLeonard Chin、
作曲はJah Wooshという記載がありました。
残念ながら元々アルバムに対する
ミュージシャンなど記載が、あまりない
アルバムのようです。

ただその記載が正しいとすると、70年代
にジャマイカでSnticレーベルを運営して
いたLeonard 'Sntic' Chinのプロデュース
したアルバムという事になります。
Leonard 'Sntic' Chinは70年代のプ
ロデューサーの中ではAugustus 'Gussie'
Clarkeと並ぶ若手もプロデューサーで、
早くからAugustus Pabloなどの楽曲を
Snticレーベルからリリースし、
ジャマイカの音楽界に新風を吹き込んだ
プロデューサーとして知られています。
このJah WooshもLeonard 'Sntic' Chin
に才能を認められたアーティストのひとり
だったのでしょうか?

さて今回のアルバムですが、70年代の
ルーツ・レゲエの時代に活躍した
Jah Wooshのトースティングが楽しめる
アルバムで、内容はなかなか悪くないと
思います。

このJah Wooshですが、他のルーツ・
ディージェイに較べると知名度はイマイチ
の人なんですね。
ただけっこうアルバムをリリースしている
ように、当時でもそれなりに人気がある
ディージェイだったようです。

有名な話ではあのLee Perryが自身が
初めてプロデュースするディージェイ・
アルバムを作ろうとした際に、最初の
選択肢はこのJah Wooshだったと言われて
います。
結局それは実現せずにLee Perryが声を
掛けたのがJah Lloydで、Lee Perryは
Jah LloydをJah Lionと改名させ、完成
したアルバムが「Colombia Colly」と
いうアルバムなんだそうです。

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Jah Lion ‎– Colombia Colly (1976)

この事はレゲエレコード・コムにある
Jah Lloydのページに書かれています。

アーティスト特集 Jah Lloyd (ジャー・ロイド)

起きなかった事は起きなかった事ですが、
もしかしたらJah Wooshが「Colombia
Colly」でトースティングをしていた
可能性があったんですね。
そうしていれば彼の運命も、また変わって
いたかもしれません。

ちなみにJah Lionで「Colombia Colly」
を出したJah Lloydですが、ジャケットの
裏面にLee Perryの写真が載っていた事で
Jah LionがLee Perry本人の別名だと誤解
され、思ったほどの成功が収められず、
結局元のJah Lloydという名前に戻して
います。

話を戻しますが、76年当時にすでに
ディージェイとしてジャマイカやUKで
人気を得ていたのがこのJah Wooshで、
その実力はあのLee Perryも認めるほど
だったんですね。

実際に曲を聴いてみた印象としても、この
ルーツ・レゲエの時代らしい陰影のある
サウンドに、エコーの効いたJah Wooshの
トースティングという組み合わせは
なかなか魅力的で、このディージェイが
当時人気だった理由が解ります。
すごくアクの強いという人ではないのです
が、シッカリとした実力があり、流れる
ようなトースティングはすごく楽しいん
ですね。
ルーツ・ディージェイとしての実力を、
シッカリと持った人だと思います。

今回のアルバムもそうした彼Jah Woosh
の魅力がしっかりと発揮されたアルバム
で、聴き応え満点のアルバムに仕上がって
います。

Side 1の1曲目は「Don't Want To Lose
You」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「Shouldn't Say No」となっている曲の
ようです。
リディムは販売サイトなどの情報によると
Paul Whiteman(Blackman)の「I Don't
Want To Lose You」という曲のようです。
あのAugustus Pabloの哀愁のある
メロディカとヴォーカル、それに乗せた
Jah Wooshのトースティングが素晴らしい
曲です。

Jah Woosh 1976 Chalice Blaze A1 Shouldn't Say No


2曲目は「Natty I」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
表題曲の「Chalis Blaze」となっている
曲のようです。
リディムはKing Tubby & Santic All
Starsの「One Heavy Duba」。
浮遊感のあるオルガンのメロディ、Jah
Wooshの滑らかなトースティングが魅力的。

