今回はAugustus Pabloのアルバム

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「East Of The River Nile」です。

Augustus Pablo(本名:Horace Swaby)は
70年代のルーツ・レゲエの時代から活躍
したメロディカ奏者、キーボード奏者、
プロデューサーとして知られている人
です。
それまで練習用の楽器ぐらいにしか思われ
ていなかったメロディカを駆使して、
レゲエにそれまでに無い新しい音楽という
イメージをプラスしたのがこの人なんです
ね。
数々のセッションに参加し、多くの
インストやダブ・アルバムを残し、自身の
レーベルRockersを運営して、Hugh Mundell
やYami Boloなど多くの若手のミュージシャン
を育てたのがこのAugustus Pabloという人
です。

90年代に入ると筋無力症に苦しみ、
化学療法を拒否して自然治癒を目指した
彼でしたが、1999年に亡くなって
います。

ネットのDiscogsによると、生涯で共演盤
を含めて36枚ぐらいのアルバムと、
239枚ぐらいのシングル盤をリリース
しています。

オーガスタス・パブロ - Wikipedia

アーティスト特集 Augustus Pablo (オーガスタス・パブロ)

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Agustus Pablo ‎– King Tubbys Meets Rockers Uptown (1976)

今回のアルバムは1978年にジャマイカ
のAugustus PabloのレーベルMessageから
リリースされた、彼の通算5枚目ぐらいに
あたるソロ・アルバムです。

表題曲の「East Of The River Nile」を
はじめとして彼のメロディカが楽しめる
アルバムで、世界中に彼の名前を知ら
しめた彼の代表作ともいえるアルバム
です。

手に入れたのはUSのShanachieレーベル
からリリースされたCDの中古盤でした。

ちなみにこのアルバムは私が20代だった
80年代の初め頃にLPで購入していた
アルバムでした。

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Augustus Pablo - East Of The River Nile (LP)

当時の私はこのLPにかなり衝撃を受け
て、もしもLPが擦り切れて聴けない時の
為にもう1枚購入したほどのお気に入りの
アルバムでした(笑)。

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2枚

間違えて買ってしまった以外で2枚もLP
を買ったのは、レゲエではおそらくこの
アルバムだけだと思います。

全18曲で収録時間は約60分。
オリジナルは全12曲で、13曲目以降の
6曲はCDボーナス・トラックです。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

All songs written by H. Swaby
All music Published by Pablo Music
Produced by Augustus Pablo for Rockers Production

Rastafari Iration: Give thanks to King Selassie I for his Inspiration

Cover Photo: Walsh's Photo Studio, Kingston, Jamaica
Original Art & Design: Orville 'Bagga' Case
Photo-Lithorraphy: Hugh Roy McIntosh
Design: Bred Wrolstad

Players Of Instruments:
Give thanks to Jah-Malla band for playing on "Chant To King Selassie I"
and "Natural Way"
Drums: Carlton Barrett, Max Edwards, Noel 'Alphonso' Benbow
Bass: Bagga, Robbie Shakespeare, C. Downie, Aston 'Family Man' Barrett
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Percussion: Everton DaSilva
Melodica, Clavinet, Piano, Organ, String Ensemble: Augustus Pablo

となっています。

すべての曲の作曲とプロデュースは
H. Swaby(Augustus Pablo)が担当して
います。

このアルバムを制作するにあたって
インスピレーションを与えてくれた
ラスタファリズムの神であるエチオピア
皇帝ハイレ・セラシエに対する感謝の言葉
が書かれています。
それからも解るように、このAugustus
Pabloという人は敬虔なラスタファリアン
なんですね。

カヴァー写真はジャマイカのキングストン
にあるWalsh's Photo Studioで撮影され、
オリジナル・ジャケットのデザインは
Orville 'Bagga' Caseが行っています。

