今回はVarious (オムニバス)ものの
アルバム

winston_riley_02a

「Winston Riley Productions: Dancehall
Techniques 1986 - 1991」です。

まずはこのアルバムに関係のある
Winston RileyとTechniquesレーベルに
ついて説明しておきます。

Winston Rileyはロックステディの時代
にコーラス・グループTechniquesで活躍
したのちに、グループ名と同名の
Techniquesレーベルを立ち上げて、70年
代のルーツの時代から80年代のダンス
ホール・レゲエの時代まで数々の名曲を
残したプロデューサーとして知られている
人です。
特にダンスホール・レゲエの時代のこの
レーベルの活躍は有名で、「Stalag」は
このレーベルの生み出した名リディムと
してよく知られています。

ウィンストン・ライリー

Techniques (テクニクス)

今回のアルバムは2003年にUKの
Pressure Sounds傘下のレーベルMaximum
Pressureからリリースされた、80年代
後半のTechniquesレーベルの音源を集めた
コンピュレーション・アルバムです。

タイトルに「Dancehall Techniques 1986
- 1991」とあるように、1986年から
91年までの音源が集められたアルバム
です。
この時代はジャマイカ全土がプロデュー
サーのPrince Jammyの起こしたデジタル
革命「コンピューター・ライズド」の
真っ盛りの時代だったんですね。
85年にPrince Jammyがプロデュース
したWayne Smithのデジタル楽器「カシオ
トーン」を使った楽曲「Under Me Sleng
Teng」が大ヒットした事で始まった、
この「コンピューター・ライズド」です
が、この新しいデジタル・サウンドに聴衆
は大熱狂し、これによりジャマイカの音楽
シーンはそれまでの生演奏からデジタル
機材を使った音作りへと大転換を果たす事
になるんですね。

wayne_smith_01a
Wayne Smith - Under Me Sleng Teng (1986)

ちなみにPrince Jammyはこのヒットを
きっかけに、名前をKing Jammyに改名して
います。

話を戻しますが、この80年代後半はそう
したPrince Jammy改めKing Jammyの
Jammysレーベルを中心とした、デジタル・
レゲエが大流行していた時代だったんです
ね。
そうした時代の流れにこの老舗の
Techniquesレーベルも、自身のレーベルの
看板リディム「Stalag」などでこの
「コンピューター・ライズド」の時代
のデジタル・ミュージックに対応し、
ダンスホール・レゲエをさらに盛り上げる
活躍をするんですね。
今回はそうしたTechniquesレーベルの、
「コンピューター・ライズド」が大流行
した80年代後半のデジタル・ダンス
ホール・レゲエの楽曲を集めたコンピュ
レーション・アルバムです。

手に入れたのはMaximum Pressureから
リリースされたCDの中古盤でした。

全18曲で収録時間は約66分。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

All tracks produced & arranged by Winston Riley for Techniques Records

Recorded by: Professor, Junior, Ernest Hookim, Maxie, Lucifer, Prentice,
Soldjie Hamilton at Channel One and Dynamics Sounds

Mixed by: Soldjie Hamilton at Channel One & Mikey Riley at Dynamics Sounds

Musicians: Steely & Clevie, Sly & Robbie, Dalton Brownie, Danny Brownie,
Robbie Lyn, Dwight Pickney, Ansel Collins, Santa Davis,
George 'Fully' Fulwood, Ossie Hibbert, Earl 'Chinna' Smith

Photography: Beth Lesser, Maverick, Pete Holdworth

Artwork: Jeb Loy Nichols, Keri McTaggart

となっています。

すべての楽曲のプロデュースとアレンジは
Techniques Recordsの主催者Winston
Rileyが担当しています。

レコーディングはChannel OneとDynamics
Soundsで行われ、レコーディング・
エンジニアはProfessorとJunior、Ernest
Hookim、Maxie、Lucifer、Prentice、
Soldjie Hamiltonが担当しています。