Jah Woosh - Chalice Blaze


3曲目は「She Want To It」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「Fay Love It」となっている曲のよう
です。
ピアノとギターを中心としたメロディに
ヴォーカルのダブワイズ、滑らかな
Jah Wooshのトースティング。

4曲目は「I'll Be There」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「It Jean」となっている曲のよう
です。
ギターとピアノ、ベースのユッタリとした
メロディに、Jah Wooshの滑らかなトース
ティングが魅力的。

Jah Woosh 1976 Chalice Blaze A4 It Jean


5曲目は「Love Me」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「Teenie Bap」となっている曲のよう
です。
ギターを中心としたユッタリとした
メロディに、Jah Wooshの滑らかな
トースティングが魅力的。

6曲目は「Freedom」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「Free Jah Jah Children」となって
いる曲のようです。
ホーンのメロディにJah Wooshの心地良い
トースティングという組み合わせの曲
です。

Side 2の1曲目は「War」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「Weak Heart Feel It」となっている曲
のようです。
フライング・シンバルのリズムに乗せた
ギターのメロディ、エコーのかかった
Jah Wooshのトースティングがすごく
魅力的な曲です。

Jah Woosh - War - (Ital Movement)


2曲目は「Peace & Love」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「Peace And Love In The Ghetto」と
なっている曲のようです。
華やかなホーンとギターのメロディに、
Jah Wooshのエコーの効いたトース
ティングがとても良い味を出している曲
です。

(1976) Jah Woosh: Peace & Love In The Ghetto


3曲目は「Ital Feel」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「Ital Faces」となっている曲のよう
です。
華やかなホーンとギターのメロディにダブ
ワイズ、元気のあるJah Wooshのエコーの
かかったトースティング。

Jah Woosh 1976 Chalice Blaze B3 Ital Faces


4曲目は「No Jester」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「I Man Nah Jester」となっている曲の
ようです。
ギターを中心としたファンキーなメロディ
に、ノリノリのJah Wooshのエコーの
かかったトースティングが楽しい曲です。

5曲目は「Don't Cry」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「No Woman Don't Cry」となっている曲の
ようです。
元気のあるオープニングから、ギターと
ピアノのメロディに、楽し気なJah Woosh
のトースティング。

Jah Woosh 1976 Chalice Blaze B5 No Woman Don't Cry


6曲目は「Love My Reggae」です。
元のアルバム「Chalis Blaze」では
「Reggae Reggae」となっている曲のよう
です。
ホーンとギター、ベースなどを中心とした
メロディに、楽しそうなJah Wooshの
トースティングが魅力的。

ざっと追いかけてきましたが、いかにも
この70年代のルーツ・レゲエの時代の
匂いを感じさせるアルバムで、内容は
なかなか良いと思います。

じつはこのJah Wooshはコアなルーツ・
ファン(レア盤マニア)に人気のある人の
ようで、中古盤があまり出回っていない人
なんですね。
その中ではこのアルバムは、比較的手に
入れやすいアルバムのようです。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Jah Woosh
○アルバム: Ital Movement
○レーベル: Abraham
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1976

○Jah Woosh「Ital Movement」曲目
Side 1
1. Don't Want To Lose You
2. Natty I
3. She Want To It
4. I'll Be There
5. Love Me
6. Freedom
Side 2
1. War
2. Peace & Love
3. Ital Feel
4. No Jester
5. Don't Cry
6. Love My Reggae

(参考資料)
○Jah Woosh「Chalis Blaze」(1976)曲目
Side 1
1. Shouldn't Say No
2. Chalis Blaze
3. Fay Love It
4. It Jean
5. Teenie Bap
6. Free Jah Jah Children
Side 2
1. Weak Heart Feel It
2. Peace And Love In The Ghetto
3. Ital Faces
4. I Man Nah Jester
5. No Woman Don't Cry
6. Reggae Reggae

●今までアップしたJah Woosh関連の記事
〇Jah Woosh「Dub Plate Specials」
〇Jah Woosh「Jah Woosh Collection Vol 1 1972-1976」
〇Jah Woosh「Jah Woosh」
〇Jah Woosh「Marijuana World Tour」
〇Jah Woosh「Sensimelia Song」
〇Jah Woosh「Some Sign」