ジャケットには川のほとりでメロディカを
吹くAugustus Pabloの写真が使われていま
す。
多分このアルバムを買ったのは80年代
前半ぐらいですが、普通のシャツに
サンダル履きという全然オシャレ感のない
格好で、正直かなりみすぼらしい格好だな
と思った事を今でもハッキリと覚えていま
す。
今ではマキシマム ザ ホルモンの
マキシマムザ亮君の履いている便サン
(便所サンダル)などが有名ですが、
おそらくレコード・ジャケットでサンダル
を履いている人を見たのは、このAugustus
Pabloが初めてだったんじゃないかと思い
ます(笑)。
レゲエというとやはりドレッドロックス・
ヘアーが有名ですが、このAugustus
Pabloのサンダル履きとKing Tubbyの
ランニング・シャツ姿も、あまりの衣装に
かまわない姿で、かなり強烈な印象だった
んですね(笑)。

バックのプレイヤーは、1曲目「Chant
To King Selassie I」と2曲目「Natural
Way」の演奏がJah-Malla band、他の演奏
はドラムにCarlton BarrettとMax Edwards、
Noel 'Alphonso' Benbow、ベースにBagga
(Earl Walker)とRobbie Shakespeare、
Clayton Downie、Aston 'Family Man'
Barrett、リード・ギターにEarl 'Chinna'
Smith、パーカッションにEverton DaSilva、
メロディカとクラヴィネット、ピアノ、
オルガン、ストリングス・アンサンブルの
演奏がAugustus Pabloという布陣です。

このCDにはスタジオやエンジニアの記述
がありませんが、元のLPには記述があり
ました。

それを写すと、

Recorded at: Harry J, A & R, Channel One, King Tubby's, Black Ark Studios
Engineers: Prince Jammie, S. Morris, Errol Thompson, Ernest Hookim, Lee Perry

と書かれています。

レコーディングはHarry JやA & R、
Channel One、King Tubby's、Black Ark
Studiosで行われ、エンジニアはPrince
Jammie(Jammy)やSylvan Morris、
Errol Thompson、Ernest Hookim、Lee
Perryといった人達が行っているよう
です。
Channel Oneの録音はErnest Hookim、
King Tubby'sはPrince Jammie、Black Ark
はLee Perryという組み合わせで間違い
ないと思うのですが、Sylvan Morrisと
Errol ThompsonはどちらがHarry Jで
A & Rかイマイチ解りません。
おそらくSylvan MorrisがHarry Jかなと
思うのですが…。
ただどのエンジニアも当時ジャマイカで
大活躍していたエンジニアで、これを見た
だけでもこのアルバムのクオリティの高さ
が解ります。

スタジオやバックのミュージシャン、
エンジニアが多いのは、おそらくこの
アルバムが一度の録音ではなく、シングル
用に録音をした音源を集めたアルバム
だからのようです。

さて今回のアルバムですが、Augustus
Pabloの代表作ともいえるアルバムで、
その内容は文句なしに良いです。
おそらくルーツ・レゲエ好きだったら、
ぜひ持っておきたいアルバムのひとつでは
ないかと思います。

このアルバムは私がまだ20代の頃の
始めにレゲエを興味を持った70年代頃に
聴いたアルバムで、私がもっともレゲエで
衝撃を受けたアルバムのひとつだったん
ですね。
そのため「あまりに聴き過ぎて擦り切れて
しまったらどうしよう?」という心配を
して、もう1枚買ってしまったという
アルバムなんですね(笑)。
それだけ当時の私はこのアルバムに
インスパイアされていたんだと思います。

当時買った2枚のLPにはNewsweek誌の
Jim Miller氏という方が書いた
「October 19, 1981」付けの文章の一部
が丸いシールで貼られていました。

そのシールには次のような事がが書かれて
いました。

"..... Augustus Pablo, the world's greatest master of dub
... 'East Of The River Nile' is perhaps Pablo's single most haunting record"

〈Augustus Pabloは、世界で最も偉大な
ダブ・マスターである
「East Of The River Nile」はおそらく
パブロの最も忘れられないレコードです〉

1981年10月19日付のNewsweek誌に
載った、Jim Miller氏という方が書いた
文章の一部なので、このアルバムを聴いた
のはおそらく82年以降だと思われます。

このアルバムは当時の私がもっとも衝撃を
受けたアルバムのひとつで、それまで
聴いた事の無いようなAugustus Pabloの
哀愁を帯びたメロディカと、まるで
オモチャ箱をひっくり返したような
クルクルと色が変わるようなカラフルな
サウンドに、その頃の私は完全にヤラレ
ちゃったんですね。