ミックスはChannel OneがSoldjie
Hamilton、Dynamics SoundsがMikey Riley
が担当しています。

ミュージシャンはSteely & ClevieとSly &
Robbie、Dalton Brownie、Danny Brownie、
Robbie Lyn、Dwight Pickney、Ansel
Collins、Santa Davis、George 'Fully'
Fulwood、Ossie Hibbert、Earl 'Chinna'
Smithが参加しています。
ギタリストのEarl 'Chinna' Smithや
Dwight Pickney、ドラムのSanta Davis、
キーボートのAnsel CollinsやOssie
Hibbert、ベースのGeorge 'Fully'
Fulwoodの名前もあるので、多少デジタル
以前の音源も混じっているようです。

写真はBeth Lesser, MaverickとPete
Holdworth、アート・ワークはJeb Loy
NicholsとKeri McTaggartとなっていま
す。
表ジャケットに使われた写真は、左の肘を
ついている人物がCourtney Melody、右の
ポップ・キャンディをしゃぶっているのが
まだラスタに改宗以前の Buju Banton
です。
Buju Bantonの「ゴロツキ感」が面白い
ところ(笑)。

このアルバムに収められているアーティ
ストはFuzzy Jones、Courtney Melody、
Daddy Lizard、Michael Prophet、
Super Cat、Admiral Tibet、Cutty Ranks、
Pliers、Johnny P、Gregory Isaacs &
Tiger、Red Dragon、Flourgon、Super
Black、Reggie Stepper、Tenor Saw &
Buju Bantonといった人達です。

いずれもこの時代に活躍したアーティスト
です。
ただし17曲目のTenor Saw & Buju
Bantonの「Ring The Alarm Quick」は、
「Stalag」リディムを使った80年代
半ばのTenor Sawのヒット曲「Ring The
Alarm」に、後からBuju Bantonのトース
ティングを入れたもののようです。
Buju Bantonが活躍を始めた頃には、
Tenor Sawはもう亡くなっているんです
ね。

またこの中のRed DragonとFlourgonは、
兄弟のシンガーとして知られています。
彼らの出した初めてのアルバムは、この
Techniquesレーベルから88年にリリース
したクラッシュ・アルバム(対決盤)
「Red Dragon Vs Flourgon」だったん
ですね。

red_dragon_01a
Red Dragon & Flourgon ‎– Red Dragon Vs Flourgon (1988)

さて今回のアルバムですが、このデジタル
のダンスホールの空気感をよく伝える
アルバムで、内容は悪くないと思います。

面白いのはこの時代に活躍したイントロ・
マンFuzzy Jonesの声が、1曲目「Intro」
と16曲目「Co-Unoh」に収められている
点です。
イントロ・マンとはダンスホールなどの
楽曲の頭などに、掛け声などのを入れる
ディージェイの事です。
もともと60年代後半頃までは曲の
イントロや間奏の合間などに掛け声を
入れて観客を煽る「掛け声係」が
ディージェイという職業だったのですが、
あの曲の中でしゃべる「トースティング」
を始めたU-Royの登場により、
ディージェイというのは曲の中で
トースティングをするのが仕事になったん
ですね。

そうした曲の合間に掛け声をかけて煽る
ディージェイが、イントロ・マンという形
でこの時代に復活して来ているのは、
とても興味深いところです。
考えてみれば一時期この日本でも流行った
DJ KaoriさんのミックスCDも、この
イントロ・マンやディージェイを踏襲した
ものだったのかもしれませんね(笑)。
その先見の明があの一時期のヒットに
繋がったのでしょう。
つい軽く見られがちですが、ディージェイ
を入れる事で曲を盛り上げるというのは、
必ずしも悪いアイディアでは無いんです
ね。
特にダンスホールの現場などでは、その
煽りの効果はかなりあったと思います。

ちなみにこのFuzzy Jonesのイントロでの
煽りのトースティングは、最近Dub Store
Recordsからリイシューされた King Tubby
のデジタルのダンスホール・レゲエの時代
の音源を集めたコンピュレーション・
アルバム「King Tubbys Presents
Soundclash Dubplate Style」でも聴く事
が出来ます。

king_tubby_24a
Various ‎– King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style (1988)