今回調べてみてあらためて気付いたのです
が、そのサウンドがカラフルに感じたと
いうのは、あながち間違っていないよう
です。
今回のアルバムはシングル盤を集めた為
なのか、スタジオやエンジニアがすごく
多いんですね。
その為か1枚のまとまったアルバムという
よりは、1曲1曲がすごく立ったアルバム
という印象です。

ただ、まとまりを欠くという事はなく、
多くのエンジニアがAugustus Pabloという
ひとりの演奏者をさまざまな角度から照ら
して、その魅力をうまく引き出したとても
カラフルなアルバムという印象なんです
ね。
Augustus Pabloというイマジネーションが
豊かな演奏者の、内面にあるいろいろな
イメージをうまく引き出したアルバムで、
サウンドにとても豊かさがあり、そこが
魅力的で、彼の代表作と呼ぶに相応しい
アルバムだと思います。

あと興味深いのが1曲目「Chant To King
Selassie I」と2曲目「Natural Way」の
2曲で共演しているJah-Malla bandで、
このJah-Mallaというグループはネットの
Discogsで調べると、80年と81年に
アルバムを2枚出している他はシングル盤
を3枚出しているだけという、すごく寡作
なグループなんですね。
そのシングル盤の初めの1枚が、78年に
リリースしたAugustus Pabloとの共演作で
12インチ・シングルの「House Of Dub」
という曲です。
(裏面はHugh Mondell And Jah Liuiの
「Book Of Live」という曲です。)
Augustus PabloのレーベルRockersからの
リリースなので、このAugustus Pabloの
育てたアーティストなのかもしれません。
YouTubeこのJah-Mallaの音源を聴いてみる
と、どうもコーラス・グループとして活動
しているようなんですが、初めはバンド
形式のグループだったのかも。
そんな彼らの参加したインスト・ナンバー
が聴けるのも面白いところ。

他にネットの販売サイトの情報では、5曲
目「Unfinished Melody」はLee Perryが
エンジニアリングを務めた曲と伝えらて
いる曲なんだとか。
「静かに狂っていくような感じ」が心地
良いとか、「メロウ・マッドネス」と絶賛
されています。
確かに派手なチャーム音やコーラスなど、
どことなくLee PerryらしさとAugustus
Pabloの哀愁を秘めたメロディカの
コントラストが魅力的な曲です。

ちなみにCDボーナス・トラックの17曲
目「Islington Rock」は明らかにLee
Perryの「Super Ape」か何かのアルバムに
入っていた曲で、こちらもなかなか良く
出来たボーナス・トラックです。

やはり表題曲の「East Of The River
Nile」は、彼の代表曲という事もあって
ぜひ聴いておいてもらいたい曲です。
ガシっとしたドラムにJazzyなギター、
メロディカのメロディといった組み合わせ
のこの曲ですが、単にメローなメロディカ
だけでなく、こうしたビターでハードな面
を持ったメロディカが吹けるのがこの人の
魅力で、この人のそうした想像力豊かな
メロディカがレゲエという音楽をより豊か
な音楽に変えたという側面は否定が出来ま
せん。

彼の吹いたエモーショナルで豊かな
メロディカの音色は、それまでの西洋音楽
に無い新しい魅力を我々リスナーに届けた
んですね。

他にもHugh Mundellの代表曲「Africa Must
Be Free」の、Augustus Pabloによる
メロディカ・ヴァージョンの8曲目
「Africa (1983)」など、興味深い曲が多く
収められているのが、今回のアルバムなん
ですね。