こうしたイントロ・マンが入る事で、より
現場のダンスホールのスタイルが再現され
ているんですね。
そのあたりが今回のアルバムの魅力でも
あります。

またこのTechniquesレーベルの特徴の
ひとつがしつこいほどのリディムの使い
回しで、このレーベルの有名リディム
「Stalag」は、元々は70年代のルーツ・
レゲエ期のAnsel Collinsのヒット曲
「Stalag 17」(74年)がオリジナル
のヒット曲なんですね。
そのリディムを70年代のルーツ期から
80年代のダンスホール期、さらには
80年代のデジタルのダンスホール期
まで徹底的に使い回して、Jammysレーベル
の「Sleng Teng」やKing Tubby'sの
「Tempo」と並ぶ、3大リディムと呼ばれ
るまでに育てています。

レゲエという音楽は、そうしたルーツ期や
ロックステディ期に誕生したリディムを
現代に至るまで徹底的に使い回す超粘着質
な世界ですが、その徹底した世界観にこの
Techniquesレーベルの果たした役割は
かなり大きなものがあると思います。

またこの80年代後半は、デジタルの
ダンスホール・レゲエの大ブームが起きた
事で、狂気とも言えるちょっと弾けたノリ
の音楽が大流行した時代だったんですね。
そのちょっと異常ともいえる熱狂的なノリ
の空気感が、このアルバムにも収められて
います。
そのあたりも感じて貰えたらと思います。

1曲目はFuzzy Jonesの「Intro」です。
Fuzzy Jonesによる、このアルバムの
幕開けを飾る語りが入ります。

2曲目はCourtney Melodyの「Bad Boys」
です。
Fuzzy Jonesの「Intro」に続くような感じ
で始まる曲です。
デジタルらしいドラミングとキーボードの
メロディ、Courtney Melodyの味わい深い
ヴォーカルがイイ感じの曲です。

Courtney Melody Bad Boy


3曲目はDaddy Lizardの「A Fi Fly
Out」です。
2曲目Courtney Melodyの「Bad Boys」と
同じリディムの曲です。
こちらはDaddy Lizardの明るいトース
ティングに、合いの手が入った曲です。

4曲目はMichael Prophetの「No Call
Me John Boops」です。
リディムは5曲目と同じSuper Catの
「Boops」です。
デジタルなリズムにノビのあるハイ
トーン・ヴォイス、心地良いヴォーカルが
魅力的な曲です。

5曲目はSuper Catの「Boops」です。
オリジナル・リディムはMarcia Griffith
の「Feel Like Jumping」。
こちらもデジタルらしいリズムに乗せて、
ちょっとラフで明るいSuper Catのトース
ティングが魅力的な曲です。

Supercat - Boops


リズム特集 Feel Like Jumping/Boops (フィール・ライク・ジャンピング/ブープス)

6曲目はAdmiral Tibetの「Leave People
Business」です。
リディムはThe Wailing Souls の
「Things And Time」。
デジタルらしいリズムに、この時代には
珍しいほどのコンシャスなAdmiral Tibet
のノビのあるヴォーカルが冴える曲です。

Admiral Tibet - Leave People Business


リズム特集 Things & Time (シングス・アンド・タイム)

7曲目はCutty Ranksの「Gunman Lyrics」
です。
こちらもリディムは「Things And Time」。
デジタルらしいキーボードのベース音が
効いた演奏に、Cutty Ranksの滑らかな
トースティングが冴える曲です。

8曲目はPliersの「Sunshine Day」
です。
のちにChaka Demusとのコンビで世界的
にも活躍する彼ですが、こちらはソロで
心地良い歌唱を聴かせています。

Pliers - Sunshine Day


9曲目はJohnny Pの「Ital Jockey」
です。
8曲目Pliersの「Sunshine Day」と同じ
リディムのようです。
心地良いデジタルのドラミングとベース音
に乗せて、Johnny Pのトースティングが
冴えます。

Johnny P - Ital Jockey


10曲目はGregory Isaacs & Tigerの
「Hic Up」です。
ベテラン・シンガーと個性派ディージェイ
の、12インチ・ミックスのこの時代
らしい5分5秒に及ぶ曲です。
ホーン・セクションのメロディに、
Gregory Isaacsらしいヴォーカル、Tiger
のアクの強いトースティング。

gregory isaacs & tiger Hic-Cup


11曲目はRed Dragonの「Hol A Fresh」
です。
リディムはShabba Ranksの「Fresh」。
デジタルなきらびやかなメロディに、
賑やかで楽しいコーラスに乗せた
Red Dragonのヴォーカルが良い味を
出している曲です。

Red Dragon - Hol' A Fresh [Best Quality]


リズム特集 Fresh/Four Seasons Lover (フレッシュ/フォー・シーズンズ・ラバー)

12曲目はFlourgonの「Bill A Spliff」
です。
11曲目と同じ「Fresh」のリディムが
使われているようです。
こちらも陽気なリズムが魅力。

13曲目はCourtney Melodyの「So Good
To Me」です。
明るいキーボードのメロディに、Courtney
Melodyの語りが冴える曲です。

14曲目はSuper Blackの「Nowadays
Girls」です。
デジタルらしいキーボードのメロディに、
Super Blackの滑らかなトースティング。

superblack nowadays girls.wmv


15曲目はCutty Ranksの「Out A Hand」
です。
リディムはThe Tennorsの「Pressure And
Slide」。
Cutty Ranksの語るようなトースティング
から、デジタルらしいベース音を中心と
したメロディの曲です。

リズム特集 Pressure & Slide (プレッシャー・アンド・スライド)

あああああいいいいいうううううえええええおお

16曲目はReggie Stepper featuring
Fuzzy Jonesの「Co-Unoh」です。
リディムはTechniquesの有名リディム
「Stalag」です。
こちらもFuzzy Jonesの語りが入ります。
Fuzzy Jonesの語りから、ホーンと
ギターの耳なじみの良いメロディが魅力。

Reggie Stepper & Fuzzy Jones - Co Unoh (Winston Riley - Techniques Productions)


リズム特集 Stalag (スタラグ)

17曲目はTenor Saw & Buju Bantonの
「Ring The Alarm Quick」です。
書いたようにこちらはTenor Sawの名曲
「Ring The Alarm」に、後からBuju
Bantonのトースティングを足したものと
思われます。
名リディムに乗せたTenor Sawの
ヴォーカルとBuju Bantonのトース
ティングのヤバい組み合わせが魅力。

Tenor Saw/Buju Banton - Ring The Alarm


18曲目はRed Dragonの「Yu Body Good」
です。
ちょっとトボけた感じのキーボードの
メロディに乗せた、Red Dragonの元気の
良いトースティング。

ざっと追いかけてきましたが、ちょっと
異常ともいえるハイ・テンションのノリが
この時代の特徴でもあり、とても面白く
興味深いところでもあります。
この80年代後半のデジタル・レゲエが
その後のレゲエに与えた影響は大きく、
今の時代にまで続いています。

ただその極端なほどの弾けっぷりが、
他の音楽に無いレゲエの面白さのひとつ
である事は否定が出来ません。
またそうした音楽の中心のひとつに、この
Techniquesというレーベルがあった事は
否定の出来ない事実なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Winston Riley Productions: Dancehall Techniques 1986 - 1991
○レーベル: Maximum Pressure
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2003

○Various「Winston Riley Productions: Dancehall Techniques 1986 - 1991」曲目
1. Intro - Fuzzy Jones
2. Bad Boys - Courtney Melody
3. A Fi Fly Out - Daddy Lizard
4. No Call Me John Boops - Michael Prophet
5. Boops - Super Cat
6. Leave People Business - Admiral Tibet
7. Gunman Lyrics - Cutty Ranks
8. Sunshine Day - Pliers
9. Ital Jockey - Johnny P
10. Hic Up - Gregory Isaacs & Tiger
11. Hol A Fresh - Red Dragon
12. Bill A Spliff - Flourgon
13. So Good To Me - Courtney Melody
14. Nowadays Girls - Super Black
15. Out A Hand - Cutty Ranks
16. Co-Unoh - Reggie Stepper featuring Fuzzy Jones
17. Ring The Alarm Quick - Tenor Saw & Buju Banton
18. Yu Body Good - Red Dragon