初めの2曲はバックをJah-Malla bandが
務めています。

1曲目は「Chant To King Selassie I」
です。
漂うようなシンセとメロディカの
メロディがとても心地良い曲です。
レゲエらしい歯切れの良いドラミングが、
うまく曲を引き締めています。

augustus pablo - Chant To King Selassie I


2曲目は「Natural Way」です。
こちらも漂うような浮遊感のあるシンセ
に、哀愁を秘めたメロディカとピアノの
メロディ、歯切れの良いドラミング。

Augustus Pablo - Natural Way + Nature Dub


3曲目は「Nature Dub」です。
2曲目「Natural Way」のダブ・
ヴァージョンです。
こちらは原曲よりベースが効いたダブ
ワイズがされています。

4曲目は「Upfull Living」です。
歯切れの良いドラミングに浮遊感のある
シンセ、メロディカの心地良いメロディが
魅力的な曲です。

5曲目は「Unfinished Melody」です。
書いたようにLee Perryがミックスをした
と言われている曲のようです。
ユラユラと揺れるようなメロディカと
チャーム音、不思議な男性コーラス…。
懐かしさを感じさせるような、哀愁を
秘めたメロディカが良い味を出している
曲です。

augustus pablo - Unfinished Melody


6曲目は「Jah Light」です。
勢いのあるメロディカと哀愁のある
メロディカの2つのメロディが響き合う
ような曲です。
この時代のAugustus Pabloは多様な楽器を
演奏していますが、攻撃性のあるメロディ
と魂を鎮めるような瞑想的なメロディを
使い分けているのが特徴的なところです。

"Jah Light" - Augustus Pablo


7曲目は「Memories Of The Ghetto」
です。
ギターとメロディカの哀愁のあるメロディ
に乗せた曲です。
メロディカという楽器の持つ心に沁みる
メロディが印象的。

8曲目は「Africa (1983)」です。
Hugh Mundellの代表曲「Africa Must Be
Free」の、Augustus Pabloによる
メロディカ・ヴァージョンといった曲
です。
ギターとキーボード(クラヴィネット?)
のメロディのイントロから、Augustus
Pabloのメロディカが心に沁み込んで来る
ような曲です。

Augustus Pablo - Africa (1983)


9曲目は表題曲の「East Of The River
Nile」です。
ガシっとしたドラムにJazzyなギター、
メロディカのメロディ…。
サウンド時代にガツンとした歯ごたえが
あり、単にメローでないところがすごく
レゲエらしく魅力的。
彼の代表曲のひとつです。

AUGUSTUS PABLO - East Of The River Nile [1977]


10曲目は「Sounds From Levi」です。
ガシっと硬いドラムとギター、キーボード
のオープニングから、クラヴィネットの
ちょっとこもった重い浮遊感が面白い曲
です。

Augustus Pablo - Sounds From Levi


11曲目は「Chapter 2」です。
こちらもクラヴィネットか?独特の
ニュアンスのあるメロディに、ベースと
ドラムがイイ感じに絡んだ曲です。

12曲目は「Addis-A-Baba」です。
ちょっと重いクラヴィネットのメロディ
に、メロディカの哀愁のあるメロディ、
ベースとドラムがうまく絡んだ曲です。
ちなみにAddisは息子の名前なんですね。

Augustus Pablo - East of the River Nile (1977) - 12 - Addis Ababa


13曲目以降の6曲は、このアルバムに
縁のある曲を選んだCDボーナス・
トラックです。
こちらも「East Of The River Nile」の
別ヴァージョンの13曲目「East
Africa」や14曲目「East Of The River
Nil (Original)」など、なかなか良い
選曲なんですが、ここでは省略します。

ざっと追いかけてきましたが、やはり
Augustus Pabloの代表作のひとつと言わ
れる作品だけあって、内容はすごく良い
です。
多くの人のミックスを集めたアルバムです
が、よりAugustus Pabloという人の全体像
が立体的でカラフルに描かれていると思い
ます。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Augustus Pablo
○アルバム: East Of The River Nile
○レーベル: Shanachie
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○Augustus Pablo「East Of The River Nile」曲目
1. Chant To King Selassie I
2. Natural Way
3. Nature Dub
4. Upfull Living
5. Unfinished Melody
6. Jah Light
7. Memories Of The Ghetto
8. Africa (1983)
9. East Of The River Nile
10. Sounds From Levi
11. Chapter 2
12. Addis-A-Baba
(CD Bonus Tracks)
13. East Africa
14. East Of The River Nil (Original)
15. Memories Of The Ghetto Dub
16. Jah Light Version
17. Islington Rock
18. Meditation Dub